イギリスのリーズで開催されている、2018年リーズ国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
9月7日は、2次予選の第2日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、2018年リーズコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(2018年リーズ国際ピアノコンクール 1次予選 まもなく開始)
(2018年リーズ国際ピアノコンクール 1次予選通過者発表)
(2018年リーズ国際ピアノコンクール 2次予選の曲目発表)
Taek Gi Lee (age: 21 South Korea)
Schubert – Piano Sonata No.19 in C minor D.958
Chopin – Ballade No.1 in G minor Op.23
これといった穴がなく、バランスは良い。
ただ、シューベルトの澄み切った情感や、ショパンの濃厚なロマンが表現されているかといわれるとそうではなく、全体的にやや味気ない印象。
技巧的には、なかなか悪くないのだが。
Pavel Zemen (age: 25 Czech Republic)
Rachmaninov – Etude-tableaux No.5 in E flat minor Op.39
Chopin – Barcarolle in F sharp major Op.60
Barber – Piano Sonata Op.26
かなり個性的で風変わりな、いわば「オソキンス」タイプの演奏(耽美的なオソキンスに比べ、もう少しくっきりしているという違いはあるが)。
テンポは大きく揺らされ、「タメ」が多い。
独特のリリシズムがあるのは確かだが、解釈は恣意的であり、そうする必然性が感じられるほどの説得力があるかといわれると疑問。
テクニック的にも、やや弱い面がある。
Aljoša Jurinić (age: 29 Croatia)
Debussy – Reverie L.68
Schumann – Fantasie in C major Op.17
ドビュッシーの「夢」は彼の得意曲であり(2016年エリザベートコンクールや2017年クライバーンコンクールでも弾いていた)、今回も夢見るような美しい演奏。
シューマンの幻想曲も、彼らしい端正でみずみずしい情感がよく表現されており、期待通り。
第2楽章コーダの跳躍部分も、目の覚めるような鮮やかさとはいえないけれど、技巧派ではない彼としては及第点だろう。
両曲とも、彼の持ち味を発揮しやすい、良い選曲だと思う。
Mario Häring (age: 28 Germany)
Mozart – Piano Sonata No.12 in F major KV.332
Prokofiev – Piano Sonata No.2 in D minor Op.14
Kapustin – “8 Concert Etudes” Op.40: No.1 “Prelude”
モーツァルト、古典派らしい均整の取れた、美しい演奏。
プロコフィエフやカプースチンも、近現代曲らしいどぎつさを前面に出すのでなく、もっと知的かつ端正な解釈であり、技巧的にも(キレキレとまでは言わないにしても)それほど不足を感じない。
2017年ARDコンクール第2位のファビアン・ミュラーと並び称されるべき、ドイツの若き才能と言ってもいいかもしれない。
Chao Wang (age: 28 China)
Mozart – Rondo in D major K485
Beethoven – Piano Sonata No.14 in C sharp minor Op.27 No.2
Schumann – Piano Sonata No.2 in G Minor Op.22
モーツァルト、ベートーヴェン、シューマンいずれも、安定した技巧、丁寧な解釈、自然な歌心が聴かれる。
ただ、どの要素もそれなりという感がなきにしもあらず。
他のコンテスタントよりも飛びぬけて優れているような、何らかの強みがあると良いのだが。
Anna Geniushene (age: 27 Russia)
Brahms – Balladen Op.10
Bartók – Sonata Sz.80
ブラームス、決して派手な曲でないのに、きわめて雄弁な表現力で、聴かせる。
一方、バルトークのほうは、彼女の持ち味が最高に発揮される曲かといわれると、そうではないような気がする。
スムーズな技巧と余裕のある打鍵をもつ奏者が、シンプルに力強く弾くのが、この曲には合っている。
ただ、彼女の情熱的、個性的な演奏も悪くはないし、ブラームスだけ取っても、セミファイナル以降も聴きたいと思わせる魅力がある。
Siqian Li (age: 25 China)
Beethoven – 10 Variations on a Theme by Salieri, WoO.73
Chopin – 12 Etudes Op.10
ベートーヴェン、抒情的な美しい演奏で、地味な曲がよく映える。
ショパンのエチュードop.10は、技巧派タイプではない(と思っていた)彼女には不利な選曲と危惧していたが、なんのなんの、音楽面での魅力はもちろんのこと、技巧面でもほとんど不足のない演奏である。
第2、10番はあと少し精度が上がると良いが、第1、4、5、12番などは相当な出来だし、第3、6、11番の音楽的な味わいは際立っている。
良い意味で、予想を完全に裏切られた。
Samson Tsoy (age: 29 Russia)
Scriabin – Three Pieces Op.45
Mussorgsky – Pictures at an Exhibition
スクリャービン、瞑想的な美しい演奏。
ムソルグスキーは、くっきりした力強い演奏で悪くないのだが、技巧的な洗練だとか、音楽的なこだわりの解釈だとか、そういった特記すべき個性はあまり聴かれないか。
何かもうワンポイントが欲しいところ。
そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは
Aljoša Jurinić (age: 29 Croatia)
Mario Häring (age: 28 Germany)
Anna Geniushene (age: 27 Russia)
Siqian Li (age: 25 China)
あたりである。
そして9月8日は第3日、最終日。
ついに石井楓子が演奏する。
日本時間でいうと、明日(9月9日)の早朝3時。
ネット配信で、リアルタイムで聴くことができる(こちらのサイト)。
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