(リーズコンクールの課題曲) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

一昨日、石井楓子ピアノ・リサイタルを聴いたので、そのついでといってはナンだけれど、本年9月に彼女が出場予定のリーズ国際ピアノコンクールについて書きたい。

今回のリーズコンクールの課題曲は、以下のようになっている。

なお、1次予選はすでに終了している(1次予選通過者についての記事はこちら)ため、2次予選以降についてのみ概要をまとめる。

 

 

 

 

 

【2次予選】

40分間のソロ曲のプログラムをAとBの2種類準備して、どちらかを演奏する。

AとBのどちらを演奏するかは、2018年5月1日に指定される。

 

 

【セミファイナル】

30分以上のソロ曲のプログラム(現代曲リストから選んだ1曲を含む)に室内楽1曲を加えたものをAとBの2種類準備して、どちらかを演奏する。

プログラムAではグループ1の室内楽(ピアノ五重奏曲もしくはピアノ三重奏曲)から一つ選ぶ。

プログラムBではグループ2の室内楽(ヴァイオリン・ソナタもしくはチェロ・ソナタ)から一つ選ぶ。

AとBのどちらを演奏するかは、セミファイナル進出者発表時に指定される。

 

・現代曲リスト

Pierre Boulez : 1st Sonata (10’)

Luciano Berio : Sequenza (11’)

Brett Dean : Hommage a Brahms (3 pieces – 8’)

György Ligeti : Selection of Etudes (up to approx. 10’)

György Kurtág : Selection of Játékok (up to approx. 10’)

Thomas Larcher : Noodivihik (10’)

Thomas Ades : Traced Overhead (11’)

George Benjamin : Meditation and Relativity Rag (7’)

Helmut Lachenmann : Schubert Variations (7’)

 

・室内楽リスト グループ1

Quintets with the Elias String Quartet

ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲 イ長調 Op.81

ブラームス:ピアノ五重奏曲 ヘ短調 Op.34

ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.57

Trios with Alexander Sitkovetsky (violin) and Bjørg Lewis (cello)

ハイドン:ピアノ三重奏曲 イ長調 Hob XV/18

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 ニ長調 Op.70/1

ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲 ホ短調 Op.90 “Dumky”

 

・室内楽リスト グループ2

Cello Sonatas with Bjørg Lewis

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ イ長調 Op.69

ブラームス:チェロ・ソナタ ホ短調 Op.38

ラフマニノフ:チェロ・ソナタ ト短調 Op.19

Violin Sonatas with Alexander Sitkovetsky

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ ハ短調 Op.30/2

シューベルト:幻想曲 ハ長調 D934

ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ ト長調

 

 

【ファイナル】

グループ1および2からそれぞれ1曲ずつ協奏曲を準備して、どちらかを演奏する。

どちらを演奏するかは、ファイナル進出者発表時に指定される。

 

Concerto with the Hallé Orchestra conducted by Edward Gardner

 

・協奏曲リスト グループ1

J.S.バッハ

ピアノ協奏曲 ニ短調 BWV1052

ベートーヴェン

ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15

ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op.37

ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 Op.58

ハイドン

ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob: XVIII:11

メンデルスゾーン

ピアノ協奏曲 第2番 ニ短調 Op.40

モーツァルト

ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K466

ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調 K482

ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K491

ピアノ協奏曲 第25番 ハ長調 K503

 

・協奏曲リスト グループ2

バルトーク

ピアノ協奏曲 第3番 Sz.119

ブラームス

ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83

ショパン

ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21

リスト

ピアノ協奏曲 第2番 イ長調 S125

プロコフィエフ

ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 Op.16

ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 Op.26

ラフマニノフ

ピアノ協奏曲 第1番 嬰へ短調 Op.1

ピアノ協奏曲 第4番 ト短調 Op.40

パガニーニの主題による狂詩曲 イ短調 Op.43

ラヴェル

ピアノ協奏曲 ト長調

シューマン

ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

 

 

 

 

 

以上、リーズコンクールのサイトをもとに記載した(引用元のページはこちら)。

 

 

一見普通の課題曲のようにみえるが、実はAとBのプログラムのどちらかのみを演奏する、つまり準備した曲の半分しか披露できない、という仕組みになっている。

出場者への負担は大きそう。

そして最も特徴的なのは、ファイナルにおいて、古典派協奏曲とロマン派協奏曲のどちらかしか演奏しない(しかもどちらになるかは直前まで分からない)、ということである。

ラフマニノフやプロコフィエフが得意な技巧派ピアニストが、せっかくファイナルまで残っても、最後にモーツァルトの協奏曲で勝負しなければならないかもしれないのである。

リーズコンクール、今までもこんなやり方だっただろうか?

 

 

こうした、各々の出場者が自分の得意曲で勝負できない可能性のあるやり方には、私は原則反対である。

しかし、今回に限っては、賛成してもいいかもしれない。

というのも、石井楓子に有利と思われるからである。

彼女の得意とするラフマニノフのピアノ協奏曲第3番が課題曲にないのは残念だけれど、それでも彼女は、古典派協奏曲でもロマン派協奏曲でも、どちらでも勝負できるタイプのピアニストだと思う。

彼女の弾くベートーヴェンの協奏曲第4番など、きっと名演になるだろう。

そして、バキバキの技巧派ピアニストたちは、古典派協奏曲のほうを弾かされると軒並み味気ない演奏になる…とはさすがにならないだろうけれど、少なくとも不利ではあるだろう。

そうなると、ひょっとして優勝もありうるかも?

そんなに簡単な世界ではないし、そもそもファイナルまで残るだけでもとてつもなく難しいのだけれど、つい期待してしまう。

 

 

リーズコンクールまで、あと1ヶ月と少し。

ドキドキワクワクする。

 

 


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