イギリスのリーズで開催される、2018年リーズ国際ピアノコンクール(の2次予選以降)が、ついに始まった(公式サイトはこちら)。
9月6日は、2次予選の第1日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、2018年リーズコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(2018年リーズ国際ピアノコンクール 1次予選 まもなく開始)
(2018年リーズ国際ピアノコンクール 1次予選通過者発表)
(2018年リーズ国際ピアノコンクール 2次予選の曲目発表)
Yilei Hao (age: 21 China)
Mozart – Sonata No. 15 in F major K.533/494
Rachmaninov – Etude-tableau in E flat minor Op.39 No.5
Janáček – In The Mists
ロマン的、ヴィルトゥオーゾ的なモーツァルトだが、なかなか悪くない。
ラフマニノフでは彼のロマン的気質がよりぴったりと合う。
ヤナーチェクも良いのだが、これはもう少しぴんと張り詰めた、森の空気のような感じが欲しいか。
全体的に、悪くない演奏なのだが、もう少し彼の持ち味が出やすいヴィルトゥオーゾ的な曲のほうが有利だった気もする。
Jinhyung Park (age: 22 South Korea)
Tchaikovsky – Dumka Op.59
Chopin – Sonata No.3 in B minor Op.58
きわめてスマートでムラがなく、技巧的に高度に安定している。
特に、ショパンの第2、4楽章が秀逸で、急速なパッセージの滑らかさはチョ・ソンジンにも匹敵するほど。
第1楽章などではルバートのかけ方があまり自然でない部分もあるが、情感の表現も思った以上にしっかりとなされている。
やはり強力な優勝候補の一人といえそう。
Wei-Ting Hsieh (age: 22 Taiwan)
Schumann – Fantasiestucke Op.12
Debussy – Images Book I
シューマンは、安定した明瞭な演奏ではあるが、もう少し幻想性が欲しいし、「夜に」「夢のもつれ」といった技巧的な曲ではやや微温的になってしまっている。
ドビュッシーでは彼女のはっきりとした音楽づくりが、先ほどのシューマンよりは合っている印象。
ただ、こちらももう少し「詩」があるとなお良かったか。
Andrzej Wierciński (age: 22 Poland)
Beethoven – Sonata in E flat major Op.7
Chopin – Scherzo in B minor Op.20 no.1
ベートーヴェン、音色に独特の味わいがある。
ただ、フォルテがきつめだったり、音階やアルペッジョにムラがあったりと、全体的にやや洗練性に欠けるきらいがある。
ショパンのほうは、かなりの高速テンポによるアグレッシブな演奏で、完成度の点でもなかなかのもの。
最後、コーダでの大きな減速はあまり好きになれないけれど。
Xinyuan Wang (age: 23 China)
Schumann – Humoresque Op.20
Bartók Piano – Sonata Sz.80
シューマンは、抒情的な表現はまずまず悪くないのだが、技巧的なキレはあまりみられず、リズム感もところどころ鈍な印象。
バルトークも、丁寧で音の鳴りも充実してはいるのだが、もう少しぐいぐいと攻める演奏であればなお良かった。
Alexia Mouza (age: 28 Greece / Venezuela)
Mozart – Fantasia No. 3 in D minor K397
Liszt – Sonata in B minor S.178
モーツァルト、ロマン的だがやりすぎにならず、美しい。
リストも、熱烈で情熱的な、聴きごたえのある演奏。
独特の勢い、テンペラメントがある。
それでいて、大味にならず、繊細な表現力も兼ね備えている。
テクニック的にもかなりのもの(ミスはやや多めだけれど)。
セミファイナルへ進む可能性が高そう。
Yoonji Kim (age: 29 South Korea)
Mozart – Sonata in D major K576
Chopin – Polonaise-Fantasie Op.61
Scriabin – Sonata No.4 Op.30
音色がやや地味めだが、表現の丁寧さ、繊細さは相当なもの。
モーツァルトも良いが、特にショパンとスクリャービンにおける表現力が非常に印象的。
細部までこだわった緻密な演奏で、それでいてわざとらしさがない。
スクリャービンのソナタ第4番は個人的に好きな曲で、アンナ・ツィブラエワやノ・イェジン、パク・ジョンヘらの録音を愛聴しているが、今回の演奏はこれらに匹敵する、あるいは超える出来かもしれない。
Yuanfan Yang (age: 21 United Kingdom)
Beethoven – Sonata in G Op.31 No.1
Chopin – Berceuse in D flat
Liszt – Fantasia and Fugue on Bach
洗練された、完成度の高い演奏。
ベートーヴェンもショパンも、クールながら自然な情感の発露も感じられる。
そして2017年ルービンシュタインコンクールでも弾いていたリストは、スマートな技巧といい、充実した余裕のある打鍵といい、この曲の決定的な演奏だと思う。
上述のJinhyung Park同様、有力な優勝候補の一人といえるだろう。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは
Jinhyung Park (age: 22 South Korea)
Alexia Mouza (age: 28 Greece / Venezuela)
Yoonji Kim (age: 29 South Korea)
Yuanfan Yang (age: 21 United Kingdom)
あたりである。
次点で、
Yilei Hao (age: 21 China)
Andrzej Wierciński (age: 22 Poland)
あたりか。
第2、3日も楽しみである。
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