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今回は首都圏における「L/Cカー」有料サービスについての内容を投稿します。
「L/Cカー」とは座席がロング&クロス転換シートになっている車両の事で、ライナー運用時に限りクロスシートにする仕組みとなっています。なお、ロングシート時は各駅停車の運用にも入ります。
一部は座席下にコンセントが装備されております。また、長距離運用を考慮してトイレが設置されている場合もあります。
京浜急行電鉄
(ウィング号)
1992年に夕方の下りに限り導入された。当時は私鉄の特急専用車でないライナーは画期的であり、「湘南ライナー」用で作られた215系のデビューに合わせてサービスを開始した事から東海道線への対抗意識もあったと思われる。
休日は快特の一部で「ウィングシート」が2号車に設定される。
(停車駅)
東急電鉄
※S-TRAINは西武鉄道で扱うためここでは割愛する。
(Qシート)
2018年に大井町線で導入を開始。全国屈指の混雑路線である田園都市線の着席保証ができるとあって、前日には満席になる事もあるという。当初はたまプラーザ以西でフリー乗降となっていたが、現在は二子玉川を除いて田園都市線内での乗車が不可となっている。
2023年には東横線でもサービスを開始した。当初は4・5号車の2両とされていたが、現在は4号車を「休シート」状態としている。
現時点で大井町線は3号車、東横線は5号車に設定される。種別はいずれも急行で、平日の下りのみの設定となっている。
(停車駅)
◆大井町線
◆東横線
京王電鉄
(京王ライナー)
2018年に新宿~橋本・京王八王子にて導入された。導入に合わせて新形式の5000系を用意し、2022年増備分からはリクライニング機能まで兼ね備えたハイテク仕様となっている。
新宿からの所要時間は京王多摩センターまで最速26分、京王八王子まで36分とかなりの速達性を誇る。特に相模原線方面は小田急の「ホームウェイ」が多摩線直通を廃止したため、完全に京王が優位に立ったと言えるはず。
また、高尾線直通の「Mt.TAKAO号」も休日限定で走り、下りは何と明大前からノンストップで高尾山口まで向かう。
(停車駅)
- 「Mt.TAKAO号」の運転は休日のみ。
- 下りは府中または京王永山からライナー券なしで乗降可能。
西武鉄道
(S-TRAIN)
2017年に導入され、西武の有料列車で「初」の地下鉄直通運転を実現させた。土休日のお出かけや、平日の通勤・通学などの様々なシーンに対応するため、ダイヤ別で直通先が異なるのが特徴的。
現行では40000系が使われるが、2019年登場の「Laview」は地下鉄対応で作られており、将来的に車両変更する可能性がある。
◆平日(有楽町線直通)
現行ダイヤではいずれも所沢⇔豊洲で運転。朝は上り、夕方以降は下りのみの設定。下りは18時以降に毎時ちょうどに豊洲を出るように設定されている。
所要時間は豊洲~所沢が最速55分、飯田橋~石神井公園が25分ぐらいであり、実は快速とそんなに変わらない。やはり有楽町線内に待避線がないのが影響している模様。
イベント開催時は豊洲止まりになっている運用を新木場まで延ばす事があり、その場合は豊洲~新木場を各駅停車で運転した上でフリー乗降区間として扱われる。
◆休日(副都心線直通)
いずれも元町・中華街発着となる。ただし、西武秩父へ行く運用は1往復のみで、それ以外は南行き1本が飯能始発、北行きが飯能行・所沢行がそれぞれ1本ずつある。
所要時間は飯能~西武秩父で下りが38分、上りが45分となっている。飯能以東は運転停車をしたり乗降時間が長かったりするためか、【Fライナー】とあまり変わらない。
とりあえず、東急線内での有料列車はもちろん「初」の設定で、【Fライナー】とは異なり全区間同じ種別で運転する。
(停車駅)
- 池袋は方向関係なく降車のみの扱いとなる。
- 地下鉄線内(みなとみらい線含む)のみの乗車はできない。
(料金)
- 「○」は乗降共に可能、「●」は方向によって乗車または降車のみ、「△」は降車のみ、「×」は利用不可とする。
(拝島ライナー)
2018年に拝島線へ向かうライナーとして登場。停車駅は新宿線内がノンストップ、拝島線内が各駅に停車し、かつての相鉄の急行に近い性格を持つ。所要時間は西武新宿~拝島が最速44分、高田馬場~小平で20分ぐらいであり、かなりの速達性を誇る。拝島以西のアクセスで考えれば、高田馬場からだと中央線よりもアドバンテージがある。
将来的には特急小江戸を置き換えて【小江戸ライナー】を走らせる可能性もある。S-TRAINとは雲泥の差マークが jH っぽく見えて日本道路公団を連想する人もいるかも。
(停車駅)
- 下りは小平からの拝島線区間がライナー券なしで乗降可能。
東武鉄道
(TJライナー)
2008年の副都心線開業に合わせ、関東では京急に次ぐ通勤車使用のライナーとして導入された。「L/Cカー」を使用するライナーの先駆け的な存在であり、このTJライナーの成功で同様のサービスが他社へ波及していった(特に特急導入のハードルが高い路線は刺激を与えたはず)。
現行ダイヤでは全て池袋発着で、上りは森林公園始発、下りは小川町行きとなる。所要時間は池袋~川越が最速25分で、埼京線や西武新宿線よりもアドバンテージがある。
当初は下りのみだったが、年を追うごとに徐々に本数を増やしていき、2016年には上りでも運行を開始した。現在は曜日関係なく運転しており、上りは朝、下りは夕方以降に設定される(逆方向には無料の川越特急が運転され、こちらも50090型が使われる)。
(停車駅)
- 下りはふじみ野からライナー券なしで乗降可能。
(料金)
(THライナー)
2020年の虎ノ門ヒルズ駅開業に合わせて導入された。日比谷線の完全7両化と同時に設定され、北千住が通過扱いとなるのが特徴的。日比谷線直通は基本的に緩行線を走るが、このTHライナーに限り梅島~西新井で急行線に転線する。
所要時間は上野~久喜が54分であり、上野東京ラインと大差はなく、西新井で普通⇒急行に乗り換えた場合でも数分程度の差である。将来的には南栗橋発着が設定される可能性もあるが…。
(停車駅)
- 上りは霞ヶ関から各駅停車として扱われ、ライナー券なしで乗降可能。
(料金)
※上り方面を基準とする。
以上です。どの車両も乗り心地は静かで非常に良く、ライナー用として使う分にはE231系グリーン車にも劣らないハイスペックな車両です。観光用として使う分ではやはり「スペーシアX」とかより落ちると思いますが、EXEには間違いなく勝っています。
「L/Cカー」で特に成功しているのはTJライナーと拝島ライナーで、現状ではほぼ満席で「+200円で立ってでもいいから乗せてくれ」みたいな状況になっています。新宿・池袋から見ると所要時間がJRの競合路線よりも短く、京王ライナーを含めても現時点で中央線にグリーン車がない(2025年導入予定)のが追い風となっているように感じます。
一方のS-TRAINやTHライナーがガラガラになっている原因はこんな感じでしょうか。
- ターミナル駅まで行けば始発の特急に乗れる(逆も同様)。
- 座席のリクライニングができない(京王ライナーの一部は可能)。
- 観光視点で考えた時、座席にハズレが多い(窓側なのに戸袋があったり足が伸ばしづらい箇所があったり、あるいはロングシート席があったりする)。
- やはり通勤車の延長なので旅情がなく特急に乗っている感が全く伝わらない(近い感じとしてE231系クロスシート車で熱海や前橋に向かうような状況が挙げられる)。
- こんな感じで、設備が特急より劣るのに無駄に特急券が高い。
- さらに座席指定券の買い方にも沿線以外では色々と不便な点が多い。
- 他の無料種別と所要時間に差がなく、停車駅での乗り継ぎも不便な場合がある。
- そもそも特急自体が中編成で回せてるのに、他の通勤車と同じ直通編成を導入したところで供給過多になる事は目に見えていた。
……といった感じでしょうか。また、東急の「Qシート」も東横線と大井町線で利用客の差が出ているとの話もあります。ただ、「L/Cカー」として作られた車両はいずれもまだ更新の時期ではないため、何とかして利用促進の方向へ持っていきたいところでしょう。
今日はここまでです。なお、座席指定券を使う目安と言える東京から50km離れたエリアの一覧は以下のリンクを参照して下さい。