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今回の内容は、富士急グループの「富士山麓電気鉄道」に属する富士急行線についてです。
富士山麓電気鉄道は元々1926年に設立された会社ですが、1960年に富士急行へ改称しました。しかし、2022年4月1日からは富士急グループの再編により、富士急行線が「富士山麓電気鉄道」に分社化されました。富士急行線の路線データは次の通りです。
【路線データ】
【他社乗り入れ路線】
(JR東日本)
- JC 中央線(大月~東京)
- JB 中央・総武線(御茶ノ水~錦糸町)
- JO 総武線(錦糸町~千葉)
【全体マップ】
富士急行線の車庫は富士山駅の西側にある富士吉田車庫で、全ての車両がここで検査を実施します。
他社路線の乗り入れは大月から中央線に入り、最長で東京駅まで直通します。なお、下り1本のみ千葉始発の「富士回遊」が設定されているほか、コロナ禍以前は臨時で成田エクスプレスが直通して成田空港まで行く運用もありました。
各区間の開通年は以下の通りです。ただし、富士山駅以外は現行の駅名で記載します。
- 中央線とは1934年から直通運転を開始している。
- 富士吉田駅は2011年に富士山駅へ改称した。
- 2022年3月31日までは富士山駅を境に東京方面が大月線(23.6km)、終点方面が河口湖線(3.0km)とされていた。
以下の内容が実際の歴史ですが、もし未成線が開通していればそれこそ富士五湖を周遊する鉄道としてまた違った歴史を歩んでいたかもしれません。
富士山麓電気鉄道
富士急グループの始まりは1900年で、当時は馬車鉄道でした。当初は三つ峠駅を境に富士馬車鉄道と都留馬車鉄道の2つに分かれておりましたが、東京から来る富士山登山客を運ぶために線路を敷設したという点では共通します。
1921年に都留馬車鉄道が富士馬車鉄道に吸収される形で「富士電気軌道」として再スタートし、軌間を統一して電化の上で通し運転を実施するようになりました。
ただ、通し運転をスタートした後は線形が悪い事がネックとなりました。このため、1926年には「富士山麓電気鉄道」に社名を変更(書類上は新設)した上で、1929年には現在の富士急行線(大月⇔富士吉田)と同じ新設の線路へ切り替えました。
1934年からは中央線と直通運転を開始し、1950年には富士吉田~河口湖が開業して現在の路線を形成する事となりました。この際に東証にも上場し(東証一部→東証プライム)、1956年には岳南電車を傘下に置き、富士山周辺における影響力を強めていきました。
その後、1960年には富士急行に改称し、富士急行はその後観光・レジャー事業に次々と進出していきました。代表例としては絶叫マシンで知られる「富士急ハイランド」が挙げられます。
また、1969年に中央自動車道が河口湖ICまで開通すると、東京から「中央高速バス」を走らせて徐々に広範囲へバス路線を拡大させました。
しかし、次第に「富士急=富士急ハイランド」のイメージが強くなってしまい、さらに観光・レジャー業を拡大し過ぎた結果、本業であるはずの鉄道事業の売上が5%しかないという事態となりました。この事を踏まえ、2021年になって鉄道事業を分社化して「富士山麓電気鉄道」が復活する事となりました。
以上の事から、現在の富士急行は子会社を中心としたホールディングス方式に近い形態となっており、富士山麓電気鉄道や岳南電車などの鉄道事業は子会社とされています。この形態は2019年に鉄道事業を独立させた東急(旧東京急行電鉄)に近いです。
車両
現有車両は次の通りで、自社車両は全て他社からの譲渡車とされています。
【3両編成】
6000系(旧205系):7本
8000系(旧RSE):1本
8500系(旧371系):1本
【2両編成】
1000形(旧京王5000系):1本
1200形(旧京王5000系):1本
- 形式は5000形以前が「形」、6000系以降が「系」と呼称される。
- 旧京王5000系を種車とした1000形と1200形の違いは座席がロングかクロスかで判別する。なお、現時点で1000形は京王旧塗装車、1200形は富士登山電車のみが残存している。
- 8000系は「フジサン特急」、8500系は「富士山ビュー特急」として使われる。
- JR東日本からは特急型のE353系(3両)が「富士回遊」として、近郊型の211系(3両)及び通勤型のE233系(4両)が普通電車として乗り入れる。
前述の通り富士急行線は中央線への直通運用がありますが、これらは全てJR東日本の車両による乗り入れであり富士山麓電気鉄道の車両が大月以東に入線する事はありません。
ダイヤ
時間帯問わず基本的に2本/時です。原則としてJR直通以外は大月⇔河口湖の往復運転で、直通運用は高尾・新宿・東京発着がそれぞれ設定されています。
富士急行線内の無料種別は普通のみで、JR直通でも高尾までは各駅に停車します。高尾以東の種別は「富士回遊」を除けば中央特快・通勤快速(下りのみ)・快速(上りのみ)となっています。
ちなみに、大月駅には富士急行線の専用ホームがありますが、JR直通の場合は上下線関係なくJR東日本のホームに停車します。「富士回遊」は「あずさ」「かいじ」と連結し、大月で増解結を実施します。なお、E233系でも大月で増解結がありますが、富士急行線には4両のみ直通し、6両は甲府方面へ行かずに大月発着となります。
【日中時間帯】
- 両方向共に2本/時。
- 大月発着の特急・普通が1本/時ずつ走る。
【朝ラッシュ時】
上り:2本/時
- 早朝に東京行きの快速が2本設定されている(休日は中央特快)。
下り:3本/時
- 「富士回遊」が1本/時あり、最初に来るのは千葉始発。
- 高尾始発の普通が1本だけ設定されている。
【夕方~夜】
夕方は上りで「富士回遊」の設定がありますが、それ以外は全て普通です。また、18時以降は1~2本/時まで減り、上りは22時台で終電となります(下り終電は0:05河口湖着)。
また、下り2本は東京始発で、平日は通勤快速、休日は中央特快として走ります。
運賃・所要時間
大月~河口湖の所要時間は特急で最速43分、普通で51分(運賃1170円)です。ちなみに、この区間を車で行くと中央自動車道( E68 )利用で30分(料金800円)です。
※2023年10月1日更新
【全体図】
- 「富士回遊」は下り1本のみ千葉始発。
- 「富士回遊」以外の特急は全て大月発着。
- 特急は車種によって「富士回遊」「フジサン特急」「富士山ビュー特急」とあるが、停車駅は全て同じとなる。
【運賃】
- 座席指定は+200円、特別車両は+900円が必要となる。
【河口湖からの所要時間】
- 富士山駅は一般道及び路線バスの時間を記載。
- 「富士回遊」通過駅は大月で普通または立川・新宿で中央特快に乗り換えた時間を計算。
【もし間違えたらマズいだろうシリーズ】
※所要時間が短い順に並べてある。
今日はここまでとします。それにしても、富士急行線は全線を通してノロノロと運転する感じであり、富士急ハイランドにある絶叫マシンの方が明らかにスピードが速い現象が発生しています。まあ、これは富士急の堀内光雄前社長が絶叫マシンファンだった事が大いに関係していますが(笑)。
(参考)
最後に、富士山麓電気鉄道に所属する車両と富士急ハイランドにある絶叫マシンの設計最高速度を一覧にしてみた。
こう見ると、鉄道側は一瞬だけでも最高速度を出せるエリアを設ければ集客が見込めそうな気もしないでもないが…。
つづく