geezenstacの森 -35ページ目

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

チャイコフスキー物語

クラシック・スクリーン・テーマ

 

曲目/

1.チャイコフスキー物語

チャイコフスキー/花のワルツ 7:24

アナトール・フィストラーリ指揮ロンドン交響楽団

2.哀しみのトリスターナ

ショパン/練習曲「革命」

 ウェルナー・ハース(p)

3.逢びき

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 第3楽章より

ユーリ・ブーコフ(p)

ジャン・フルネ指揮ウィーン交響楽団

(表記のアンチェル指揮ウィーン交響楽団は誤記)

4.赤いテント

ショパン/円舞曲 第7番

アダム・ハラシェヴィッチ(p)

5.みどりの壁

J.S.バッハ/カンタータ第140番「目をさませと呼ぶ声がする」

クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽団

6.さよならをもう一度

ブラームス/交響曲第3番ヘ長調 第3楽章 

ヴォルフガンク・サヴァリッシュ指揮ウィーン交響楽団

7.2001年宇宙の旅

J.シュトラウス/美しく青きドナウ 

ロベルト・ワーグナー指揮インスブルック交響楽団

8.ローズマリーの赤ちゃん

ベートーヴェン/エリーゼのために 

ハンス・リヒター・ハーザー(p)

9.風の季節

モーツァルト/ディヴェルティメント ニ長調 K.136

イ・ムジチ合奏団

(表記のイングリッド・ヘブラーは誤記)

10.みじかくも美しく燃え

モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467 第2楽章 

イングリッド・ヘブラー(p)

ヴィットルド・ロヴィツキ指揮ロンドン交響楽団

11.恋人たち

ブラームス/弦楽六重奏曲第1番変ロ長調 第2楽章 

ベルリン・フィルハーモニー八重奏団ジャン・フルネ指揮ウィーン交響楽団

 

日本フォノグラム FONTANA  FG-35(原盤フィリップス)

 

 

  久しぶりにレコードラックを創作していると、もう処分してしまったと思れたアルバムが出てきました。それがこの「チャイコフスキー物語-クラシック、スクリーンテーマ」と言うアルバムでした。
 
 このアルバムは、1971年の発売で、当時日本ホログラムがLPレコード1枚900円と言う破格で売り出したグロリアシリーズに含まれている1枚です。ただ当時のグロリアシリーズ、内容はと言うと、それまで本棚レベルで1200円で出していたアルバムの焼き直しとカールベームと言う名前を引っ張り出してきて、古いモノラル録音をラインナップに加えていました。そんなことでちょっとがっかりしてあまり手を出していませんでした。それが30枚ほど発売された後、デザインも一新され、それまでのイラストによる安っぽいジャケットではなく、このアルバムのように写真を使ったアルバムが発売されました。しかもこのアルバム豪華ダブルジャケットと言う仕様で発売されたのです。多分廉価盤としてははじめての試みであったように記憶しています。
 
 このレコード、よほど売れたと見えて、この後このシリーズでは、同種の映画音楽をもとにした「アンコール」(FG-43)、「第3集」(FG-59)、「「永遠のクラシック・ラブ・テーマ」~映画の中の名曲」(FG-89)が続いて出ています。
 
 しかも、このレコード解説は、当時、オーディオ評論や映画解説者としても活躍していた荻昌弘氏が担当していて、エッセイ風な「映画で奏でられたクラシック」という文章を書いています。単に曲の解説をすると言う形式ではなかったんですね。
 
 ただ、このアルバム斬新な試みとは反して、解説以外の曲名の表記や演奏者の記載等は間違いだらけと言うものです。レコード表面のレーベルには正しい記載がなされているのですがこと、ジャケットの表記は誤記載だらけです。
 
 第6曲目のブラームス/交響曲第3番ハ長調はヘ長調、第9曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ短調はハ長調、第11曲目のブラームスの弦楽六重奏曲第1番変ロ短調は変ロ長調ですね。また、上の表記は正しく直してありますが、3曲目の「逢いびき」に関しては、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が使われているのですが、ピアニストの名前の記載がありません。本来は有利ブコフのピアノによる演奏で、バックはジャン
フルネとウィーン交響楽団が勤めています。ただジャケットにはカレル・アンチェル/ウィーン交響楽団と言う表示がなされていて、全くのデタラメです。まぁ言ってみれば間違い探しができるようなアルバムになっています。

 

 さて、1曲目のチャイコフスキーの「花のワルツ」は、フィストラーリ指揮ロンドン交響楽団によるとてもスケールの大きい演奏になっています。もともとフィストラーリはバレエ音楽が得意で、モノラル時代からバレー作品をたくさん録音しています。この演奏もバレリーナに寄り添うようなゆったりとしたテンポでワルツが演奏されています。

 


 2曲目のウェルナー・ハースのピアノによるショパンの革命ですは、今聞くとちょっと丸やかなショパンになっています。これは時代なんでしょうかね。

 

 

 5曲目のクルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテによるバッハのカンタータ「目をさませと呼ぶ声がする」はフィリップスに録音した名曲集からの選曲でしょう。 いつもどおりレーデルらしい心暖たまるような音楽が始まります。映画「緑の壁」は1970年に日本で初めて公開されたペルー映画でした。圧倒的な緑で覆われたジャングルに響くバッハ、死んでしまった琴背もに対するレクイエムのように響くその音楽は映画のシーンを思い出すと、聴き進んでいくうちに熱い感動が静かに押し寄せてきて、もうゾクゾクっとしてしまうほどです。いい演奏ですが、音源は見つかりませんでした。 


 レコードA面の最後はブラームスの交響曲第3番第3楽章です。フランスの作家フランソワーズ・サガンの小説「ブラームスはお好き」(Aimez-vous Brahms? )を映画化したものですが、映画のタイトルは「さよならをもう一度」です。このころはまだ、謹厳実直がトレードマークのサヴァリッシュの演奏は淡々とした演奏ですが滋味にあふれています。

 

 

 レコードではB面1曲目は「2001年宇宙の旅」より美しく青きドナウが収録されています。本来なら、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」なんでしょうけども宇宙ステーションがゆっくりと回転する様は映画のもう一つの見どころでした。ここではフォンタナレーベルではおなじみ ロベルト・ワーグナー指揮済んすブルック交響楽団の演奏は結構味のある演奏をしています。このフォンタナには子孫のエドゥアルト・シュトラウスやパウル・ワルターといったウィーン仕込みの録音もあるのですけど、ここでは本場ものよりもインターナショナルな雰囲気で纏めたかったのかもしれません。 

 


 「みじかくも美しく燃え」はモーツァルトの曲が使われていまでは定番曲になっています。映画の方はゲザ・アンダのピアノによる演奏が使われていましたが、モーツァルト弾きとして知られていたヘブラーの演奏も美しい響きがします。まあ、ヘブラーは今ではほぼ忘れ去られているようですけど、この時代はフィリップスマーの看板をしょっていました。

 

 そして全体を締めくくるのはブラームスの弦楽六重奏曲第1番です。実はこのレコードのこの演奏で渋いブラームスの弦楽六重奏曲というものを知りました。のちにはこの全曲が収録されたレコードも購入しています。そういえば、映画「ある愛の詩」の中で使われていたバッハのチェンバロ協奏曲も、そういう形で知ったものです。いゃあ、映画っていいですねぇ。

 

 

 ともかく、表記の間違いはあっても、音楽は満足感の高いアルバムです。

 

 

ブラス・エクスプレス・ナゴヤ

第33回定期演奏会

 

 

 

 吹奏楽というと一般にはウインド・オーケストラと訳されますが、この演奏会は英国式ブラスバンドといって金管楽器と打楽器類で構成されたバンドでのことです。まあ、金管だけの構成は珍しく名古屋でも数えるほどしかありません。このブログでは以前「めいおんブリティッシュ・ブラス」を取り上げています。ただ、この団体については今回チラシを入手して初めてその存在を知りました。

 

 その昔、「フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル」という団体がありました。これこそ英国式ブラスバンドの最たる団体でした。そして、対抗馬としてカナディアン・ブラスという団体もありました。こちらの方は今も活動しているようですが、「フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル」はフィリップ・ジョーンズが亡くなった1986年に解散してしまっています。

 

会場の様子

 

 珍しさもあり、このコンサートに出かけました。息はよかったのですが、帰りは雨に降られました。ただ、リード楽器はないので、湿度にはあまり左右されなかったのではないでしょうか。冒頭の吹奏楽会の大御所、ヤン・ヴァン・デル・ローストの「ハイパー・ニコン」から迫力のあるコンサートが繰り広げられました。聖書に記されているギリシャ語の「Hypernikon」に由来します。日本語では「圧倒的勝利者」という意味になります。ファンファーレに使えそうなかっこいい曲です。今回、この作品が演奏会の中では1番楽しめる作品でした。

 

 

 2曲目のクワイエットモーメントも、フィリップ・スパークの作曲ということで、メジャーな作曲家の作品です。2006年に亡くなったアメリカの指揮者、ジェームズ・フィリップ・クロフタの追悼として作曲された作品です。

 

 

 

 次の作品もフィリップ・スパークの作曲になるもので、2楽章で構成されています。第1楽章は「サタデー・セレナーデ」と題され、土曜日の夜のジャズバーの情景を描いています。なかなかにぎにぎしい学笑です。第二楽章は「サンディ・スケルツオ」と大されていて、セントラルパークでの早朝のジョギングの風景を描いています。トランペット奏者の追悼のために書かれた曲ということで、この演奏会でも、プリンシパルコルネット奏者の高橋開人氏が、ソロで卓越だテクニックを披露していました。

 

 

 前半の最後にバーンスタインのウエストサイドストーリーを持ってきたと言う事はこれが目玉だったのかもしれません。ただあまりにも有名な曲のため、編曲に失敗するとあまり聞けたものではありません。この日の演奏もちょっと期待はずれでした。何しろ演奏された曲目は、アイフィルプ、レディ、マリア、 Somethingカミング、トゥナイト、ワンハンドワンハート、クール、アメリカをメドレーで演奏したものですが、ただ曲の表面を擦っただけのような演奏で、これは編曲がまずいんでしょう。

 

 

 

 後半のプログラムも本格的な曲目で遊びがありません。「ヴァレイシア・ヴァリアンツ」は2019年に初演された作品で、映画音楽のようなメロディと躍動するリズムで構成された曲でコルネットねテナーホーン、ユーフォニアムのソロがフューチャーされています。

 

 

 後半2曲目の「ビショップズ・ブレイズ」は、あまりの演奏される機会がない曲なのでしょうかYouTubeにはアップされていませんでした。途中でコルネットソロが入るスピード感のある作品ですが、あまり記憶に残っていません。

 

 3曲目の愛する思いは「フィリップ・スーザ吹奏楽団」でトロンボーン奏者として活躍していたアーサー・プライヤーの作品です。この名前に聞き覚えがあるでしょうか。「口笛吹きと子犬」と言うタイトルの曲が彼の作品です。彼の楽団が演奏した録音が残っています。

 

 

 そして、こちらが「愛する想い」です。雰囲気的には似たものが感じられます。

 

 

 最後の曲は、イーストコーストの風景と言うナイジェルフェスの作品です。この作品は、作曲者がアメリカの東海岸を訪れた際の印象をもとに作曲した水奏薬局をブラス&用にアレンジした曲です。ニューヨークとその周辺の途中テーマにした3部構成の組曲になっています。その第1部「シェルター島」では、濃い深い霧と横殴りの雨に覆われる冬の風景と住む人の暖かさがきらめくメロディーで描かれています。

 

 

 第二楽章は、「キャッツスキル山地」では、雄大な自然の雫さと力強さが荘厳な響きで表現されています。

 

 

 第3楽章「ニューヨーク」では、ニューヨーク中心部のマンハッタンの華やかさが描写されています。この曲は単独でも演奏されるように、この作品の中では1番華やかな楽章になっています。

 

 

 

 

アンコール

 

 お決まりのようにアンコールが2曲演奏されました。全く説明がなかったので終演後確認すると張り出しの中で下記のような曲であったと知りました。全く初めて聞く曲でしたが、1曲目は結構楽しい曲2曲目はスローバラードでこれで終わりですよーと言うメッセージを込めたような曲でした。

 

 このラスエクスプレス、名古屋は次回は今年の秋10月18日に名古屋市港区の港文化小劇場で開催されます。なかなか活発に活動しているブラスバンドのようです。楽しみです。

 

 

グローフェ 「グランドキャニオン」自作自演

 

曲目/

グローフェ 「グランド・キャニオン」組曲 32:19

1.第1楽章「日の出」15:18

2.第2楽章「彩られた砂漠」5:01

3.第3楽章「山路にて」8:30

4.第4楽章「日没」4:54

5.第5楽章「豪雨」8:12
グローフェ「ピアノ協奏曲」ニ短調  15:07

 

ピアノ/ヘスス マリア・サンロマ
指揮者/ファーディ・グローフェ 

演奏/ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団

 

録音:1959/02 ロチェスター

 

日本コロムビア MS1036-EV(エヴェレスト原盤)

 

 

 ブームになった日本コロムビアの「ダイヤモンド1000シリーズ」に組み込まれた一枚です。6月に開催するレコードコンサートで自然の風景のジャケットということでこのレコードのジャケットの展示をするということで棚の中から引っ張り出してきまた。このLPレコードはエヴェレスト原盤の音源で、米エヴェレストの誇る35mm磁気フィルムを使って1959年録音されています。

 

 特徴としては作曲者のファーディ・グローフェ自身による自作自演の「グランド・キャニオン」ということと、カップリングの「ピアノ協奏曲ニ短調」もこの1959年に完成したばかりの最新の作品であったということです。ただ、このレコードが発売された時には、自作自演とはいえ、オーケストラが弱体とかで、評論家からはかなりの酷評だったと記憶しています。当時は小生の視聴環境もそんなに良くなかったので数回聞いただけで確かに音は良くないなぁ、なんて感想でずっとお蔵入りになっていたものです。

 

 その後オーマンディやらフィードラーの録音を購入して聞きましたがどれも結構いい音で録音されています。で、久しぶりにこのレコードを発掘し現在のシステムで聴くとなかなかの音がします。まず「日の出」が最高に素晴らしい演奏です。作曲者本人がこういう表現を求めていたのかという響きを感じることができます。ピッコロの響きも素朴で雰囲気を出しています。変に作り込んだ音になっていないのが幸いしています。音楽自体が日の出の陽光と一緒に輝きを高めていく時間の経過が手に取るように伝わってきます。

 

 今では「赤い砂漠」と表記される第2楽章もここでは「彩られた砂漠」となっていて時代を感じさせます。原題は「painted desart」です。グランド・キャニオンの南側に広がる赤い砂漠地帯を描写した曲で、刻々と変化する砂漠の様子が、色彩的なオーケストレーションによってパノラマのように浮き彫りにされていきます。

 

 一番有名な「山道を行く」は他の演奏に比べて非常にテンポが遅いのが自作自演の特徴です。バーンスタインなんか7分半弱で駆け抜けていますが、グローフェは冒頭のヴァイオリンソロからゆっくり演奏させています。この渓谷の厳しさをきっちり表現していると言っていいでしょう。コンマスのヴァイオリンソロも聴きものです。そして終わりの部分では今度はチェレスタのソロが流れてきて時間の経過をうまく描き分けています。

 

 第4楽章はアルプスホルンのような響きでこの渓谷の雄大さを表しているのでしょう。その響きがこだまする様子がなんともいえません。テンポはモデラート-アダージョで暮れゆく夕景と自然の雄大さを雄大に描いています。

 

  終曲の「豪雨」ではかなりの種類の打楽器が使われ、ウィンドマシンも登場してダイナミックでゴージャスな音を聴かせてくれます。自演のいいところはこういう打楽器の響かせ方が手に取るようにわかることです。

 

 

 

 カップリングの「ピアノ協奏曲ニ短調」も指揮はグローフェ自身、ピアノは、この曲を捧げ、初演したヘスス・マリア・サンロマという実はとんでもない音源なのです。全体で15分という短めな曲で、小生なんか最初に聴いた時はアディンセルの「ワルソー・コンチェルト」に近しいものを感じました。

 

 

 ところでこのロチェスターフィル、当時の常任指揮者はセオドア・ブルームフィールドでした。どちらかというとオペラ端の指揮者でしたが、この前任がオーケストラ・トレーナーとして名をはせたエーリッヒ・ラインスドルフという事でかなり鍛えられたように思います。ニューヨーク州(といっても北東のオンタリ湖のほとり)にあるオーケストラでイーストマン音楽学校のある土地柄です。

 

 

 

傑作!名手達が描いた小説

「蔦屋重三郎と仲間たち」

著者:井上ひさし
   風野 真知雄
   国枝 史郎
   今 東光
   笹沢 左保
 
 
 
 NHK大河ドラマ「べらぼう」の主人公・蔦屋重三郎と、彼と共に江戸の町人文化を花咲かせた相棒たちが躍動する! 歴史時代小説書評サイトNo.1の「時代小説SHOW」管理人&日本歴史時代作家協会賞選考委員理流さん推薦! 「蔦重と戯作者、絵師たちの栄華と没落を描いた短編集だ」---データベース---

 今年のNHK大河ドラマ「べらぼう」の主人公で「江戸のメディア王・蔦重」こと蔦屋重三郎と、彼と共に江戸の町人文化を熟成させた戯作者・絵師たちたが登場するアンソロジー小説集です。現代の人気作家・風野真知雄氏をはじめ、井上ひさし、国枝史郎、今東光、笹沢左保、久生十蘭といった名手たちが紡いだ物語です。大河ドラマをより楽しむための副読本にもなる珠玉の一冊と言えるでしょう。言ってみれば、ドラマのスピンアウト作品とも言えます。テレビで描かれるこれらの人々は多分に脚色されていて作家の森下佳子さんの物語でもあるわけですが、ここでは同時代の風野しを除いて過去の作家たちの描いた蔦重の周辺人物たちの物語が綴られています。章立ては以下のようになっています。

【収録作品と登場する蔦屋重三郎と仲間たち】
 

1.恋の川、春の町 うなぎ屋のおつら〈恋川春町〉 風野真知雄

2.京伝店の烟草入れ〈山東京伝〉 井上ひさし

3.玄白歌麿捕物帳 酔った養女〈杉田玄白・喜多川歌麿〉 笹沢左保

4.戯作者〈曲亭馬琴〉 国枝史郎

5.北斎秘画〈葛飾北斎〉 今東光

6.平賀源内捕物帳 萩寺の女〈平賀源内〉 久生十蘭

 

 裏表紙の紹介にも「べらぼう」について書かれている通り、2025年大河ドラマに連動したアンソロジーですが、風野真知雄氏の作品以外は昭和に発表されたものばかりです。今の時代、戦前戦後の昭和の時代小説の短編なんてそうそう読む機会もないので、これはこれで趣があって面白く読むことができます。多分単独では復活されることはないでしょうが、こういう切り口のアンソロジーということで再び日の目を見たと言っても過言ではないでしょう。これがまたいい味を出しています。タイトル「蔦屋重三郎と『仲間たち』」とある通り蔦重はちょっと顔を出す程度で、あとは文化文政時代の担い手たちの華やかな顔ぶれがそれぞれ主人公を飾っています。人情ものあり、捕物帳ありと、多彩な時代小説を堪能することができます。少なくとも、同じ周辺を描いていながら、以前取り上げた「蔦屋重三郎事件帖」よりははるかに面白い作品になっています。
 
 特に面白かったのは花火職人の若さと才能の瑞々しさに過去の自分と蔦重を思う井上ひさしの「京伝店の烟草入れ」。音など見えないものの描写と心理描写が引き合い物語る上手さがひかります。蔦重と共に罰を受けて数年後、山東京伝が見込んだ花火職人を襲う悲劇は松平定信の時代ならではの非合理な状況がみてとれます。そして元々は武士で、実直な馬琴が山東京伝の元を訪れ、戯作者としての道を問うのですが、同時代の者たちと違う自分の個性を見つめた馬琴が素敵に映った国枝史郎の「戯作者」が良いですねぇ。
 
 今東光氏といえば現役時代はお色気作家として名を馳せた人物で、ここでもそっち系の話題を使って若き春朗から葛飾北斎として頭角を表してきた時代の娘のお栄とともに春画にも手を抜かず名作を生み出していくいきざまがえがかれていきます。 そして、「木枯し紋次郎」で売り出した笹沢佐保は杉田玄白と喜多川歌麿を登場させての米問屋を襲った押し込み強盗の謎に玄白と歌麿が挑む捕物譚になっています。
 
 また、最後の久生十蘭の作品には若き女性ばかりが狙われる連続殺人に、希代の変人天才・源内先生の推理が冴えわたります。このバラエティさはアンソロジーならではの楽しみでもあります。こういう形での文化文政期の人物の登場のさせ方は面白いですねぇ。戦後の作家たちのこういう短編を発掘するという手法はアリだと思います。それこそ、出版社には有名無名の作家たちのこの手の作品はごろごろしているはずですから、使い捨てではなくこういう切り口で発掘して欲しいものです。
 

取りこぼしの展覧会3

 

第66回中部行動展

 

 この展覧会もすでに終了してしまいましたが、過去に何度も鑑賞しています。ただ、昨年は仕事のつこせ腕顔を出すことができませんでした。

 

 

 

 

時空を遊ぶ2024   寄川桂

 

時空を遊ぶ2025   寄川桂

 

奏でるI  鈴木孝治

 

奏でるII 鈴木孝治

二重奏と三重奏の違いということでしょうか?

 

specimen 高木圭司

 

また会えたね 澤田昌子

 

Over+2025帰還 澤田昌子

 

風のかたち 柳原雅

 

田園 1、2   坂巻登水

 

 抽象画の作品は同じタイトルで1,2とかA、Bという表記で掲出しているものが多いのですが、作者も戸惑うような作品は小生の視点でこちらの方がいいという作品のみ掲載しています。もう少し主体的に作品を制作してほしいものです。

 

すすむ 降旗芳美

 

欠片シリーズB   中田純子

 

私とわたし'25   辻和子

 

爆風漂流記2021   長縄等士

 

爆風漂流記20214  長縄等士

 

 同じテーマでも時を隔てて製作しているものは取り上げています。作者の成長の跡を追うことができます。

 

hito-II 後藤直枝

 

Far Away 1 小森町子

 

小品群 3人の作家の作品

 

時を歩く 小島きみ子

 

生はいとしき蜃気楼 坂巻登水

 

希望 田中敏子

 

晩秋 茂手木登子

 

 この作品はコラージュしていますが、季節の移ろいを感じ取ることができます。

 

承と形2   鎌野保子

 

空へ A   肥田敬子

 

刻の形 牛越諒

 

renovation X 勝嵜保徳

 

水の記憶 松田圭伊子

 

記憶の形A   可知則雄

 

再生 村上健

 

時を歩く I    小島きみ子    

 

生きる生きる 渡辺雅子