グローフェ 「グランドキャニオン」自作自演 | geezenstacの森

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グローフェ 「グランドキャニオン」自作自演

 

曲目/

グローフェ 「グランド・キャニオン」組曲 32:19

1.第1楽章「日の出」15:18

2.第2楽章「彩られた砂漠」5:01

3.第3楽章「山路にて」8:30

4.第4楽章「日没」4:54

5.第5楽章「豪雨」8:12
グローフェ「ピアノ協奏曲」ニ短調  15:07

 

ピアノ/ヘスス マリア・サンロマ
指揮者/ファーディ・グローフェ 

演奏/ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団

 

録音:1959/02 ロチェスター

 

日本コロムビア MS1036-EV(エヴェレスト原盤)

 

 

 ブームになった日本コロムビアの「ダイヤモンド1000シリーズ」に組み込まれた一枚です。6月に開催するレコードコンサートで自然の風景のジャケットということでこのレコードのジャケットの展示をするということで棚の中から引っ張り出してきまた。このLPレコードはエヴェレスト原盤の音源で、米エヴェレストの誇る35mm磁気フィルムを使って1959年録音されています。

 

 特徴としては作曲者のファーディ・グローフェ自身による自作自演の「グランド・キャニオン」ということと、カップリングの「ピアノ協奏曲ニ短調」もこの1959年に完成したばかりの最新の作品であったということです。ただ、このレコードが発売された時には、自作自演とはいえ、オーケストラが弱体とかで、評論家からはかなりの酷評だったと記憶しています。当時は小生の視聴環境もそんなに良くなかったので数回聞いただけで確かに音は良くないなぁ、なんて感想でずっとお蔵入りになっていたものです。

 

 その後オーマンディやらフィードラーの録音を購入して聞きましたがどれも結構いい音で録音されています。で、久しぶりにこのレコードを発掘し現在のシステムで聴くとなかなかの音がします。まず「日の出」が最高に素晴らしい演奏です。作曲者本人がこういう表現を求めていたのかという響きを感じることができます。ピッコロの響きも素朴で雰囲気を出しています。変に作り込んだ音になっていないのが幸いしています。音楽自体が日の出の陽光と一緒に輝きを高めていく時間の経過が手に取るように伝わってきます。

 

 今では「赤い砂漠」と表記される第2楽章もここでは「彩られた砂漠」となっていて時代を感じさせます。原題は「painted desart」です。グランド・キャニオンの南側に広がる赤い砂漠地帯を描写した曲で、刻々と変化する砂漠の様子が、色彩的なオーケストレーションによってパノラマのように浮き彫りにされていきます。

 

 一番有名な「山道を行く」は他の演奏に比べて非常にテンポが遅いのが自作自演の特徴です。バーンスタインなんか7分半弱で駆け抜けていますが、グローフェは冒頭のヴァイオリンソロからゆっくり演奏させています。この渓谷の厳しさをきっちり表現していると言っていいでしょう。コンマスのヴァイオリンソロも聴きものです。そして終わりの部分では今度はチェレスタのソロが流れてきて時間の経過をうまく描き分けています。

 

 第4楽章はアルプスホルンのような響きでこの渓谷の雄大さを表しているのでしょう。その響きがこだまする様子がなんともいえません。テンポはモデラート-アダージョで暮れゆく夕景と自然の雄大さを雄大に描いています。

 

  終曲の「豪雨」ではかなりの種類の打楽器が使われ、ウィンドマシンも登場してダイナミックでゴージャスな音を聴かせてくれます。自演のいいところはこういう打楽器の響かせ方が手に取るようにわかることです。

 

 

 

 カップリングの「ピアノ協奏曲ニ短調」も指揮はグローフェ自身、ピアノは、この曲を捧げ、初演したヘスス・マリア・サンロマという実はとんでもない音源なのです。全体で15分という短めな曲で、小生なんか最初に聴いた時はアディンセルの「ワルソー・コンチェルト」に近しいものを感じました。

 

 

 ところでこのロチェスターフィル、当時の常任指揮者はセオドア・ブルームフィールドでした。どちらかというとオペラ端の指揮者でしたが、この前任がオーケストラ・トレーナーとして名をはせたエーリッヒ・ラインスドルフという事でかなり鍛えられたように思います。ニューヨーク州(といっても北東のオンタリ湖のほとり)にあるオーケストラでイーストマン音楽学校のある土地柄です。