第43回シンフォニックウィンズ定期演奏会

曲目/

今回の編成です。左にピアノと電子オルガン、右のコントラバスの横にはボイスシンセサイザーが配置されています。
今回は指揮者としては四人登場していました。最初は山口尚人氏の指揮でお馴染みのジョン・ウィリアムズのロスアンジェルスオリンピックのために書かれた「オリンピックファンファーレとテーマ」でした。今でもよく覚えていますが、ジョン・ウィリアムズが入場行進の間中エンドレスで指揮していたのが印象的でいやが上でもこのメロディが頭にこびりついてしまいました。1984年のこのオリンピックはコマーシャルベースで運営されていて、その後のオリンピックを大きく変えた大会でした。オリンピックの競技のテーマ曲を集めたCDが製作され爆発的に売れたのを覚えています。
2曲目も最近よく耳にするマルコム・アーノルドの「第六の幸福をもたらす宿」でした。この曲はもともと映画音楽なのですが、アーノルドの弟子のクリストファー・パルマーがオーケストラ用の管弦楽曲として作品化しています。それを瀬尾宗利が編曲したのが吹奏楽版で、ここで演奏されました。曲は3曲の組曲になっています。
第1楽章 ロンドン・プレリュード
第2楽章 ロマンティックな間奏曲
第3楽章 ハッピー・エンディング
マルコム・アーノルドは一般には映画音楽の作曲家としての方が知られているのではないでしょうか。最も有名な作品は「戦場に掛ける橋」でしょう。この曲も管弦楽組曲が存在しますが、この「第六の幸福をもたらす宿」も非常にわかりやすい作品です。
1930年代に中国と中国人を心から愛して自らの人生を捧げて、100人の中国人孤児達を日本軍の攻撃から懸命に守り抜いたイギリス人女性宣教師グラディス・エイルウォード(1902年 - 1970年)の半生を描いたアラン・バージェスの小説を基にした映画化作品であり、マーク・ロブソンが監督、イングリッド・バーグマンとクルト・ユルゲンス、ロバート・ドーナットが主演して、シネマスコープを用いて撮影された。映画の題名となっている「六番目の幸福」(The Sixth Happiness)とは、中国では人の幸福には「長寿、富貴、健康、道徳、天寿」の5つがあると伝えられていて、最後にもう1つ、各自その人だけが持つことが出来る唯一の幸福が存在しており、自分自身で見つける自分だけの幸福をこの6番目の幸福というわけです。で、グラディス・エイルウォードは中国の奥地ワンチェンという村で宿を開いて布教に努めるというわけで曲のタイトルに宿がついています。
第一楽章のように高らかにテーマが響くのですが、後ろから山越えの厳しさを表すように、伴奏が迫ってきます。不安や焦燥感を掻き立てまくった後、主題が鳴り響き曲は一転、軽やかにドラムマーチが始まります。ピッコロが歌い出すのは先程登場した童謡のメロディ。最初は遠くから聞こえて来るように軽やかに、そして楽器を変えながら何度も繰り返し続け、徐々に盛大になっていきます。転調してクライマックスを迎えると、木管達による温かな愛のテーマが流れます。最後は決意のテーマの断片と、盛大なハーモニーで終幕です。曲全体を通して登場する二つのテーマ、そしてマザーグースのメロディーなど、親しみやすい旋律が多く使われています。なかなか楽しめる演奏でした。
プログラムにはただ曲名だけが描かれているという非常に不親切なものです。3曲目のネリベルの「二つの交響的断章」は1969年の作曲になる作品で、その名の通り対照を成す2つの楽章で構成されています。曲は
第1楽章 マルカート
第2楽章 アレグロ・インペトゥオーソ
という構成で、静と動の構成で書かれています。D-A-F-B♭を動機とした曲調は黒々としたイメージ。しかしながら生命力がたゆみなく感じられ、バッキングのリズムや和音の斬新さ、音色の多様さも示すなど、非常に多くの表情を持つ作品です。また打楽器群が大活躍するのですが、本曲中では打楽器の撥につき"very soft"から"very hard"の5段階で細かく指定されており、ネリベルの強いこだわりが感じられる作品になっています。
前半最後はガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」が演奏されましたが、出だしこそ通常のクラリネットのジャジーナソロで始まりますが、あとは全くポップス調に変わりちょいと付いていくのが大変でした。ちょっと場違いの編曲バージョンのような気がしましたがどうなんでしょう。下の演奏で確認してみてくださいな。
後半のプログラムは今年から講師陣に加わった東大路憲太氏の作品の吹奏楽バージョンでアニメ「ウマ娘」の「ユメヲカケル」が演奏されました。一応世界初演ですぞ!!原曲は下です。
なを、今年の12月17日の「シンフォニーコンサート」ではこの東大路憲太氏の委嘱作品が演奏されるそうです。これも世界初演ですから楽しみです。
最後はいわゆる「ロード・オブ・ザ・リング」ですな。しかし、こちらは純粋な吹奏楽作品で、ヨハン・デ・メイがさっきょくしたものです。イギリスの作家ジョン・R・R・トールキンのファンタジー小説『指輪物語』を題材に、1984年3月から1987年12月にかけて作曲された、デ・メイの最初の本格的な作曲作品であす。5楽章からなる演奏時間約42分の吹奏楽のための交響曲として書かれた。今回はその第1楽章が演奏されました。

プログラム終了時は四人の指揮者が登場しました
そして、今回の演奏会最後に動画撮影O.Kで、これも新作の山口尚人氏が作曲した「シンフォのアンコール(仮)」が演奏されました。総勢138人のメンバーによる演奏は大音響で聞き応えがありました。
全員勢揃いのアンコール