名古屋の祭り 2025
その3
アートサイト名古屋城
2023年より開催し、今年で3回目を迎える史跡が舞台のアートプロジェクト「アートサイト名古屋城」。今秋は、名古屋城の美的技巧や建築構造(テクトニクス1)に注目し、フレスコ画2の技法を軸に古典から現代まで様々な描画技法を探求してきたアーティスト・川田知志を迎えました。川田氏は、本丸御殿の美しい建築構成と障壁画3をリサーチし、大型絵画を交えた屋外インスタレーションを構想。日本建築が移築されることや襖絵も切り取られて移動されることを踏まえ、フレスコ画を引き剥がすストラッポの技法を用い、独自の解釈のもと本丸御殿を写しとzていました。大規模な屋外作品を、名古屋城の自然と歴史が息づく名古屋城北西にある御深井広場で展開されていました。この催しは10月11日から19日の日程で開催されていました。
1) テクトニクス:一般的には「構築術」を意味する建築用語。素材や構造、技術をふまえた意匠の美しさを読み取る視点を指す。本テーマの「結構のテクトニクス」では、家屋の構造物に由来する「結構」(善美を尽くして物を作る意)を重ねることで、名古屋城が培ってきた技術と美意識に焦点を当てている。
2) フレスコ画:漆喰を塗った壁が乾かないうちに、水で溶いた顔料で絵を描く、西洋絵画の古典的な壁画技法のひとつ。フレスコ画を移動させる際には、描画層のみを剥ぎ取る「ストラッポ」という技法を使う。
3) 障壁画:襖や壁面に描かれ、空間を彩る日本建築の装飾絵画。
ということで御深井丸広場を本丸御殿に見立てて下記のような作品が展開されていました。
漆喰がベースに塗ってありますから布の裏側は左のように真っ白になります。
布ですから助けて奥の景色も一体となっています。バックは北西隅櫓です。
明治時代に作られた乃木倉庫、重要文化財はこういう倉庫で保管され戦果を免れました。
その倉庫を取り囲むように作品が展示されていました。
作品のコンセプトを本人が語るビデオも流されていました。
「アートサイト名古屋城」では、名古屋城が取り組んでいる「保存・活用」に着目し企画を進めてきました。2023年には「保存」活動に着目し「想像の復元」というテーマのもと、名古屋城の復元作業に着想を得た作品群を展開し、2024年には「活用」に力点を置き旅の達人・宮本常一の「あるくみるきく」を出発点として、江戸時代から現代まで多彩なアーティストによる旅の表現を紹介し、名古屋城ならではの現代アート展を実施してきました。
3年目となる2025年は再び「保存」に注目し、400年続く名古屋城を形成する素材、築城の技術、そして長年の継承から学ぶことで、新たな創造を導くことを提案しています。素材・構造・技術の関係性を、美学・文化的側面から捉える構造の表現をテクトニクスといい、積み上げた礎石の上に木造建築物がのる日本の城郭はまさに独自のテクトニクスの賜物と言えるでしょう。また、善美を尽くして物を作ることを「結構」といい、アーティストの創作活動はまさに結構なのです。
絵画や彫刻という形式にとどまらない現代アートの作品には、多種多様な素材が用いられています。いわゆる美術とは縁がなさそうな、さまざまな技術が投入され、アーティストたちは歴史化された過去の表現を継承することで新たな作品を生み出してきました。
このビデオの中で作者が語っていたことは以下のような内容です。
広がりによせて
壁画を“ 移す”という行為から学ぶことは、意外と多いものです。
ただ眺めているだけではわからないことも、実際に触れてみてはじめて、ものの硬さや重さ、大きさ、そして扱いづらさに気づくことがあります。
そして、移すその瞬間、ふと何かのリミッターが外れるような感覚もあります。
曖昧ながら、空間から解き放たれるその一瞬が、何を必要としていて、何を手放すべきかを教えてくれるような気がするのです。
もちろん、それは一瞬の幻だという自覚もあります。
昔の人は、町をまるごと移したこともあるそうです。
今となっては想像もつかないような、とてつもないスケールの移動。
そこにどんな力が働いていたのか、場と人との深い結びつきがあったのか、思いを巡らせてしまいます。
さて、今回は本丸御殿を広がりに移します。
たとえ、移された空間が元の意味や空気感を失っていたとしても、それはそれで構わないのではないかと思っています。
社会の息苦しさから逃げ出すように、まったく別の場所で、身を軽くし、新たな装いで始めてみるのも悪くはありません。
「移す」という行為そのものに、私たちの日常の中に潜む、切実な何かが込められているのではないでしょうか。
9日後、そこには幻に触れた感覚だけが、轍のように静かに残っているのかもしれません。
川田知志
米蔵として使われていた6番御蔵
全国の武将隊の元祖、「おもてなし武将隊」加藤清正、前田慶次、前田利家
この後、写真撮影に出陣です
周りには忍者も潜んでいます。
























































































