「なんで運動会を延期したんだ!」「なんで雨なのに体育祭をやったんだ!」どっちの苦情を受け入れる? | 元中学校教師が教える学校のウラ話

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公立の中学校で25年間、勤務していた私が「クラス替えの仕方」「修学旅行」「部活」「未納」「モンスターペアレント」「学級崩壊」「いじめ」「不登校」「人事異動」など、今まで話すことができなかった、学校のウラ話をお伝えしていきます。

 

  運動会は雨天決行?それとも延期?




1.運動会(体育祭)の日が雨予報
2.前日に決行or延期を決めたいな
3.子どものためには?決行?延期?
4.やろうと思えば出来るけど・・・
5.運動会は延期!晴れた日に全力でやらせてあげたい!
6.延期決定後、天気が回復!ピーカンに!
7.運動会終了後に校長室で・・・
8.何で延期にしたんだ!お弁当を2回つくった!
9.延期理由を伝えても・・・
10.保護者ファーストになった校長
11.運動会を決行するも雨が強くなり・・・
12.何で運動会を決行したんだ!

 

 

  1.運動会(体育祭)の日が雨予報

 

ある学校で特別活動指導部長(特活部長)をしていたときの話です。

特別活動指導部とは、学校の行事や生徒会担当の校務分掌です。

生徒会や委員会、学級委員、生徒会選挙などの担当部署になります。

当然ですが、運動会(体育祭)や合唱コンクールなどの行事の担当でもあります。

その年の運動会(体育祭)も例年と同様に担当教員と担当生徒が主になり、全校で準備をしました。

様々な準備や練習を行った生徒会やカラーリーダーの子ども達は、運動会(体育祭)をとても楽しみにしています。

しかし、運動会(体育祭)当日の天気は「雨のち曇り」の予報です。

前日から雨が降って運動会(体育祭)当日の朝まで雨のようです。

この様子では、運動会(体育祭)は延期になる可能性が高いでしょう。

 

 

  2.前日に決行or延期を決めたいな

 

運動会(体育祭)前日の放課後。

校長、教頭、主幹、特活部長の私で、運動会(体育祭)の決行or延期の話し合いがもたれます。

個人的には、事前の予定どおり小雨では、運動会(体育祭)を決行したいと思っていました。

ただ、この考えに深い意味はありません。

運動会(体育祭)のプログラムに「小雨決行」と書かれていたからです。

また、延期をするのであれば、前日に延期を決めたいとも思っていました。

この考えにも深い意味は全くありません。

単純に、翌朝の6時に学校に来てグランドを確認したり、延期の連絡メールを出すのが面倒だったからです。

朝早く起きて学校にくるための交通費も出ませんし報酬もないですからね。

 

 

  3.子どものためには?決行?延期?

 

当時の校長は、生徒の事を第1に考える、子どもファーストの校長でした。

「決定は明日の朝にしましょう!」
「子ども達の気持ちも盛り上がっています!」
「可能であるなら予定どおりに運動会を行いましょう。」
「明日の朝6時に集合してください。」
「そこで、決行or延期を決めます。」

生徒会やカラーリーダーのガンバリを見ていた校長は、予定どおりに運動会(体育祭)を行いたかったようです。

事務的に決行or延期を考えていた自分とは違い、子どもファーストの考えを持っていた校長には頭が下がります。

しかし、この後、校長の子どもファーストによって保護者からの苦情が来るとは、この時は全く想像していませんでした。

 

 

  4.やろうと思えば出来るけど・・・


翌日の朝6時。

校長、教頭、主幹、特別部長の私は学校に集合します。

「やろうと思えば出来なくもないですね!」
「ただ、この後も雨は降ったりやんだりの予報です。」
「午後からは晴れる予報になっていますが・・・。」

グランドの状態についても確認しました。

ぐちゃぐちゃではありませんが、雨を含んでいて気持ち緩い感じはします。

「やろうと思えば出来なくはないですね!」
「これで転んでしまう生徒がいるかもしれません。」
「午後から晴れれば問題ないように思いますが・・・。」

 

 

  5.運動会は延期!晴れた日に全力でやらせてあげたい!

 

そこまで黙っていた校長が口を開きます。

「雨の中でやるのはやめよう!」
「万が一にも子ども達が風邪をひくのはよくない!」
「グランドも少し緩い感じがある。」
「これに関しても、子どもが足をすべらせてケガをしてしまったら大変だ!」
「子ども達が悔いなく、思いっきり運動会に臨めるようにしてあげよう!」

そして、最終決定を口にします。

「運動会は延期とします!」
「明日、良い天気の下、全力で運動会を行いましょう!」

校長は子ども達が、のびのびと運動会(体育祭)を楽しむことができるように延期を決断したのです。

 

 

  6.延期決定後、天気回復!ピーカンに!


延期が決定してスグに全校生徒に延期メールを送信しました。

これで、今日の仕事(ボランティア)はおしまいです。

私は家に帰り、子どもと買い物に行くことにしました。

買い物に出かけようと9時に外に出ると、外はピーカンの天気です。

(暑いくらいの快晴という意味です。)

「天気予報が外れたんだ~。」
「これなら、運動会を延期しなくても良かったな~。」

このように考えながら買い物に行くと、お店の近くの学校から「天国と地獄」が聞こえてきます。

どうやら、その学校では運動会(体育祭)を決行したようです。

 

 

  7.運動会終了後に校長室で・・・

 

翌日、運動会(体育祭)が行われます。

校長の望み通り、晴れたグランドで子ども達は運動会(体育祭)を楽しみました。

しかし、運動会(体育祭)終了後、私と主幹は教頭に呼ばれます。

「スグに校長室に来て下さい!」
「とにかく申し訳なさそうな顔をして黙っていてください。」
「校長が頭を下げたら一緒に頭を下げてください!」
「分かりましたね!」

校長室に行くと3組の保護者が大きな声で何かを話しています。

 

 

  8.何で延期にしたんだ!お弁当を2回つくった!


「昨日はなぜ運動会を延期にしたんだ!?」
「あんなに晴れていたじゃないか!」
「隣の学校はやっていたぞ!」
「何で延期にしたんだ!」
「日曜日にやるのが面倒だったのか?」

別の保護者も話し始めます。

「今日、私は会社に休みをもらいました。」
「子どもの運動会を見るためです!」
「昨日、延期にしなければ休みをもらわなくてすんだのに!」
「どうして、あんなに良い天気だったのに延期をしたんですか!」
「何か理由があるんじゃないですか!」

誰かのお母さんも話を始めます。

「運動会のお弁当をつくるのは大変なんですよ!」
「朝の5時に起きて作ってるんですよ!」
「昨日は小雨だったので時間をかけて作ったんですよ!」
「それなのに延期なんて・・・。」
「同じおかずだと子どもが嫌がるので、わざわざ違うおかずにしたんですよ!」
「先生達には、母親の苦労が分からないんですかね~?」

 

 

  9.延期理由を伝えても・・・


さらにまずいことに、保護者達はプログラムに書かれている文言を盾に話しています。

「プログラムに小雨決行って書いてありますよね!」
「朝の時点で小雨でしたよね!」
「昨日は予報も小雨でしたよ!」
「それなのに、何で延期にしたんですか?」
「おかしいですよね?」
「何か言えない理由があったんじゃないですか?」
「結局、小雨ではなく晴れましたけど!」

校長は延期にした理由を伝えます。

「良い天気の下、全力で運動会をさせてあげたかったんです。」
「悔いなく、思いっきり運動会に臨めるようにしたかったんです。」
「子どもが風邪をひかないように、ケガをしないようにと考えたのです。」
「公にできない理由などありません。」
「プログラムに反して延期してしまい申し訳ありませんでした。」
「本当に子ども達のことを思って延期したんです。」

校長が説明をしても保護者は納得しません。

最終的には校長室で1時間ほど不満を言い、何とか帰っていただきました。

 

 

  10.保護者ファーストになった校長


翌年。

校長が雨男なのか、運動会(体育祭)前日にまたまた小雨が降っています。

昨年同様に決行or延期で悩む天気です。

ただ、今年は「昨年のプログラム」にあった「小雨決行」の文言は消しておきました。

この文言があったことで、昨年はトラブルが起きてしまったからです。

しかし、昨年のトラブルがトラウマになってしまったのか、校長は保護者の話ばかりをします。

「お弁当の事を考えたら前日の決定がいいよね。」
「雨が強くなければ強行したほうがいいよね。」
「延期になって来られない保護者がいるとまずいよね。」など

 

 

  11.運動会を決行するも雨が強くなり・


運動会(体育祭)当日の朝。

昨年と同じくらいの小雨が降っています。

しかし、校長は迷いませんでした。

「小雨なので運動会を決行します!」
「すぐに保護者に運動会決行のメールをして下さい。」

昨年の反省?を活かした校長は小雨の中の運動会(体育祭)決行を選択します。

しかし、昨年とは逆に小雨はなかなかやみません。

それどころか、どんどん強くなっていきました。

最終的にプログラムを前倒しして、13時には予定種目を全て終わらせることになったのです。

 

 

  12.何で運動会を決行したんだ!


運動会(体育祭)終了後、私と主幹は教頭に呼ばれます。

校長室に行くと2組の保護者が大きな声で何かを話しています。

昨年、苦情を言ってきた保護者とは別のグループの保護者です。

「なぜ、運動会を延期にしなかったんだ!」
「あんな、雨の中で運動会をやるなんて!」
「子どもが風邪をひいたり、ケガをしたらどうするんですか?」

さらには、種目についての苦情も言ってきます。

「雨のせいで、いろいろな種目が中途半端になったじゃないか!」
「あれでは子どもがかわいそうです!」
「どうして延期をしなかったんですか?」
「学校の都合で子ども達にムリをさせるんですか?」
「運動会の主役は子ども達なんですよ!」
「子ども達のことを優先して下さい!」

校長と教頭、主幹と私はひたすら頭を下げ謝罪をしました。

この保護者達も、1時間ほど学校への不満を言い続けて帰っていきました。

翌年、校長は他の学校へ転勤になります。

その後、運動会(体育祭)の当日は常にピーカンの天気で決行or延期で悩むことはありませんでした。

 

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