仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

ピアノ調律師をしています。何気ない日常の中に密かに隠れている輝きを見つけたい、そんなことを考えながらつらつらと書いています。

ピアノの調律で出会ったピアノ、持ち主様とのなんとも深いストーリーを書いていきます。また古いものが大好き。特にイギリスのアンティークなんて良いですね❗手巻きの時計とか万年筆とか古い椅子とか、思い入れのあるものについても綴っています。

「に・じ・い・ろ…」


車のプレートのナンバーで精算するコインパーキングのタッチ画面を操作しながら、僕はひとりごちた。


僕の古いマリンブルーのスバルのナンバーは2416…「虹色」なのだ。


突然のゲリラ雷雨のあと、建物のあいだに窮屈そうに現れた輪郭のはっきりした虹の断片は、


僕が、普段口にしているその独り言の口角を、微妙にあげてくれた。



「グランドピアノ2台置いて、他の珍しい楽器とか…そうそう、ドイツ語まで教えられるような、そんな教室を作りたいんです。」


1年前、そう言って目を輝かせながら、僕の小さな工房から古いヤマハのグランドピアノを彼女は迎え入れた。


教室の物件はまだなかった。


それでも、行動に移した彼女は、この夏に防音室を完備した小さな音楽教室を友だちと開いた。(さすがにグランドピアノは一台しか置けなかったようだが。)


開校のお祝いに小さな花束を作ってもらいながら、僕は、彼女の名前が花の名前であることに気がついた。


その花の名前が「仰(あおぐ)日(ひ)」の意味で、向日性があることを知ったのは、その後のことだ。


「ドイツの本物の音楽や芸術を感じてほしいんです。」


そう言いながらペットボトルのお茶を運送屋さんと僕に手渡してくれた。


僕はそのお茶をゴクゴクと飲みながら、このピアノ教室の発展の祈りを、水滴にくっついてきたそのお茶のレシートと一緒に、


そっと胸のポケットにしまった。














「りっぱなひとになってください。」


実家の片付けから出てきた幼稚園の卒園証書。


今も卒園証書にはこういう文言が書かれているのだろうか?


たった一年しか通わなかった幼稚園の頃の記憶の断片を懐かしく思い出しながら、


なにか、心に引っかかるもどかしさを感じていた。


りっぱなひと?


りっぱって何?


もし、僕が園長先生で、卒園する子どもたちに卒園証書を渡すなら、


「がっこうへいって、りっぱなひとになってください」の代わりに、


次のように書き贈りたい。



「がっこうへいって、やさしいひとになってください」