〜The Milk of Human Kindness〜
人の優しさのミルク
以前、マクベスの戯曲の一節を、名詞の裏に印刷していた。
仕事を通して、そんな温かさを提供したかったからだ。
やがて名刺には、新しい工房や、専属のホールの情報が書き込まれ、その一節は消えていった。
仕事は忙しくなり、同時に下を向いて歩くことが増えた。
「チャイ飲めますか?」
インド好きのお客様が、シナモンやカーダモンを使って、本格的なチャイを淹れてくれた。
ゲームに夢中の男の子と、疲れて床で倒れ込んで寝てるお姉ちゃんの傍で、
ミルクで煮出した茶葉の芳醇で優しい味の熱いチャイを啜りながら、
鼻の奥がツンとしたのは、効いてるスパイスのせいだけじゃないことを、
僕は感じていた。



