数年前までは、団地の一角を僕から手を引かれて歩いていた母は、やがて、一つの棟も歩けなくなり、最後は一階からの階段を数段降りるだけの状態になった。
それでも、狭い芝生に咲く花を見て、四季の移り変わりを感じていた。
「これ、なんの花だっけ?スズランじゃないし。」
一年ぶりに緊急入院した母に、かつての住まいの階段の脇に咲いていた花の写真を見せた。
「ホタルブクロじゃない?」
そうだった。85歳の母からまだまだ教わることは沢山ある。
僕は、そう思いながらコンクリートの隙間に咲いているドクダミの花が一番好きだったことを思い出した。






