(1) ヘッジ・ファンドの戦い

Hedge funds in grip of vicious selling cycle
Published: October 16 2008

The long and short of financials
Published: October 5 2008


ここ数日の株価の乱高下、特に昨日のエネルギー関連株の下落は、ヘッジ・ファンドが保有株を放出することによって拍車がかかっていると言われています。これは投機的な理由だけではなく、多くの顧客がヘッジ・ファンドを解約しているためでもあり、9月の解約額は430億ドル(4.3兆円)以上というデータもあります。

一方、成功しているヘッジ・ファンドもあり、左のチャートに例として挙げられたファンドはS&P500やダウが23~25%下落しているときに8%の下落で済んでいます。


hedgefund



また、今回の金融危機から、世界の金融セクターを投資対象としてリスクをヘッジする新たなファンドを立ち上げる動きもあります。これまでは、輸出関連株や新興国株とエネルギー関連株が対称の動きをすることでリスクがヘッジされてきましたが、このファンドは、リスクを多くとる金融機関と保守的な金融機関との間に「市場の歪み」が発生すると考え、チャンスをうかがっています。

“If you had the benefit of hindsight, and went long the top decile of stocks and shorted the worst decile of the financial domain globally from 1990 to 2007, your annualised return would be 144 per cent per year,”
(「もし、先見の明があって、1990年から2007年までの間に世界の金融銘柄のうち上位10%を売り持ちして下位10%の銘柄を買い持ちしていれば、年間144%の利益が得られたことになる。」)

投機活動に対する風あたりは非常に強く、厳しい規制がヘッジ・ファンドにも及んで、これまでのように高いレバレッジで取引ができなくなる可能性もあるのですが、各国の金融機関の動きに差が出てくることはどうやら本当のようです。




(2)「金融立国」にもいろいろある。

金融業界への規制のあり方について、世界中で激論が交わされています。
多くの国が「金融立国」を標榜し、金融サービス分野で競争力をつけてきただけに、相対的に有利な立場を築きたいという欲はあるはずです。より自由な規制をもつ国に競争力をもつ金融機関が拠点を移すことになり、ウォール・ストリート、シティ、チューリッヒ、シンガポール、香港などで争奪戦が始まっています。

No government has yet dared to say what is the right level for tier one.
(いずれの政府も、ふさわしい自己資本比率(Tier1)がどの程度の水準であるか、口が裂けてもいえない。)

スイスは米国、欧州各国に続き、もっとも遅れて公的資金の注入に踏み切りましたが(UBS)、小さな国で巨大な金融産業を抱えているために問題は特に大きいようです。万が一金融機関が破綻すれば、国の財政では支えきれない。しかし、国富の大部分は金融機関が賄っている。したがって、スイスでは他国よりもリスクの少ない金融システムを目指すと同時に、なるべくビジネスに弊害が起きないように最善の注意を払わなければなりません。

これまでの動きから、今後スイスで義務づけられる自己資本比率(Tier1)は恐らく12%~13%と言われています。(クレディ・スイスは既に13.7%を実現したと発表しました。)一方で、英国やフランスは9%程度に設定する可能性が高く、そうなればリスクは少なく済んでも国際競争力は落ちてしまいます。恐らくより安全な資産運用を求める顧客を開拓するなど、他と差別化するビジネス・モデルが必要になってくるでしょう。

一方で、他国と真逆の動きを始めたのが中国です。他国が次々と空売り規制をするなかで、「空売り規制撤廃」の政策を打ち出し、明らかに国際的な競争力を狙っているように見えます。

「金融立国」といっても、色々な形がでてきているのです。



(3)まるでおとぎ話のように・・・

ところで、経済史では、エネルギー資源を発見した国で、急激に富を蓄積する一方で、通貨価値が上昇するためにその他の製造業が衰退してしまうことを「オランダ病」(註1)と言うそうです。「オランダ病」に罹ると、何が恐ろしいかと言えば、エネルギーが枯渇したとき、もしくは何らかの理由で資源が売れなくなった場合、頼りになる実体的な産業がなく、国力が弱まってしまうことだといいます。米国のGMの危機を見ていると、エネルギー資源だけではなく、金融でも同じ現象が起きるようです。

日本は資源が少なく、国土が小さいためにうまくやりくりをする方法に長けた国と言えます。定期的に「日本ブーム」が到来するのは恐らくこのためではないでしょうか? 「もったいない」という言葉がはやったり、省エネルギー技術で先端を走ったり、NINTENDOのゲームが流行するのを見ていると、日本は自由主義経済が失敗した際のsafe-havenという位置づけにあるのではないかとも思えてきます。


確かに、グローバル化は「ファクト」(既成事実)であり、自由主義経済はもっとも高い理想であることに変わりはないのですが、金融は資源と同じくあくまでも実体経済を支えるインフラであり、主役にはなり得ません。これまで日本に蓄積された技術と文化の質の高さを考えれば、「円高は国益である」というのは、あまりにも無謀な考えのように思えます。

現在の混乱期が過ぎると、恐らく日本がかなり有利な立場に立たされるという意見がFTの記事の中にでてきています。

The truth behind the Asian fairy tale
Published: October 16 2008

Are you sitting comfortably? Far, far away from the woeful mess engulfing the wicked countries of the west lies an upright land with fecund trade surpluses, near-bottomless pools of central bank reserves, well-capitalised banks and a healthy aversion to "money game" speculation.
This land of Asia, dear children, shunned the easy profits promised by the peddlers of toxic derivative products and fancy collateralised debt obligations. Its banks eked out a respectable living through the sensible business of lending money, its manufacturers through the old-fashioned practice of making things. This is why Asia has avoided the financial near-collapse that rained down on the casinos of Wall Street and London. This is why, too, Asia will now become the sole motor of global growth.


(「ひどい混乱に陥る西側の魔の国々からは遠く、遠く離れたところに、活発な貿易が続き、底なしの豊かな貯蓄と多くの自己資本をもつ銀行があり、「マネーゲーム」に侵されずに済んだ健全な国々が存在しました。
子供たちよ、よくお聞きなさい。この「アジア」という地域では、危険なデリバティブ商品やCDOと呼ばれる魅惑的な金融商品を売り歩く売人を遠ざけ、常識的な貸付ビジネスでそれなりに立派な生活を築き、保守的な方法でものづくりを営むことで、立派な製造業をつくっていたのです。だからこそ、ウォールストリートやロンドンの「カジノ」のような金融センターが崩壊した時に害を免れ、その後世界経済の成長を牽引していくことになったのです。」)


今の世界経済の状況を考えれば、このようなシナリオにはなり得ず、見事に混乱の渦中に巻き込まれているアジアなのですが、筆者は、混乱がおさまったときにアジアの国々が有利な立場に立つことは間違いなく、実質的な社会主義国と言われてきた日本が自由主義経済の最後の砦になると締めくくっています。

If the tide of the financial crisis has indeed turned, when the waters recede they will reveal a global landscape in which Asia, though damaged, will look more solid than the west.

Japan, sometimes called the only socialist country that works, may actually turn out to be the last bastion of capitalism.

この記事を読んで、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」を思い出しました。


千と千尋の神隠し (通常版)

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今後、日本はどのような自由主義経済を目指すべきなのでしょうか・・



(註1)天然資源の輸出によって通貨の為替レートが上昇して工業品の輸出が廃れ、国内製造業が廃れてしまう現象。オランダでは、第一次石油危機の後、エネルギー価格高騰に伴う天然ガス売却収入の増大が起こり、この収入を原資に高レベルの社会福祉制度が構築された。しかし、天然ガス輸出拡大によってオランダ・ギルダーの為替レートが上昇し、製品輸出を圧迫したことから経済が悪化。経済の悪化に伴い、経済成長下で増大させた社会保障負担がオランダ経済を圧迫し、財政赤字が急増した。(wikipedia)


少し前のビデオですが、パリでモーター・ショーをおこなった際にFTのレポーターが三菱自動車のi MiEVを試乗しています。

こちら


パリの街中に妙に馴染んでいる姿に感激しました!

是非、皆さんもお試しを。



ところで、電気自動車と言えば、株式市場の大混乱を尻目に、インドのタタ自動車が着々と参入の準備をしています。

Tata powers electric vehicles stake
Published: October 15


タタ自動車がノルウェーの電気自動車会社Miljo Grenland/Innovasjon社の主要株主になり、ミルヨ社が持つリチウム・イオンバッテリーの技術を使って「インディカEV」を開発すると発表しました。欧州市場で安価な電気自動車のマーケットを開拓しようという考えです。

インディカEVの売りは、4人分座席と荷物をたっぷり載せられる容量。
航続距離は200キロ(i MiEVは100キロ?)、加速性は、10秒で0-60kmph(若干遅い?)



独身の方が多く、道が混雑するパリでは i MiEV が売れそうです!




(1) seek a safe haven

Wells benefited, in particular, from a dramatic $23.7bn inflow of deposits as customers sought a safe haven.

ウェルズは、顧客が安全な場所を求めて資産を逃避させた結果、237億ドルというめざましい額のデポジットを獲得することができた。


(2) ice “thaws” -氷は「溶ける」

Mr Dimon said money markets and other frozen parts of the financial system could start to thaw.

ダイモン氏は、マネー市場や金融システムで機能していなかった部分が徐々に動きだす可能性を指摘した。




Three US banks set for cash aid unveil $2.6bn third-quarter profits
Published: October 16

JPMorgan eyes growth opportunities
Published: October 16 2008

Wells Fargo earnings boosted by depositors
Published: October 15 2008


JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、ステート・ストリートの三銀行が発表した第3四半期の決算内容が予想していたよりも良好だったことが話題になっています。いずれも水曜日に銀行救済策として政府が資本投入を予定していた9銀行の中に入っており、安全を求めて消費者や企業が現金を逃避させた結果と言われています。


JPモルガンチェースの純利益は5億2,700万ドルで、前年同期比84%減益でした。しかし、ワシントン・ミューチュアルの買収費用を計算に入れなければ純利益は10億1,700万ドルの計算になります。

CEOのダイモン氏は、投資銀行部門、モーゲージのマーケットシェアが拡大するとともに、デポジットやローンの絶対量が増加していると指摘。自己資本比率(Tier1)は、8.9%で、今後景気が後退し、クレジット・カード部門などが落ち込んだとしても乗り越えるだけの事業基盤は築くことができたともコメントしています。

【純利益】

増益部門 括弧内は前年同期の純利益
・ 投資銀行部門:8億8,200万ドル(←5億8,600万ドル)
・ コマーシャル・バンキング部門:3億1,200万ドル(←2億5,800万ドル)
・ 債権・証券サービス部門:4億600万ドル(←3億6,000万ドル)
減益部門
・ リテール部門:2億4,700万ドル(←6億3,900万ドル)
・ カードサービス部門:2億9,200万ドル(←7億8,600万ドル)
・ 資産運用部門:3億5,100万ドル(←5億2,100万ドル)
・ エクイティ部門:(赤字)19億6,300万ドル(←5億1,300万ドル)


ウェルズ・ファーゴは、1億6,400万ドルの純利益を計上し、前年同期比の2億1,700万ドルから24%減益となりました。しかし、デポジットが237億ドルも増加し、ローン、クレジットカードなどで売上が伸びています。

FTは、政府の救済対象となるような大手銀行に消費者が殺到した結果と分析しています。今後もその流れは続きそうです。

生き残れる銀行とそうでない銀行の間に大きな差がついてきたと言えそうです。



(1)今度は、下がる、下がる、下がる、、。

Rio’s shares plunged 17 per cent to £23.57
Rio’s shares plummeted 17 per cent to £23.57.
Rio’s shares fell 17 per cent to £23.57.
Rio’s shares was down 17 per cent to £23.57.
Rio’s shares closed 17 per cent lower at £23.57.




(2)完全に休止してしまった。

The shipping business has come to a halt.
The shipping business has ground to a halt.



Rio Tinto alert sparks sell-off
Published: October 15 2008

Demand for steel poised to slow, Posco warns
Published: October 15 2008

Baltic Dry index at lowest since 2003
Published: October 16


株価がまた暴落しました。
S&P500指数は一日で907.84ドルまで9%下落しました。
米国の9月小売売上高が予想を下回り、英国の失業率が5.7%にO.5ポイント上昇したというニュースが悪材料となりました。

テクニカル・アナリストの計算では、次の底値が839.8ドル(先週の金曜日の水準)、さらに768ドル(ITバブル崩壊後の底値)まで下がる可能性が出てきているそうです。ちなみに、日経平均はITバブル崩壊後に7,607円まで下がっています。



一方、FTのジョン・オーサーズ氏は、前回の金曜日の下落と今回とでは少し様子が異なり、下落した株がエネルギーと素材関連株に集中していると指摘しています。エネルギー関連株はマイナス15.5%、素材関連株は12%下落し、昨日発表されたリオ・ティント社のニュースが大きく影響したようです。


豪リオ・ティント社のCEOトム・アルバニーズ氏は、昨日、中国の経済成長が鈍化していると忠告し、同社の資本支出計画の見直しについて明らかにしました。具体的にどの程度計画を縮小するのか明らかにされていませんが、リオ・ティント社を含め鉄鋼メーカー各社がこれまで中国経済について比較的楽観的な見方を示していただけにショックが広がったようです。その前日には韓国の鉄鋼メーカー、ポスコ社も純利益40%増(前年同期比)を公表すると共に、第4四半期の見通しについては中国からの需要が減り、これまで高騰してきた原材料価格が反映されるため厳しいものになると指摘しています。


しかし、9月にはアルセロール・ミッタル社が10-12月期に25%減産、ロシア最大の鉄鋼メーカーセヴェレスタルも25%減産すると発表しており、当然の流れとも言えます。


アルバニーズ氏は、

「同社の第3四半期の売り上げは、大きな伸びを示したが、中国のアルミメーカーのうち、かなりの企業が営業損失を出し始めている。来年まで需要が伸びる見込みはない。」

「中国の経済成長の鈍化は、オリンピックによって多くのプロジェクトが一時停止を余儀なくされたこと、政府が金融引き締め政策をおこなっていたことが要因となっている。中国の国内需要はあいかわらず強いが、中国の輸出産業はOECD諸国の経済動向と無縁ではあり得ず、徐々に影響が出始めている。」

とコメントしています。

“In the near term, the Chinese economy is pausing for breath. China is not completely insulated from an OECD recession and we will see an impact on Chinese exports,” he said.

アルセロール・ミッタル社CEOミッタル氏もほぼ同意見で、第4四半期は中国に在庫が積みあがっているために需要はこれ以上見込めないが、来年上半期から需要が回復するという見方のようです。また、現在下落している原材料価格(ロイターズ・ジェフリーズCRB指数は7月から40%下落している)が反映されれば、来年は持ち直す可能性が高いということにならないでしょうか?



世界の貿易量の先行指数として、バルチック海運指数(ロンドンのバルチック海運取引所が発表する鉄鉱石や穀物など乾貨物(ドライカーゴ)の外航不定期船の運賃指数。)がありますが、5月から85%下落しています。金融機関が貿易取引に必要な信用保証状の発行を渋っているという状況で、その背景には中国が鉄鋼の輸入をストップしている事実があります。ただ、中国がいつまでもオリンピック特需で積みあがった在庫で需要を賄い続けるとは考えられず、一時的な休止状態であるという意見が大半のようです。






(1) streamline

コングロマリットの事業を集中し、合理化することをstreamlineといいます。

Since he became chief executive in 2005, Mr Samuelsson has streamlined the conglomerate by concentrating on three core divisions – diesel engines, turbo machines and trucks.
(2005年にCEOに就任してから、サミュエルソン氏はコングロマリットの事業を合理化し、3つのコア部門(ディーゼル・エンジン、ターボ機械、トラック)に集中させた。)

“The pendulum is definitely swinging back. In the next years there will not be too much talk about going back to core business and streamlining only on one thing,”
(振り子は確実に戻ってきている。この先数年はコアビジネスや一つの事業に集中するといった話題はあまり聞かなくなるだろう)

streamline the conglomerate

コングロマリットの事業を合理化する

streamline(=concentrate) on the truck business

トラック事業に集中する。


水泳のストリームライン(泳ぐために水の抵抗を出来るだけ減らした流線型をイメージした姿勢)と同じです。

事業も一つに集中して、抵抗をなくした方が力を発揮できると考えられていたのですが、借入れにコストがかかりすぎる今、なるべくリスクを分散できるようにいくつかの事業をもっていた方が有利というわけです。



(2) weather the crisis / curb

最近よく目にするのがweatherという動詞です。これは「悪天候に耐える」という意味から派生して「困難をしのぐ」という意味になります。

However, Mr Samuelsson insists MAN will weather the downturn as the pressure on the truck business will be offset by the other two divisions, which are much longer-term business cycles.
(しかし、サミュエルソン氏はMANが景気後退期を乗り切れると主張している。その理由は、トラックビジネスが落ちこんだとしても、より長いビジネスサイクルをもつ他の2部門がその分を補ってくれるからだ。)


Weatherのようにイメージしやすい動詞としてcurbがあります。これも頻繁にでてきます。
車がカーブに差しかかったとき、スピードを落とすところからきています。

Banks should be forced to curb pay and bonuses.
(銀行が給料やボーナスを減らすように強制するべきだ。)

Authorities have intervened frequently to curb the currency's sharp decline.
(有権者は、通貨価値の激減に歯止めをかけるために、何度も市場に介入した。)

The government has taken a series of emergency measures to curb inflation over the past months.
(政府はこの数ヶ月でインフレを抑制するためにいくつかの緊急措置を講じてきた。)



FT.comのView from the TopにドイツのM.A.N.グループのCEOハカン・サミュエルソン氏が招かれました。

(ビデオを見たい方はこちら


関連記事
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Published: October 13 2008

Samuelsson looks to keep MAN on track
Published: October 14 2008


ドイツと日本には共通点が多いと言われます。製造業が牽引する輸出型の産業モデル、少子化問題、財政問題など、参考になる点が多いと同時に、強力なライバルとも言えます。

ここ10年の動きを追うと、日本と同じく構造改革、規制緩和を実行し、ビジネス界はアングロ・サクソン型の資本主義モデルへ傾倒していきました。機関投資家の期待に応えるように子会社を売却し、生産性向上を目指すあらゆる改革を進めていきましたが、契約社員の比率が増え、正社員は経済が好調であったここ数年も給与が上がらず、この危機を迎えたというシナリオは日本と似ています。

フィナンシャル・タイムズの記事によると、今回の金融危機でドイツの産業界に異変が出てきています。これまで投資家の関心はM.A.N.やSiemensなどの巨大組織の事業を「選択と集中」によって整理統合し、各企業の生産性を上げることにありました。しかし、今回の金融危機によってヘッジファンドや機関投資家など「もの言う投資家」からのプレッシャーが弱まり、逆にいくつかの事業をもちリスクを分散できる企業が競争力を持ち始めていると言います。

今年創業250年を迎えたM.A.N.グループは、CEOサミュエルソン氏のもとで改革を進め、いくつかの事業を売却しながら、現在の商業用車両(トラック・バス)、ディーゼル・エンジン、ターボ機械の3事業を軸に年間売上高155億ユーロ(約2兆円)のグローバル企業に成長しました。特にトラック事業は、Scania社(スウェーデン)の買収案件を米Volkswagen社に取られ、M.A.N.も買収されるのではないかと危惧する声もあります。



サミュエルソン氏は、今回のインタビューでトラック事業の先行きはあまり明るくないが、事業を分散していることが今回の危機を乗り越える助けになると主張しています。



今回はトラック事業の将来を占う第三部ポイントだけご紹介します。


Part 3 :: on the truck market

得意先企業は原油価格が上がり、銀行からの借入れが困難になってきていることから設備投資に慎重になっている。M.A.N.のトラック販売も落ちてきているが、まだ様子を見ている段階だ。恐らく2009年も業績は低迷し、トラック需要は少なくとも10%は落ち込むだろう。

トラック販売は過去(1990年代始め)に20%以上落ち込んだこともあり、始めての経験ではない。当社は、事業を多角化しているため、この先競争力を発揮することができる。トラック・バス部門が駄目でもターボ機械とディーゼル・エンジンの需要(特に船舶用)はこの先も伸びる。また、当社がこの先もっとも力を入れたいのは中国やインドなど新興国での買収や投資案件だ。現在は長期的な視点で投資を行うには絶好のチャンスだ。

船舶用のディーゼル・エンジンは、造船業が景気循環と関わりなく、伸び続けている。過去に経験したことがないブームだ。世界的な運送量がグローバル化によって急増しており、これは構造的な変化だ。これまで運送されてこなかったようなものが頻繁に海洋を行き来するようになり、さらに大きな船や港湾施設が必要とされている。このような傾向はここ数年見られたが、現段階の注文量からするとさらに数年は続くことが期待できる。もちろん(ターミナル)キャパシティには限界が来るが、そのときにはバス・トラック部門が盛り返しているだろう。

(記事から抜粋)
Mr Samuelsson insists MAN, which is one of Europe’s biggest truck makers but lacks a global footprint, is not under pressure to consolidate with VW and Scania. But he adds that the current downturn in the market is “likely to bring more speed to that”.

サミュエルソン氏は、VWとScaniaとの合併にプレッシャーはないが、今回の景気後退が交渉を早めることはあり得ると認めている。


■ LONG & SHORTとは?
インタビューの後にLONG & SHORTゲームをしていますが、LONGは「買い」SHORTは「売り」ということ。インタビューを受けたCEO全員に対しておこなわれています。


米国で新たな救済案が発表されたにも関わらず、本日は株価が反応しませんでした。また、LIBOR/OISの水準が高止まりしています。お時間のある方は、またShortviewをチェックしてみてください。

さて、昨日ご紹介したビデオで、今後の株価の下落余地を分析する際にイェール大学のシラー教授が開発した長期循環を考慮したP/Eレシオという指数がでてきました。

ご参考までに、シラー教授による説明を抜粋します。

The price-earnings ratio is the real (inflation-corrected) S&P Composite Index divided by the ten-year moving average real earnings on the index. It is a measure of how expensive the market is relative to an objective measure of the ability of corporations to earn profits. I use the ten-year average of real earnings for the denominator, along lines proposed by Benjamin Graham and David Dodd in 1934. The ten-year average smoothes out such events as the temporary burst of earnings during WW1, the temporary decline in earnings during WW2, and the frequent boosts and declines that we have see due to business cycle.(ロバートシラー著Irrational Exuberanceより抜粋)

P/Eレシオは、S&P株価指数÷企業の実質収益総額の十年移動平均

企業の実質的な収益力に対し、どれだけ市場が評価しているのかを計る指数ということです。

先日紹介したチャートの底値ですが、もし過去の大底までは至らないという説に理由があるとすれば、IT技術やグローバル化によって企業の収益力(生産性)が飛躍的に向上していること。今後発表される第3、第4四半期の決算の内容で、判決が下ることになりそうです。



ジョン・オーサーズ氏のTHE SHORTVIEWは、英語でプレゼンをしなければならない方にはよいお手本になります。

今回の「ついでに英語をおぼえよう!」では、スムーズに話を進めるためのキーワードをご紹介します。


●導入部

オーサーズ氏のプレゼンでは、まずその日のマーケットの報告をおこないますが、最近は、「すぐには結論が出せない状況ですが、とりあえず本日は、・・・について見ていきたいと思います。」という形で導入部を締めくくることが多いようです。

For now, I would just like to take a look at a couple of underlying trends behind the markets.
(とりあえず本日は、マーケットの背景に見られるいくつかのトレンドについて見ていきたいと思います。)

そして、できれば導入部でこれからおこなうプレゼンで扱いたいポイントがいくつあるのか、具体的な数を明示すると、聞き手は安心します。この方法は、プレゼンに限らず、インタビューや交渉などでも使えます。


例えば、

I would like to look at two points.

I have basically two questions.


●本題

そして、本題に入ります。

二点あるので、

First of all,... / Firstly,...

Secondly,... / and next,...


という形で各議論を始めます。


議論の導入部は、質問形にすることでわかりやすくなります。


First of all, how could you have hedged against the crush...?
(まず始めに、株価暴落に対してヘッジする方法はあったのでしょうか?)

Secondly, how do we know when we will actually get to the bottom of this bear market?
(今回のベア・マーケットの底を打ったことを知るにはどうすればよいのでしょうか?)


●チャートの説明

This is a chart of ...

少しサービス精神を発揮すると、

What we are showing you here is a chart of...
(みなさんにお見せしているのは、・・・のチャートです。)

as you can see very clearly,...
(チャートにはっきりと表れているように、・・・)

what is also very intriguing is that...
(もう一つ非常に興味深いのは、・・・)



●議論の展開(考察)

Now,
(さて、)

However,
(しかしながら、)

This implies that...
(ここから言えることは、)


こういったキーワードを散りばめることで、聞き手を上手に議論に引き込むことがポイントです。

オーサーズ氏は毎日The ShortViewをこなしているだけに、議論の内容が難解でも一応話の流れにはついていけるのがおわかりになると思います。是非こまめにチェックして、真似してみてください!