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Wal-Mart seeks green in China
Published: October 21 2008


“A company that cheats on overtime and on the age of its labour, that dumps its scraps and its chemicals in our rivers, that does not pay its taxes or honour its contracts – will ultimately cheat on the quality of its products.”

「残業時間や従業員の年齢をごまかしたり、化学物質や廃棄物を川に投げ捨てたり、税金の支払いや契約内容を踏み倒したりするような企業は、結局は製品の質をごまかすようになるだろう。」



世界最大の小売業者ウォルマートのCEOリー・スコット氏は、1,000社の中国の製造業者を前にかなり強い語気で訴え、環境規制や労働基準を順守するように指示したと言います。ウォルマートは、ここ数年、労使問題や環境問題で社会的な批判を受け続け、ブレークスルーを探していましたが、ついに真っ向から問題に取り組む姿勢を示しました。


中国で生産され、世界中に輸出される「ウォルマート・プライス」の製品は、「世界の工場」と連携して価格破壊をおこなうビジネスモデルの典型例であり、その規模も世界最大級です。米国での年間売上高は300億ドル。中国の提携先は30,000社に及びます。中国から見れば対米国輸出量の10%にものぼり、ウォルマートの発言力は多大なものなのです。


そんなウォルマートが環境問題や労使問題に正面から向き合い、同様のアプローチをとるP&G、フェデックス、レノボ、キンバリー・クラーク、コカコーラなどのCEOも北京の会場に集まりました。これまでの価格破壊一辺倒のビジネスモデルから、より「グリーン+クリーン」なビジネスモデルへと転換するという意思表示をおこない、「約束を守らなかった者とは契約を破棄」「パフォーマンスが高い企業にはより多くの報酬を支払う用意がある」と発言しています。


中国では政治家が工場を所有している場合が多く、政府主導で環境政策を推進することは難しいと言われていたのですが、ウォルマートが動いたことで、中国の製造業における常識が変わりそうです。

“I would say we are seeing an evolution to a new business model,” he says. “I think we are developing that relationship with suppliers, to look not only at price, but at all of these other elements.”
(我々はこれを新しいビジネスモデルへの進化だと考えている。価格のみを問題にするのではなく、他の重要な要素にも目を向けるために、サプライヤーとの関係を強化するということだと思う。)


世界の消費者から見れば、製品価格が底上げされる代わりに安全性や地球環境に配慮した製品を手に入れることになります。そして、中国の製造業は新たな基準に適応するために設備投資をし、世界中が期待する中国の「内需」が生みだされるとも考えられます。


「ウォルマート・プライス」に代わる新たな世界基準が生まれれば、製造業全体が活性化するのではないでしょうか? 多くの難題が待ち受けていそうですが、最後まで意志を貫き通してほしいと思います。






うさぎ付きで、内容に似合わないかと思ったのですが、一番目に優しい色を選びました。


ご意見・ご感想などは、「コメント欄」にお願いします。


ft-reader.




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Kerkorian to sell down Ford stake and focus on gaming investments
Published: October 22 2008

Tracinda heads for the exit again
Published: October 22 2008


カーク・カーコリアン(Kirk Kerkorian)氏は、ウォレン・バフェットやジョージ・ソロスと同様に影響力をもつ91歳の投資家です。今年4月にフォード株を10億ドル(1億2,000万株)を取得し、さらに3億ドルで2,000万株買い足し、フォード株の6%を保有していました。

21日、カーコリアン氏はフォード株の730万株を売却し、残りの1億3,350万株も手放すと発表したのです。同日、フォード株は8%下落し、GMはクライスラーとの合併話を急いでいます。


カーコリアン氏率いるトラシンダ(Tracinda)社はこの売却で7億ドルの損失を出したことになるのですが、その理由について次のようにコメントしています。

"sees unique value in the gaming and hospitality and oil and gas industries and has, therefore, decided to reallocate its resources and to focus on those industries".
(ゲーム、ホテル、原油、ガスに可能性を見ているので、そこにフォーカスして資産を再配分することにした。)

トラシンダ社は世界最大のカジノホテル・グループ、MGM Mirageの主要株主で既に50%以上の株式を保有しています。しかし不思議なのが、このMGM Mirageグループも決して業績は良くなく、株価は今年初めから85%も下落、格付けも下げられたような状況です。また、フォード社は資産を担保にキャッシュを調達することに成功し、欧州で根強い人気を誇る小型自動車(Fiesta)があるので、デトロイト3の中では一番安定していると見られていました。



どうやら、原因は業績や株価ではなく、フォードの経営陣とカーコリアン氏との間にあるようです。



カーコリアン氏は、”Casino Mogul”(カジノ界の帝王)という異名のほかに、”scourge of Detroit’s boardrooms”(デトロイト取締役室の災い)とも言われています。いわば、自動車業界の「もの言う株主」として何度もチャレンジしては、失敗を繰り返しているのです。

初めて自動車業界に登場したのが、90年代にクライスラーの株主になったときで、配当金を増やし株式を買い戻す提案を経営陣が拒否した際にTOBを仕掛けています。さらに2005年にはGMの筆頭株主になり(9.9%)、CFOを送り込んだのですが、やはり経営陣と衝突。2006年に日産ルノーとの合併をもちかけ、拒否されたので株式を手放しました。2007年に再度クライスラーの大株主になろうと試みますが、経営陣はサーべラスの出資を受ける選択をしました。そして、今年の春、フォード社の経営建て直しを進める元ボーイング社の重役アラン・ムラリー(Alan Mulally)氏に信任を示し、出資に踏み切ります。ところが、先月最も経験のある取締役のうち二人が退職し、現在フォードを支える担保付ローン・パッケージを実現した有能なCFOも引退してしまいました。現在取締役会に残るのは、ムラリー氏のほか、フォード一族と古参のメンバーで関係者の間では、取締役会の独立性が問われ始めています。


このような状況での株式放出ですから、当然取締役会で何か問題が起きたのだろうと想像してしまいます。

ただ、これまで改革を進めてきたムラリー氏は以前健在なので、日本のマズダの株式(33%)を手放して体制を立て直すと見られています。




Anhui’s clearest competitive advantage is wages: compared with export juggernaut Guangdong, average monthly wages are 32 per cent lower in Anhui and 40 per cent lower in Jiangxi. Transport is also convenient. Jiujiang, in Jiangxi, and Wuhu, in Anhui, are Yangtze River port cities that offer easy, low cost transport to the container ports of Shanghai.

(安寧省の競争優位性はまず平均給与の低さにある。巨大な輸出型産業地域である広州にくらべて、安寧の平均月額給与は32%低く、江西省では40%低い。さらに交通の便もいい。江西省の九江や安寧省の蕪湖は長江沿岸の河港都市であり、上海のコンテナターミナルまで簡単でローコストな運送手段を利用できる。)

一つ覚えたいのが、”competitive advantage”(競争優位性)という言葉です。


This software will deliver/add competitive advantage to your company.


それから、このパラグラフはライティングのお手本になります。

なるべくクリアに趣旨を伝えるために、英語では結論から先に簡潔に示し、あとで説明を加えるというパターンをよくとります。日本語でも同じですね・・・。





中国政府は、内需を刺激するために様々な改革に乗り出しています。

特に期待されているのが7億2,000万人という言われる農村人口の消費で、農地の所有権を売買することを許可したり、直接補助金を交付するなどの方法でてこ入れをしています。NNAニュースに、「家電下郷」制度の対象地域を拡大するという記事がありました。これは農村部での家電購入に補助金を交付するという制度です。


たまたま、CEQの記事を読んでいたのですが、現在中国の冷蔵庫や洗濯機はどこで一番製造されているかといえば、伝統的な軽工業地帯である広東省や「西進キャンペーン」で政府が企業の進出を促した重慶市ではなく、安徽省や江西省だそうです。広東省には家電メーカーの本社やR&D部門があり、その工場が各地に散らばっているのですが、特に安徽省は上海地区に隣接しているため、ローコストで製品を運送することができ、平均賃金も広東省に比べれば32%も安いそうです。ここ数年、広州港からの出荷量が横ばいか、減少傾向にあることで中国の輸出量が減っていると心配する声があがっているそうですが、実は北の上海地区では輸出量は堅調に伸びているといいます。安徽省の工場は、もともと上海に住む中国人をターゲットに安く、良質な白物家電を製造していたので、この地域はChina’s china(「世界の工場」のための工場)と呼ばれていたのですが、物流と賃金の両面で他地域よりも優位にあるため、外需と内需の両方から恩恵を授かることになったのです。


chinamap




十年前は中国の家電メーカーといっても外資企業の下請け工場というイメージでしたが、今では技術もブランド力も外資企業に引けをとらず、世界中に進出しています。中国国内での販売競争は年々激化し、欧米や日本の企業と提携しながら、シェア確保にしのぎを削っている状況です。 
例えば、広東美的電器股フェン有限公司(美的電器)は、東芝キャリアとエアコン、冷蔵庫事業で提携し、国内では中小企業を買収しながら、ベトナムにも拠点を築いています。(富裕者層の間では高いお金を出してもエアコンはいいものを手に入れたいという傾向があるそうです。←環境問題のせい。)
世界的な不況のなかで、相対的に安価な中国の家電産業がどこまで持ちこたえることができるのか、今後重要な指標になってくると思います。


一方で、中国でてこ入れを進めているローエンドの「内需」はどうでしょうか。


都心部の需要が鈍ると、中国の家電メーカーは農村向けに機能を絞った安価な商品も開発し始めています。2006年12月4日付日経新聞によれば、美的電器は除湿や空気清浄などの機能を省いて価格を既存品の半分以下の1,000元(1元=約15円)に抑えた製品を開発しています。農民一人あたり現金収入額が1,797元ということは、かなり高い買い物になりますが、販売高は順調に伸びてきているようです。他にも電子レンジやエアコンを主力とする格蘭仕(ギャランツ、広東省)、テレビや携帯電話機大手のTCL集団(広東省)が農村部に販売店網を次々に築いています。


では、政府の補助金制度がそのまま家電販売量に結びつくかと言えば、そうではなく、様々な波及効果が出てくる可能性があります。1998年から2003年まで中国政府が推進した住宅私有化政策の効用について、CEQが分析している記事を読むと、中国の消費性向の一端を知ることができます。

The CEQ on FT.com: Housing privatisation
Published: February 4 2008


この住宅私有化政策は、主に二つの手段によって実行されました。

①公有住宅を市場価格から70%ディスカウントした価格で住民に売却する。
②従業員の住宅手当てとして総額2,500億ドルの補助金を企業に支給する。

最大の目的は、内需を刺激することだったと考えられますが、思わぬ方向に効果が波及していったそうです。


まず、住民はどうしたかと言えば、老朽化した公有住宅を売り払い、モーゲージ・ローンを組んで新しい商用住宅に買い替えました。1998年から2006年の間に住宅販売数は9倍、モーゲージ発行額は16倍まで増加しています。その後、住民はモーゲージ・ローンの支払いと底をついた貯蓄を補完するために消費を控え、さらに不動産価格が上昇することで新たに住宅を購入するために貯蓄しなければならない額も増えました。結果的に消費は増えず、貯蓄性向が高まったのです。


一方、政府から補助金を得た企業はどうしたかと言えば、従業員の住宅手当てには使わず、設備投資に回しました。これが2001年以降の投資ブームを引き起こし、中国経済の急成長に貢献する一方で、過剰な固定資産投資が続くようになります。

70%にディスカウントとされた公用住宅を売却することで国民が得られたキャピタル・ゲインはCEQの計算では総計5,400億ドル(約54兆円)でしたが、そのほとんどが商用住宅の市場に流れ、消費は増えませんでした。



もし、自分が所得の低い農民だったとして、政府の補助金で家電を市場価格より安く買えるようなチャンスが訪れたとします。年収は20万円程度でいつもは10万円するエアコンが3万円で買えます。皆さんならどうしますか? 喜んでエアコンを使うでしょうか? 次の日、補助金を受けていない隣の村からエアコンを7万円で買いたいと相談されたとします。この話が成立すれば、4万円のキャピタル・ゲインを得られます! そして、将来のために必要な教育費や老後の資金のために貯蓄するでしょう・・・。


「内需」といっても、中身は相当複雑なのではないかと思いました。



(1)意見の不一致

中国経済の今後については、エコノミストの間で意見が一致していません。中国を始め、内需が今後も伸びる新興国間での輸出入が世界経済は下支えするという見方も根強くあります。

この「一致していない」という表現がいくつも登場しました。

Opinions are mixed.
(意見は一致していない。)

このmixedというのはマーケットについても応用できます。

Market mixed on US bank bail-out news.
(米国の銀行救済のニュースに対する市場の反応は分かれた。)

他には、

Economists are split/divided over whether China is witnessing a breather or starting a long slide.
(中国が息継ぎの状態にあるのか、長期的な下落を始めているのか、エコノミストの意見は分かれている。)



(2)その考え方は「古い」と上品に言ってのける方法

It is conventional to say that the Chinese economy is export-led.
(中国経済が輸出主導であるという考えは古い。)



“conventional”という形容詞は、新しい技術と比較する際に「一般的な」「従来型の」という意味でよく使われます。
conventional funds/equities
conventional energy sources


または、「数ヶ月前までの常識では、」という使い方もできます。

A few months ago, the conventional wisdom was that...



「その方法は古いと思います。」


と言われたら、こう切り替えしてください!

“It is conventional but credible”
(平凡かもしれないが、信頼できる方法だ。)





皆さん、China Economics Quarterly(CEQ)誌をご存知でしょうか? 

欧米の有識者の間ではよく知られた経済誌でDraganomics Research社のマネージング・ディレクター、アーサー・クローバー氏(Arther Kroeber、註1)がエディターを務めています。Draganomics Research社は、北京と香港に拠点を構え、主に中国経済の動向を詳しくリサーチしている会社ですが、FTにも隔週で「CEQレポート」を投稿しています。これを読むと、中国経済の実態についてかなり理解を深めることができると思います。(FTを購読されている方は、こちら。)

CEQは、下記のホームページから登録をすれば、数週間過去のデータベースを利用することができます。
http://www.dragonomics.net/index.php/publications/

ちなみに、ビル・エモット氏の著作、”RIVALS-how the power struggle between China, India and Japan will shape our next decade”(邦訳「アジア三国志」)は、中国、日本、インドの政治と経済の動向について検証する大変面白い内容ですが、注釈や巻末の参考文献に中国、インド経済について最先端の議論がどこで行われているか指摘してくれているので、とても役に立ちます。中国について最新の情報を得るにはCEQ、さらに中国を含め世界で最も信頼されているエコノミストとしてUBSのジョナサン・アンダーソン氏の名が挙がっています。


(註1)FTのView from the Marketsでは、10月5日にドラゴノミクス・リサーチのアーサー・クローバー氏(Arthur Kroeber)へのインタビューが行われています

View from the markets : Oct 5 ARTHUR KROEBER



中国のGDP成長率が9%に失速したというニュースがヘッドラインになっています。この他にも住宅バブル崩壊の中小企業の相次ぐ倒産、自動車販売の低迷など市場にとっては悪材料となるニュースが次々と発表されています。


これに対して、専門家の意見は冷静です。

この程度の減速は、中国政府がこれまでおこなってきた引き締め政策や産業構造の転換、さらに通常の景気循環によっても当然予測されていたことであり、金融危機からの影響はほとんどないどころか、政府が着手していた様々な改革にとっては逆に追い風になる可能性もあるからです。

現在支配的な見方は、中国は世界の投資家からの過剰な期待を裏切り、通常のペースの成長に戻るというものです。そして最善のシナリオは、今回の世界的な景気後退を機に、キャパシティが過剰になっていた輸出型産業では企業の整理統合が進み、輸出量は安価な商品を求める外需によって回復し、さらに毎年1,200~1,300万人都市部に流入する人口によって内需が順調に伸びることで、中国経済はハード・ランディングせずに成長を続けるというシナリオです。

しかしそれでも、一部で期待されているように中国の内需が世界経済を支えるという構図にはなりえず、中国が世界経済に与える影響は非常に限定的なものであることが特に強調されています。



では、なぜ、中国の内需が期待するほどにはならないと言えるのか?


その理由は、何よりも中国の金融システムの貧弱さにあるのではないかと思います。


これまでの世界的な好景気は米国の過剰消費が支えていたわけですが、それを可能にしたのが言うまでもなく今回の金融危機を招いた高度な金融システムです。これが中国にはありません。さらに、社会的なセーフティ・ネットが貧弱なため、将来に対する不安が大きく、家計と中小企業の貯蓄性向が高くなっています。

今回、いくつかの記事を読んで印象的だったのが、中国内で需給のミスマッチが起きていることです。世界的に見れば、中国はこの数年間二桁台の成長を遂げ、上海や香港の「ニューリッチ」の消費性向に注目が集まっていました。結果、不動産はバブル化し、GMやフォードなど新たな「中産階級」の需要を狙って企業が進出しました。しかし、世界が想像するよりも中国の「中産階級」の生活水準は高くないのではないでしょうか? 今の中国の一般的な家計では、将来の不安からお金を使いたがらないと言います。車一台買うよりも教育費や老後の生活資金のために貯蓄しなければならないからです。様々な政策によって、最低限の都市生活を営む所得者層は今後もかなりのペースで増えますが、これだけでは内需の活性化にはつながらないのです。



では、中国経済に期待できることはあまりないのかといえば、そうではないと考えます。


一番期待されるのが、都市域の輸出型産業と農業における整理統合の動きです。

より効率が高く、高付加価値の産業が育っていけば、設備投資が増え、雇用が創出されることで個人消費にも結びつきます。世界経済の景気後退によって相対的に安価な製品の競争力が増すと考えれば、中国の輸出型産業にとってはチャンス再来という見方も可能なのではないでしょうか。この動きが積極化すれば、インフラ整備や技術的側面でOECD諸国が協力できる場面もでてきます。


さらに期待されるのが(なかなか実現が難しいかもしれませんが)、金融面で個人が資金をより自由に動かせるような制度の実現です。これによって中産階級の消費行動が劇的に変わります。


前者については、中国製品の価格がこれまでどのように決定され、今後競争力を持ちえるのかという点について考える必要があると思います。この観点から注目されているのが、徹底的な現場取材で中国の製造業を追ったこの一冊です。


chinaprice

The China Price


また、中国の金融システムは社会システムの根源的な問題だといえるのですが、UBSのエコノミスト、ジョナサン・アンダーソン氏によるレポートがあります。



chinafuture

China Into the Future: Making Sense of the World's Most Dynamic Economy






さて、今後の中国経済の見通しについて10月15日に発表されたドラゴノミクスのレポートを見てみることにします。(→ドラゴノミクスとは?
China Insight - Apres la deluge: China in the credit crisis aftermath


●まずは、短期の見通しについて。



(1)中国経済はソフト・ランディングへ向かっている。

実質GDP成長率は2008年に9.5%、2009/2010年に8-8.5%程度で推移する。
これは、中国の人口動態、生産性、都市化によって実現され、過去に中国が経験したハード・ランディングによる景気後退(1989-90、1998-99)は避けられる。


(2)世界的な金融危機の影響は少ない。

中国の金融機関は世界経済に対して開放されていないので、金融危機の直接的な影響は少ない。
間接的な影響は世界的な消費の落ち込みから来るが、景気後退期には安価な中国製品が国際競争力をもつと考えられ、原材料の価格も下落しているため、中国の輸出産業は急激には減速しない。


(3)そもそも中国経済は輸出主導型ではない。

中国の巨大な貿易黒字は輸出入の不均衡から来るものではなく、企業と政府が蓄積した資本を家計や政府の支出部門に回す効率的な金融システムがないために生じている。金融システムが自由化されていけば、貿易黒字も正常化するだろう。


(4)原材料価格は短期的には下落するが、中長期的には上昇する。

経済成長率が8%に減速し、政府の政策と市場の原理に従って企業が効率性を高めることで、短期的には原材料価格は下落する。しかし、中国の産業化、都市化に必要なインフラ整備はまだまだ途上の段階であり、中長期的に需給は逼迫するため上昇圧力は依然存在する。


(5)効率性の向上によって産業の整理統合が進む。

珠江デルタの軽工業地帯で多くの工場が閉鎖されるニュースが発表されているが、これは効率性が悪い企業が淘汰されている結果である。中国の多くの産業は零細企業が過剰に存在する非効率な状態であり、より効率的な経営をおこなう大企業に吸収されている。1995-2005年にかけて国営企業が倒産したときは、5000万人の失業者が出たが、今回はそこまでの痛みは伴わない。


(6)ハイエンドの不動産産業は低迷するが、ローエンドの住宅は慢性的に不足している。

中国の都市域では、ハイエンドの不動産産業がバブルを形成し、現在急落しているが、年間400万人の人口が都市に流入しているため、ローエンドの住宅が不足している。前者については2010年まで回復する見込みはないが、後者については2009年下半期に在庫調整が終われば、政府主導の建設プロジェクトが開始する。しかし、株式を上場しているような不動産会社は前者のビジネスを手掛けており、今後も倒産するケースが増えるだろう。


(7)銀行の収益率は落ちるが、財務体質は健全である。

大手銀行の不良貸出は総資産の5%程度で1997年の50%から大幅に改善されている。今後NPL率が10-12%まで上昇する可能性が高いが、銀行の収益で十分にカバーできる。





●次に、中国の景気循環についてですが、中国政府が公表するGDPは過去の実績からあまり信用されておらず、UBSやドラゴノミクスは政府の歳出をもとに計算し直しています。



dragonomics




ドラゴノミクスによれば、中国の景気循環は5年周期で現在は景気後退期の入り口。過去に2度、この景気後退期に外的要因が重なり、さらに制度的な問題が顕在化して「ハード・ランディング」に至るというシナリオを経験しています。一度目は天安門事件があった1989年、二度目はアジア通貨危機によって打撃をうけた1998年です。1989年には経済成長率が一年で-2%まで落ち込み、その後5年間は6.25~6.5%で推移し、1998年の危機では5%まで落ち込み、その後5年間は同じく6.25~6.5%で推移しています。「ハード・ランディング」といってもこれだけの数値を維持するのですが、今回は制度的な問題が見られず、むしろ金融危機が構造改革を後押ししているという状況の中、今年は9.5%程度、来年からは8~8.5%程度と「ソフト・ランディング」のシナリオを想定しているわけです。




先ほどの記事でご紹介した金融機関をターゲットに絞った新しいファンドは、ロンドンで組成されるファンドで、アミット・ラジュパル(Amit Rajpal)氏がストラテジストとして貢献しています。ラジュパル氏の今後の見通しについてご紹介します。

“In terms of stock prices, we are about 12 months into this crisis, and so far there has been a drop in the ratio of price to book value of 30 per cent,” he adds.

“Even in the most mild of the recent crises in Asia, Scandinavia and Japan, there was a 50 per cent drop in price to book value, and prices took at least 18 months to bottom out. I’m looking for any one of these metrics to tell us that things are starting to stabilise, but we haven’t seen it yet.”

株価は、危機に突入してから12ヶ月経過している。時価総額は今のところピークから30%下落した水準にある。アジアやスカンジナビア、日本では時価総額が50%下落し、18ヶ月の期間を要した。株価が落ち着き始めるサインを探しているが、まだ見られない。