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“A company that cheats on overtime and on the age of its labour, that dumps its scraps and its chemicals in our rivers, that does not pay its taxes or honour its contracts – will ultimately cheat on the quality of its products.”

「残業時間や従業員の年齢をごまかしたり、化学物質や廃棄物を川に投げ捨てたり、税金の支払いや契約内容を踏み倒したりするような企業は、結局は製品の質をごまかすようになるだろう。」



世界最大の小売業者ウォルマートのCEOリー・スコット氏は、1,000社の中国の製造業者を前にかなり強い語気で訴え、環境規制や労働基準を順守するように指示したと言います。ウォルマートは、ここ数年、労使問題や環境問題で社会的な批判を受け続け、ブレークスルーを探していましたが、ついに真っ向から問題に取り組む姿勢を示しました。


中国で生産され、世界中に輸出される「ウォルマート・プライス」の製品は、「世界の工場」と連携して価格破壊をおこなうビジネスモデルの典型例であり、その規模も世界最大級です。米国での年間売上高は300億ドル。中国の提携先は30,000社に及びます。中国から見れば対米国輸出量の10%にものぼり、ウォルマートの発言力は多大なものなのです。


そんなウォルマートが環境問題や労使問題に正面から向き合い、同様のアプローチをとるP&G、フェデックス、レノボ、キンバリー・クラーク、コカコーラなどのCEOも北京の会場に集まりました。これまでの価格破壊一辺倒のビジネスモデルから、より「グリーン+クリーン」なビジネスモデルへと転換するという意思表示をおこない、「約束を守らなかった者とは契約を破棄」「パフォーマンスが高い企業にはより多くの報酬を支払う用意がある」と発言しています。


中国では政治家が工場を所有している場合が多く、政府主導で環境政策を推進することは難しいと言われていたのですが、ウォルマートが動いたことで、中国の製造業における常識が変わりそうです。

“I would say we are seeing an evolution to a new business model,” he says. “I think we are developing that relationship with suppliers, to look not only at price, but at all of these other elements.”
(我々はこれを新しいビジネスモデルへの進化だと考えている。価格のみを問題にするのではなく、他の重要な要素にも目を向けるために、サプライヤーとの関係を強化するということだと思う。)


世界の消費者から見れば、製品価格が底上げされる代わりに安全性や地球環境に配慮した製品を手に入れることになります。そして、中国の製造業は新たな基準に適応するために設備投資をし、世界中が期待する中国の「内需」が生みだされるとも考えられます。


「ウォルマート・プライス」に代わる新たな世界基準が生まれれば、製造業全体が活性化するのではないでしょうか? 多くの難題が待ち受けていそうですが、最後まで意志を貫き通してほしいと思います。