●独ポルシェ社は、オプション取引の5%を実行し、浮動株比率を倍にすると発表しました。


Porsche, which sparked panic-buying among hedge funds by revealing at the weekend that it held up to 74.1 per cent in VW directly or indirectly, said it would settle hedging transactions up to 5 per cent in an attempt to nearly double the free float in Europe’s largest carmaker.

Porsche offers to settle VW hedging trades
Published: October 29 2008



(関連記事・ビデオ)
VW driven to top spot by surge in share price
Published: October 28 2008

Shortenfreude
Published: October 28 2008

Hedge funds left reeling as VW races on
Published: October 28 2008

Porsche accelerates towards VW control
Published: October 27 2008

ビデオ1



昨日、独フォルクスワーゲン社(VW)の株価が先週の金曜日から450%(210ユーロ→945ユーロ)跳ね上がり、一時的に時価総額世界一位(1500億ユーロ)の企業になったと報道されました。VW社の株価は一週間で286%、一年で444%に急騰しています。つられて、ドイツの平均株価指数DAXも7%上昇しています。独ポルシェ社がVW社の持ち株比率を引き上げると公表した結果、ショート・ポジション、つまりVW株を空売りしていたヘッジファンドがパニック買いをしたのです。この動きによって、総額200~300億ユーロ(約2.48兆~3.72兆円)の損失が発生したと推定されており、多くのヘッジファンドが廃業に追いやられると言われています。


いったい、何が起きたのでしょうか?


ポルシェ社が規模の上で遥かに大きいVW社(註1)を買収しようとする動きが過去3年に渡り続いていました。公表されていたポルシェ社のVW社持ち株比率は35%だったのですが、実は74.1%も保有していた(ある意味「隠し持っていた」)ことをポルシェ社が急に明らかにしたのです。74.1%の内訳は普通株式42.6%、現金決済(註2)のオプションが31.5%でした。ドイツの法律では、現金決済のオプション取引については開示を求めていません。それを利用して水面下でTOBを進めていたということになります。同じ方法で7月に独シェフラー社がコンチネンタル社のTOBを実現しており、問題になっています。


ポルシェ社とVW社との関係は決してよいものではなく、買収したとしても事業に支障が出るだとうと言われています。

しかし、最も被害を受けるのはVW社の株式を空売りしていたヘッジファンドです。(関係者によると、VW株を空売りしていたヘッジファンドは100社以上あり、VW株の実に13%の額にのぼるそうです。)空売りをしていた投資家が損失を抑えるために買い戻し(ショートカバー)に動き、株価が跳ね上がることを「ショート・スクイーズ(short squeeze)」(「踏み上げ」)と言います。今回のVW騒動は、史上最大級の「ショート・スクイーズ」を記録しました。



ジョン・オーサーズ氏のShort Viewで何が起きているのか具体的にわかります。

ビデオ2


ポルシェ社によるTOBについて知るよしもない投資家は、VW社の株価がいずれ下がるだろうと予想してショート・ポジションをとる(空売りする)のが一般的でした。

ショート・ポジションをとる投資家の多くは、同じ業種の中でも相対的に成長性の高い企業に同時にロング・ポジションをもつことでリスクをヘッジする「マーケット・ニュートラル投資戦略」をとっています。VW社の場合は、例えばダイムラー社の株を買い持ちすることでリスクをヘッジするという事が考えられます。しかし、水面下でポルシェ社が株式を買い占めているため、VW社の株価は実態に伴わずじりじり上がっていきます。ダイムラーとVWで「マーケット・ニュートラル投資戦略」をおこなっていた場合、10ヶ月で95%の損失を出したことになります。

今回の発表でポルシェ社の持ち株比率が74.1%であることが明らかになり、さらにLower Saxony社が20.1%保有しているので、浮動株の比率はたったの5.8%です。今回の騒動で一気にヘッジファンドの買いがこの5.8%に殺到したため、株価が異常に跳ね上がってしまったのです。もし昨年空売りしていれば、今回の件で500%の損失を出したことになるそうです。


オーサーズ氏は、この取引で出た損失をカバーするためにヘッジファンドは強制的に他の株式を売らざるを得ない状況に陥いるだろうと指摘しています。例えば、サブプライム問題が金融機関に打撃を与え、原油価格が高騰している間は、米国の金融株を売り持ち、原油株を買い持ちするのが一般的でした。しかし、SSEが今年の7月に金融株の空売りを禁止したとき、損失を防ぐ為に金融株を買い、原油株を売らざるを得ない状況に追い込まれました。その結果は、現在の原油価格を見れば分かるとおりです。

下図は、VW(売り)とダイムラー(買い)、米国金融株(売り)と原油(買い)で「マーケットニュートラル投資戦略」を行った場合の差益の推移を示しています。


VW



今回の件では、どこにしわ寄せが行くのか市場が不安げに見守っており、影響を受けるのではないかと疑われるソシエテ・ジェネラル、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスの株が売られています。

今回の一件で利益を出したとすれば、もともと主要株主であったLower Saxony社くらいで、ポルシェ社もオプション取引を決済できるかどうかはわかりません。しかし、ポルシェ社は2007年7月までの一年間の売上げのうち36億ユーロがオプション取引から出したもので、車両販売の10億ユーロの3倍以上であったことから、物議を醸しています。




(註1)年間車両販売数:ポルシェ(100,000台)VW(6,000,000台)、年間売上高:ポルシェ(70億ユーロ)、VW(1000億ユーロ)

(註2)実際の商品を受渡さず、反対売買による差額(現金)の授受によってなされる決済のこと。同義語は「差金決済」。




 
(関連記事)
Lehman shows that CDSs work
By Stephen Wilmot
Published: October 16 2008


先週末、日経新聞でCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の「清算機関」をめぐる議論がいくつか掲載されている中で、少し誤解を招く記述がありました。


特に下記の記述は、事実と少し異なるように思います。

「損失肩代わり商品(CDS)の場合、世界のどこにも清算機関がなく、個々の金融機関が事務作業をこなしている。清算機関ができれば資金の流れを効率良くできるほか、事務作業も軽くなる。市場規模も把握しやすくなり、市場の安定性が高まる効果も期待できる。」
(10月24日日経新聞朝刊「きょうのことば」)


恐らく、「清算機関」の定義が曖昧なので誤解が生じているのだと思うのですが、日本で言う「清算機関」、つまり、債務を引き受けて売り手と買い手の資金を仲立ちする組織は、米国ではDTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)にあたります。ロイターの記事では「決済機関」と書いていますが、業務内容は東証の清算機関と変わりません。また、世界で発行されているCDSのほとんどがDTCCを介しているため、実態把握はかなりの程度できているようです。


一方、前のブログ記事でロイターからリーマン関連債権の清算についての記事を抜粋しましたが、CDSの可能性について示唆する画期的な出来事だったにも関わらず、あまり報道されていません。


欧米の清算・決済機関の全体像を整理するまでには及びませんが、少なくともFTで報道されている内容からいくつか気になる動きをご紹介したいと思います。




(1) 3650億ドル→52億ドル

リーマン・ブラザーズが破産申告をした直後、同社が発行した債権やそれに関連する金融派生商品の債務不履行によってCDSの売り手である金融機関やヘッジファンドの損失が膨れ上がるという憶測が広まりました。そして、誰も正確な価格を掴めずに疑心暗鬼に陥った結果、銀行間取引が細り、株価が急落します。

10月10日行われた入札の結果、リーマンが発行していた債権の決済価格を8.625%に決定しました。よって残りの91.375%の損失をプロテクション(保証)の売り手が支払わなければならないことになります。その額(想定元本)が3650億ドル程度と見られていたわけです。しかし、蓋を開けてみれば、支払い額は52億ドルに収まりました。



なぜでしょう?


下の図で、考えるとわかりやすいです。

取引に参加しているAさんが売り手として買い手であるBさんに1万円支払います。しかし、同時にBさんはCさんに対しての売り手でもあり、1万円支払い、さらにCさんはAさんに1.1万円支払うと、この取引の想定元本は3.1万円でも実際に発生するのはAさんの利益0.1万円とCさんの損失0.1万円だけです。


cds



しかし、例えば、Aさんが急に消えてしまった(債務不履行)とします。すると、損失額は1万円に膨れあがります。BさんとCさんはリスクをヘッジしていたはずが、突然無効になってしまうのです。このリスクのことを「カウンター・パーティー・リスク(counter party risk)」と言います。

さらに、参加者が膨大になり、複雑に取引が行われるようになると、一人が抜け落ちただけで連鎖的に多くの損失を生み出してしまう可能性も考えられます。これを「システミック・リスク(systemic risk)」と呼んで、CDSが孕む最も大きな問題として議論されているわけです。



リーマン・ブラザーズの件でも危惧されていたのがこの「カウンター・パーティー・リスク」で、プロテクションの買い手が支払いをするだけの十分な資本を持ち合わせていないのではないかという不安が広まったのです。

しかし、結果的に予測していた支払額の1.5%にも満たなかったのです。その理由として、破綻する前にリーマンの格付けが落ちていたので、CDSに対する担保を増やすように要請していた、リスクが広く分散していたために負担が少なかったなど肯定的な意見がある一方で、支払いのために証券の現金化が急増し、株価が急落したのだという否定的な見方もあります。



(2)DTCC(The Depository Trust and Clearing Corporation)とCLSBank

リーマンの一件で、CDSの是非について問うのは早急に過ぎますが、各紙で報道されているよりもずっと迅速かつ、組織的にCDSの処理がおこなわれていることは評価するべきではないかと思います。


この問題に興味を持たれた方は是非DTCCのホームページを見てみてください。

DTCCは、世界110カ国で発行されている債権や金融派生商品(総額40兆ドル)を扱い、2007年の清算額は1860兆ドルに達します。2006年11月に電子取引情報を一括で管理する ’automated Traded Information Warehouse’ を立ち上げ、31カ国の1100のバイサイド機関によるCDS取引の情報が登録され、世界のCDS取引の大部分を占めているそうです。債務不履行になった債権はDTCCが引き受け、まずバイラテラルベースでネッティング(差引勘定)をおこない、さらにCLSBankに転送して外国為替決済制度に準拠したマルチラテラルベースでネッティングをおこないます。現在、ほとんどのCDSディーラーはCLSBankで決済をしており、2009年末にはほぼ全市場参加者が同じ方法で清算・決済をおこなう見通しであると書かれています。


詳細はさておき、まずは、相対取引はデータが一元化されておらず、誰も状況を把握できていないという誤解は解けました。


The idea that the industry lacks a central registry for over-the-counter (OTC) credit default swaps (CDS) is grossly misleading and has resulted in inaccurate speculation on a number of matters, including the overall size of the market, its role in the mortgage crisis, and the size of potential payment obligations under credit default swaps relating to Lehman Brothers. The extent to which such speculation has fueled last week’s market turmoil is difficult to determine. The facts are these:
(New York, October 11, 2008, ”DTCC Addresses Misconceptions About the Credit Default Swap Market” DTCCホームページより)


またDTCCは、上述のように、CDS市場の規模、サブプライム問題との関係、リーマン関連のCDSで発生する支払額について(この記事はネッティングが行われる前に書かれています)誤解があると指摘しています。


まず一点目は市場の規模。

「これまでのCDS市場に関する調査はヒアリングを基にしているため、「想定元本」には売り手と買い手の両方の取引額が重複してしまっている。我々のデータベースを基にすると、CDSのコントラクト(契約)は総額34.8兆ドル程度になる。」
(日経新聞→「六月末の取引残高(想定元本)は全世界で五十四兆ドル(約五千四百兆円)に達し、日本の残高は八十兆円程度に上るとみられる。」)


二点目は、サブプライム問題との関連について。

「モーゲージ・ローンに関連するCDSは全体の1%にすぎない。」


三点目は、リーマン関連のCDSについて。

「(リーマン関連のCDSで先週株式市場が混乱に陥ってしまったが、)我々の試算では、今回の清算で実際に支払いが発生する額は60億ドル程度である。」
(当初は想定元本3650億ドルに見合う支払額を予想して市場が混乱していました。)

このように、かなり精度の高い情報を相対取引であっても出すことはできるのです。



(3)東証とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が目指すもの

現在のCDSの清算システムで問題視されている点の一つが、グローバルな取引を処理するための横断性の欠如で、欧州のいくつかの国では独自のシステムを持っているために情報が一元化されていないと言われています。しかし、この問題についてもDTCCは既に動き始めており、欧州のメジャーな清算機関であるLCH.Clearnetの買収計画が実現します。

The financial pipework needs a transatlantic plumber
Published: October 23 2008

DTCC and LCH.Clearnet eye clearing house tie-up
Published: October 23 2008


以上見てきたように、メディアでは問題視されている「相対取引」(Over-the-counter CDS)でも実態を把握している機関はちゃんとあるのです。しかも、先の買収計画に見られるように国際的な組織として機能するように積極的に動き始めています。


では、メディアで頻繁に取り上げられ、11月の金融サミットで協議される「清算機関」とは何なのでしょうか?

その主要プレイヤーは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で、株式・原油・穀物・貴金属の先物などを幅広く扱う世界最大のデリバティブ取引所として知られています。しかも、FTやホームページを見ている限り、前述の組織とは連携していないようなのです。

日経新聞とFTからわかることは、CMEがもっとも問題にしていることは、「カウンター・パーティー・リスク」だということです。つまり、ひとつの清算機関が債権を引き受けてネッティングするという方法では、最悪の場合取引が破綻してしまう危険性があるということ。従って、CDSの取引を株式やコモディティの先物取引と同じように「自由化」するのが理想だと考えています。

取引を自由化すれば、時価ベースですぐにCDSの価格を誰もが入手することができるので、より安全であり、さらに監督当局も情報を得やすくなります。

一方で、ヘッジファンドは情報が透明な環境では利益を出しにくい性質をもつので、主要なプレイヤーがいなくなってしまう可能性もあり、さらに昨年見られたコモディティ価格の高騰のように思わぬ副作用が表れる危険性もあります。

CDSは、そもそも保証をすることを目的に作られた、実態のないものです。これが市場で自由に取引されるようになると、とても管理できる状況ではなくなりそうですが、どうなのでしょうか? CDSの性格について様々なステーク・ホルダーの観点から検証する必要があるのではないかと思います。





米リーマンのCDS清算、支払額52億ドルにとどまる=決済機関
2008年10月23日 07:07

[ニューヨーク 22日 ロイター] 大手決済機関のデポジトリー・トラスト・クリアリング・コープ(DTCC)によると、破たんした米リーマン・ブラザーズのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS、推計4000億ドル)は、保証支払額が52億ドルとなり、一部が懸念していたほど大きくならなかった。

リーマンCDSは21日が決済日となっていた。清算価値が9%弱に決まっていたため、プロテクションの売り手側は3650億ドルの保証支払いを迫られるとの観測が市場では流れていた。

アナリストによると、ディーラーや一部ヘッジファンドなど主要な市場参加者はプロテクションの売りと買いを同時に行っていたため、利益と損失が相殺されたもよう。

DTCCは55兆ドル規模とされるCDS取引で清算の大半を行っている。




これが、本当だとすれば、CDSについて色々考えさせられますね、、。





CDO
CLO
ABS
CDS
CDS of CDO
ABCDS
LCDS
CDO2 CDOsquared
CDO3 CDOcubed
、、、。

最初、何かの冗談かと思ったのですが、どれも金融派生商品のAbbreviation(略称)です。この他にもまだまだあり、FTでは「アルファベット・スープ」と称され、市民権を得ています。


(関連記事)
Protection promise offered by CDSs
By Paul J Davies
Published: August 28 2006


CDS of CDOs spice up the alphabet soup
By Paul J Davies
Published: August 28 2006



さて、以前にCDOとCDSの違いについて「真逆」という説明をしました。


ですが、新聞を読むと、同じように「悪玉」として取り上げられていて、何がなんだかわからないという方、いらっしゃいませんか?

実は、この二つの金融派生商品はお互いに補完し合っているために、問題を複雑に見せています。


結論から言うと、「CDOを売るためには、CDSが必要だった」のです。




CDOは借入れ資産(債権やローン)を担保にしているので、破綻した際のリスクがあります。投資家は、このリスクをとることで、利子の支払いを受けるわけなのですが、できるだけ軽減したいと思うのが普通です。そこで登場するのがCDSです。

CDS of CDO」という商品は、CDOが不履行になった場合の保証をします。「ABCDS」は、同じくAsset Backed Securities(資産担保証券)が不履行になった場合の保証をします。さらに、CDOの中にCDSを組み入れてしまうことも可能で、これはかなり普及しました。これを日本語では「合成CDO」と呼んでいます。英語では通常の債権やローンだけで組成されているCDOを”cash CDO”、CDSのように他の金融派生商品も組み入れた合成CDOを”synthetic CDO”と呼んでいます。ちなみにCDO2(CDOsquared)やCDO3(CDOcubed)も合成CDOの仲間ですが、これは”CDO of CDO of CDO”ということで、「又貸し」を何度もやっているようなイメージでしょうか、、。

なぜ、このような商品が生まれたのか、ABCDSに関する記事を読むととても明快です。

What wager can you place if you believe the US housing market is going to stumble, knocking the wind out of consumer spending?
(もし米国の住宅市場が崩壊して、消費が停滞すると予測したならば、どこに投資すればいいと思いますか?)

One answer is to bet that the value of bonds backed by risky home loans will fall. That would happen if payment defaults on the loans became more common.
(一つの方法は、高リスクの住宅ローンを担保にした証券の価値が下がるという賭けに投資することです。ローンの債務不履行が一般的なれば賭けに勝つことになります。)

The buyer of insurance, or protection expects to make money if the value of the reference ABS falls—the same effect as selling the relevant bond short.
(保証、プロテクションの買い手は、ABSの価値が下がることで儲けようとします。ABSを空売りするのと同じことです。)

つまり、投資家はリスクをとって高い利回りを得ようとすると同時に、しっかり保険もかけていたわけです。そしてさらに、単純なCDOやCDSだけでは利回りを得にくくなったために、複雑な金融工学を駆使した高利回りな商品が開発されていきました。




現在、この保険=CDSが膨大な量になっており、問題になっています。CDOそのものは、株式と同じで元本は保証されていません。しかし、CDSがつくと、約束した保証金を支払わなければならないのです。単純に債権やローンに対する保証であれば、計算するのは簡単ですが、CDOやABSのCDSとなると、そもそもいくら保証しなければならないのか、わけがわかりません。何しろ、CDSがCDOを保証し、その中に他のCDOやADSを保証するCDSが組み入れられ、そのCDOは入れ子構造になっていることもあるのです、、。


しかし、FTの記事を拾い読みしている限りでは、問題は危惧するほどには発展しないのではないかと少し希望を持ち始めました。

Analysis: CDO values in free-fall
By Paul J Davies
Published: August 18 2008


(以下は、私個人の勝手な予想です。)

その第一の理由は、CDSの空売り規制がなかったために、CDSの価格が高騰しているからです。CDSを組成する際の「買い手」はほとんどが金融機関だったといいます。買い手がみつからなかったために、金融機関が自ら保有するしかなかったのですが、ヘッジファンドがCDSの買い持ちを増やしているのであれば、その分の利鞘を得ているはず。これによって少なくとも自ら保証したCDOや債権・ローンなどの保証金を払うことはできるのではないでしょうか? 

第二の理由は、ほとんどの合成CDOが言われているほど複雑ではなさそうだということです。FTの記事によると、合成CDOの70%が2006年から2007年にかけて組成されています。この時期、一般的なCDOのスプレッドが高まり、高い利回りを得るための商品を開発する必要がありました。その特徴はレバレッジが高く、満期が長く、最小限の分散効果に抑えられ、格付けが相対的に低い商品が組み込まれていることだと言います。(BBB格付けの「メザニン」が多い。)特に金融関連の債権やローンが多かったそうです。そうなると、金融機関さえ破綻しなければ、債務不履行になる可能性が低いことにならないでしょうか?

CDSはすべての問題の「元凶」として見られる傾向がありですが、そもそもの目的を考えると、むしろその効果をきちんと発揮できるように後押しした方がいいのではないかと、少し思いました。


以下は、クレディ・スイスの専門家の意見です。

Vaibhav Piplapure, global head of CDOs at Credit Suisse in London, says that of all structured credit assets, investment grade single tranche synthetics are among the least affected from the view of long-term credit losses and are often the smallest part of structured credit portfolios by notional value.

投資適格(トリプルB格以上)のトランシェは、長期間で見て信用収縮の影響を最も受けにくい商品であり、ストラクチャード・クレジット・ポートフォリオのごく一部にしか含まれていないはず。

”The fact that most holdings are not mark-to-market means investors are much more able to put the problems in perspective because credit spreads are implying losses far greater than most expect to see in their investment grade credit portfolios,”

時価会計によらない資産をもつ投資家は、クレジット・ポートフォリオそのものが債権市場の落ち込みによって損失が大きくなるなかで、大局的に問題に取り組むことができる。

"Most investment grade CDOs are managed and most allow various forms of portfolio rebalancing to substitute riskier credits.”

ほとんどの投資適格CDOは運用されており、高リスクのクレジット商品を入れ替えてポートフォリオを再組成できる。

“Banks have finally come to the realisation that they need a system-wide solution for their structured credit portfolios, which are made up mainly of dollar-based ABS [asset backed bonds], CLO and CDO assets.”

銀行のストラクチャード・クレジット・ポートフォリオは、ドルベースのABS,CLO,CDO資産で構成されているが、それを運用するための体系的なソリューションが必要であることに漸く気付き始めている。



一方で、リーマン破綻による影響が日本の金融機関にも及んでいます。損失を出しているのは、リーマン関連のCDSの「売り手」です。このCDSを含んだCDOが元本割れになっているというのです。となると、そのCDOを保証しているCDSはないのか? どうしようもなく想像は膨らんでしまいます、、。







いくつか使えそうなフレーズをピックアップしてみました。

(1) I’m not in the right position to say anything about …, but,

「・・・について言える立場ではないのですが、」
(ゆうちょについて語っている場面で使っています。)


(2) It’s difficult to say anything concrete at this point.

「今の段階で断言することは難しいのですが、」
(円高について語っている場面)


(3) In that sense, In that regard,

「その意味では」
(何度も出てきます。)


(4)As you have pointed out…

「ご指摘になられたように、」

なぜか、このフレーズを聞くと、「この人デキルな。」と思います。きちんと相手の言っていることを聞いている、コミュニケーションをとっている事がわかるからでしょうか?





ビデオはこちら


本日は、The View from the Marketsで竹中平蔵元財務大臣が迎えられました。

印象的だったのが、インタビューアーが日本と中国が欧米に投資をすることで世界経済に貢献する可能性を探っていることです。竹中氏は、一つのアイディアとして郵貯が欧米への投資を行う方法を指摘しています。
”Asian countries have assets, so I believe there are some room to start something new that can contribute to the world economy”という指摘も印象的でした。日本は歴史的に世界の潮流から一歩遅れて、新しい技術やアイディアを吸収し、洗練させることに成功してきた国だと思います。欧米の失敗から学び、より精度が高く、安全な金融システムを作りだすために必要な条件は揃っていると見ることもできるのではないでしょうか?
“start something new”―今の悲観論一色のメディアからは残念ながら聞こえてこない言葉です。




(1) on lessons from the Japan’s banking crisis

From 2003, you oversaw the final cleanup of the Japanese banking system after years in which Japanese authorities divered (not got the heart of the problem) for some time. My question is, have American and the Europeans done enough in terms of the financial system cleanup or is there more to come?

日本のバブル崩壊と今回の金融危機とでは、性質が異なります。日本が経験したのは銀行業の危機であり、今回はマネー・マーケットの危機です。ただし、両方に共通して重要なのが政府が実行力を示すことであり、その最もわかりやすい方法が資本注入ということになります。しかし、日本の経験から言えることは、資本注入だけでは不十分だということです。日本は資本注入してから4年間も危機が続きました。その理由は、政府がアセット・アセスメントを正確におこなう指標を持ち合わせていなかったからです。一番理想的なのは、最初にアセット・アセスメントをおこない、それに基づいて十分な資本注入をおこなうことですが、日本でも欧米でもそれができていません。日本の場合は、ローン資産だけでしたが、今回は非常に複雑な商品を扱うことになるので、問題です。アセット・アセスメントを正確に行うためのフレームワークをつくる努力が必要だと考えます。

Yen has been strengthening in the recent days, as the carry trade is kind of unwheeled. How far do you expect this to go in terms of the yens level against dollar/euro?

GDPや購買力平価など、いくつかの経済指標を見る限り、今の円の価値は高すぎます。しばらくしたら、もう少し低い水準に戻ると思います。政府の介入は短期的には効果を発揮しますが、長期的に必要なのは、構造改革を進めて、内需を刺激することです。



(2) on role Japan should play in solving crisis

With no external demand from America and Europe, what is to prevent this situation just becoming worse and worse spiralling downwards?

これまで日本は確かに外需と円安によって輸出分野で成功してきたといえます。しかし、今は世界的な不況期に突入していて、状況を救えるようなアンカー・プレイヤーは存在しません。
日本の金融機関については打撃が少ないのですから、政府は構造改革を進めるべきです。

Are you saying that by doing that, Japan could stimulate demand and act as a kind of a motor for the global economy?

日本は世界第二位の経済大国であることは変わらず、GDPは世界の9%程度占めています。その意味で日本経済が1~3%程度成長を続けることは世界経済、中でもアジア経済の成長に寄与することになるでしょう。

In the Asian context, what can individual countries like Japan and China do to set the agenda?

例えば、アジアの国々は多くの外貨準備金をもっています。もし中国や日本がこの資産を使って欧米に投資すれば、他のアジアの国々にも良いインパクトを与えるはずです。資産をうまく利用して、世界経済に貢献するような、何か新しいことを始める余裕はあると言えます。日本には「国民年金」という世界最大のSWFがあり、中国には外貨建て資産があります。これを一部欧米への投資にまわすということは十分に考えられることです。

In Japan there has been a lot of resistance to the idea of SWF to put risk on capital, what do you think has changed?

金融は非常にテクニカルな問題なので、政治家もメディアに理解してもらうのはなかなか難しい。しかし、今国民年金の大部分は米長期国債で運用されており、不十分であることは明らかです。額が少なければ、民間部門への投資も考え得ると思います。

Japanese financial institutions have become more prominent in the world stage. Do you think they are prepared in terms of management and experties to play a big role now?

野村HDやMUFGの件については様々な意見がありますが、私は「プロアクティブ」(先を見越して行動する)な決断は評価できると思います。その意味で個人的に期待しているのは、日本郵政グループによる積極的な行動です。ゆうちょ銀の資産をうまく使えば、米国にも貢献できるし、新たなビジネスの開拓という意味でも非常に建設的な方法なのではないでしょうか?


(3) on global recessions effect on Asia

How far is this recession going to effect the Asian economies?

アジアの新興国のほとんどが輸出型産業なので、金融危機の影響は当然大きくなります。しかし、それでも中国は8~9%の成長を維持するわけで、ディカップリングする部分も持ち合わせています。アジアの国々の成長は減速はしますが、それでも続くと思います。

Do you think countries in Asia can do anything collectively to counter this crisis?

ユニラテラリズムとマルチラテラリズムのどちらが有効かという問題にもつながると思いますが、今回の欧州の事例で見たように、まず英国が行動して、他国が後を追わざるを得ないようなシナリオも考え得るわけで、強いリーダーシップを発揮する国が行動することで協調を促すことも可能だと思います。


You are talking about deregulation,privitisation and reform. In a time when those concepts are out of fashion, or are being at least heavily criticized, do you think these are 'dirty words' in Asia?

日本でも残念ながら、ポピュリズムの傾向が強くなっています。しかし、日本経済の成長はこれまでの方法では維持できないことは明らかです。しばらくは、今の傾向が続くかもしれませんが、成長率が落ち、税金が高くなれば国民はまた改革の必要性を認識することになると思います。



(関連記事)
Realm of the fantastic takes hold of credit insurance rates
By Paul J Davies
Published: October 24 2008

Recession and debt fears spur sell-off
By Anousha Sakoui, David Oakley and Paul J Davies
Published: October 24 2008


「10万ポンド(1,464万円)の車を買ったとして、5万ポンドの保証金を5年で払わなければならないような状況。」


デイビーズ氏は昨日のiTraxx Europe Crossoverのインデックス・レートについて、このように表現しています。最高値の800べーシス・ポイントは、1年で8%の保証、つまり5年間で40%の保証をするということになります。元金が1000万ポンドであれば、保証金は400万ポンドです。


itraxx




個別の企業を見ると、どれだけ企業がお金を借りるのに大変な思いをしているかわかります。フランスのセメント会社、Lafarge社は1000万ポンド借りるのに1年で55万ポンド、5年で225万ポンドの保証金を支払わなければならない。モルガン・スタンレーは元金の20%を頭金として支払った上で、さらに年間0.5%の保証金を支払わなければならなかった。昨日、特にCDSのレートが跳ね上がったのが資源・エネルギー、新興国の関連株で、他にThyssen Krupp(ドイツ)、Repsol(スペイン)、Enel社(イタリア)が挙げられます。


Thyssen Krupp社のホームページを覗いてみました。事業内容をビデオでざっと把握すると、カナダのオイルサンドや中国のプロジェクトなどここ数年主役に躍り出たテーマが目白押しです。(このビデオ、とても面白いので是非見てみてください。ちょっとした「社会科見学」になります。)ところが、株価を見るとご覧の通りです。そして、1,000万ボンドの社債発行に対して必要な保証金は5年間で180万ポンドに跳ね上がりました。


thyssen



では、なぜCDSがここまで跳ね上がっているのか?


デイビーズ氏は次のように解説しています。

①債権そのものの価格が下落し、リスクを回避できる投資対象がCDSくらいしかない。

②銀行が貸付を渋っているなかで、企業はCDSのレートを基準利回りにして借入れをせざるを得なくなった。

③これまで金融機関に集中していたデフォルト・リスクが今度は企業に及んだ。売上債権やサプライ・チェーン・ファイナンスで取っているリスクを回避するためにも利用される。




②については、ノキア社(フィンランド)がCDSの変動レートを基準に借入れをする方針を発表しており、今後同様のケースが増えると考えられています。景気が回復してくれば、CDSのレートは下がり、借入れ条件が改善することになりますが、不安定なバランスシートを抱えることになります。

また、破綻の危険性がでてきているのは、会社だけではありません。新興国の通貨価値が激減し、デフォルト・リスクが高まっています。社債だけはなく、国債の指標についてもsoverign CDSとしてネット上で公開されるそうです。それだけ、メジャーな投資対象になったということだと思います。





突然ですが、CDOとCDSの違いについて説明できますか?



アルファベットにすると、異なるのは一文字だけなのですが、その内容は「真逆」です。


●CDOは、Collaterized Debt Obligationの略称です。Collateralは担保という意味で、Debt Obligation、つまり「企業などの借り入れ(=社債・ローン)」を「担保にした」証券化商品という意味になります。企業が将来お金を返してくれることを当てにして、第三者に又貸しするような構図です。

企業A (格付けAAA=「絶対大丈夫」)

 ↓ ①社債・ローン発行(借入れ)

金融機関B 

 ↓ ②証券発行(「①の返済から将来返せますよ。」)

投資家C (証券を買って利回りで儲ける。リスクが高ければ利回りも高い。)


(実際には、金融機関がSPV(特別目的会社)を介して、企業の負債を買い取り、証券を投資家から募って運用するという方法を取ります。)


企業Aが破綻した場合、債権やローンは債務不履行になり、投資家Cは損をすることになります。しかし、高度に発達した金融工学では、投資信託のように複数の債権やローンをプールしてリスクを分散し、さらに別の金融派生商品を組み入れてリスクを最小限に抑えることができます。マネージャーの力量でポートフォリオの運用成績が決まるのは、投資信託と同じです。
プールされた複数企業の債権やローンは、投資家が負うリスクの大きさに従って、いくつかの「階層」(トランシェ)に切り分けられます。AAA格債務担保証券「シニア」、BBB格債務担保証券「メザニン」、格付け無し債務担保証券「エクイティ」などがあります。企業が破綻した場合には、このトランシェによって払い戻しの額が決まるわけです。

この商品の背景には、企業などの借り手に対する信用(クレジット)が前提としてあり、株式や債権と同じように、景気や企業の業績が良好な中で、価格が上昇していきます。

債務の対象は企業だけではなく、今回の金融危機の発端となった個人の住宅ローンにも及び、通常ではあり得ないような相手に信用(クレジット)を賦与して取引を行っていたわけです。



●CDSは、Credit Default Swapの略称です。つまり、企業の債務がデフォルト(不履行)した場合の保証をするために開発された金融商品です。
投資家Cが企業Aは倒産する可能性があるので、貸し出し(社債発行)をするのに保証が必要だと考えたとします。そこで、金融機関に保証料を支払い、企業が倒産した場合には元本を保証してもらうという契約をします。




企業A (格付けCCC=「破綻?」)

 ↓ ①社債発行(借入れ)

投資家C

 ↓ ②CDS発行(保証料支払い) (「もし、企業Aが破綻したら、保証してくださいね。」)

金融機関B (保証料で儲ける。もし企業Aが破綻したら、投資家Cに元本を支払う。)



実際には投資家Cがプロテクション(保証)の買い手、金融機関Bがプロテクションの売り手としてスワップ取引をおこないます。

CDOの価値は企業や経済の信用が増すと上昇するのに対して、CDSの価値は会社のデフォルト・リスクが増すに連れて上昇するということになります。

複数の企業のCDSを指数化したのが、iTraxx指数です。iTraxx指数は、IICという組織が組成、管理(Markit社が請負)しており、6ヵ月ごとに組み入れ率などを見直しています。地域と保証年数によって分類されており、例えば、iTraxx Europe index は、ヨーロッパのトリプルB以上の格付をもつ125社の債権を組み入れ、3年物、5年物、10年物などがあります。iTraxx Crossover Indexは、ジャンクボンドに相当する45社の債権を組み入れています。

この指数は市場で自由に取引ができるので、投資家は売り持ち/買い持ちによって投機をすることができます。指数が上がっていれば、市場が企業のデフォルト・リスクが増していると考えていることになります。下がっていれば、企業への信頼(クレジット)が増しているという見方が大勢だということになります。金融危機が深刻化する中で、株式市場については空売り規制をおこなう国が多かったのですが、クレジット・マーケットについては規制がなく、ヘッジファンドがCDSの売買でかなりの儲けを出したようです。






ウォルマートのCEOリー・スコット氏のコメントです。

“Meeting social and environmental standards is not optional,”
(社会規範や環境基準への準拠は、任意事項ではない。)


相手に何かを指示する際に、「われわれに選択肢はない。」「この命令は絶対だ。」というような強いニュアンスが加わります。

….is not optional.
(任意事項ではない。)

似たような意味では、下記のような例文が思いつきます。

We have no option. 
There is no option.

(選択の余地がない。)

You have no choice but to follow his orders.
彼の命令に従うしか(選択肢が)ない。


では、
That’s not an option.
とは、どういう意味でしょう?


これは、「選択肢の中にない」ということ。つまり、「絶対に嫌だ」「絶対に駄目だ」「考えられない」というような意味になります。

“Going out in this cold weather is not an option.”
(この寒い中、外に出かけるのは絶対に嫌だ。)

“If that’s not your option, then why don’t you stay home and play Nintendo.”
(それが嫌なら、家で任天堂のゲームでもしていれば?)