イーティーズ・プレイスの星空観測行 -7ページ目

イーティーズ・プレイスの星空観測行

岩手の移動天文台、「イーティーズ・プレイス」による、星空と天体の観測記録。 http://www.justmystage.com/home/etplace/

数日前、花巻市内で営業後、個人的に(とは言っても、HP用の観測・撮影も含むので、半営業)観測しようと紫波町~雫石町~滝沢村を深夜にさまよった経緯(*)もあり、この日は、最初から静かに落ち着いて観測できる(はずの)沿岸部は大船渡市の山中に直行しました。

(*)3月28日夜の営業後、観測のために紫波町に行きましたが、大気の状態が思わしくなく、しばらく待機した後に網張に移動しました。気温が急速に下がっており、日中降った雨が凍って駐車場は全面がアイスリンクのような状態です。それは別に構わないのですが、その駐車場ではスケート遊び(?!)をする車が数台。もう真夜中なのに。落ち着いて星見どころではなさそうでしたので、何もせずに滝沢村へ再移動。お気に入りの場所は、どこも雪が積もって凍った状態。冬場は除雪用にスコップを常備しているのですが、この日の朝に降ろしてしまっており、どうにもならず結局ただあちこちドライブして帰宅したという顛末でした。

出迎えてくれたのは、野生のホンシュウジカが数頭。暴風警報を始め、濃霧・波浪注意報も出されていた地域ですが、観測地は北側の山が風を防いでくれる場所で、それほど気になりません。遠くの森や林からは、グォ~と木々が揺れる激しい音が聞こえてはいますが。上空の雲の流れは速く、晴れ間が広がってきています。夜行性のシカたちは、私の存在は無視するかのように、山の斜面を行ったり来たりしながら、食事中?

予報どおりに、22:00頃からはほとんど快晴となり、観測準備も完了。ニュートン式反射望遠鏡がメイン機材ですので、鏡筒内の気流が安定するまでしばらく時間がかかります。それまでは、周囲でこちらを見ているであろう、姿は見えざれども少なからぬ数のシカと一緒に月見をしているという体で、時間を過ごしました。月没まで2時間強という頃。

撮影の主な対象は、夏の星座(さそり座~いて座を中心に)の星雲・星団です。メシエ天体がメインですが、それ以外にも観測・撮影のリストに入っている天体が相当数あります。いずれもかなり暗い天体ですので、月明かりの中では十分に描写できませんので、月が沈んでからの撮影です。そして、01:29月没。直後、北の方角から大きな雲の塊がモワァ~ッと押し寄せてきてあっという間に空全体を包んでしまいました。流れてはいるようでしたので、通り過ぎるのを待つしかありません。長~~~い1時間です。


いて座のM22(球状星団)/M24(散開星団)/M25(散開)

4時近くになれば、もう東の空はうっすらと明るくなってきますので、撮影可能だったのはわずかに1時間程度で、今回はいて座のM天体3つで精一杯。HPの「メシエ天体」ページ用の画像ですが、今のところの撮り残しのほとんどはいて座内の天体ですので、これからの1ヶ月で全M天体の撮影は終わりそうです。

4月1日午前4時、気温-2度。東~南の空に見えているのは夏の星座たち。春まだ遠い北国の四月です。今年になって初めて、さそり座、いて座、夏の大三角、そして夏の天の川を撮影しておしまい。朝方に再び様子見(?)に来た数頭のシカたちも山中に戻りましたので、こちらも撤収、帰宅となりました。


さそり座といて座


夏の大三角(上:ベガ/左下:デネブ/右下:アルタイル)

シカの生態はよく分かりませんし、群れの構成や作り方も知りませんので何とも言えないのですが、私がよく行く場所では、結構なところまで近づいてくるのは、見た目(大きさや毛色・つやなど)による判断では、比較的若い感じのメスが多いように思うのですが・・・ひょっとして私のファンだったりして。
三月後半は天気が荒れ気味で、スッキリと晴れた日はほとんどなし。沿岸地域で何日か好天の日はありましたが、内陸はもう悲惨、冬に逆戻りしたかのように、ほとんど真冬日だったり、「もっつもっつ」と大きな雪片が舞い落ちてきたりと、星空観望は全くできない日々。そんな中、19日からの週に、岩泉町に数日間滞在する機会がありました。「イングリッシュサポート」ということで、高校生と英語の集中勉強です。恥ずかしながら「外部講師」ということで。

折よく、20日と22日にはISSが好条件で通過する光跡を見ることができましたので、早朝から頑張って撮影してみました。前宣伝(?)のせいか、生徒諸君の中にも早起きして見た者が何人か。幸い、この2日間だけ天気がよく、月明かりのない中、マイナス等級のISSが頭上を、そして北の空を駆け抜けていく光がしばし寒さを忘れさせ(てはくれないわけで・・・)。


この日は岩手県南部上空を通過

さて、今月の最大の見ものの一つ、「金星と三日月と木星が縦一列に並ぶ」という現象が26日にありました。内陸は例によって曇りや雪の予報でしたので、ここは迷わず遠征。最も晴れ(快晴)の可能性が高そうな宮古市沿岸へ。宮古港を見渡す浜での観測・撮影です。周囲の瓦礫は片付けられたとはいえ、以前は冷凍施設や船着き場もあって夜間でも人や車がかなり通っていた場所です。今は、あたりは真っ暗、魚市場の光もなく、遠く山腹に建つ家々の灯りが届くのみです。

日没前、西の空にはかなり高いところまで分厚い雲がかかり、山地は激しい雪が降っている感じです。はたして予報どおりに晴れるのか、1時間後の天気が読めない雲の流れ、風の強さ、波の荒さ、です。それでも19:00前、日が沈んで1時間後あたりから、雲が消え始め、20時頃にはほぼ快晴の状態で風も止んできました。予報(GPV)では、22:00頃までは雲量の少ない晴れの領域に入っているはずです。気象庁は、昼時点の予報では、18:00~21:00を「曇り」と出していましたが、今宵も大はずれ。GPVが当たって気象庁がはずれ、って何故なんでしょう。

今回の撮影は、動画(微速度撮影動画)作成を目的とするものでしたので、2台のカメラで、焦点距離を広角と(やや)望遠に設定して、三天体の動きを描写することとしました。2惑星の光輝はもちろん、三日月の地球照や周囲の星々の輝きも少しでも表現したかったので、試し撮りの結果、感度は少々高めにして露出時間は4秒と決定。また、1台はノイズ処理をON、もう1台はOFFにしてできあがりを比較してみることとしましたが、短い露出時間ゆえ、「おっ」というほどの違いは出ませんでした。

最終的には、2時間強でOFFの方では3000コマ超という数になってしまいましたが、画像処理はソフトが自動的にこなしてくれます。ソフトがなければ、と考えただけでぞっとします。手動でやったら何日かかるか分かったものではありません。フリーソフト(SiriusComp)の開発者に感謝の日々です(EDIUS NEOという、「有料」ソフトも併用していますが)。


通常動画は金星が沈むまで


比較明(インターバル)動画は木星の没まで


比較明動画も木星の没まで

色々試しながら、今回の動画は「豪華」三本立てということに。残念ながら、20:30分頃からの終盤にさしかかったところで雲が出始め、比較明動画の二本は、晴れていた時間帯で木星が沈むまでで終わりとしました。通常動画は、雲の動きもこれまた一興ということですので、最後の金星が沈むまでです。今回の動画を含めてこれまで29本をYouTubeに投稿しておりますので、お暇な時にどうぞ。

微速度動画集のページへ

撮影終了後、湿度が上がってきたのか、どうも周囲の空気がモヤモヤしてきたように感じ、晴れが続く予報が出ていた田野畑に移動して、寒い中、気分だけでも暖かくなろうということで、さそり座・いて座などの「夏の星座」の星雲・星団を見てこの日はおしまいということに相成りました。


散光星雲:へび座のM16(わし星雲)といて座のM17(オメガ星雲)

ところで、だいぶ前のブログ「真冬の幽霊」に書いた、山中での老人救出の日に購入したグリーンジャンボ宝くじですが、23日が抽選日で、1枚がめでたく下3桁大当たりでした。20枚買っていましたので、ちょっとだけプラスです。やはり何かがありそうですので、また山中でも、浜辺でも、街中でも、困っていそうな人には積極的に声をかけ、援助・救助そして売り場へGO!
ほどよい月明かりに誘われて、特に観測や撮影の当てもなく、空の暗い(人工光が少ない)方角へフラフラと。滝沢村のはずれ、すぐそこは雫石町、というあたりまで。寒空の中、ただぼう~っと星空を見上げているのもいいもんだ。ただ、職業病といいますか、体に染みついた悪癖といいましょうか、帰りしなに目に入った「すいかガスタンク」の前で駐車して撮影。以前にも撮ってはいますが、雪景の佇まいがなかなかの風情だったもので。

一旦は帰宅したものの、画像処理をする間に「そういえば」と思い出し、再びハンドルを握り、タンクつながりで盛岡市内のガス工場へ。日付変わって4日になった直後のこと。カメラを設置したのは某パチンコ店の駐車場でして、撮影を始めて間もなく、車を見かけた店員さんが近づいてきて、「敷地内の駐車は11時(23:00のこと)までなんですが・・・」とのこと。事情を説明して、「あと20~30分だけ何とか」と無理にお願いして、どうにか終了できました。ご迷惑をおかけしました。今度、打ちに行って寄付させていただきますのでw。


チャグチャグ馬コと特産スイカ(滝沢村)


さんさ踊り(盛岡市)


虎舞(釜石市)

これで、先日撮った、釜石市の虎舞タンクとあわせて、「ご当地ガスタンク三景」とあいなりまして、めでたしめでたし。ひょっとして他にもあるのかもしれないので、またどこかで見かけたら撮影してみます。都市ガスがあるのって、あとは水沢?花巻?一関は?まずは調べてから。

月齢10を過ぎた月は、03:00前には沈みますので、朝の薄明までの2時間弱は月明かりなしの星空が堪能できそうです。時間的にそう遠くには行けませんので、紫波町へ。すでに春の星座は西に傾き始め、夏の星座が結構な高さまで昇ってきています。あと少しでサソリのしっぽまでギリギリ見えそうです。いくつかの星団などを撮影したところで、一等星たちの輝きの美しさに、6個だけパチリ。方角による空の明るさや、それぞれの高度差もちょっとだけ考慮に入れながら、なるべく同じ条件になるように。


一口に「星」と言ってもそれぞれの美しさ

ちょうど時間となりまして、おしまい。なんだかんだ言って、今夜も結局ガッツリやっちゃいました。気温-8度、弥生三月春まだ遠し。体感的には「五寒二温」てところでしょうか。

そういえば、件のパチンコ店員さんの言うことには、「時間外に駐車していると、パトカーの職質がありますよ」とのこと。県内各地で職務質問を経験している私としては、特段どうということはないのですが、やはり昨今の情勢、できれば避けて通りたいところ。

深夜のパトロール、大変有り難くご苦労様という気持ちと同時に、あちこちでいろいろと見たり聞いたり体験したりするうちに、警官(というか警察組織かな?)に対して、昔とはまったく違う意味で「怖さ」を感じる今日この頃。ここだけの話、実は私、ICレコーダーを携帯しております。こんな形で「自己防衛」を考えなければならない現状って・・・どうなんでしょう。
3月1日、上弦。月明かりはまだまだ弱めながら、2月から始めた、沿岸被災地の現状撮影を再開しました。絶対に忘れてはならないこと、ずっと支援し続けることを改めて心に念じながら。11日になれば、あちこちでいろいろな催しが行われ、それを機に「さぁ、次に向かって気持ちを切り替えて」みたいな風潮が一気に広がって、急速に忘却の彼方に追いやられるような気がして・・・心配です。

29日には、ISSが岩手県北部上空を通過しますので、盛岡でも最大仰角が70°以上、光度は、ISSとしてはほぼ最大の-2.3等の予報です。県内全域晴れの予報でしたので、どこで見てもいいのですが、北西に見え始め、頭上を通過して東南東までという長径路でもあり、見え始めと見え終わりの両方を画角に収めたいということで、撮影方向が調整できる、陸前高田市の一本松へ。


見え始めの北西方向


見え終わりの東南東方向

両方向とも撮るには撮りましたが、見え始めの方は、何の写真か分からない感じ、見え終わりはあまりに中途半端、ということでこの2枚はずばっとボツ。見え始め画像に、金星と木星を入れることにこだわった結果、ヨコ版にしてしまい、せっかくの長径路を活かすことができなかったのが最大のミスです。それに伴って、見え終わり画像も何も考えずにヨコ版にしたことで、ほんのちょっとしか写らなかったということです。両方ともタテ版にしていれば、もう少し見られる画になったかと。

気を取り直して比較明撮影へ。陸前高田市街は、瓦礫は撤去されたとはいえ、その後はほとんどそのままで、海側に集積された状態が続いています。どのような復旧・復興になるのか、なかなか先が見えない状況でしょうか。近辺でほとんど唯一残された、「道の駅高田松原」の建物の上から撮ってみました。(旧)市街地中心方面と高田松原方面です。


降ったばかりの雪がとけず

撮影直後には曇り始めましたので、この日は終了し翌日へ・・・さて、3月に入り、その初日が下弦の月です。ISSの撮影も兼ねて、宮古市に入り、運動公園の瓦礫集積地へ。ISSは南天低く通過し、光度も0.4等と、暗めの光跡です。


地内では瓦礫の処理施設(?)が稼働中

遅い時間からは北部が曇ってくる予報でしたので、ここから南下して山田町へ。市街に入る手前、運動公園内に設けられた、県立病院の仮設診療所を撮影。


多くの関係者が頑張っておられます

さらに南下して釜石市へ。市内を通行中、新日鉄前の国道283号線の街路樹にシカが集まってなにやら食事中です。一頭が道にはみ出してきてあやうくぶつかりそうになりビックリという場面も。あれは何の木なのでしょう。シカの表情は、もちろん分かりませんが、「うまそうに」食していたようには見えました。月が傾き始めるまで一通り撮影し、あとは時間が許す限り、どこかで土星などを観測して帰ることとしました。

が、軽く観測、のつもりが結局いつもの大船渡まで移動・・・したまではよかったのですが、大気の状態が思わしくなく、湿度も高く、空全体がもや~っとした感じです。時刻は3月2日01:00。望遠鏡の設置は見合わせ様子を見ることに・・・したまではよかったのですが、睡魔の襲来により、薄明るくなるまで車の中でぐっすり寝ちゃいました、とさ。なにしろ、気温が前日より10度近くも高く、いつものとおりに着込んだら暖かくなっちゃって・・・。
大船渡市の五葉山麓、鷹生ダム展望所。2日前にも来たところですが、その時には、夜半から風が強まり、最終的にはほとんど地吹雪模様となって観測どころではなくなってしまいました。下の集落からは5kmほど離れており、近くにある温泉施設の営業が終われば、この時期には深夜から朝方にかけて道をとおる人はありません。山への登山道は冬期閉鎖になってますし。21:00には、ダム資料館の街灯も消えてほぼ真っ暗になります。

この日は、深夜からの通常観測・撮影。例によって、冬~春~夏の星座と主な星雲・星団・銀河を巡る一夜、の予定でした。オリオン座~いっかくじゅう座~ふたご座~おおいぬ座~しし座~おとめ座、あたりまで来たところで怪しい雪雲がゆっくりと広がってくる様子。そしてついに白いものがちらつき始め、それが徐々に強まってきました。


こんな感じで画像処理してHPで公開してます

03:00頃には望遠鏡にシートをかけて、様子を見ながら車内で待機です。すると、04:00頃でしたでしょうか、駐車場脇にある無人の資料館のドア?をたたくような音がします。かすかな光も見えます。こんな時間にこんな場所に人が来ることは・・・ありえません。しかも徒歩!望遠鏡を見かけて車の方に来るかもしれない、いったい何者なのだろう。車中でじっと息をひそめます。やがて、誰もいないと分かったのでしょう、人影は去っていきました。

雪が止む気配はなく、結局05:00頃には観測を諦めて撤収となりました。「晴れ」の予報を信じて遠征してきているわけですので、こんな時には「税金返せ!」と○○庁に向かって叫びたくもなります。もっとも、それほど払っているわけではありませんがw。

駐車場を出て数分、前方にかすかに人影のようなものが。近づいていくと、雪が積もり始めた道の真ん中を歩く、どうやら老人のようで、男性と女性、車のライトに気付いて急に振り向いて手を振り始めました。さすがに、ドキッとした瞬間です。近くの集落からは数kmも登ったところで、こんな場所で幽霊かお化けかと、一瞬青ざめました。「どうしました?」と尋ねたところ、車が故障して動かなくなったので、助けを求めに歩いてきた、とのこと。資料館のドアをたたいたのは、この人だったようです。

とりあえず車に乗ってもらって、その現場まで行くことに。Uターンして山道を登り始めたのですが、現場は五葉山への登山口に向かう道路で、冬期閉鎖の看板の真ん前です。温泉施設からでも数kmは登ったところで、何の目的でこんな場所まで来たのでしょうか。車が通った跡もほとんどありません。温泉に来たのだが、道に迷って、というようなことでしたが、営業中の温泉施設は照明も明るく大きな看板も出ていて、迷うような道でもないし、どうにも不思議な話。

放置された車は、キーを回してもエンジンがかかりません。バッテリーか?と思い、万が一のために常備してあるケーブルをつないでみましたが、それでもダメ。車内表示には、オイルとエンジン(燃料噴射)の警告灯が点灯しています。これは、エンジンそのもののトラブルのようなので、私の力では無理と判断。車内の必要な荷物を持って、自宅までお送りすることとしました。

それがまた、大船渡市街の外れの方で遠い。その間色々お話ししましたが、話す内容がなかなか理解できません。老人(男性はおそらく80歳前後、女性は80代後半と思われます)の、方言が豊富な言葉そのものと、話の内容に対する理解が十分にできません。まぁ、そうこうするうちにご自宅に着いたのですが、当初ご夫婦かと思っていたそのお二人、実は全く他人の、それぞれ別の住宅で一人暮らしの老人だった、という結末。

車を降りて歩く姿を改めて見ると、おばあさんは、いわゆる「よぼよぼ」状態で、放置された車の場所から私が遭遇したところまで、たぶん6~7kmはあるはずですので、頑張って歩いても5~6時間はかかったのではないでしょうか。深夜の、誰もいない、車も通らない、雪が降り積もる真っ暗な中を、老人2人で何時間もとぼとぼ歩く姿。携帯などの連絡手段もなく、小さな懐中電灯一つ、しかも-7度ぐらいの中を軽装で。

結局、状況はよく飲み込めませんでしたが、偶然にも「いいこと」をしたのかな、という結論。5年ぐらい前にも似たようなことがあり、それは岩手山の馬返し登山口(滝沢村)でのこと。山の反対側(八幡平市)から上り、道を間違えて全く方向違いの場所に下りてきてしまった、という秋田県からいらした年配のご夫婦でした。あたりは真っ暗で、そんな時間にとおる人も車もいません。たまたま天体観測に来た私の車のライトを見て、懸命に遠くから手を振る姿が見えました。

「タクシーが呼べるような場所まで」ということでしたが、せっかくなので、車を停めたという、山の向こう側の駐車場までお送りしました。その翌日、何の気なしに買った宝くじが1万円当選したことをふと思い出しましたので、今回もさっそく、「復興宝くじ」を購入した次第。日本の宝くじは、購入者にとっては、悪い言い方をすれば「体のいい搾取か税金」のようなものだと思うのですが、それを承知で買っているわけですので、まぁしょうがないかと。
15日02:04、2月の下弦の「瞬間」です。弦月(半月)の光量は、満月時の約8%ほどですので、比較明撮影はちょっと厳しくなってきました。最新のカメラであれば、感度が1万とか2万とか、数年前から考えれば、夢のような、嘘のような数値ですが、我が愛機はどんなに頑張っても1600、しかも露出時間が長くなればなるほど、ノイズ処理をしても熱カブリがたっぷり出る仕様です。

内陸(盛岡)も晴れの時間帯がありそうな予報でしたが、曇りや一時雪の可能性もありでしたので、終夜雲量の少なそうな沿岸北部へ。「被災地の今」の撮影も兼ねての遠征です。月の出は16日の02:00前ですので、それまでは通常観測と星雲・星団・銀河の撮影を中心としました。秋~冬の天体は早い時間に西に沈んでしまい、夜半からは春~夏の星座がそろい出します。

メシエ天体をいくつか撮影した後、これまで手を出さなかった暗いNGC天体に挑戦してみました。大望遠鏡やハッブル望遠鏡による、鮮明な画像では見慣れてはいますが、はたして小型望遠鏡で眼視・撮影はどの程度できるのか。数千万光年彼方の銀河を導入してシャッターを切ってみました。


いわゆる「特異銀河」というもの

近づいたり、接触(衝突)したりすることで相互作用した結果、形がゆがんだ銀河たちで、思ったよりうまく写りました。未来には、天の川銀河とアンドロメダ銀河も同じように接近遭遇して、衝突し巨大な新銀河になるらしいので、それを遠方の銀河の姿に見ている感じでしょうか。もっとも、衝突といっても、星々の間隔はきわめて離れているので、ガンガン星がぶつかることはないようですが。

月の出を機に、比較明撮影のために野田村に移動。大きな被害を受けた十府ヶ浦周辺に着いたのは03:00頃。それまで晴れていた空から雪が舞い始めました。北風も強まり、雪雲が空一面に広がっています。月もボンヤリとしてきて、ただでさえ心許ないその光りがほとんど消えかけています。波も荒く、山と積まれた瓦礫に風が当たって何とも形容しがたい音を発しています。この夜の撮影はどうにも無理そうでしたので、近くの道の駅に入り、ここは車中泊と決め込み、夜に期待をつなぎます。

16日の日中は快晴で推移しましたが、北風が強烈で、車も目の前の信号機もゆらゆらと揺れるほどです。一日中吹き荒れた風でしたが、復旧工事の関係者や往来する車や人、事故でもなければいいが、と心配になるほどでした。夕方になっても風はおさまらず、月明かりもあって無いに等しいような状況ですので、通常の比較明撮影は断念。せめて、ISSの通過だけは撮っておこうと思い、月もない強風の中を浜に向かいます。


熱カブリの出た部分をトリミング

瓦解した堤防の内側には、大量の瓦礫が集められて積まれています。国道をわずかに離れただけで、照明もなく真っ暗になります。北西の空に見え始めたISSは、北斗七星に吸い込まれるように消えていきました。快晴が続きそうでしたが、何しろ風が強く体感温度は激低。とても耐えられそうになく、この日はこれでおしまい。

帰路、久しぶりに通った国道281号線。平庭峠(久慈市~葛巻町)と大坊峠(葛巻町~岩手町)では、21:00前後にしてともに氷点下13度。またまた冷凍庫暮らしの日々です。しっかりと水を落としても(元栓を閉めても)水道管が凍結してしまうのには閉口。慣れたものですので、ジタバタしてもしょうがない、自然解凍にお任せです。お日様頑張って下さい。
2月9日、「星景:岩手県沿岸被災地の今」を追う中で、釜石市の平田にある仮設住宅周辺から釜石大観音を遠望する画を撮っていた際、21:25頃に大きな流星が出現しました。残念ながらちょっと目を離した隙の出来事で、実際には目にしていないのですが、自動シャッターのカメラがその画角の中央にとらえていました。撮影条件から考えると、ほぼ「火球」(-3等級以上)に相当するのではないかと思います。


遠くの赤い小さな光りが大観音

県内各地で、長い間星景写真を撮り続けていますが、流星群を除けばこれほどきれいな流れ星を撮影した記憶はほとんどありません。そこで、住民や関係者の方にも見ていただきたく、仕上がった写真を持参して、仮設住宅に向かいました。サポートセンターを訪れ、撮影の経緯などを伝えて写真をお見せしたところ、快くお納めいただき、「機会があったらまたいつでもどうぞ」とのお言葉をいただきました。

仮設を後にして、この日のもう一つの目的である、ISSの撮影のために移動です。通過時刻は18:43~18:45、南西に見え始め、オリオン座の手前で見え終わりの予報です。撮影予定地は陸前高田市の一本松で、釜石からだと1時間強で行けるはず・・・でしたが、大船渡に入ったあたりから強風の中で雪が降り始め、車が行列、ノロノロ運転です。結局現地まで2時間近くかかってしまいました。

駐車場所から一本松までは300~400mでしょうか。機材を抱えて走り出し、もうすぐ到着というその時に、ISSの光が見え始めてしまいました。大慌てで、移動しながら三脚にカメラを取り付け、試し撮りする間もなく、見え終わり直前の30秒1コマだけを辛うじて撮影できました。雲が多く、猛烈な北西の風が吹きつけていましたが、雲間を進む光跡がどうにか写った、という次第。


もっと頑張って走っていればもう1コマぐらいは撮れたかも

その後、通常観測・撮影のために大船渡市のとある漁港に移動しましたが、やはり風が強く雲が多めです。晴れてくるだろうことは予想できましたが、何となく「気分が乗らない」状態でもあり、この日のとりあえずの目的を果たしたこともあって、ここは無理をせず帰路に。

13日は、ISSの通過を2度見ることができます。一度目は17:43~17:51で南南西→東、二度目は19:23~19:24で西南西。二度目の通過はごく短時間で径路も短かそうですので、一度目の通過のみの撮影を予定しました。前夜のこともありましたので、今回は近場で。自宅から徒歩5分の、盛岡駅西口周辺で待ち構えます。予報最大仰角は25°光度-0.9等です。だいぶ明るさが残る空でしたが、短時間露出(2秒)で見え始めからシリウスの上(最大仰角付近)までの光跡が撮影できました。


明るさでは、わずかにシリウス(-1.46等)の勝ち

撮影直後にはあっという間に薄雲が広がり始め、帰宅した頃には金星や木星もボンヤリとなるほどでしたので、その後に予定していた通常観測は取りやめ。急遽、街灯りの観測に切り替え、行きつけの「家庭料理のおいしい店」へと繰り出し、顔なじみの常連客と杯を交わし合うことと相成りました、とさ。
陸前高田市から始めた、「星景で見る沿岸被災地の今」は三度目の撮影行。北上を続けて、釜石市~大槌町~山田町~宮古市までの予定で沿岸入りしました。満月直後の月明かりの下での撮影です。最初に向かったのは、釜石市の南端にある唐丹地域です。高台にある民家や学校などは無事の姿をとどめていますが、国道45号線から直下に、唐丹湾の崩れた防波堤が見えています。

ここから、市内を北上しながら数箇所の撮影を行いました。2カ所目に足を止めた、遠くに釜石大観音を望む、平田総合公園内の仮設住宅周辺を撮影中の21:25頃、流星(火球?)が出現。したのですが、寒さと風に耐えきれず、物陰に避難していた最中のことで、視認していません。後で画像チェックの際に「写っていた」ものを確認したものです。


撮影データから判断する限りでは「火球」に該当しそうですが


唐丹の防波堤と比較明合成した流星

さらに北上を続け、釜石魚市場、根浜海岸を撮影。日付変わった頃に大槌町に入り、町役場など。その後、山田町市街に向かう途中、太平洋に浮かぶ「タブの大島」の姿が国道から目に入り、最寄りの駐車場に入って撮影。展望所の柵が崩壊しており「立ち入り禁止」となっています。


大槌町内での撮影


北限のタブノキ自生地

山田町では、船越公園内の「鯨と海の科学館」近辺を撮影し終わったところで強烈な睡魔。というわけで、近くの道の駅「山田」にて車中泊とあいなり・・・zzz。数時間後、当夜の行動計画策定を兼ねて、宮古市~岩泉町~田野畑村まで北上。この日は、金星と天王星が約0.3度まで大接近するという現象が見られます。月の見かけの直径が0.5度ぐらいですので、それよりも近づくという、珍しいほどの接近です。これは、北山崎駐車場にて観測・撮影。


明るさが違いすぎて・・・

ただし、快晴が訪れたのは19:00近くになってしまい、金星はだいぶ西に沈みかけてきて、撮影条件としてはよい方ではありません。両者の光度差が10等級ほどですので、明るさにして1万倍の違いということになります。なかなかうまく撮れず、ちょっと苦労した感ありです。ギリギリ拡大写真まで間に合わせて終了。月が出るまで、メシエ天体(星団など)をいくつか観測。


カシオペア座の散開星団2種を撮影(かみのけ座は過去撮影)

今夜は田野畑をスタートして宮古まで南下します。平井賀水門周辺、島越防波堤、田老町中心部、宮古魚市場、と回ったところで02:00頃。天気はいいし、時間もあるし、月明かりも十分、なのですが、寒さもハンパなし。さすがの寒冷地仕様の体も、寄る年波もあって、ここで限界。スッパリと終了です。


宮古市での撮影

00:00時点で、宮古市田老町での国道45号線表示板では-10度。ここから国道106号線、あの区界を通過して帰宅します。そしてその区界峠に到着したのは03:30、気温-18度で小雪。舞い落ちてくる細かな雪と、路上にうっすら積もった雪が車のライトにキラキラと照らされて、まるで天の川のようです。ただし、いかにも滑りそうな川ですが。

件の、釜石市で出現した流星について、念のために「日本火球ネットワーク」に報告しました。自分の目で見ていないわけですので、時間・光度・発光・消滅などの状況がわからず、不十分な報告書で関係者にはご迷惑かもしれませんが。ちなみに、「火球」とは通常-3等級以上の明るさの流星を言います。現在の金星が-4等ですので、それ以上となると、流星としては相当明るいもので・・・やっぱりこの目で見たかった。次こそ、視認と記録を忘れずに、などと考えているとなかなか出ないもので、忘れた頃に・・・というおきまりのパターンになりそうな。
星景記録行の2回目。予定では大船渡市を2景と釜石市を4景。暗くなる前に撮影予定地を確認し、大槌町と山田町にも足を伸ばして何ヶ所か歩いてみました。旧市街地に残っている建物(の跡)で真っ先に目に入るのは、「学校」です。主に小学校と中学校ですが、そこに通っていた児童・生徒、職員・保護者、地域の人々の息遣いや声が聞こえてきそうです。だいぶ躊躇しましたが、一つの記録として敢えて撮影することとしました。


大船渡市の南と北

この日は、午後からスッキリしない天気で、夜を迎えても全天に薄い雲が広がっている状況です。晴れの予報が出ていましたので、雲が取れるまで待機です。細浦港では、北の方角がやっと晴れてきたのが22:00過ぎ。撮影後、北に移動、の途中、国道45号線の「道の駅さんりく」の近くで、堂々と道を横断するシカの集団に遭遇。夜行性ですが、それにしても、車のライトなど一切気にする風もなく。

越喜来。曇っています。02:00頃から晴れ出しましたが、快晴とはいかず、小さな雲がどんどん西~北西から湧き出してきては東の空に流れていきます。晴れ間が出た短時間ですが、「学校」を記録しました。月もだいぶ傾いてきた時間でもあり、この夜はおしまい。釜石にはたどり着けず、またの機会ということに。岩手の広さを今回も実感しています。
震災後に初めて沿岸地域を訪れたのは去年の6月のことでした。それまで、現場を見ることさえ怖くて、なかなか足を踏み入れることができずにいましたが、一本松の姿をどうしても記録しておきたくて、やっと3ヶ月経って撮影を始めた経緯があります。以後、一本松だけは、1~2ヶ月に一度は訪れて様々な場面(星の日周運動、ISS、満月の出、・・・etc)を撮ってきました。しかし、それ以外の震災現場については、車窓から眺めることは何度かあっても、カメラを向ける気にはどうしてもなりませんでした。

もうすぐ一年が経ちます。陸前高田市と田野畑村は、天文現象(月食など)の観測や撮影のために何度か訪れていますが、そのどちらについても、復旧・復興の進み方がどうにも遅い。きっと沿岸市町村、どこに行っても同じような状況があるのではないのか。被災地を離れると、ここ盛岡でさえも、年が明けてから急速に震災のことが忘却・風化の流れになってきているように感じて、危惧の念を抱きます。一年後の現状をこの目で見て、記録して、伝えていくことが必要ではないのか。

そこから、「星景で見る一年後の岩手県沿岸地域」の撮影を始めることとしました。沿岸12市町村の今を、3月か4月までかけて、ほんの一部の現実に過ぎなくても、記録していこうと考えています。各市町村につき、2景か4景、全部で30~40景の撮影になりそうです。




陸前高田市から

2日の月没は01:48(月齢9.8)ですので、00:00頃までの撮影です。その後は、いつもの星雲・星団・銀河、そして夜明け前のギャラッド彗星の観測と撮影。翌日も好天が続きそうですので、車中泊にて2日目を迎え、という段取り。

で、2日目の夜。大船渡に移動しての撮影。早い時間帯は快晴でしたが、21:00過ぎから雲が出始め、間もなく全天曇り空です。ここでも4カ所の撮影の予定でしたが、この夜は2景で終了。深夜になっても天気が回復しそうになく、一旦帰宅の予定で国道107号線へ。


大船渡市に移動

遠野まで来た、4日01:00過ぎ、空がどんどん晴れてきています。「これは!」と思い、大船渡に引き返して鷹生ダムの展望所。ギャラッド彗星を撮影して、前の晩からの移動を確認しました。一日での移動量がだいぶ大きくなってきていて、もうすぐ「周極星」(北極星の近くにあって一晩中見られる)になります。光度も6等台で、2本の尾が反対方向に延びた、独特の姿に見えています。


球状星団M92と接近しています

他に星団を2つほど撮影して終了。いつ寝たのか(寝ないのか?)も定かではなく、何となくふらふらしながらの帰宅。日々、体がいうことをきかなくなり、無理もできなくなってきています。こんなところで「年取ったなぁ」などと実感する私です。