11月に劇場で観た新作映画は3本、旧作が19本(短篇含む)でした。

 

 

君だけが知らない

 

 

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー

 

 

 

  MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない

 

何が起きるのかはタイトルでわかりますが、このジャンルでよくある恋愛モノではなくてオフィスを舞台にしたところがユニークだったし、場所も登場人物も限定されていて小劇場のお芝居を観ている感覚もあって、また『カメラを止めるな!』のようなインディーズ映画の楽しさもある(『カメ止め!』ゆかりのアノ人も出てくるしw)。80分台の上映時間の短さもちょうどいい。

 

主人公が引き抜かれそうになる会社の社員役で、『マイスモールランド』でパパ活相手のカラオケ客を演じていた俳優さん(池田良)も。こーゆーウザめな喋り方する人いるよなー、って人物の演技がほんとに巧いよなぁ。

 

そういう良さもあったんだけど…ただ、実は先々週に観にいったらチケット完売で入れず、今回はそのリヴェンジだったんですが、そのおかげで自分の中で自動的にハードルが上がっちゃったこともあって、正直果たしてそこまでして観るべき映画だったか?という疑問も。

 

おそらくは送り手の方にも、クチコミでこんなに評判になるとは予想できなかったんでしょう。

 

だからもともと上映館も少ないし、僕の住んでるところでは一日の上映回数がすでに1回きりだったりする。それじゃ俺みたいにせっかく劇場まで足を運んだのに締め出される人も出てくるでしょうよ。

 

まぁそんなわけで、ちょっと厳しめな目で観てしまったんですよね。

 

初めて予告篇を観た時に密かに期待した、爆笑に次ぐ爆笑のコメディ、というほど笑いの要素はなかったし、かといって巧みに張り巡らされた伏線が次々と回収される快感が味わえる極上のシナリオ、というわけでもなかった。わりとユルめな内容。

 

 

 

そもそも、同じ一週間が「タイムループ」している、その原因がどうして同じ会社の誰かだと思うのか、まずそこんとこからして「ん?」と(世の中すべてが一週間を繰り返しているのなら、原因は何か他のことだと思うのが自然では)。…いや、そういう細かいことを気にするような内容の作品じゃないのはわかってますけど。

 

 

 

 

あの「ハトの手の形」が意外と物語上でそれほど重要ではなかったり、もっと社員一人ひとりの背景を描くことでより物語に深みが加わったんではないか、とか、窓の外の人々の行動もそのあと何か変化なり物語にかかわってくるなりしたらさらに効果的だったのではないか、などと…あれこれ考えながら観ていた。だいたい、「その夢」は“彼”自身が一人でやり遂げなければ(※一応ネタバレを避けて書いております)意味がないのではないか?夏休みの宿題をほとんど親にやってもらうようなもので、人の手を借りてやったのでは本当に若き日の悔いを清算したことになるだろうか。

 

それから、マキタスポーツ演じる部長の元同期のアノ人が咳をしていたのはどうして?

 

…などと、ところどころ引っかかりもしたんだけど、僕は結果的に楽しめたし満足感も得られたんですね。一致団結して協力し合って、みんなで問題を解決していく登場人物たちに愛おしさも感じた。心地よい時間を過ごせました。

 

何よりも、主演の「円井わん」という女優さんの魅力を教えてくれたということで、僕にとってこの映画は観てよかった。八の字眉毛が可愛い(^o^)

 

タイトル、拒絶』にも出てたんだなぁ。すみません、覚えてなくて。

 

円井わんさんはキントーンのCMで同じように会社のオフィスでパソコンいじってますが、これからはもうあのCM観るたびにこの映画を思い出しちゃうんだろうな~。

 

ぜひ、これからもっともっと多くの映画に出演していただきたいです。

 

邦画の「タイムループ物」に愉快な1本が加わりましたね(^o^)

 

 

 

 

 

 

旧作

「フォーエバー・チャップリン ~チャールズ・チャップリン映画祭」の感想はこちら

 

独裁者』(フォーエバー・チャップリン チャールズ・チャップリン映画祭)

ライムライト

 

 

 

ディア・ハンター』(午前十時の映画祭12)

 

ほぼ3時間あるので覚悟して臨んだんですが、冒頭からしばらく続く結婚式や主人公たちのおふざけの場面には苦戦しつつも、ヴェトナムの戦場が描かれだして以降は長さを感じなくなった(デ・ニーロがフルチ○で延々走って最後に道路に寝っ転がるワンショットはめっちゃ長かったが)。

 

ただし、ヴェトナム兵の描かれ方(実際にはアメリカ兵が行なった残虐行為をヴェトナム兵がやってることにしてロバート・デ・ニーロにランボーみたいに逆襲させたり)、現実離れしたロシアン・ルーレットを使った拷問や賭博場など、史実から逸脱した描写には大いに疑問が残る。

 

 

 

「史実ではなくても大切なこと(ここでは戦争の恐ろしさ)を伝えているのだから構わない」と言って、この映画での「捏造」を擁護している人たちが思いの他多いのが気にかかる。

 

だけど、それって「“江戸しぐさ”は捏造でも大切なことを伝えているのだから構わない」と言うのと同じでしょ。そもそも「嘘」ついてるなら「大切なこと」の方の説得力だってなくなってしまうのだが。

 

実話を基にしたアンジェリーナ・ジョリー監督の『不屈の男 アンブロークン』を「反日映画」などとぶっ叩いていた人たちは、なんで『ディア・ハンター』には怒らないんだろうね。

 

一発の銃弾で仕留められるシカと人間を同じように描くことで、人の命をあっけなく奪う戦争の恐ろしさを訴えたり、あるいは人もまた野生のシカと何も変わらないのではないか、と思わせる、そういう狙いとしての「ロシアン・ルーレット」なんだろうけれど。

 

 

 

もともとロシアン・ルーレットにハマる主人公の話の企画が先にあって、そこにあとからヴェトナム戦争の要素を加えたので両者が噛み合っていないのは当然なんだけど、マイケル・チミノ監督には明らかに本人はそうと意識せず自覚のないままでアジア人蔑視があったんだと思う(それは『地獄の黙示録』を撮ったコッポラも同様)。その点で僕はこの映画のことも監督のことも擁護できない。

 

でも、ここで描かれているロシア系アメリカ人たちの姿と、やはりアメリカにおいて白人のコミュニティの中ではマイノリティであるイタリア系のチミノ監督の差別感情も含めたものの見方、差別されている者たちが別のマイノリティを見下し相手を生きた人として描かない姿勢は見事に重なり合っていて、だからこの映画の劇中でのヴェトナム人の差別的な描写は皮肉にも作り手が意図しないまま、現実の人種差別や民族差別についてのリアルなレポートになっている。

 

あと細かいことなんだけど、ロバート・デ・ニーロやジョン・カザールなど『ゴッドファーザー』組が出演してるから僕はてっきり彼らはイタリア系という設定だと思っていたんだけど(同じくイタリア系のフランキー・ヴァリの歌をみんなで唄ってたし、監督のマイケル・チミノもやはりイタリア系だし)、なのになんで結婚式でロシアの歌を唄ってるのかわからなくて、ずいぶん経ってからクリストファー・ウォーケン演じるニックの本名がロシア名だったことでようやくこれが「ロシア系アメリカ人」のコミュニティを描いていたことに気づいたのでした。

 

 

 

だけど、クリストファー・ウォーケンだってこれまでイタリア系のマフィアの役を何度もやってる人だし、デ・ニーロ演じるマイケルの恋人リンダ役のメリル・ストリープも『マディソン郡の橋』(1995) ではイタリア系の女性を演じていたから勘違いしちゃったよ。

 

クリント・イーストウッド監督の『ジャージー・ボーイズ』にクリストファー・ウォーケンが出ていた(マフィアのボス役)のは、この『ディア・ハンター』繋がりだったりするんだろうか。『ジャージー・ボーイズ』は『ディア・ハンター』で主人公と仲間たちが劇中で合唱していた「君の瞳に恋してる」を唄ったフランキー・ヴァリとフォー・シーズンズを描いた伝記映画だったし、マイケル・チミノはかつてイーストウッド主演(共演はジェフ・ブリッジス)の『サンダーボルト』(1974) の監督と脚本を担当している。偶然だとは思えない。

 

クリストファー・ウォーケンと「君の瞳に恋してる」を通して『ディア・ハンター』と『ジャージー・ボーイズ』の2本の映画が繋がるのが面白い。

 

ちなみに、マイケル・チミノもコッポラも、それから同世代の監督たちのほとんどはヴェトナム戦争には行っていない。パッと思いつくところでは、実際にヴェトナム戦争の従軍経験があるのはオリヴァー・ストーンぐらいじゃないか。

 

“独りぼっちの軍隊”ことジョン・ランボーを演じたスタローンも行ってませんし。

 

実際には戦争に行っていない者たちが映画で勇ましい戦争を描いていた。

 

『ディア・ハンター』からはいろんなものを受け取れると思うし、見応えもあったから僕は観てよかったですが、その瑕疵もけっして見過ごしてはならないと思う。

 

この映画では主人公たちアメリカの若者を一方的な戦争の被害者のように描いているけれど、ヴェトナム戦争はアメリカが泥沼化させたのだし、戦争によって傷つき多くの犠牲を払ったのはヴェトナムの人々だって同じだ。犠牲者の数も比べものにならない(もちろん、犠牲者の数で「正しさ」が決まるわけではないが)。

 

むしろ今作られ観られるべきなのは、アメリカが「敵」と見做した相手側の視点から描いたヴェトナム戦争映画だと思う。

 

 

ニューヨークの王様』(フォーエバー・チャップリン チャールズ・チャップリン映画祭)

チャップリン・レヴュー(『犬の生活』『担へ銃』『偽牧師』)』

殺人狂時代

 

劇場で配布されるポストカード(全10種)

 

 

 

蜘蛛巣城 4Kデジタルリマスター版』(午前十時の映画祭12)

 

ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ』のエピソード1~3で、この映画や同じ黒澤明監督の『乱』(1985) を参考にしたんじゃないだろうか。

 

『エピソード1』で朝モヤの中からグンガンたちが現われるシーンは『蜘蛛巣城』の「動く森」のシーンを思い出させるし、結末がたやすく予想できる主人公の転落劇とカタストロフに至るまでが描かれるのも、あのプリクエル(前日譚)の特徴だったし。

 

ところで、例のあの「動く森」のシーンを円谷英二が特撮を使って撮った、という情報は事実なんだろうか。「午前十時の映画祭」の事務局の公式動画でも言及してましたが。

 

該当シーンを目を皿のようにして観ていたけど、あれが「特撮」だとはとても思えなかったし、もしも円谷監督が黒澤作品にかかわったんだとしたら、どうしてスタッフのクレジットの中に表記せず、そんなスゴいことを公けの場で宣伝しなかったのかわからない。どなたか真偽を検証していただけないだろうか。

 

原作であるシェイクスピアの「マクベス」に忠実とはいえ、夫を「たぶらかす」女を描く黒澤明の女性観については、やはり女性の描かれ方に疑問を感じる『赤ひげ』を観たあとだといろいろと勘繰ってしまう。

 

海外でも評価の高い作品ですが、物語の巧みさではなくて画のスゴさで見せきった作品だったかな。

 

4Kデジタルリマスター版で以前に比べてかなり画質が向上しているということだけど、確かに画面の隅々までくっきりとよく見える。まぁ、モヤがかかっている場面が多いから映像自体は幽玄な雰囲気が濃厚で、能を取り入れた演出、俳優の演技は特に海外の人々にはエキゾティックに映るんだろう。

 

面白かったですが、でもどちらかといえば僕は『七人の侍』や『隠し砦の三悪人』などの娯楽活劇路線の方が好きだな。

 

糸車を廻す「物の怪(もののけ)の老婆」役は朝ドラ「おちょやん」の主人公・千代のモデルになった浪花千栄子。今敏監督のアニメーション映画『千年女優』であの場面が引用されてました(誰でも知ってる薀蓄をドヤ顔で披露してみた)。

 

 

 

 

クライマックスのあの矢ぶすまのシーンは何度観てもワクワクしちゃいますね(^o^) そりゃ三船敏郎だって監督を恨み続けるよな^_^;

 

 

のらくら』『巴里の女性』(フォーエバー・チャップリン チャールズ・チャップリン映画祭)

給料日』『黄金狂時代

サニーサイド』『キッド

街の灯

サーカス

 

 

 

桐島、部活やめるってよ』(公開10周年記念上映)※リンク先の感想は以前書いたものです。

初公開時には映画館で観られなかったので、10年後にようやく劇場で鑑賞。お~また~♪

 

チケット料金は一律1600円。『ルパン三世 カリオストロの城』や『パンダコパンダ』と同じ方式。それはまぁいいんだけど、1週間限定上映というのはさすがにちょっと短過ぎるんではないか。あっという間に終わっちゃったよ。もったいないなぁ。

 

ともかく…あらためて傑作だと思う。

 

 

 

出演者の何人かは現在大活躍中だし、不倫でぶっ叩かれて大変な目に遭った人もいますね(自業自得だとは思うが)。「映画秘宝」はなくなっちゃったし(これも自業自得だと思うが)。

 

思えば、この映画が初公開された当時って、まだ「あまちゃん」も放送されてなかったんだよなぁ。

 

あれからもう10年か…。

 

劇中でいろんなタイプ、立ち位置の生徒たちが最後に一堂に会する、すべてが「ゾンビ映画」に集約される物語が見事でした。「君よ拭け、僕の熱い涙を」とかいうウンコみたいなタイトルの映画よりもゾンビ映画の方が“リアル”だし重要、ということ。それは今もこれからも変わらないね。

 

次は20周年記念上映でお会いしましょう。

 

 

モダン・タイムス』(フォーエバー・チャップリン チャールズ・チャップリン映画祭)

 

 

11月はとにかくチャップリンの映画を観まくりました。チャップリン漬け(^o^)

 

 

 

 

 

おかげで映画の感想の方が完全にほったらかしになってますが…。

 

サイレント時代の作品はもちろんですが、あのチョビ髭の放浪者がもはや出てこない(どころか出演せずに監督に徹した作品も)後期の彼の映画もしっかり堪能できたことが収穫でした。

 

チャールズ・チャップリン映画祭はすでに終了した地域もありますが、広島や京都、大阪では今月から上映が始まるので(その他の地域では来年の1月から始まるところも。公式サイトでご確認を)、お近くにお住まいのかたはぜひ足をお運びください。チャップリンの映画からはいつだって新しい発見がある。そして何より面白い。

 

 

さて、気がつけばもう12月。今年もわずかです。

 

いろいろあった1年ですが、あと少し。なんとか無事締めくくりたいですね。

 

 

↑もう一つのブログでも映画の感想等を書いています♪

 

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