5月に劇場で観た新作映画は5本、旧作が3本でした。

 

 

オードリー・ヘプバーン

 

 

グロリアス 世界を動かした女たち

 

 

トップガン マーヴェリック

 

1986年公開のトニー・スコット監督、トム・クルーズ主演の『トップガン』の36年ぶりの続篇。

 

ネタバレがありますので、ご注意ください。

 

海軍のエリートパイロット養成学校“トップガン”出身でこれまで多くの軍功を称えられてもいる“マーヴェリック”ことピート・ミッチェル(トム・クルーズ)が教官として再びトップガンに戻り、若手パイロットたちとともに困難なミッションに挑む。

 

「100点満点の続篇」というような絶賛のされ方をしているし、僕も大いに楽しんだんですが、一方でこれは作品単体だけの力ではなくて、それ以外の要素のおかげもあるよな、とも。

 

すでにご覧になったかたならおわかりいただけると思いますが、これはいろんな作品からの引用からなるサンプリング映画で(「考えるな、行動しろ」とかねw)、多くの過去の名作たちの力を借りているし、また実際に前作から30年以上経っていて、その間に僕たち観客が過ごした歳月の重みも加わっていると思う。

 

ある出演者の姿に胸が熱くなるのも同様の理由から。

 

ちょうど、『ロッキー4』の続篇として作られた『クリード 炎の宿敵』を観た時の感動とワクワク感に近い。フィクションとしての「映画」と現実の境界線が薄れているんですね。

 

もちろん、こういうのだって映画の面白さの一つだから、なんら否定するつもりはないですが。

 

でも、たとえば回想シーンであの人やあの人が映し出されたり、あの彼との再会や別れが思い入れを込めて描かれる一方で、主人公の恋人はあの人から初登場の別の女性(前作の台詞の中で名前が呼ばれていたそうだが)にヌルッとチェンジしていて、さも昔からそうだったように、前作で重要な登場人物であった彼女の存在そのものがまるで最初からなかったかのように無視されているところなど、それはないんじゃないかと。

 

 

 

 

ハリウッドの娯楽大作映画として堪能されてもらったからこそ、あえて言わせてもらいましたが。

 

今、劇場のスクリーンで観ておくべき映画であることは間違いないですけどね(^-^)

 

 

 

  シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~

 

 

ピーター・カッタネオ監督、クリスティン・スコット・トーマス、シャロン・ホーガン、グレッグ・ワイズ、エマ・ラウンズ、ギャビー・フレンチ、ララ・ロッシ、エイミー・ジェームズ=ケリー、インディア・リア・アマルテイフィオ、ジェイソン・フレミングほか出演。2019年作品。

 

 

 

イギリスで軍人を夫に持つ女性たちが合唱団を作り、やがて戦没者追悼イヴェントで唄うまでを実話を基に描く。

 

基地の敷地内に住む軍人の家族、というと、沖縄だったり日本にもある米軍基地のことが頭をよぎるし、そうすると米兵や基地関係者の地域住民に対する凶悪犯罪が日本の法律で裁かれず、その狼藉が野放しになっていることへの憤りがふと蘇る。

 

この映画の舞台はアフガニスタン紛争の頃で、ここに登場する軍人の夫たちもアフガンに出兵している。彼らのやってきた戦いが果たして正しいものだったのか、意味があることだったのか、ロシアによるウクライナ侵攻の只中である現在この映画を観ていると複雑な気持ちにさせられる。美談で終わらせていい題材ではない。

 

劇中で、戦争反対を訴える男性をワイヴズ(妻たち。この映画の原題は“Military Wives”)の一人でまとめ役のリサ(シャロン・ホーガン)が「私たちは戦争と結婚してるから」と言ってやり過ごす場面があって、この映画は戦争を賛美しているわけではないが、あくまでも“軍人”側から「国を守るために戦っている」者たちを捉えている。そこにモヤモヤするものを最後まで残す。

 

 

 

 

とはいえ、軍人も、そしてもちろんその家族だって生身の人間であり、戦場で命を落としたり大怪我を負う危険と常に隣り合わせで、愛する者がいつ奪われるかもしれない恐怖や大切な存在の戦死に堪え続けなければならない妻や母たちの立場を知ることができる。

 

人間なんだから、生きているのだから、楽しみや慰めだって必要。ここでも女性同士の「シスターフッド」が描かれている。

 

 

 

男性ストリッパーたちを愉快に描いた『フル・モンティ』の監督によるウェルメイドな作品として幅広い層が楽しめると思うし、劇中で唄われる歌も耳に心地よい。

 

しかし、最後に数多くの同様の女性たちの合唱団の実際の姿が映し出されたところに「海外領土の基地」という言葉が重なると、急に現実に引き戻された。

 

海外に領土があるわけね。なるほど、と。

 

歌で戦没者を追悼することは大切ではあるだろうが、本当に大切なのは、もうこれ以上“戦没者”を出さないために尽くすことだし、「この戦争は果たして必要なのか?」と問い続けることだと思う。

 

本当は、“歌”はそれを唄ったり聴いたりできる「生きている人々」のためにこそあるのだから。

 

 

 

 

 

  マイスモールランド

 

 

川和田恵真監督、嵐莉菜、奥平大兼、アラシ・カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、リオン・カーフィザデー、韓英恵、サヘル・ローズ、池田良、板橋駿谷、藤井隆、池脇千鶴、平泉成ほか出演。

 

 

 

日本に住むクルド人難民の家族の姿を通して、この国での制度の不備と在日外国人や難民に対する非人道的な扱いがまかり通っている現状を見据える。

 

自身、イギリスと日本にルーツを持つ川和田恵真監督による、取材で聴き取った当事者たちの経験を基にしたフィクションとのこと。

 

主人公の少女サーリャ(嵐莉菜)にむけられたある日本人の男による性的暴行と抵抗された挙げ句の「日本から出ていけ!」という罵声は、僕たちが突きつけられている人権に対する問題をそのまま浮き彫りにしている。

 

人の命とは、最低限保障されるべき生活とは、“人権”とはなんなのか、日本人は学び直さなければならないのではないか。救いを求めている人々にこの国はあまりにも冷たく(「入管」という言葉が本当に禍々しいものに感じられてしまう)、そしてしばしば酷い仕打ちをする。

 

 

 

 

高校の進路相談で「頑張ろう」と声をかける教師に「もう頑張ってます」と答えるサーリャ。これ以上何をどう頑張れというのか。たどり着いたこの国で難民申請は却下され続け、労働で収入を得ることも許されず、生活のために働いた父は不法就労で捕まり、サーリャは成績が優秀にもかかわらず、どこの大学側からも入学を拒まれる。

 

 

 

 

子どもたちともう二度と会えなくなるかもしれない危険を冒して、父は家族のために意を決して亡き妻の眠る故郷に独り戻る。最後の望みを託して。

 

嵐莉菜さんと彼女の実際の家族たちが演じる、故郷を追われ、逃げ延びた地でも居場所を奪われて離ればなれにされていく一家族の姿は、現実に私たちの目の前にある光景だ。目を逸らしてはならない。

 

この国の現実の姿を知った今、ラストでのサーリャの横顔が笑顔になるために私たち自身がしなければならないことがある。

 

 

 

 

 

 

 

旧作

いつも2人で

イースター・パレード

ウィッカーマン final cut

 

 

月末近くにバタバタと続けて映画を鑑賞したこともあって感想が全然書けていませんが^_^; 今月も何本もの見応えのある作品にめぐり逢えてよかった。

 

映画には、憂さ晴らしとして発散させてくれたり、現実にあらためて目を向けさせてくれたり、泣いたり笑ったり考えさせられたりといろんな役割がありますが、そのどれもが大切でけっして奪われるべきではないものです。

 

観られる本数には限りがありますが、今月出会えた映画たちを反芻しながら、6月公開のさらなる映画たちを迎えたいと思います(^o^)

 

 

↑もう一つのブログでも映画の感想等を書いています♪

 

にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ