この二つの事件、主人公はどちらも「無職」。
SANSPO.COM コンビニでパンを強奪-「腹が減ってどうしようもなかった」
http://www.sanspo.com/sokuho/1216sokuho062.html
livedoor ニュース - 27歳男性が20億円超もうけ ジェイコム株で
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1559319/detail?rd
パンを盗んだのは38歳の無職男性。レジを通り過ぎようして店員に注意され、刃物をつきつけている。強盗だが、盗んだのは「メロンパンやジャムパンとドーナツなどの菓子(計約2000円相当)」。逮捕された男は「腹が減ってどうしようもなかった」と供述している。うーん、ああ無情のジャン・ヴァルジャンをつい思い出してしまうが、よっぽど空腹だったのか、それともヒナが数羽でも口を開けて待っていたのか。もう何日も食べ物を口にしていなかったのか。にわかには信じがたい。この世の見納めに最後の「ご馳走」を喰ってというのでもあるまい。再び同じ店を訪れたのが足がつくきっかけになっている。
例のみずほ証券のジェイコム株大量発注ミスで、27歳の無職男性が7100株売買し、20億3500万円を超える利益を得ている。24歳の会社役員が約5億6000万円の利益を得たと報じられたばかり。
27歳も無職とは言え、発注ミスのあった8日に34億3661万6000円の自己資金を投入して7100株を取得したというから、無為徒食の人物ではないようだ。会社員は別として、特にネットトレードにおいては、投資家であってもそれは「名義」としてしか存在しない。極端な話、端末から買い注文を出したのは本人ではなかったかも知れない。ある報道によると株暦5年ほどのデイトレだかスインガーだとか。
しかし大体、発行済み株式数の42倍!ジェイコムの発行済み株式総数1万4500株が出来高約70万株。
誤発注だからって、とんでもない相場である。一般の投資家が誤発注に気づかないのは普通としても、証券会社間での売り買いがあってこその結果だろう。プロのディーラーが気づかないのか? デイトレーダー自体を非難するつもりはさらさらないが、なにか腑に落ちないものが残る。証券事故に詳しかった? 株暦5年で? いやあそれならとても27歳の青年とは思えない。
パン泥棒も腹が減って倒れそうなら、刃物突きつける元気はどこに残ってたのだろう?
はやりの「格差」「二極化」などをこの二つのネタで面白おかしく書く週刊誌なども出るかもしれないが、そんな関心から目にとめたわけではさらさらない。
「仕事をして稼ぐ」とはどういうことかを、あらためて考えさせられるネタだと思ったまで。
言ってしまえば、どちらも似たようなものである。
不労所得、という意味では。
(株式投資は知識労働であるとすれば宝くじや財産相続のような不労とは違うのではあるが)。
身体的にはパン強盗のほうが働いただろう。知力的にはミスによる株利益を得た無職のほうが働いたかもしれない。
しかし、どちらもアホな事件である。いや、パン強盗にはむしろ多少は同情しても、ミスによる利食いにはなんの感動もない。
仕事をして稼ぐということ、いや「仕事をする」ということの意味が、ここにはまったく感じられない。
数十億の利益を、今後、何に投資するのだろうか? いつまで行っても種銭なら、それは一種の仕事と言えるかもしれないが、それで「職業は投資家です」と言えるのだろうか?
いまのマスコミでは無理だろうが、そこまで取材して報道してほしいものだ。株はいまのところ上昇基調だが、「景気」はいいとは思えない。
なぜか。「腹が減ってパンを強奪←→発注ミスで20億円の利益」てな事件が無職を主人公にして起きてしまう社会が元気であるわけはないのだ。
パン強盗の無職は事実かも知れない。しかし、スインガーらしい27歳の彼は(取材に応じたのは父親のようだが)なぜ「無職」と報道されて平気なのか? 事実、どこにも職を得ていないにしても、自由業なり、自営なり、フリーランスなり、何か存在していることを示したくはならないのだろうか? 税金対策の作為か? 勤め先への配慮か。それとも、すぐには想像できないような特別な境遇におかれているのか?
ともあれ、「フリーター」(これは元々リクルートがアルバイトに代わる名称として作った造語。いわば、マーケティング用語だった)、「ニート」、そして「無職」までが、そう自分で宣言して恥ずかしくないという意識が芽生えているとしたら、2000円も20億も、大した違いはないていたらくとしか思えない。(もちろん株式投資で利益を得ることは犯罪ではない。ギャンブルでも本来ない。投機と投資が区別しにくい従来の株への受けとめ方には半畳を入れたくなる。強盗は犯罪である。株式投資、デイトレードを犯罪よばわりしているのではない。しかし同じように無職であることに鈍感であるとしたら、それは同じ意識の問題であろうと言いたい)。
株の底上げも大切だが、社会の元気の底上げも大切だ。
それが、ないかぎり、「景気がいい」とは口が裂けても言えないはずなのだ。
だいたい27歳の無職が、「34億3661万6000円」の自己資金などどこからどう捻出するというのか?
いかに天才的なトレーダーであっても、100万の元手から5年間では30億でさえ、不可能である。
根拠は追ってエントリする。