- デイトレーダーとか、ネットトレードとかが日本に定着しはじめた2000年頃、はじめて手にした本が『インターネットで始める株式投資』だった。株式投資に当時からすでに詳しかった先輩に勧められた。本は1999年に出ている。「この本とファンダメンタルズの考えをカップリングする本を書こう。おまえはインターネットをやれ」。それで、共著を書いた。先輩の書くことは、本格的過ぎて、かなりポップに編集されて、『ゼロからはじめるデイトレーダー』という本になった。この時の自分の教科書が、『インターネットで始める・・・』だった。
- その著者である藤本壱氏がジェイコム株誤発注について書かれた記事を、ご本人から教えていただいた。当日のチャートもあって参考になる。
http://nikkeibp.jp/style/life/money/trade/051212_bangaihen/
元手100万、5年で30億は不可能の根拠を示すと豪語した手前、それは示すつもりだが、思っていたより時間がかかる。時間がない。しかし純然たる「株式投資、売買のみでは不可能」と限定したのはある意味救いだ。
新規公開株だから仕手はありえない。しかし「仕手筋」ということはあるかも知れない。この言葉、突っ込まれるのを承知で使っている。
IPO買いが、ここまで個人の株売買者に浸透しているというのも今回発見した驚きだった。
かりに今回の利食いでK氏の資産が60億とする(当日8日までで。それ以降は知らない)。
この金額は、社員20名ほどの弱小だがいい本を出す出版社20社分の年間売上げだ。
例として各社月1冊1万部の本を売ることが最低できるとしよう。現実にこれは可能だ。
年間で240万人の読者にエンタメなり、感動なり、知識なりを提供できる。その60億で、また次の年も、
同じように読者に何かを提供できる。120億円、180億円と仕事の累積出来高は上がっていく。
きちんと企業経営をしている限り。
それが企業、事業のゴーイングコンサーンというものだ。
年1回、一月分のボーナスも出せるだろう。お金の価値というのはそういうものだ。
株式投資も間接的にこのゴーイングコンサーンに寄与するだろう。
そのほうが面白いのではないか。ゲッコーもバフェットもソロスも株ゲームではなく企業ゲームにアニマルスピリッツを燃やした。その手段がトレードだった。
だが、今回のトレードに、そういう「血気」を全く感じないのは何故なのか? ねたみもそねみもない。残念なくらいに感じることが「できない」のだ。これはなんとも皮肉なことだが、ネットが生み出したバブル、いや一種のデフレ現象か? と思う。
第一に今回の相場で30億以上を利得した本人が、まったく感動も何もしていない。カネの感覚が麻痺した? それはそうかもしれない。そうならそれはそれでただそれだけのことであろう。
マネーゲームでさえない。いや乱高下する相場はまさにゲームだろう。
しかし、そのゲームに参加したゲーマーが楽しんだ形跡がないのはどういうことだろう。
パン強盗は、留置所で年を越したかったのかも知れない。
確かにそのほうが、冷たい風にさらされることもなく、欠片だけ餅の入った薄目の汁粉くらいには、
ありつけるはずだ。
なんだか寒い。この日本の相場は寒くてしようがないと思うのは、単なる気のせいではないような気がする。