一年後より一ヶ月後、一ヶ月後より一日後、一日後より一時間後、一時間後より一分後、一分後より一秒後の未来の方が予測は容易になる。この予測可能性から、極論すれば秒単位で売買を繰り返すのが「デイトレーダー」だった。証券会社を介した売買では間に合わない。
米国のデイトレは市場に直接アクセスできる端末が置かれたブースから始まった。要するに証券会社にデイトレは出勤して売買したと思えばいい。
ジェイコムの誤発注「1円 61万株」が誤解を与えたのも、この二重回線が一般には全くと言っていいほど認識されていないからだろう。新聞記事に躍った誤発注の数字は、「板情報」には表示されている。が、一般には開示されていない。東証と各証券会社をつなぐ回線を通して自己売買が行われる。それが市場を作る。
地合を作ると言ってもいい。一般の売買はそこから始まる。
不勉強のせいかも知れないが、日本で米国初期デイトレを実現したブースのような機能が使われている話は聞いたことがない。
しかし、近い環境は日本でもネットを使えば整えることができる。板情報をリアルタイムで読める有料ソフトがある。これを使っていれば、初期デイトレにかなり近いことができる。注文の確定にかかるタイムラグは補えないとしても(「日計り」なら大昔から存在する。素人がやるものではなかったが。なんでもカタカナにすればいいってものではないと思うが)。
さらにボラティリティの大きい荒れる相場でなければ、デイトレのうまみはない。
IPOは一般の株式に較べれば振幅が大きい。これも公開時期などを検索できるサイトがあって、情報は自由に入手できる。(IPOの件数の多さもちょっと驚きだ。いわゆる新興企業と言われるなかには、えっ? なんでここが上場? と首をかしげざるを得ないようなものもある。粗製乱造?があるとすれば、それは明らかに証券会社側の見識が問われざるを得ない。で、そういうIPOに投機的デイトレと自己売買の空売りとが相まみえると来た日には、何をか言わんや! これはもちろん極論だが、もし少しでもリアリティがあるとすれば、それは目も当てられない事態が進行していることになるが)。
1999年10月の売買手数料自由化から6年ほどの間に、何が変わったかと言えば、こうした投資に関するツール群の登場であり、それ以外に何もない。というより、このツール環境なしには成立しえない売買の様式がかつての株式投資とはまったく異なるカネの動きを作り出している。
かつて機関投資家にしかできなかったことが、回線の開放以外は一般にもすべて可能な時代になったと言っていい。
逆指し値の指定でロスカットも自動化できる。利益確定売りも同じく。そういう環境での株の売り買いとは何か? あきらかにスロットマシンやパチスロやらのゲームと同じである。
何も生まない。
あなたが最近買った株、銘柄はなんですか?
どこが魅力だったのですか?
なぜ、その銘柄にしようと考えたのですか?
答えは、板情報とツールがそういうシグナルを出したから。それで30億なら可能だろう。
だが、それを純然たる株式投資とは言わない。投機である。
ディープインパクトは、久々のサラブレッドだ。
あの走りは奇跡と言っていいほどだ。
オッズは1コンマ少々。100万単位でも儲けは大したことはない。
だが、注ぎ込み甲斐がある。何よりもあの走りは美しい。
見るためだけに、1枚だけ買って入場する人もいる。
ギャンブルにもいろいろある。
どうせならドラマのあるものに賭けようと思う。
5、6年前からの日経平均の動きを眺めてみた。225で個別銘柄を云々するのは不可能だが、参考にはなるだろう。
(追記:ディープは2着に終わった。三歳馬としては老練な馬たちに伍してよく健闘した。上出来だと言ってやりたい。勝っても負けても感動があるのがドラマである。ギャンブラーはたとえ負けても誰のせいにもしないものだ)。
