小室哲哉の音楽をこよなく愛するオレがglobeの個人的な名盤・神盤である2ndアルバム『FACES PLACES』をレビュー! 

ということで1stアルバム『globe』のレビューはこちら。


まず始めに、この2ndアルバム『FACES PLACES』は、紛れもなく名盤超えて神盤である!(断言)


最も聴いてた当時が中2の14歳とかいう最も多感であろう時期だったこともあってか、思い出補正増し増しである。

当時不登校気味だった私は、布団にくるまってこのアルバムを無限ループしていた。


そう碇シンジくんのようにである。←


このアルバムを聴くに至った経緯は、母親の友達がまずテープでくれて。母親がカセットウォークマン買ってくれて、最初はそれをずっと聴いてて、後になって父親の知り合いがMDウォークマンとこのアルバムのMDくれて…


そしてこの母親の友達と父親の知り合いは気が付いたら付き合っていた!←


気がついたら別れてもいたんだけれど、そんなことは置いといて、MD貰って時を経ずして今度は幼馴染の姉がアルバムくれて、そんな感じで色んな媒体で飽きることなくずーっと聴いてましたな。


この全体的に退廃的且つ背徳的な暗いアルバムを。


だいぶ拗らせちゃってる中2だったんですね。


トラックリスト

  1. overdose
  2. DEGENERATE
  3. FACES PLACES
  4. Is this love
  5. so far away from home(Beautiful journey)
  6. a temporary girl
  7. Because I LOVE the NIGHT
  8. Anytime smokin' cigarette
  9. Watch the movie?
  10. a picture on my mind
  11. FACE
  12. Can't Stop Fallin' in Love
  13. can't stop PIANO SOLO
  14. FACES PLACES - REMIX
シングル曲は赤字表記…ってまーたシングル曲が5曲も入ってるよう!


そのうち1,9,13,14がインスト、13,14に関してはオマケみたいなもん。ということは、アルバムオリジナル楽曲は実質2,5,6,7,10の5曲。


50/50はこれもう実質ベストアルバムやろ!(デジャブ)


冗談はさて置いて、3曲目にタイトルトラックである『FACES PLACES』が入っていますが、まずこの曲が天才的な名曲である。アルバムの閉塞的、退廃的、背徳的なイメージを象徴するようなオルタナティブロックに寄った楽曲である。1stアルバム『globe』とは打って変わっている。



しっとりしたムードから徐々に昂って行ってKEIKOのボーカルが最高潮に達してピーキーになる頃には絶頂である。

歌詞は主導権を握れない恋愛に身を窶している女性が、それでもBest of my lifeと言い聞かせ、居場所や在り方を求めながら色んな場所で色んな顔して生きているという歌詞。(多分)

それだけではなく、そんな女性を陰ながら心配する男性目線を描いている歌詞でもある。それがマークのラップパートに反映されている。


“Things are changing and you are living. せめて涙が溢れる前に Let me tell you if you are not wrong. Everything… Everything is all right.”


ものごとは変化し、あなたは生きている。せめて涙が溢れる前に、あなたが間違っていないか教えてあげる。全て…全て大丈夫。


あと、この曲全てのBest of my lifeのところでBest of my lifeと言ってるのかと思ったら、実はマークパートでBest of my loveと言っている。女は人生を語り、男は愛を語る。


歌詞に登場する年代は、全てTK自身の音楽的転換期。

そもそも『FACES PLACES』は顔たち、ところどころ(そういう映画もありますが)ということで、主人公の女性が居場所を探して色んな場所で色んな顔して取り繕っているという見方もできれば、そのまんま色んな顔、色んな場所と捉えることもでき、それがリスナー自身であるという解釈もできる、トリプルミーニングくらいの歌詞になっていると、私は超解釈しております。


長くなったけど楽曲『FACES PLACES』の話はまだ終わらない。

まずアルバムの冒頭を飾る『overdose』とはそのまんま薬物の過剰摂取のことである。しっとりしたピアノから幕を開けて、どんどん高揚していき、続く『DEGENERATE』。意味は退化するとかそういう意味ですが、KEIKOのボーカルはオマケみたいなもんでマークのラップがリードするこの全英詞の曲の歌詞の内容が、クラブか何処かで、トリップホップの雰囲気を身に纏い、高いヒールを履いたストレートのロングヘアの、ルールを無視して踊る自由で魅力的な女性を眺めるDJ視点の楽曲となっており、この女性こそが『FACES PLACES』の主人公の女性であると考えることができる。クラブに薬物は付きものである。(トリップポップとは、イギリスのブリストル発祥のヒップホップから影響を受けた、どちらかと言うとメロウでダウナーで内省的でサイケでトリップしそうなエレクトロダンスミュージック。いかにもdopeという単語が合いそうな。興味ある人は、PortisheadやMassive Attackの名盤『Mezzanine』とか聴いてみるといいと思う。)


なので、1,2,3はセットで聴くべし!←


4.Is this loveは夏のDEAPARTURES。

“キュンとなったあの頃は 誰も気にせず裸になってた 今は全て肌を見せたって 世界は驚かない 刺激に慣れすぎてから 随分経ってる

優しさだけじゃ生きていけない でも優しい人が好きなの 夢を叶えることは素敵で でも何か物足りなくなっていく”

っていうメジャーキーから一転してマイナーキーに曲調変わるところが狂おしいほど好き。



5.so far away from homeは、唯一アルバムの色と合ってない気がする浮いた存在の曲だけれど、これは全ての作詞をマークが担当した結果かもしれない。(じゃなくてもなんか底抜けに明るいけど。)


6.a temporary girlがシタールなんかを用いた気怠いダウナーな曲で、歌詞は『FACES PLACES』の延長にあるような内容。タイトルの意味が一時凌ぎの女の子とか都合のいい女の子という自虐的な内容。そんな女性を見つめるマーク。シンセとシタールの音が心地よい。



7.Because I LOVE the NIGHTは、ギターリフやノリがなんとなくLed Zeppelinを感じさせるロックナンバー。この曲もアルバムの中では明るい部類。


8.Anytime smokin' cigaretteは、大人の物凄くやさぐれた雰囲気が充満している。そのまんまジッポで火つけて取り敢えずタバコ吸いたくなるよね。今ではもう100円玉二個とほんのちょっとではタバコ買えないけどね。当時のやさぐれた私も、だいぶ背伸びして聴いていたんだろう。


9.のインストを挟んで10のa picture on my mindがこれまたアルバムの中の隠れた名曲。9,からの流れで聴くと尚いいんだけれど、当時まだ出始めで大流行していたプリクラ撮る機械の閉鎖空間がテーマの曲。

閉鎖空間での女性の閉塞感、焦燥感が感じられ、後半にかけて内に溜まった感情が一気に爆発する。プリクラが写しているのは取り繕った顔ではなく、心の中。無防備で無垢な嘘のない眼差しを切り取る。



11.FACE…


イントロを始めとした短音ギターリフのディレイがU2だよう!←付点八分でディレイかかってたら全部U2ってことにしている


この曲は鏡に写ったあなたと二人って、誰かと一緒に鏡に写っているんだねぇ…ってそんなわけないだろ。鏡に写っているのは自分自身。仕事が終わって太陽が夜に呑まれた頃、月明かりに癒しを見出す。勿論月明かりは比喩表現。


ミネルヴァの梟は黄昏に飛翔する(by ヘーゲル)


的な哲学を感じるというか、哲学させる状況を歌っている楽曲であり、昔を懐かしみながら、昔はよかったと後ろを向くばかりではなく、今を一生懸命生き、強く逞しくあろうとする女性がテーマの楽曲。鏡に向かって、自分を鼓舞しているのである。


12.Can't Stop Fallin' Loveは、まぁ不倫がテーマの背徳的な楽曲ですよね。

人には話せない、誰かに話したい。そうだよね。

そして、踊る君を見て恋が始まってって…


DEGENERATEやFACES PLACESの女性じゃねーか!


って思ってるんやけど違うんかな?

そして実質アルバムを締めくくるCan't stopモチーフのピアノソロがあって、かと思いきやFACES PLACESの訳がわからない逆再生みたいなREMIXなんだけれど、逆再生?流転?


あれもしかしてこれは繰り返される過ちなんじゃね?


“Things a changing and your living?”


panta rhei 万物は流転する(by ヘラクレイトス)


ということで、このアルバムは一貫してどちらかと言わなくても後ろめたいテーマがあると思うんですね。

NIRVANAのカート・コバーンの訃報を受けてNIRVANAの音楽に傾倒しながら制作された本アルバム。

グランジ・オルタナティブロックの危うさ、閉塞感、退廃的雰囲気があって当たり前。

しかしこのアルバムは今聴いてもホント好き。個人的神盤である。