第25回多文化間精神医学会学術総会でシンポジストをしました | 女医の国際精神保健

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気づけば、学会で話すのは下記から2年ぶり?

その前は、こちらかな?

 

それ以外は、講演 とか 講義 講義 とかでしたね。

 

聞きに行った学会といえば こちら こちら こちら こちら こちら こちら など。

今度聞きに行くのは医療人類学的な学会へ行きたいな。って、どこから調べたら良いのか良くわからないけど。日本では日本文化人類学会に集まっているのかな?もうちょっと、医療を取り巻くものに着目したり、開発医療人類学的なものを探したいな。アメリカ、イギリス、スウェーデン、オランダとかなのかな??

 

今回はいつもお世話になっている先生から昨年お誘いを受けたものが決行されたものです。

1日目はフルで会場にいることとしました。(2日目は欠席)

朝一番は4つのシンポジウムを並行で行なっていましたので、全てに30分ずつ出てみました。以下、私的に興味深かったポイント。

 

1 ボローニャ精神保健医療福祉から日本の援用を展望する:

ー 日本の制度では、障害者でないとサービスが受けられないので、医療が病人を作り、福祉が障害者を作っている。障害者の枠に押し込めずに一人一人がそれぞれらしくできないか?街の中で多様な作業を多様な人ができる形にならないか?

ー 問題が起きないように起きないようにの姿勢が強いが、むしろ大事なのは、起きた時の対応。

ー 今ここを生きられないか?すぐに人の表情なりで応答があるのは安心する。日本の多くの場面では、先を予想して、場合によっては予期不安に基づいて「空気を読める」社会規則に従った行動が求められていて苦しい。自由の感覚をどう働かせることができるか?

ー 狂人であるが奴隷ではない

 

2 多文化共生:

ー マジョリティの特権

ー 特権の無意識化

 

3 海外渡航者のメンタルヘルス:

ー 東京海上が展開するサービスと運用実例を解説されていました

 

4 東洋の文化とこころ

ー 陰陽学説という言葉を学びました。相対性とか二元性の統一が言われていて、「どちらか」ではなく「両方」なのだそうです。「丸ごと体験」「いいものも悪いものも受け取る。甘受」なのだそうです。

ー 仏教っぽい。とっても大事なことだけど、simple but not easyの範疇だなあと思ってしまいます。西洋医学では例えば「利尿剤」を使って水分を排出して、排出する量は内服量で調整したりしますが、漢方薬は「水分バランスを丁度よくする」という作用だったりして、私は???なのですが、上記の発想からくるんですかね。すぐ分類したくなってしまう英国にも、分類して対決・比較させたくなってしまう米国には斬新な発想だと思うのですが、受け入れられないかな??

 

会長講演では、SDGsやWHOを筆頭に組まれている国際精神保健の枠組みや発想とSUMH(途上国の精神保健を支えるネットワーク)のカンボジアでの活動が紹介されました。同団体は第70回保健文化賞受賞とのことです。クラウドファンディングなどを行いつつも、賞金で調査と活動をさらに展開するとのことです。

 

特別講演では、カナダからみたglobal mental healthの講義でしたが、情報量は少なく、つまらなかった。。。同じ70分ならこちら を読んだ方が100万倍知識がつき想像がつきます。 https://www.thelancet.com/commissions/global-mental-health

 

で、いよいよ私たちの出番。

座長二人、シンポジスト四人(一人25分)、指定討論者一人(25分)で、質疑応答の構成でした。

国連・WHOを筆頭にした世界の国際精神保健の流れ(特にSDGs、CRPD、Lancet series, WHO Mental Health Atlas2018)、国立国際医療研究センターが行ったフィリピンの子供のメンタルヘルスケア活動報告、SUMHなどを通じてカンボジア・ネパール・ブラジル・ドミニカで行ったメンタルヘルスケア活動報告があり、私は現在の研究の精神科強制入院と意思決定支援(当事者・医師の協働質的研究)を発表しました。

私の研究は端的にいえば、下記です。

ー 精神症状がある人の精神科入院を誰がどのように決めるべきか?

ー 精神症状がある人の入院を他人が決めるのは治療?ケア?虐待?

私が思ったことや受けた質問は以下です。

ー 母体死亡は年間0.2million、マラリアは0.4mil、自殺は0.8mil。精神症状により年間GDP4%が世界で失われている。精神保健サービスへの1ドルの投資は4ドルの回収ができる。重い精神症状のある人は一般人と比べて20年寿命が長い。重い精神症状がある人は9割仕事に就けない。(そんなfact sheetを見て、「母子保健や三大感染症は世界で多くの被害者がいるけど、精神保健は死なないでしょ?」「精神保健サービスって有効なの?」「精神保健って経済に関係ないでしょ?」「世界は忙しくって精神保健対策している暇はない」って言っている、15年前の知識で仕事をしている人たちにどうやって説明したらいいのかなあ?って考えました。当時は確かにデータがなくて、その後こんなにデータが揃っているのにね。)

ー インド滞在期間はどれくらいでしたか?(5ヶ月)

ー 今まで医療現場では入院や加療を嫌がる患者さんにいかに諦めてもらうかを考えていました。(研究結果がそれぞれの気づきにつながるのであれば本望)

ー 「医療モデル」から「社会モデル」への発想の転換はどうすればできるか?(委員会でも診療でも何か決めるときに当事者が必ずいること。Nothing about us without us。)

ー 個人が困っていることを主張することと共同で決めることのせめぎ合いはどう扱われる?(Paternalisticについて考える必要と、Relative autonomyについて考える必要がある。)

ー 途上国へ支援という発想から、一緒に成長とか逆にモデルを輸入とかいろんな発想が広がっている。

ー 何しろ色々取り組んでoptionを増やすのが必要。

「既存の制度への疑問」って日本がとても嫌がるものなので、どんな反応が返ってくるかちょっと不安に思いながら臨みましたが、「重要な課題です」「素晴らしい手法です」「お役に立てることがあればお知らせください」というフィードバックを色々もらい、うれしかったです。解析を充実させて、2019年は医療及び人類学の分野へ論文投稿と学会発表を目指したいわ!

 

学会会場でお会いできた方々との意見交換も非常に貴重でした。

いろんな人を紹介していただいて、「医師+人類学」「医療人類学」の視点で仕事をされている方大勢いらっしゃることを初めて知りました。Applied medical anthroplogy的な仕事をプロジェクトとかでできたら嬉しいなあと私のモヤモヤにちょっと形がつきました。

とりあえず、下記二冊は読んだ方がいい!とのオススメも私の研究についてコメント頂けました。

 

 

 

その流れで、こんな のも見つけて、ふむふむ。

医療人類学って何?? には こちら

https://www.thoughtco.com/medical-anthropology-4171750