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ほんのにちようび

心に残った本のあらすじと感想をつづります。

(時に映画、マンガ、音楽などについても)

O&T


気がついたら、「第133回芥川賞&直木賞メッタ斬り」がアップされていた。

http://media.excite.co.jp/book/metta/133/index.html


芥川賞の講評でのっけからトヨザキさんがヒートアップ。伊藤たかみさんの候補作をけなしまくっている。


「・・・幼稚なマザコン話にこんなあざといメタファー使われてもねえ。なんなの、この人は。なめてんの、小説を。いや、わたしはこの人に刺されてもいいですよ、恨まれても屁でもありませんよ。」


この対談で二人も言っているように、今年の芥川賞はなんかぱっとしない。

まあ芥川賞はもともと候補に(私の知らない)新人が多いからぱっとしないのはともかくとしても、直木賞のラインナップがいつもと大きく違う。大森さん(ところでこの人、いつのまに髪の毛黒くなったのかしら)が「本屋大賞つぶし?」と言っているように、本屋大賞とカラーがかなりかぶっていて新鮮味がない。


ちなみに、豊崎さんが絶賛していた「ベルカ、吠えないのか」は、発想と構成は面白いけどやや散漫な感じがして、私は最後まで乗り切れなかった。前の「アラビアの夜の種族」が傑作すぎたので、あれと比べてしまうとどうしても弱い。


でも、この対談を読んで、森絵都の「いつかパラソルの下で」を読んでみたくなった。受賞作にちっとも心惹かれなかったのは皮肉だけど。「花まんま」は読んでみようかな。



BGM:グレープフルーツちょうだい (新録)/ゆらゆら帝国

斎藤 兆史
英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語
中央公論新社 ★★★

いやー、やっぱり歴史に名を残すような人は半端じゃない。

この本には新渡戸稲造、岡倉天心、野口英世、白洲次郎など、英語の達人10人の逸話が収められているのだが、驚くことに彼らのほとんどが日本にいながらにして、10代のうちにかなり高度な英語力を身につけていた。

 

新渡戸稲造は15歳で札幌農学校に入り、すべて英語で行われる授業を難なくノートに取ったというし、斎藤秀三郎は大学在学中、3年間で図書館にある洋書をすべて読みつくしたという。他の達人たちも、持って生まれた語学の才にあぐらをかくなどということがなく、勉強量がとにかく尋常ではない。


彼らがそのようにして身につけた英語で、欧米人に一歩もひかずに対峙するさまは見ていて気持ちがいい。

とくに、岡倉天心の章で出てきたこのエピソードには拍手喝采。


天心が弟子の横山大観らとボストンの街を歩いていたとき、ひとりの若者に声をかけられた。

“What sort of 'nese are you people? Are you Chinese, or Japanese, or Japanese?”
(おまえたちは何ニーズだ?チャイニーズか、ジャパニーズか、それともジャヴァニーズ<ジャワ人>か?)


すると、天心は若者の方を向き、こう答えたという。

“We are Japanese gentlemen. But what kind of 'key are you? Are you a Yankee, or a donkey, or a monkey?”(わたしたちは日本人紳士だよ。ところで君こそ何キーなんだい?ヤンキーか、ドンキー<ロバ、ばか者>か、それともモンキーか?)


英語もさることながら、とっさの頭の回転もすごい。

欧米人相手に互角以上にわたりあった彼らの活躍を読んで爽快な気持ちになるもよし、「よし、自分も!」と英語への勉強意欲を高めるもよし、とにかく読んでいて気分の良い本です。



BGM:wonderwall/OASIS



ヒトラー


これまでずっとタブーとされてきた「ヒトラーの人間性」に挑んだ、というふれこみのこの映画。当時の秘書が死の直前に語った証言を元に、ヒトラーが死ぬ直前の12日間に焦点を当てて描いている。


なにしろ、あの「es」の監督が撮った映画なので、血なまぐさい描写がおびただしいことこの上ない。もちろん戦争映画なのである程度は不可欠なのだけど、それにしたってすごい。血に飢えている人は即刻見に行かれたし。私は先日も(血が嫌いだというのにうっかり)戦国自衛隊を見たばかりなので、本当におなかがいっぱい。


それはさておき、内容はなかなか見ごたえのあるものだった。私にとってヒトラー=「アドルフに告ぐ」(手塚治虫の漫画)なので、ヒトラーの人間臭さはなんとなくイメージできていたが、ブルーノ・ガンツ演じるヒトラーは想像を超えて驚くほどリアルだった。ベルリン市民を案じる部下に対して、


「戦時下において、市民など存在せぬ」


と言い放つシーンも、冷酷というよりは、目標実現への悲痛なまでの叫びに感じられて痛々しい。

 

印象的なシーンが2つある。

1つは、ゲッベルスの奥さんが6人の子どもを冷酷な顔つきで殺していくシーン。その少し前には、死を前にしたヒトラーのひざにすがりつき、取り乱して「生きてください」と泣き叫んでいたのに、同じ人物か?と思えるぐらい冷静に毒薬を飲ませていく。数多の軍人たちがヒトラーを信奉していたけれど、実はヒトラーに対して一番強い狂信の念を(少なくとも劇中で)持っていたのは彼女ではなかっただろうか。


もう1つはかろうじて逃げだした秘書が、「女には手出しをしないだろうから、ソ連軍に助けを求めろ」と言われてたった一人でソ連の大群の中へ歩いていくシーン。ものすごい緊張感のなか、ひとりの少年が彼女に走りよって味方をするように手をとるシーンでは、この世ではじめてあたたかいものに触れたような安心感を感じた。



BGM:Little Fugue in G-/Bach

 

穂村 弘
本当はちがうんだ日記
集英社 ★★☆

ほむほむの新しいエッセイ。いつもながら目のつけどころが絶妙。「世界音痴」のころと基本的な内容(ニュアンス)は変わってないのだけれど、閉じた感じがやや薄まって(客観性が強くなって)面白くなったと思う。帯裏にも紹介されているけれど、たとえば


私は十年間通ったスポーツジムでとうとうひとりも友達を作れなかった。ダンベルを上げたり下げたりするだけで、誰ともひと言も口を利かない私は「修行僧」と呼ばれていた。

ちがうんだ。修行じゃないんだ。


のあたりなんか面白かった。

それから、あとがきは秀逸。「現実入門」の時も思ったけれど、この人のあとがきはすごく鮮やかだ。


BGM:月の爆撃機/THE BLUE HEARTS

papyrus


幻冬舎から満を持して(?)出た、パピルスを買ってみました。

詳細はこちら→http://www.g-papyrus.jp/


特集が中山美穂のロングインタビューで、小説のほうのメインは福井晴敏の読みきり。

他の執筆陣も川上弘美、あさのあつこ、乙一、大崎善生などに加え、井坂幸太郎や村上龍のエッセイなどもあって、実に豪華。小説だけだとちょっと重い・・・という人のために、中田英寿のこだわりの時計紹介や、マンガ、矢井田瞳のインタビューなんかもあったりして。


でも、正直言って、たぶんもう買わない(苦笑)。

各種文芸賞受賞作が載ってない限り文芸誌を買わない私にとっては、文芸誌というのはもともと「読みにくいもの」。緩急(硬軟?)おりまぜてその読みにくさを解消し、私のような門外漢も手にとれる文芸誌を目指したのかな?と思っていたが、どう考えても自分(およびその周辺)が読者対象に思えないつくりなのだ。ぱっと見は女性対象っぽいのに、メインの読みきりは福井節が炸裂する男の世界だし(私個人は決して嫌いじゃないけど彼は長編向きだと思う)、わりと読みやすそうな執筆陣を集めているのに、肝心の作品は自己模倣のものが多くて「前にも読んだような・・・」と思ってしまう。


読後の印象は「飛行機の中によくおいてある機内誌みたい」、でした。



BGM:B-DASH/トンガリキッズ ←3人の正体のウワサは真実?

戦国


[あらすじ]

陸上自衛隊で秘密裏に行われた実験の最中、プラズマの影響による不可解な事故が発生。実験部隊がまるごと目の前から消滅してしまう。その3日後、部隊が消えたまさにその場所に突如現れたのは、戦国時代の侍だった。事故と時を同じくして、富士駐屯地の上空に、過去への介入が原因と思われる虚数空間「ホール」が現れる。その漆黒の闇は次第に大きさを増していき、このままだといずれは世界を覆い尽くしてしまいかねない。そこで自衛隊は事故当日と同じ環境設定で、再びタイムスリップを試みることに。その際、かつて特殊部隊の一員で、今はしがない居酒屋の店長である鹿島(江口洋介)に声がかかった・・・。


同僚が薦めていた「戦国自衛隊」を見てきた。なんか最近、映画といえばミニシアター系の人間の心の機微を描いた感じのものばかり見ていたので、こういう荒唐無稽な映画が逆に新鮮だった。最初に過去へ飛ばされた部隊の隊長がいきなり「信長」になってたり(しかも史実では信長は15,6歳なのに、配役が鹿賀丈史!)、戦国時代にそんなの作っちゃうの?とか、あー、あとはネタばれになっちゃうから書けないけど、その他いろんな設定が面白かった。


演技が面白かったのは斎藤道三役の伊武雅刀。彼は登場シーンから観客の笑いを誘っており、最後まで笑いを提供してくれた。そして、主役を食っていたのが北村一輝。この俳優さん知らなかったのだけど、すごく凛々しくてよい演技をしてた。まあ、主役さんがあまりに棒読みだったのもあり・・・。


個人的に感心したのが、実験部隊と入れ替わりに現代にタイムスリップした戦国武将(北村一輝)が、現代でシャツとスラックスを着ているシーン。あたかも本物の戦国武将が間違ってシャツとスラックスをはいちゃったかのように似合っていないのです。サイズの違う服を着せたりしてうまく違和感を出したんだろうなあ。見事でした。


期待いっぱいで見に行くと見事に肩透かしを食らうと思うので、「今日は頭使わなくて、かつすっきりする映画が見たいなあ」という気分のときにおすすめ。間違っても泣ける映画ではありません。ネタは満載だけど。

ちなみに、ハリウッドで再編集されて全米公開されるらしいけれど、「SAMURAI COMMANDO MISSION 1549」ってタイトルはちょっとどうかと・・・。

BGM:We will rock you/QUEEN

先ほどのトヨザキさん一日書評講座には、ひとつ素敵なオマケ(?)があった。それは、事前に書評を提出しておくと作品を講評してもらえるというもの。実は、僭越ながら私もひとつ提出していたのだが、うれしいことに、直筆のコメント付きで全員に戻ってきた。これはかなりうれしい! ちょっと宝物になりそうです。      

ということで、調子に乗って提出したものを載せます。

前に書いた「袋小路の男」の感想に手を加えたもの(最後はちょっと蛇足かな)。


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この作品は不思議だ。なかなか報われない恋の話なのに、なぜか読んでいてあたたかい気持ちになる。そこにはまっすぐな想いがあって、不器用でねじれた形だけれど、それを確かに受け止めている人がいる。他の作品でもそうだが、糸山秋子は「恋愛が成立していない男女関係のここちよさ」を描くのがとてもうまい。


主人公の日向子が想いを寄せる小田切は、ちょっと誇大妄想的なうえに、自分勝手でいつものらりくらりとしているけれど、たまに心をくすぐるようなそぶりをしてみせる、厄介なキャラクター。これがまた、こんな男に振り回された経験って誰しも一度くらいあるはず、と思えるリアルさで描かれている。日向子は小田切に振り回されつつも、そのゆるい幸せに結構ひたっている。 


小田切を例えるならば、長い間根気よくえさをやったり、声をかけたりするうちに家の周辺に頻繁に現れるようになった野良猫みたいなものだ。所詮、飼い猫にはならない。だからこちらの行動に対して、見返りを期待してはいけない。でも、突然姿を見せて不意にうれしい気持ちにさせたりするから侮れない。もしも遊びに来たときのえさ用に、とちょっと奮発して柔らかくて質の良いじゃこなんかを買って帰る日は、それだけでこちらも幸せになってしまう。 


思わずうなずいてしまったのがこの部分。


〈ばかだな、と言われるのが好きだと小田切は知っていて、それで毎回のようにばかだな、と言う。何度言われても日向子は快さを感じた。いつもきっちりしていて虚勢を張っている自分が、ばかだな、という言葉の前で角砂糖が紅茶に溶けるようにほろほろと崩れて、甘い気持ちになる〉 


張りたくて虚勢を張っているわけではない。本当は寝っころがっておなかを見せ、降参のポーズをしたいし、おなかもなでてほしい。だからそれを許してくれるサインが出るのを待っている。小田切が野良猫なら、日向子は従順な飼い犬だ。ふたりの間にはいつも一定の距離があるけれど、日向子はその距離がこれ以上縮まりもしないかわりに、もはや勝手に遠ざかってもいかないだろうということをゆっくりと確信していく。 


読んだあとに鮮やかによみがえるのは、冒頭で高校生の日向子が小田切の家をこっそり見に行く光景だ。雨粒が光を受けてかがやく雨上がりの朝、袋小路に入り込んだ恋をかかえて、後に袋小路で立ち往生する人生を送ることになる男の家を訪ねるそのシーンは、ふたりのその後の縮図のようでとても美しい。


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BGM:last live DVD/SUPERCAR ←ナカコーとフルカワミキの声が、ところどころ泣き声のように聞こえるのは、私の勝手な感情移入?

「文学賞メッタ斬り」「百年の誤読」で知られる書評家、豊崎由美さんの一日書評講座に参加してみました。書評の書き方を学ぶぞ!というよりは、圧倒的に「あのトヨザキさんが見られる!」という、ミーハー的な興味によって。


教室に入ると、すでに前に座っていらっしゃったトヨザキさんを発見。小柄で、ちょっと性別を超越したような雰囲気があり、かつ清潔な気配のする方だった。話し出すと、これがまた乾いた良い声。付箋のいっぱいついた本を愛しむように手にしながら、書評とはどんなものか、どんな書評が良い書評か、作家・書評家とはどんな人たちか、など、興味深い話をたくさんしてくださった。「メッタ斬り」の作者らしく、抑えたなかにも程よい辛味が効いていて、聞いていてとてもここちよい。


優れた書評のポイントとしては、

①絶対に読み取らなくてはいけない内容をきちんと把握した上で書いていること

②その人ならではの芸があること

③(本に正しい読み方というのは存在しないという前置きの上で)その小説の世界を膨らませるような、面白くて独創的な誤読があるか(もっといろいろおっしゃっていたけど、特に大事だと思ったのはこの3つ)。


そして、面白いと思ったのが、男性書評家(例:福田和也など)にたまに見られる、書評を政治的に書くタイプの書評家を批判していたこと。つまり、自分が面白いと思っていなくても、「今この人を誉めておくと後々役立つだろう」などという策略の上であえて誉めたりする姿勢を批判していたのだが、こういう姿勢を毛嫌いするのって、とても女性的だなあと感じた。トヨサキさんの書評の魅力はそういう、「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い!」のような女性的思考から来ているのかもしれない。だから、政治的思考や余計な知識のひけらかしがまぶされて訳が分からなくなっている小難しい書評とは違い、スタンスがはっきりしていて明快かつ爽快なのだろう。


さすが書評家だなあ、と思ったのは、話を聞いていると、その中で出てくる本をすごく「読みたい!」という気にさせられること。海外文学もかなり造詣が深そうだった。ヴァージニア・ウルフ好きらしい。真島昌利も歌っていたことだし、一度は読んでみなきゃと思っていたけれど、これはますます読んでみなくちゃ。

とりあえずおすすめの中でも、


・ロンドンで本を読む/丸谷才一

・あたりまえのこと/倉橋由美子

・黒い仏/殊能将之

・ベルカ、吠えないのか/古川日出男


はさっそく読もうと思った。なかでも「ベルカ・・・」は、年に十数冊しか本を買わない私ですら帰りに書店に寄って即買いしたほど、興味深い紹介だった。行ってよかった~。


BGM:Last live DVD/SUPERCAR

著者: 森 達也
タイトル: いのちの食べかた
理論社 ★★★

最近、気になっているのが、この本やみうらじゅんの「正しい保健体育」をはじめとするヤングアダルト新書「よりみちパン!セ」シリーズ(理論社)。自分が小・中学生のときにこういうシリーズがあったら、きっと読んでいただろうな。


この「いのちの食べかた」では、日ごろ私たちが食べている肉は、誰が、どこで、どのようにして解体しているのか、という話から始まって、部落問題の歴史へと広がっていく。たとえば、江戸時代、「穢多」は「非人」よりも階級が上でありながら、「穢多」は子孫代々その身分を抜けられず、「非人」は一定の条件を満たせば農民や商人になれる、という仕組みになっていた。そして、それはなぜか、制限時間30秒で考えてみよう、というように話は進んでいく(答えは、「穢多」は序列を根拠に「非人」を差別し、「非人」は農民や商人になれる可能性のある自分は「穢多」よりマシだ、とお互いを不満のはけ口(差別の対象)にできるから)。


こういう問題に直面させられると、とても月並みだけれど、一方で無頓着に肉を食べながら、もう一方で「動物を殺すなんてかわいそう」などと思っている自分が、とても不可解な存在に感じられてくる。


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これに関連して思い出したのが、先日テレビで見た光景だ。生後間もない4匹の子どもを育てているライオンのところへ象の大群がやってきて、逃げ遅れた子ライオン1匹が踏み潰されてしまう。親ライオンは瀕死の子どもを必死になめていたが、助からないことを知るや、自らの口を子どもの口に覆いかぶせて窒息死させた。そしてそのまま、子どものなきがらをきれいに食べてしまったのだ。


死骸の匂いにつられてたくさんの肉食獣がやってくると、生きている子どもたちも危険にさらされます。なので、母親は一片の残りもなくなるまで、きれいに子どもを食べつくしました」というナレーションが入った。


母ライオンは、恍惚と憮然を足して2で割ったような顔で、子どもを咀嚼していた。彼女の中で、その行為に対する感情はどのように処理されたのだろう?そのシーンは、私の中でどうしても消化されずに、かたまりとして残った。

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今の私たちの暮らしはあまりにも死から遠すぎて、殺すことや死ぬことのリアルさがいまいち実感できない。そうやって私たちが過剰なまでに生活から死を遠ざけてしまったことが、かえっておかしな形で死に興味を持ち、凶行に走ってしまうような人々を生み出したのかもしれない。動物を愛する私たちが、その肉を食べるという矛盾。自分が生きるために何かを殺さなくてはいけないという葛藤。そういう感情を子どもに考えさせることはとても意義のあることだと思う。


とはいえ、そういった部落問題や倫理観の話を抜きにしても、食肉の歴史などトリビア的な要素もふんだんに盛り込まれていて、なかなか興味深い本だった。



BGM:TIME/DEPAPEPE

著者: 荻原 浩
タイトル: 神様からひと言
光文社 ★★★

[あらすじ]

大手広告代理店をトラブルで辞め、珠川食品の販売促進課に配属された佐倉涼平。役員を前にした新商品のプレゼン中、あろうことか直属の上司に大暴言を吐き、社内の墓場である「お客様相談室」へ転属となった・・・。


荻原浩の作品は必ず笑いが入っているので、読んでいて楽しい。「笑い」という観点から観れば、今まで読んだ彼の作品の中で1番かも。さらに、登場人物も個性豊かでキャラがたっている。特に気に入ったのは、お客様相談室の上司である「篠崎」。お客様の言いがかりの矛盾をついて、持参したお詫び代を浮かせたあげく競馬につぎ込んだり、のらりくらりしているかと思えば、ヤグザの恐喝に鮮やかな立ち回りを見せたり。ダメな部分とかっこいい部分の振れ幅が面白い。


この人はサラリーマン小説のツボを心得ていると思う。読んでいると頭の中にユニコーンの「大迷惑」(サラリーマンが単身赴任を嘆く曲)が流れてきそうだ。


突然 忍び寄る 怪しい係長
悪魔のプレゼント 無理矢理
3年2カ月の 過酷な一人旅

(中略)
この 世はまさに大迷惑
逆らうと首になる マイホーム ボツになる
帰りたい 帰れない 二度と 出られぬ蟻地獄

それにしても、コピーライター出身の人は「小器用」(悪い意味じゃなくて)な文章を書くなあと、この人や奥田英朗を読んでいると思う。エンタテイメントを書かせると本当にうまい。



--------------------------荻原浩 既読本--------------------------


僕たちの戦争    ★★★☆

明日の記憶     ★★☆

メリーゴーランド  ★★ 公務員がテーマパークを立て直すために奮闘する話。


あと、今手元にあるのは「ハードボイルド・エッグ」「オロロ畑でつかまえて」。



BGM:Sometime Samurai Featuring Kylie Minogue/Towa Tei