昨年、熊本大学の徳野教授の講演を聴く機会に恵まれた。徳野氏は、地域づくりの世界では筋金入りの毒舌(口の悪さ?)で知られており、はじめて聞いた人はおそらく驚くことであろう。とても還暦を迎えた人とは思えないほどの迫力で話しかける方である。
本書は、わが国の文化を「稲作」とともに歩んだものとする主張が基底となっており、稲作を中心とする「農」の営み、たとえば家族的経営、集落維持機能などが崩壊しつつあることに警告を発している。特に兼業農家という説明や消費者が誕生したいきさつを人口動態で説明されていることについてはかなり合点がいく。
徳野氏は熊本大学に籍を置く農村社会学者である(しかも農学部ではなく文学部なのだ)が、合鴨農法の普及に努めたり、「道の駅」の名付け親となるなど、奇抜な発想やアイディアなどで地域振興の現場を直視し続けてきた地域振興の実現者でもある。
そして、氏の提唱する「T型集落調査」の手法は、地域再生のひとつの手段として農村以外でもつかえる手法だと思われる。たとえば疲弊が激しい商店街などでもこの手法はおそらく有効だ。また行政が中心市街地や商店街の活性化を唱えながら、その担当者本人が商店街で買い物をしないのに活性化などとチャンチャラおかしい行動をとっている現実には目をつぶる、つまり市民の消費動向についてはまったく調査をせずにどうしたら人を呼べるのかということに終始している現状と、農政や農学者が消費者のことを考えずに農業の生産のみについて考えている現状が非常に重なった。
徳野氏は5月9日に愛媛大学農学部で講演をされるようだ。久しぶりにあの毒舌にあたってみるとしよう。
