愛媛県松山市は今年かなりの気合が入っている。言うまでもない。NHKのスペシャル大河ドラマとして11月から「坂の上の雲」が今年から3年間放映になるからである。松山市はこれを契機として町全体をフィールドミュージアムに見立てて、ハード・ソフト両面で事業展開してきた。このおかげでハード面ではかなりの整備が行われ、そして新聞報道によると、松山ボランティアの会に登録されたガイド数もほぼ倍になったという成果があがっている。ボランティアガイドが増えたのは、団塊の世代をうまく利用したということもあるが、商工会議所と連携して人材育成を行ったのが大きいと言える。
おそらく大河特需と瀬戸内しまなみ海道10周年記念も重なり、愛媛県に多くの観光客がやってくるはずだ。前回のしまなみ海道開通時に愛媛県は観光客が大きく伸びたが、それ以降の集客に失敗していることもあり、絶対に同じ轍は踏まないということでかなりの意気込みが伝わってくる。ただし、意気込みもあるが、成功する見込みもあるようだ。それが2004年に愛媛県の西南地域で実施した「えひめ町並み博」だ。これまでの博覧会と異なり、ハードは全くつくらず、住民の自主活動を支援しながら、あるモノを活かすというスタイルの博覧会は、多くの観光客を集めた。実際に愛媛県はこの住民の自主活動支援を中心に、今回のしまなみ海道の10周年事業を展開しようとしている。
同じく松山市は道後地区の道路改修や坂の上の雲ミュージアムの建設、ロープウェー街の整備などを中心に、どこかしらハード先行のようになっているが、一方で地道に住民活動を活発化しようとしている。今秋からドラマが放映されるが、どのように松山の町に観光客が訪れるのか、今から見物である。
さて、この「坂の上の雲は、所詮は松山の話だ、今治の話だ」と思っていてはダメである。愛媛県内の他の町は「坂の上の雲」に引っかけて、表現が悪いがうまく便乗することも検討すべきである。たとえば、ちょうど松山から宇和島にかけての道は司馬遼太郎の紀行文「街道をゆく」にも登場する。したがって、坂の上の雲との関係性から人を呼び込むことを考えていくことが求められるわけだ。
一番最適なのは、司馬遼太郎が愛した町「宇和島」だろう。司馬遼太郎ゆかりの地を訪問するコースなどを策定して、観光客にメニューとして提供することができれば観光客はやってくるに違いない。筆者は司馬遼太郎ファンなので、こっそりと候補地を考えてみた。
<坂の上の雲、司馬遼太郎ゆかりの地>
・伊達宗城の像(小説「伊達の黒船」、「花神」に登場)
・御通橋(小説「花神」に登場)
・大村益次郎住居地(小説「花神」に登場)
・名勝「天赦園」(小説「花神」に登場)
・宇和島城(小説「花神」に登場)
・西光寺(小説「伊達の黒船」の主人公の菩提寺)
・樺崎砲台・宇和島歴史資料館(小説「伊達の黒船」に登場)
・愛宕公園(司馬氏はこの公園から宇和島の町並みを眺めていた)
・旧木屋旅館(現在は営業していないが司馬氏が宿泊した宿)
・斉藤鮮魚店(伊予の寄合酒をした場所)
・和霊神社(「街道をゆく」に登場)
・神田川原(司馬氏はこの川原を歩くのが好きだった)
このほかにもかなりあると思うが、これらをうまくつなぐとよいのではないか。単なる宇和島の観光コースだが、切り口を「司馬遼太郎ゆかりの地」にしてしまうだけで、特にお金をかける必要はない。
上記の場所は、一部、市街地より遠方のところもあるから、そのあたりをどうするかという問題があるが、宇和島市は4月には港に、いわゆる「海の駅」が誕生するため、休憩するのも便利だ。ボランティアガイドをしてもらいながら、木屋旅館で休憩をし、ぐるっとコースを廻り、夜は斉藤鮮魚店で郷土料理を食しながら、司馬氏が愛した「寄合酒」というのもなかなか乙ではないだろうか。いずれにしても「坂の上の雲」は松山だけの問題にすませないという意気込みが重要だろう。





