同じ鳥でも鴨肉と鶏肉はまるでちがいます。鴨肉は赤身肉であり、鶏肉は白身肉です。赤身の鴨肉は、鉄分が多く、クセがありますが、その分凝縮されたうまみがあります。白身の鶏肉は、味はあっさりしていますが、身がやわらかく食べやすいといえます。
鴨肉と鶏肉のように魚も赤身と白身に分けられます。魚の場合、赤身と白身のちがいは生態が要因になります。つねに泳いでいる回遊魚は赤身、回遊せず、岩場などに住んでいる魚は白身です。
この生態のちがいは、カモとニワトリにもあてはまるのかもしれないと思いました。カモは渡り鳥ですから、長距離移動します。それは海の中を回遊するのと同じようなことだといえます。長時間、運動するために、カモの筋肉は遅筋に発達し、赤身肉になったのかもしれません。
ニワトリは長距離を飛ぶことはできませんから、遅筋になる必要がないといえます。白身魚と同じように、一瞬だけすばやく動ければいいだけですから、速筋なのだと思います。
と、ここまで考えて、ふと気づきました。野生のカモは渡りをしていますが、ふだん食べているカモは肥育されている家禽です。エサをあたえられ、育てられているのですから飛ぶことはないと思います。飛ばなくなっても筋肉は遅筋のままで、赤身なのはどうしてなのだろうと思ったのでした。
飛ばなくなったカモというとアヒルも同じです。アヒルはマガモを家禽化した鳥で、卵をたくさん産ませるため、太らせておいしくいただくために巨大化していきました。
結果として、マガモのようには飛ぶことはできなくなりました。飛べなくなっても、アヒルの肉は鴨肉のように赤身の肉です。
食用のカモにはマガモのほかにアイガモ(合鴨)があります。アイガモはマガモとアヒルを掛け合わせたカモです。アイガモは完全に家禽ですから、飛ぶことはないと思います。
アイガモもカモと同じく赤身の肉です。飛ばなくなっても、りっぱな遅筋を維持できるなんて、ちょっとうらやましい感じがします。
鶏肉でも、地鶏になると、すこし赤みのある筋肉になります。地鶏は飼育方法に基準があり、1平方メートル当たり10羽以下の密度で飼育なければならないとなっています。スペースがある分動き回ることができるので、モモの筋肉が発達し、赤身っぽくなるのです(加熱すると白身と同じですが)。