オーケストラの楽器のなかで、ホルンがいちばんむずかしい楽器だといわれています。むずかしい理由は、カバーしている音域が広いにもかかわらず、その音のちがいを唇の動きや口の中の広げ方、息の量やスピードなどを駆使して吹き分けないといけないからです。

 

 ホルンは楽器についているバルブが4つしかないので、たくさんの音をだすためには、人間が工夫しないといけないということです。リコーダーはひとつの音にひとつの指使いですが、ホルンはひとつの指使いで20弱もの音をだすそうです。高音域にいけばいくほど、息のコントロールがむずかしくなる、たいへんな楽器がホルンだといえます。

 

 音域が広いので、ホルンの活躍の場が多くなるのだと思います。トランペットのようにファンファーレの吹くこともありますし、弦楽器とともにハーモニーを奏でるときもあります。ホルンはオーケストラのなかでも重要な楽器なのです。

 このホルンが、私のなかにある、理想のガスコンロのイメージにあてはまる気がします。音域の広さは、火力の強弱の幅と同じです。ガスコンロの火力も、強火からごく弱火まで安定しているのがいいと思います。

 

 ホルンのむずかしさが高音域であるならば、ガスコンロのむずかしさは弱火の加減だといえます。強火はいきおいがあるかどうかですぐわかりますが、弱火は火の長さを調節できる幅にちがいがあるように思います。

 火力の調節時に弱火にしていくと、いいガスコンロはレバーのひねりぐあいとしっかりと対応して火がみじかくなっていきます。よくないガスコンロは、弱火にしようとしてレバーをひねると、火が消えてしまいます。

 

 強火はMAXですから、ひとつしかありません。弱火はひとつではなく、弱火のなかで、また火力のちがいがあり、それをきちんとあらわしているガスコンロが、いいガスコンロだと思います。

 弱火で調理したいものというと、煮込み料理や出汁などです。鍋のなかの液体がクツクツしているような、ちょうどいい状態を維持したいので、火加減の調節が重要になります。

 

 このとき、弱火のなかで幅があればやりやすいですが、幅がなく、すぐに消えたりするのは、あつかいがむずかしくなります。鍋のなかの状態と、火の長さを見比べて、適当な火力にするために、その場から離れることができなくなってしまうこともあります。

 工夫しながら正確な音を出すことを目指すホルンと、適当な火加減を見極め、調節するガスコンロには、共通点があると思います。