昔のスパナ群
(非JIS)
昔のスパナを集めていると、どこが作ったのか全く分からない物が沢山あり、『詳細は闇の中』と感じてしまいます。
これまでJISや車載スパナなど分野毎に分けて追い掛けてきましたので、少しづつ正体が分かってきています。
それでも分からない物の方が多く、相変わらず闇の中です。
したがい、日本の古いスパナ群を闇の中から拾い上げるためのブレークスルーとしてロゴに着目した一覧表(アルファベット順)を作り、製造元等の解明に使用しています。
なお、基本的には製造メーカーを追い掛けていますが、不明スパナには工具商社ブランドや産業機械の付属品などのOEM供給品も含まれているものと思います。
新たに実物が見つかった場合は順次追加しています。
★掲載条件
1) 戦前から戦後20年程度の間(~1965年頃)に生産されたと推定されるスパナ
2) 日本製
3) スパナJIS認証取得の25社以外(非JIS)
4) 詳細不明またはマイナーな工具製造メーカー
5) 実物写真または広告イラストあり
以上5条件に合致するスパナを取り上げて、ロゴで分類。
要は、あまり知られていないスパナを取り上げています。
★非JIS大手メーカーの追加
なお、『スパナJIS25社』の姉妹編として非JIS全体をカバーさせるるべく、最後にMITO/水戸工業など非スパナJISの主要工具メーカーを追加してあります。
これで日本製スパナの4部作(戦前、海軍陸軍、JIS25社、非JIS)が完成です。
★補足資料
巻末にスパナを製造していたことが資料で確認できている会社名一覧を戦前と戦後に分けて掲載しています。(今後の調査のため)
不明スパナの一部は、この一覧表内の会社が製造しているのだろうと思います。
- - - - - ◇ - - - - - ◇ - - - - -
・8角マークの中身は"θ"に見えますが、漢字の"日"だろうと思います。
・会社名に"日本"が付くのだろうと思いますが、工具会社には該当が無さそうなので、工具商社ブランドまたは産業機械の付属工具?
【2025年5月21日 追記】
当ブログの読者"機械好き"さんからの情報により8角"日"は日本製鋼所のロゴと判明しました。
日本製鋼所は戦前からの企業で、あらゆる機械製品(自衛隊向け装甲車等)を製造していますが、東京の武蔵製作所が農耕用小型エンジンを"ムサシ"ブランドで製作していた時期があり、その整備工具なのだろうと思います。
詳細?(実物以外の情報無し)
・唯一の手掛かりである"CARL"のロゴ情報が見つかっていません。
(基本的には国会図書館の所蔵資料を会社名で検索して情報を探しています)
⇒ 機械工業系会社のロゴ一覧798社は、こちら。
【2024年12月15日 追記】
CARLは小野製作所が戦前の小野逞三商店時代から使用していた商標と判明。
↑『機械工具取引案内1963大阪版』より抜粋
詳細?(実物以外の情報無し)
・特徴的なロゴ(太陽のコロナ)なのですが、ロゴ情報が見つかりません。
DAIWA
大和鍛工?
・DAIWAという会社名、業種が鍛造業の2点より"大和鍛工(株)"の生産品である可能性が高いと思います。
・会社ロゴが本品ロゴと同じ字体。
↑1970年『帝国銀行・会社要録』
・大和鍛工HP ⇒ こちら
D.T.S
詳細?(実物以外の情報無し)
・略してDTSになる会社名が見つかりません。
ワシノ製作所

・1921年、日本で2番目の鍛造スパナ。
⇒ 詳細は、こちら。
ABC/相場産業製、はたまた台湾模造品??
・haは、ABC/相場産業とそっくりなスパナです。
・同一点…凸パネルとスパナ形状、裏面表示(FORGED STEEL N-x)、ロゴデザイン。
・ロゴ内の文字が異なるだけで、後は完全に同一なので、ABC/相場産業の別ブランドまたはOEMだと思っていました。
・しかしながら、ABCを模造した台湾製との話もあるようです。(ABCの輸出は米国だけで無く、台湾でかなり売れていたらしい)
・確かに、haは鍛造合わせ面の処理が雑なのが気になります。
・なお、戦後初期は、日本製でも"JAPAN"の刻印義務が無かったので、どこの国製なのか刻印表示からは分かりません。
・さて、ABC/相場産業製なのか、はたまた台湾模造品なのか、どちらでしょう?
↓ABC/相場産業モデル(裏面だけ見ると全く差が無い)
HIRAIWA
詳細?(実物以外の情報無し)
・スパナ面にギヤーマークの様なロゴが刻印されています。
・ギヤーの中は空白に見えます。
・"HIRAIWA"は工具会社に該当する名前が見つかりませんので、工具会社以外の自社製品、工具商社のブランド名、または機械製品の付属スパナのいずれかだろうと思います。
・候補…平岩鉄工所 ⇒ HPはこちら
詳細?(実物以外の情報無し)
・日野自動車には多くの工具会社がOEM供給していて、その中のひとつが○K。
・"K"が頭文字の会社でしょう。
・上の○Kとは異なる製造元だと思います。
・"JAPAN"刻印がありますので、1965年よりも世代が新しいかもしれません。
詳細?(実物以外の情報無し)
・鉄工関係でクメダ名称の会社が現在数社ありますが、鍛造は行っていません。
・大阪の岸和田市に久米田という地区があり、ここに鍛造または工具の会社があったのかもしれません。
詳細?(実物以外の情報無し)
・カタカナ表示の"クメダ"です。
・上の英語表示版と較べると、同じ◇Kながら、◇に縦長と横長の差があります。
・また、同じ8x9サイズながら、全体形状が異なります。
・但し、クメダ/KUMEDAという名称は珍しいので、同じ会社のバリエーションだろうと思います。
アサヒ工具(株)
・1954年創業、大阪の作業工具会社。
↓1962年『日本機械工業年鑑』
詳細?(実物以外の情報無し)
詳細?(実物以外の情報無し)
・"N"と"E"の合体文字を◇で囲んだ小さなロゴがスパナ面に刻印されています。
・逆側のスパナ面には"LA-281"。
・パネル面は表裏共に無刻印です。
前田機工(株)
・戦前に前田軍司商店の製造部門が独立して前田金属工業(現TONE)となり、その商社部門として1938年に前田軍司商店から名称変更したのが前田機工です。
・戦前からNEONを含む複数のブランドを運営していました。
・戦後しばらくは、前田金属工業の商社部門として戦前のブランドを引き続き運営していました。(現在は独立)
・ダイハツに車載スパナをOEM供給していました。
⇒ 詳細は、こちら(前田機工)と、こちら(ダイハツ車載スパナ)。
↓1958年『大阪市工業年鑑』と1953年『機械器具工場総覧』
日本鍛工(株) /久保田鉄工向けOEM
・日本鍛工が戦後になってから作っていた"New Happy"ブランド の片口スパナ。
・久保田鉄工向けOEM。
・日本鍛工(旧・恩加島鐵工所)は1930年から"Happy"ブランドの作業工具を作っていて、戦後に "New Happy"として復活させたようです。
・New Happyに関する資料は無く、現物写真があるのみ。
・
は、日本鍛工の会社ロゴで、◇に漢字の"日"をデザイン化した"θ"。
・戦前のHappy広告にモンキーとパイプレンチが載っていますが、スパナは含まれていませんので、戦前のHappyにスパナは無かったのだろうと思います。
↓1935年『全国工場通覧』(恩加島鐵工所)

◇NHK
詳細?(実物以外の情報無し)
・21mm側のスパナ底部が半月形に凹ませてあります。
・NHK日本発条?
詳細?(実物以外の情報無し)
・ダイハツ向けのOEM。
・NITTANはありそうな名前ですが、該当する会社が見つかっていません。
・新日本鍛工、日本鍛工、日鍛工機、日本鍛鋼、どれも対象外です。
詳細?(実物以外の情報無し)

・日野自動車向けのOEM。
・日本"N"と工具"K"から日本工具がまず想定され、日本工具製造という会社がありますが、作業工具は取り扱っていません。
NSK
生産…NTK子会社の新潟作業工具(株)/NSK
販売…冨士工具製造(株)
・広告内のイラストで確認できるだけですが、新潟/三条の富士工具製造(株)がNSKブランドでスパナを出しています。
↓1960年『機工取引便覧』
なお、同じ新潟/三条のNTKが、子会社として新潟作業工具(株)を設立していて、商号がNSKです。(住所も社長もNTKと同じ)
富士工具製造/NSKとNTKの広告は同じ作りになっていて、両広告内のスパナイラストは同一です。
したがい、富士工具製造は、新潟作業工具のNSK製品を販売するための販売会社ではないかと思います。(新潟で会社名を"富士"にした理由?)
したがい、NTKのフラットパネルモデルにNSKと刻印されたスパナが存在することになります。
↑2つの広告内のスパナが同一なのが分かります。
↓1960年『機工取引便覧』(上のNSK広告と同じ便覧)
↓1961年『日本機械工業名鑑』
詳細?(実物以外の情報無し)
・デザイン化文字のロゴで、"NTK"かと思ったら、"N"が左右反転しています。
・NTKの模造品で台湾製??
小川鍛工(合)/Ogawa Drop Forge

↑1930年『日本標準工具型録』より
・TDF/東京鍛工所(1918年)、FW/ワシノ製作所(1921年)と並んで日本で最初の鍛造スパナ3羽ガラス。
・カタログの発行年から、少なくとも1930年には存在。
・現物は見つかっていませんが、貴重品ですので、カタログのイラスト(ロゴ付き)を掲載。
RIKEN
理研化機?
・"RIKEN"と言えば、オートバイ工具事業を手掛けていて、ホンダに車載工具を納めていた理研化機工業が思い浮かびます。
・RIKENはポピュラーな名称ですので、理研化機工業製の可能性は70%程度と思います。
★理研化機工業の詳細 ⇒ 当ブログ内のこちら
Royal M.K.K
詳細?(実物以外の情報無し)
・東京発動機/トーハツの二輪向け車載スパナ。
☆S
尾崎鉄工所?
・富士重工のスクーター、ラビット向けスパナ。
・ドライバーでJIS認証を取得している尾崎鉄工所が"☆Star Brand"という商号を使っています。
・ぴったりのロゴではありませんが、類似していますので、本品は尾崎鉄工所製の可能性があります。(50%程度の可能性)
↓1962年『日本機械工業名鑑』
STRONG
前田機工(株)

・STRONGは、前述NEONと同様に前田機工のブランド。

詳細?(実物以外の情報無し)
・見栄えのするロゴです。
・正体不明ながら、ちらほら見かけますので、市場に多く出回っていたのだろうと思います。
・ハート印は、戦前に日本理器の第1号モンキーにハートRKがあったと言われているのと、このハートTの2例だけだと思います。
・ロゴが浮き出し刻印のタイプもあります。
・セット写真を見ると"♡T"が商標登録(Trade Mark)されていることが分かりますが、商標検索では見つかりません。(検索語の選択が難しく、少なくとも"ハートT"ではヒットせず)
・スパナの底部が珍しくヘキサゴン形状になっています。
TDF
(株)東京鍛工所 (Tokyo Drop Forge)

・1918年、日本で最初の鍛造スパナ。
⇒ 詳細は、こちら
Tona
詳細?(実物以外の情報無し)
上野工具(株)
↑二輪のブリヂストン・チャンピオンホーマー(1959年)の車載スパナ。

↑裏面の ロゴ
から”UENO TOOLS"製と分かります。
吉田工具(有)
・東京の工具会社、創業は1923年/大正12年。
・スバルに車載スパナをOEM供給しています。
・新潟/三条にも工場があったようです。
・企業活動記録が1963年までしかなく、1960年代に廃業と推測します。
↑1962年『日本機械工業名鑑』
↓1963年『機械工具取引案内』
詳細?(実物以外の情報無し)
・裏面の"STAMP FORGED STEEL K-1"が、マツダ車載スパナと同一です。
・但し、マツダ・スパナの製造元も不明です。
・ちなみに、"STAMP"という機械鍛造表示は、冨士機工/FJP(JISメーカー)が後期の製品で使用しています。

↓FJPのJISマーク付き、裏面に"STAMP"。

詳細?(実物以外の情報無し)
・会社名が"東京"から始まるのだろうと思いますが、工具会社としては東京鍛工所しか思い浮かばず、産業機械の付属工具?
・この◇ロゴをどこかで見たような気がしているのですが。
マノヤマスキ
詳細?(実物以外の情報無し)
・戦前の手打ち鍛造と思われるスパナ。
・"マノヤマスキ"とは何でしょう?
・スパナ底部が、片側はヘキサゴン、逆側は角型という珍しい形状。
・産業機械に付属等の特定目的で作られたのではないかと思います。
・こういう全く正体不明で手作り感が濃厚なスパナが、まだまだ沢山あるのでしょう。
日産自動車の戦前スパナ
1942年に池田工業の前身会社が生産し、日本発条経由で納入したスパナの可能性大
↑日産-1(たぶん戦前)
↓日産-2(たぶん戦後)
・長方形と円形を合わせた文字無しロゴ
。
・このロゴは、日産自動車ものであることが"日産-2"から分かります。
・卵形のスパナ形状や鍛造表面の粗さから、"日産-1"は戦前の製品と思います。
・池田工業の前身会社が日本発条経由で1942年にスパナを陸軍および日産に納めていたことが池田工業HPに記されています。
・軍向けで日産自動車となると当時の日産180トラックが対象になると思います。
・したがい、"日産-1"は、池田工業の前身会社が製造した日産180トラック整備用のスパナと考えるのが妥当でしょう。
・"日産-2"は、インチサイズであること、英語表記のNISSANが刻印されていること、スパナ形状が丸くなり鍛造表面精度が"日産-1"よりも向上していることの3点から、戦後の製品と思います。(製造元は?)
・例えば、英オースチンエンジンを参考にしてインチねじ使用を継承したまま自社開発したストーンエンジンを搭載したL210(1958年~)などに使われたと推察。
↓日産180トラックの広告(左:戦時中、右:戦後)
↓L210(ダットサン1000/1958年)
↓池田工業HP
・この池田工業の戦前歴史につながるスパナ現物を今回初めて見つけた次第です。
↓1960年代に入ってからの日産文字無しロゴ2種
【参考】
非JISで、戦後初期からスパナを発売していた現行メーカーと畑屋。(個別に取り上げ済み)
ABC/相場産業 ⇒ 詳細は、こちら
HATAYA/畑屋 ⇒ 同、こちら

HKC/ホーザン ⇒ 同、こちら

MITO/水戸工機 ⇒ 同、こちら

↓これ、何でしょう?

・右側スパナに刻印されているロゴが何だか分からずにいましたが、水戸工機の梅ロゴでした。
・但し、水戸工機の表示は無く、品番と思われる"DB-1"とスパナ裏面に"DCC"と刻印されているだけで、ちょっと怪しげなスパナです。
・水戸工機は、1950年に始まる朝鮮戦争時に在韓米軍(米八軍)向けに整備工具を納めているのが分かっていて、インチサイズの本品がその候補です。
↓水戸工機の表示が無いスパナのロゴが、水戸工機の梅ロゴと判断した根拠。
★日本製スパナの4部作
これまで日本製スパナについて時代に分けて取り上げてきました。
今回の『昔のスパナ群(非JIS)』で4部作の完成です。
① 戦前のスパナ
④ 昔のスパナ群(非JIS)…本稿
戦前から戦後初期に掛けて多くのスパナメーカーが乱立していましたので、詳細不明なモデルも多く、また存在が見つかっていない物もまだあると思いますが、現在可能な限り取り上げたつもりです。
本稿『昔のスパナ群(非JIS)』に、今後も新たな発見があった場合は、随時追加していきます。
なお、戦前モデルに関して、本稿で取り上げている工具会社が『戦前のスパナ』と重複していますが、『戦前のスパナ』ではより詳しく解説しています。
"日本製スパナのすべて"と4部作①~④の関係をフレームワーク分類しました。
この図から分かるとおり、非JISではOEMを一部しか取り上げることが出来ていませんが、それ以外は分かっている範囲で全てを網羅しているつもりです。
なお、1965年以降に新たにスパナ製造に参入した工具会社を探していますが、1965年以降~現在のスパナ製品は、既存メーカーのOEMまたは海外製が多いと理解しています。
【補足】スパナを取り扱っている工具製造会社一覧
★戦前編
企業一覧で『スパナ生産』と記されている工具メーカーを、1931年~1941年の企業名鑑よりピックアップ。(アルファベット順)
40社が見つかっています。
※1941年12月に太平洋戦争が始まり、日本の会社全体が軍需工場化していったため、1942年以降は企業名鑑も発行されなくなります。
★1953年当時のスパナ生産会社 by『機械器具工場総覧』通産省編
★1963年当時のスパナ生産会社 by『機械工具取引案内』通産省編
この回、終わり

























































































