ASH-4 旭金属のすべて
【OEM編】
【2023年11月6日 追記】
シバウラディーゼル向けスパナのロゴは楕円枠でしたが、新たに長方形枠の"シバウラ"を見つけました。
JISマーク付きです。
⇒ 詳細は、本稿内のこちらにて。
↑新たに見つけた長方形枠のシバウラ
↓一般的な楕円シバウラ(JIS無しとJIS付きの2種)
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旭金属のOEM編です。
"公"になっている情報から旭金属製と分かるスパナとコンビレンチを取り上げます。
なお、"公”の根拠と、そのエビデンスを全て明示しています。
※写真の背景色…OEM:緑、他社:青
★"公"とは、
具体的に以下の4点。
・ケース1…JISマークの製造者記号
製造元の表示がJIS規格で義務付けられていますので、JISマーク付きのOEM製品には製造元が分かる製造者記号が必ず入っています。
・ケース2…同一形状
形状が全く同一の場合、誰にでも製造元が分かることを前提にOEM採用していることになりますので、当ブログでは"公"の範疇に入れています。
・ケース3… OEM品に製造元の会社名またはロゴの刻印
・ケース4… 製造元または販売元(ブランド管理者)がOEMを公表
旭金属の場合、ケース4はありません。
S.N.TモデルのHAKUBIを例にして旭金属モデルと比較します。
形状が全く同一であることからHAKUBIは旭金属製と分かります。
一方で、HAKUBIはJISマーク付きですので、製造元の製造者記号が必ずあります。
したがい、裏面に刻印されている"丸A"が旭金属製を示す製造者記号になります。
つまり、"丸A"が刻印されているJISマーク付きは、全て旭金属製となります。
↑↓HAKUBIと旭金属の表と裏(形状が同一なのが分かります)
↑HAKUBIの裏面に製造者記号"丸A"。
1.工具商社
① S.N.T コンビレンチ
★OEM判断…製造者記号"丸A"
①-1 HAKUBI/白眉
"白眉"、ブランド名が素敵です。
新潟を中心にホームセンターを運営するアークランド・サカモトの工具ブランドです。
新潟同士ですので、燕三条の複数の工具メーカーが、このアークランド・サカモト向けに特別仕様の工具を納入しています。
ちなみに、アークランド・サカモトは、豚カツの『かつや』も経営しています。
白眉シリーズとして作業工具の他にドリル刃やカンナなど工具全般が販売されていました。
旭金属がコンビレンチのJIS取得を取得し、さらにJQAに切り替わるまでの間、1994年~2007年の製品です。
当ブログ内の"白眉”詳細は、こちら
①-2 A.C TOOL
"A.C TOOL"は、燕市の工具商社である(株)相忠が運営していたブランドです。
旭金属の地元です。
相/Aiと忠/Chuの頭文字がブランド名になっています。
主にホームセンターなど量販店点向けの商品を販売していました。
残念ながら10年以上前に倒産しています。
当ブログ内の"A.C TOOL"詳細は、こちら
①-3 HERO
大阪の田口鉄工所が1958年に商標登録したブランド"HERO"です。
S.N.TのJISモデルであることから1994年~2007年の生産になります。
なお、田口鉄工所は同じく大阪の三共コーポレーションに吸収合併となり、"楕円HERO"の商標権も三共コーポレーションに移っています。
三共コーポレーションは、"楕円HERO"とは別に"文字だけHERO"の商標を登録し、
後述する③-1 DX TOOLSもOEM採用しています。
当ブログ内の"HERO"詳細は、こちら
② 凹尖りパネルスパナ/HAKUBI
前述の①-1"白眉"のスパナ版で、品番SMのOEM仕様です。
S.N.Tコンビレンチと同様に裏面に製造元を示す"丸A"の刻印が入っています。
↑旭金属SMモデルとの比較
③ DX TOOLS
★OEM判断…製造者記号"丸A"
③-1 HERO
前述①-3に引き続き"HERO"モデル。
大阪の工具商社である三共コーポレーションのブランドになります。
鏡面仕上げのDX TOOLSをOEM採用しています。
そして、POLISH TOOLSという独自の商品名を採用しています。
"丸A"は表面右側に小さく表示されています。
↓裏面は全く同一で、裏だけ見ても旭金属版と見分けが付きません。
③-2-1 AMON / 打刻版
私もサンデーメカニックとして車のメンテナンス修理に必要な小間物(ハーネスやクリップなど)で大変お世話になっているエーモン工業のDX TOOLSです。
当ブログ内の"AMON"詳細は、こちら
③-2-2 AMON / レザー印字版
AMONのDX TOOLSで、レザー印字版が見つかっています。
オリジナルの旭金属版には無い仕様ですが、表面に"丸A"も印字されていますので、旭金属製に間違いはありません。
裏面には何の印字も無く、のっぺらとしています。
希少なモデルなのかと思います。
④ BTCバンザイ / 凸帯パネル・クロモリ
★OEM判断…製造記号"ASH"
"ASH"と刻印されたBTCバンザイ製で凸帯パネルのクロモリスパナが見つかっています。
JISマーク付きで、製造者記号として"ASH"が刻印されていますので、旭金属製と分かります。(バンザイ品番BM1012)
同じ凸帯パネルのクロモリモデルで、航空自衛隊向けのIKK/池田工業製が確認出来ていますが、凸帯・クロモリで旭金属と池田工業のダブルOEMだったことになります。
【参考】池田工業/IKK製、自衛隊向け(桜+ウィング刻印)の凸帯パネルBTC
【参考】昭和スパナ製の凸帯パネルBTC
★BTC凸帯パネルOEM 3社比較
凸帯パネルを3社がBTC/バンザイに供給しています。
上から昭和スパナ、池田工業/IKK、旭金属/ASH。
凸帯パネル左右端の広がり方で識別できます。
(昭和スパナ…ストレート、旭金属/ASH…末広がり、池田工業/IKK…広がり方中間)
なお、昭和スパナと池田工業/IKKはロング、旭金属/ASHはスタンダード長さ。
★バンザイカタログでの凸帯パネル
カタログは2009年版だけ入手できていて、2種類のスパナが載っています。
(1) 凸帯…BM、L=140mm、JIS-N(12x14mm)/ASH版と同じ品番とスペック。
(2) 凹帯…SM、L=160mm(12x14mm)、カタログでは凹帯になっていますが、自衛隊向け/IKK版のSMはクロモリの凸帯。
2.他の工具メーカー
⑤ ライツール / マルト長谷川
★OEMというよりは共同企画(商標…マルト、開発生産…旭金属)
燕三条の中で異例の協業になっています。
・商標登録…(株)マルト長谷川工作所(以下、マルト)⇒ ライツール工具の企画はマルトが実施していると推察。
・意匠登録(コンビレンチ)…旭金属とマルトの共同 ⇒ コンビレンチとスパナ、モンキーは旭金属が開発し、生産も行っていると推察。
ちなみに、ペンチ類は、マルトが開発、生産、販売の全てを行っているのだと思います。
そして、スパナとモンキーに関しては、旭金属だけで無く、"KEIBA"ブランドとしてマルトも販売しています。
刻印スペースが少ない中で、マルトのスパナに旭金属製を示す"丸A"がしっかり刻印されています。
ちなみに、旭金属版も含めてJISマーク付きなのが驚きです。
これだけ軽量化していても、JISの剛性基準にはちゃんと適合しているのですね。
なお、インターネットの過去ログ(Internet Archive)を見る限りでは、"KEIBA"のスパナとモンキーはマルトHPに2012年から登場しています。
↓商標登録は、マルト長谷川。
↓意匠登録は、旭金属とマルト長谷川が共同。
⑥ TONE
★OEM判断…複数エビデンスの積み重ね(解説内で説明)
このTONE第2世代スパナは、旭金属製と推測しています。
第2世代(1968年~2012年)内の10年間、2ndモデル(1978年~1988年)です。
根拠は"AK"。
少々長い説明になります。
TONEは第1世代スパナ時代の1964年にJIS認証を取得し、以降は第2世代までJISマーク付きでした。(現行の第3世代/2013年はJIS無し)
そして、最初は自社のJIS認証取得工場での生産でしたが、第2世代が2ndモデルになった1978年以降は外部のJIS取得メーカーへの製造委託(OEM)に切り替えたと考えています。
OEMに切り替えたと考える理由は、1978年の2ndモデルから製造者記号(アルファベット2文字)が必ず刻印されているためです。
その製造者記号は、5種類あります。
SS、KN、KB、HK、そしてAK。
前述の通り、JISモデルには必ず製造元を示す製造者記号が付随していますので、スパナでJISを取得している全25社の中にこの5社が必ずあることになります。
※従来JIS23社と言ってきましたが、旭金属関連から新たに確認できた北日本鍛造、さらにJQAからの取得で平松工業が増えて、25社。
25社の会社名を省略して2文字にしてみると、先の5つの2文字アルファベットに該当する候補は以下となります。
・SS…昭和スパナ
・KN…北日本鍛造または株式会社NTK
・KB…小林工具製作所
・HK…平松工業
・AK…旭金属
したがい、製造者記号"AK"が刻印されているTONEスパナは、旭金属製と考えるのが妥当だと思います。
なお、TONE/AKは、1978年~1988年の2ndモデルにだけ存在が確認できています。
当ブログ内の"TONE"詳細は、こちら(スパナ編)
3.産業機械メーカー
⑦ シバウラディーゼル
⑦-1 シバウラディーゼル 楕円ロゴ
★OEM判断…ASHロゴ刻印
↑JIS取得前
↓JIS取得後
シバウラディーゼル(石川島芝浦機械)のトラクター車載スパナです。
旭金属が1961年にJISを取得する前のモデルと、JIS取得以降のモデルの2種類があります。
他の工具メーカーでは自動車や建機へのOEM供給が多くありますが、旭金属ではこのシバウラディーゼル向けしか見つかっていません。
⑦-2 シバウラディーゼル 長方形ロゴ
・JISマーク付きにはシバウラのロゴ枠が長方形のタイプもあります。
1960年代後半のシバウラトラクターS-30Aです。
こんな感じのシバウラトラクターに車載されていたのだろうと思います。
4.海外ブランド
⑧ True Craft
★OEM判断…同一形状
True Craftは、日本の大同通商(大同工業グループ)がアメリカで工具販売をするために作ったブランドです。
正確にはアメリカ既存のブランドを1952年に買収し、2000年初頭まで大同通商が運営していました。
同一形状であることから旭金属製と分かります。
裏面右側の刻印"7-78"から1978年7月生産と思います。
したがい、大阪時代の旭金属製と言うことになります。
大同通商は、複数の日本の工具メーカーに外注の形で生産委託していました。
旭金属以外にも他の燕三条メーカー製のTrue Craftがあります。(AIGO、TOP)
1980年代には大きなコンテナに旭金属製のTURE CRAFTだけを満載して、頻繁に出荷されていたようです。
KTC(フラー、シアーズ向け)も含めて、1980年代は日本の工具メーカーの米国向け輸出が盛んでした。
当ブログ内の"True Craft"詳細は、こちら
↑↓True CraftとASHモデルの表裏比較。(形状が同一なのが分かります)
★旭金属以外の燕三条メーカーOEM
↑AIGO(OEM判断…同一形状)
↓TOP(OEM判断…裏面に"TOP"刻印)
⑨ KMC/K-Mart
★OEM判断…同一形状
アメリカの大手スーパーKmartは、KMCという工具ブランドを販売していて、旭金属がコンビレンチをOEM供給していました。
なお、Kmartは2002年に破産し、シアーズ傘下になり、今はCraftsmanを販売しています。
当ブログ内の"KMC"詳細は、こちら
↑KMCとASHの比較。(形状が同一なのが分かります)
5.補足
『"公"になっている情報からOEMと分かるもの』と言っておきながら、最後に1つだけ"公"から外れる旭金属OEMを取り上げます。
大阪時代を代表する丁寧で綺麗な作りですので、ご容赦を。
⑩ DaiaーCompe /ヨシガイ
★OEM判断…オーダー元からの生産情報聞き取り
自転車整備用のコンビレンチで、ヨシガイ(吉田機械金属)のブランドです。
『新日本ツールにオーダーしたもので、大阪の工場で生産された聞いている』とのことですので、1980年頃、大阪時代の旭金属製と理解しています。
ロゴ等の鍛造浮き出し文字が非常に綺麗で、丁寧に作られていると感じます。
大阪時代の旭金属OEM製品の代表として掲載します。
なお、Dia-Compe向けの専用形状になっていますので、旭金属製を示す印はどこにもありません。
当ブログ内の"Dia-Compe"詳細は、こちら
旭金属にはOEM製品が多いと言われていますが、このDia-Compeの様に形状がOEM専用で、かつ製造者記号が必ず付随するJISマーク付きでない場合は、どこの生産か全く分かりません。
"公"の印が無い旭金属のOEMは、他にもあるのだろうと思っています。
↓3本セットの残り2本
旭金属/ASHのすべて
⇒ 3.スパナ編 ⇒ 4.OEM編(本稿)
この回、終わり