ASH-1 旭金属のすべて
【会社概要編】
"すべて"シリーズとして各メーカー毎にスパナとコンビレンチの全商品を取り上げ、主要ブランド毎の解説を続けています。
しかしながら、燕三条の大御所”旭金属工業”になかなか手を付けられずにいました。
重い腰を上げて、一から色々と調べ直してみたら、旭金属が大阪から新潟に移転した時に、工具コレクターとしては考えてもいなかった事実があったことが判明しました。(『3工場での同時JIS認証』と『忘れられた24番目のJISスパナ認証取得会社の存在』)
商品解説に到達するまでの前段が長くなってしまいますが、最初に”会社概要編”として90年越えの歴史と、さらに商標やJIS等についてエビデンスと共に解説します。
カタログも複数世代を本編の巻末に掲載します
コンビレンチ編にスパナ編、OEM編と続きます。
※写真の背景色…旭金属:赤、他社との比較と他社:青、OEM:緑
1. 会社沿革
旭金属は、大阪で50年間操業した後に、新潟の吉田町(現在の燕市)に移転します。
大阪と新潟/燕三条は工具業界の2大地域であり、両方に本社工場を置いて操業した珍しい企業です。
なお、製造工場は3回の移転で計4工場、さらに販売部門として2社が存在。
現在は、工販合体し、燕市に本社工場を置いています。
※製造工場…新潟/布施 ⇒ 新潟/八尾 ⇒ 新潟/東入船 ⇒ 新潟/燕
・1931年…鉄管継手販売の宮野商店を大阪市の西区新町で開業。
90年を越える歴史のある会社です。
宮野氏の個人商店だったと理解していますが、現在の旭金属工業(株)に至るまで宮野家が代々社長を引き継いでいます。
・1935年…合名会社旭工具製作所に組織変更し、スパナを製造販売
- - - 終戦
・1949年…スパナ専門商社として旭金属を設立。
終戦から約5年が経ち、工具販売に活路を見い出したのだと思います。
・1951年…2年後に株式会社化し、旭金属(株)を設立。(スパナの自製も開始)
・1954年…製造部門を独立させて大阪の布施市に旭金属工業(株)を設立。(大阪/布施工場)
・1958年…最初のスパナJIS認証を布施工場で取得。
・1960年…同じ大阪の八尾市に本社工場を移転。(大阪/八尾工場)
・1961年…八尾工場でスパナJIS認証を取り直し。
・1970年…販売部門として新日本ツール(株)を設立。
・1982年4月…新潟移転を前提として三条/(株)三条アサヒと新潟/(株)新日本鍛工を吸収合併。※三条アサヒについては会社情報皆無。
・1982年10月…大阪から新潟県西蒲原郡の吉田町(現在の燕市吉田下中野)に本社工場を移転。(新潟/燕工場)
・1982年4月の新日本鍛工吸収合併に伴い同社の新潟/東入船工場が旭金属の工場となり、翌年5月までの1年間だけ旭金属のJIS認証登録工場に。(詳細は後述)
・2007年…販売部門の新日本ツール(株)を吸収合併し、旭金属工業に工販機能を集約。
↑Jetro会社紹介の英語HPとGoogle Map 航空写真より
↑旭金属HPより
英語の会社名は"Asahi Metal Industry Co.,Ltd."です。
イラスト内の"ASAHI TOOLS CO. LTD"というのは会社名では無く、同社HPのアドレス名になります。
★各エビデンス
・宮野商店
1933年『電機名鑑』より
本来の鉄管継手販売とは別に電機用品の電線保護"チューブ"も取扱っていた様です。
店名と住所、取扱商品が載っているだけですが、90年前の大阪にあった個人商店の情報が国会図書館の資料として保存されているとは思いませんでした。
・宮野商店創業から旭工具製作所を経て旭金属設立まで(戦前)

・旭金属(株)
1960年『機械取引案内』より
旭スパナ類の総発売元になっています。
・旭金属工業(布施工場時代)
1959年『日本機械工業名鑑』より
・旭金属工業(八尾・本社工場時代)
1962年『日本機械工業名鑑』より
2.商標と意匠登録
商標としての登録は1969年ですが、前述の資料より少なくとも1959年には使い始められていて、最初の布施工場の時代から使われていたことになります。
商品への打刻がいつから始まったのかが興味のあるところですが、八尾・本社工場に移転してから1961年にJIS認証を取得していますが、その前から使用されていたと考えています。
2)"S.N.T"
=S.N.Tの意味=
旭金属にも正確な記録は残っていないようですが、以下だろうとのこと。
・JIS-N級のスパナが発売され、スパナの”S”とJIS-Nの”N”を取って、品番”SN”に。
・その商品には”ASAHI SN Tools”と刻印されていて、新しい商品シリーズを作る時に、"SN Tools"を短くして”SNT”に。
しかしながら、"S.N.T"は『新日本ツール』が登録した商標ですので、"Shin Nihon Tool"の略と考える方が素直そうです。
最初の製品が『旭金属/新日本ツール』⇒ "ASAHI SN TOOLS"になり、さらに2世代目は『新日本ツール』⇒ "S.N.T"になったのかと。
3)現行ロゴ"ASAHI"
現行商品に使われている現在のロゴです。
何故か商標としては登録されていないようです。
4)ライツール
・商標登録
・意匠登録


"ライツール"は、(株)マルト長谷川工作所が商標登録し、意匠登録(コンビレンチ)は旭金属とマルトの共同になっています。
このことから、マルトが"ライトツール"を商品企画し、レンチ類は旭金属が商品開発して生産販売しているのだろうと推測しています。
旭金属は、コンビレンチとスパナ、モンキーを販売。
マルトは、ペンチ類の販売がメインで、スパナとモンキーだけはマルトからも販売。
5)レボウェーブ
・商標登録
・意匠登録
手にすっぱりと収まりますので、握り心地が良く、使い勝手に優れています。
さらに、ライツールもそうですが、旭金属はデザインに拘っていて、私の好みです。
そして、光沢メッキに頼らず、敢えて梨地仕上げにしてデザインで勝負しているのは見習うべき姿勢と思います。
★アメリカ商標登録
英語会社名である”ASAHI METAL INDUSTRY”や商品名の”ASAHI TOOLS”で米国商務省のデーターベースを検索してもヒットせず、アメリカでは商標を登録していないようです。
アメリカebayで古いASHスパナやコンビレンチを良く見かけますが、輸出は欧米とアジアが主で、米国には正式な輸出はしていなかったと聞いています。
英国でも商標登録は見つけられませんでした。
3.JIS
1958年に大阪の布施工場でスパナのJIS認証を取得。
現在は、新潟/燕工場でスパナ、メガネ、コンビレンチのJQA/新JISを取得しています。
この後、変遷の解説が長くなりますが、下の一覧表に全てをまとめてあります。
・1983年だけ赤い★マークの3工場がJISスパナの認証工場として重複。
・工場単位で認証、さらにJQAは別番号なので、旭金属のJISスパナ認証番号は5つ。
★JIS認証のエビデンス
※日本規格協会のJIS月報より
1)スパナ/B4630
↓新規登録 @大阪/布施工場(1958年8月~9月にかけて)
↓取り直し @大阪/八尾工場(1961年6月)
↓認証返上 @大阪/八尾工場(1983年3月?)
情報が見つかりませんが、恐らく下のメガネと同時に返上していると推測。
↓取り直し @新潟/燕工場(1983年6月)
2)メガネ/B4632
↓新規登録 @大阪/八尾工場(1969年2月)
↓認証返上 @大阪/八尾工場(1983年3月)
↓新規登録 @新潟/燕工場(1983年6月)
3)コンビレンチ/B4651
↓新規登録 @新潟/燕工場(1994年2月)
4)スパナ(新潟/東入船工場)
スパナ認証番号の372165は、新潟県東入船町3729番地にある工場に与えられたものですが、その認証権は3社に跨がっています。
複雑な歴史があり、最初は何が何だか分からず、理解をするのに時間が掛かりました。
長い解説になりますが、ご容赦を。
まず、新潟県東入船町で操業していた工具製造会社の北日本鍛造(株)が、三条で工具ブランドBEST運営する平松商店の製造部門として1965年に買収されます。
そして、ほとんど幻の商品であるBEST初代コンビレンチを生産します。
これまで気が付かなかったのですが、この北日本鍛造が1972年にスパナでJIS認証を取得していました。
スパナでJISを取得したのは全23社としてこれまでブログを書いてきましたが、正しくは全24社だったことになります。
北日本鍛造は、1975年に廃業(倒産)してしまいますが、この東入船工場でのJISスパナ認証権が認証番号372165のまま(株)新日本鍛工に移行します。
新日本鍛工が北日本鍛造の工場設備とJIS認証権を買い取ったのだろうと思いますが、新日本鍛工がどのような会社だったのか情報が無く、詳細は不明です。
ちなみに、(株)新日本鍛工/前株(まえかぶ)は、歴史のある大きな鍛工会社の新日本鍛工(株)/後株(あとかぶ)とは無関係のようです。
なお、平松商店は、2年後の1977年に三条に製造部門として平松工業を創業しますが、(株)新日本鍛工との関係はありません。
そして、この(株)新日本鍛工は、新潟移転を計画していた旭金属工業に1982年4月に吸収合併されます。(旭金属HPの会社沿革に1行だけ登場)
したがい、JISスパナの認証権も同月1982年4月に(株)新日本鍛工から旭金属へ移行します。(旭金属が通産省に重要事項変更として会社名変更を届け出)
しかしながら、旭金属は本社工場を新潟/吉田町(現在の燕市)に新築移転したため、1年後の1983年5月30日に東入船工場のJISスパナ認証権を返上してしまいます。
そして、2週間後の同6月14日に吉田町の燕工場で新たなJISスパナ認証を取得し直します。(認証番号383044)
日本規格協会/JISが発行していた認証会社一覧は、1967年の次は1982年であり、15年間の情報の空白期間がありました。
この15年の間に『北日本鍛造がJIS取得』、『その認証権が新日本鍛工を経由して旭金属に移行』の2つの出来事があり、そのまま認証権が返上されてしまったため、気が付かなかった次第です。
北日本鍛造の倒産と新日本鍛工の旭金属への吸収合併は分かっていましたが、この2つの出来事がJIS認証権で繋がっていたなんて考えも及びませんでした。
国会図書館所蔵のJIS月報で、北日本鍛造JIS取得と認証権移行(新日本鍛工から旭金属)が確認できたため、全体像がやっと理解できた次第です。
なお、北日本鍛造と新日本鍛工が生産したJISスパナが存在するのだろうと思いますが、残念ながら確認できていません。
本稿は旭金属を取り上げていますので、旭金属に合併した1982年4月から東入船工場がJISを返上する1983年5月までの1年間の間に、ASHロゴのJISマーク付きスパナを生産したかどうかが気になるところです。
東入船工場での生産を示す製造記号が分かれば見つけられるのでしょうが、その候補は後述します。
★東入船工場でのJIS取得(許可番号372165)から返上まで
・認証取得(1972年10月)
↑この情報に辿り着いた時は、『JISスパナに24社目があったんだ』、『頻繁に情報に接してきたブランドなのにJIS取得を何故今まで気が付かなかったのか』とダブルの驚きで、思わず唸ってしまいました。
・工場変更/管理会社変更(1982年4月)
↑『カッコ内の工場から許可を承継』と説明されていますので、スパナ認証372165が新日本鍛工から旭金属に移行したのが分かります。
空白の15年間にJIS月報は180冊発行されています。
この15年の間にJIS認証を取得して返上する会社があるかもしれないので、全号を確認するべきだなとは以前から思っていました。
しかしながら、180冊はちょっと多過ぎて、躊躇していたのです。
今回のブログ見直しに際し、たまたま該当の最終月(1982年4月)の月報を見たら、上の工場変更が載っていることに気が付いた次第です。
この資料に最初の認証日(1972年10月13日)が書かれていたことから、芋づる式に全てが分かりました。
もっとも、全ての資料を発掘した後も、解釈するのに時間が掛かりましたが。
・認証返上(1983年5月)
東入船工場の認証を返上。
ただし、前述の通り2週間後に本社の燕工場で新たな番号の認証を取得。
【参考】北日本鍛造について
↑1970年『帝国銀行会社要録』と1976年『BEST』商標登録
北日本鍛造製のBESTコンビレンチ(1965年~1975年)です。
私が持っているこの1本以外にネット等で見たことがありませんので、超貴重品です。
これと同じデザイン(凸丸パネルに○BESTロゴ)で、JISマーク入りのスパナがあったのだろうと思います。
なお、北日本鍛造自体は、旭金属との関係は無く、このコンビレンチもBEST/平松商店の独自商品です。
5)JQA
旭金属は、JIS規格の変更に伴い新JISであるJQAを2007年に取得しています。
スパナ、コンビレンチ、メガネで一括取得し、旭金属の現行製品(JIS規格品)にJQAマークが刻印されています。
4.グッドデザイン賞
ライツールやレボウェイブから分かる様に旭金属はデザインに拘っていて、レボウェイブ以降グッドデザイン賞を多く受賞しています。
・1997年 ALUTOOL 金賞受賞
最初の受賞は、新潟県作業工具協同組合と組合会社10社で合同出品したアルミ合金工具のALUTOOLでした。
旭金属はラチェットの生産を担当していました。

↓パンフレット(旭金属が担当したラチェットは、販売はされなかったようです)

以降は、旭金属自身がグッドデザイン賞を受賞しています。
| 2008年 | レボウェイブ コンビネーションスパナ |
|---|
| 2010年 | ダックスキー 六角棒レンチ |
|---|
| 2011年 | キャッチャーレンチ |
|---|
| 2013年 | キャッチャー機能付六角棒レンチ |
|---|
| 2014年 | レボウェイブラチェットハンドル |
|---|
| 2017年 | ライツールラチェットハンドル等 |
|---|
| 2018年 | T型早廻し六角棒レンチセパレートタイプ |
|---|
| 2022年 | キャッチャーボール付き六角棒レンチAuroline |
|---|
5.工具の特注について
旭金属HP内で特注工具の注文を受け付けると説明されていて、専用のパンフレットと、具体的に寸法を書き込む注文書が揃っています。
同じ燕三条で、相場産業/ABCと池田工業/IKKも同様に特注を受けるとHPで表明していますが、カタログまで揃えているのは旭金属だけであり、力の入れ方が分かります。
具体的な特注完成品を見てみたいものです。
1本から受け付けるらしいので、個人で1本オーダーしてみるとか。
6.各種情報
同 Revowave プロモーションビデオ(YouTube) ※製造過程あり。
同 Light Tool プロモーションビデオ(YouTube)
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これ以降はカタログのみです。
7.カタログ
1)ASAHI DX TOOLS
★専用パンフレット
2)DINタイプ2種
※1975年頃のもので、本稿の中で唯一の大阪時代に発行されたカタログ。
(商品解説はコンビレンチ編にて)
3)SNT
★ホームセンター向けカタログ
SNTは廉価版のため、通常モデルのカタログには掲載されていませんが、代わりにホームセンター向けのカタログがありました。
4)SUS DX TOOL
★2005年カタログより
※カタログNo.の"52"は、2005年カタログの第2版を示しています。
5)コンビレンチ CW
★2009年カタログより
コンビレンチCWと一緒に並行販売時のCPが載っています。
CPは、小さいミリサイズの設定が歯抜けになっていて、CWの補完になっているのが分かります。
なお、2015年にCWが廃番になったため、CPの設定サイズが大幅に増えます。
※カタログNo.の"92"は、2009年カタログの第2版を示しています。
6)入手できている中で一番古いフルカタログ
★1991年版
7)最新カタログ(2022年版)
旭金属/ASHのすべて
1.会社概要編(本稿)⇒ 2.コンビレンチ編
この回、終わり













































































