こんにちは、培養部門です。
妊娠に向けた治療にあたる際は睡眠が重要であることを以前から説明してきました。
今回は睡眠と精子の関係についてまとめられた論文がありましたので説明します。
体外受精や顕微授精における低受精率、低胚発生率に対してメラトニンは有効である可能性
妊娠、出産率の向上には十分な睡眠時間の確保、生活リズムを整えることが効果的
7.0~7.5時間の睡眠を毎日とっている人は精巣に正常な精子がいる割合が高いことが分かりました。一方で睡眠時間が7時間未満の方は正常な精子の割合が低下していました。
また、睡眠不足に陥ると、性欲や勃起に関係している男性ホルモンの一種であるテストステロンが低下していました。
では、睡眠時間をもっと長くとった場合はどうなるのか?
調べてみると、9時間以上の睡眠は精子にあまりよくないことが確認されました。
睡眠時間は短すぎても長すぎても精子に良くないといえます。
慢性的な睡眠不足で精子の質が悪い方が睡眠を7.0~7.5時間とるように改善したところ、1年後には大幅に精子の質が改善されたことが報告されています。現在精液検査の結果が良くない方も睡眠時間や生活習慣を整えることで改善できると考えることができます。
また、テストステロン( 男性ホルモン )は朝に最高の分泌量になり、夕方最低の分泌量になるとされており、このサイクルがテストステロンの分泌に重要な役割を果たしています。夜遅くまで起きて、朝少し遅めに起きることやそもそもの睡眠時間が少ない生活を繰り返すと朝のテストステロンの分泌量が減ってしまい、ひいては一日のテストステロンの分泌量の低下に繋がります。テストステロンの低下は性欲の低下だけでなく、意欲低下や不眠などのうつ症状を発症しやすくさせます。
精子によい生活を送るには適度な運動と7.0~7.5時間の睡眠が効果的であると言えます。
参考:Tao Li et al. The potential impacts of circadian rhythm disturbances on male fertility. Lausanne. 2022
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文責:培養部門
〔生殖医療専門医〕古井憲司