こんにちは培養部門です。
卵巣を刺激して採卵を行うと1回で複数の受精卵を得ることができます。1回の胚移植では通常1個の受精卵を移植しますので、残りの受精卵は凍結保存( ガラス化保存 )することになります。
ガラス化保存することで理論的には半永久的に受精卵を保存しておくことが可能です。
では、ガラス化保存する期間が長期間に及んでも受精卵に影響はないのでしょうか?
凍結保存タンクの中で保存された期間が12カ月以上の受精卵と12カ月以内の受精卵で融解後の生存率、胚移植後の出産率、流産率は変わりませんでした。
よって、保管期間の長期化による影響はないと考えられます。
実際に当院でもたくさんの方が1回の採卵で第2子、第3子をご出産されています。
受精卵のガラス化保存にはたくさんのメリットがあります。
・複数の受精卵が保管してある場合、年齢の上昇による妊娠率の低下を防ぐ可能性があります。
→年齢の上昇により卵子や精子の質は低下します。より若い年齢の受精卵を第2子、第3子の出産に向けて保存することで実年齢より高い妊娠率で治療を行うことができます。
年齢の上昇に伴う妊娠率の低下は子宮と卵子どちらの要因が大きいか
・胚移植を行いたい時期を選ぶことができます。
お仕事などスケジュールの都合上この時期はクリニックに通院することが難しい場合も、胚移植のスケジュールを調整することができます。
・子宮や体の状態を万全に整えてから移植することができます。
治療を進めてゆく中で、子宮筋腫や子宮内膜症など子宮側に妊娠率が低下する原因が見つかった場合は治療を行ってから胚移植をすることができます。また、妊娠や出産に悪影響を及ぼす歯周病なども同様に治療してから胚移植を行うことができます。採卵→子宮内の治療( 歯周病の治療 )→胚移植を行うことで円滑に治療を進めることができます。
受精卵をガラス化保存することで様々な治療を組み合わせることも可能になります。
受精卵のガラス化保存技術の進化は治療の安全性や妊娠率の向上に大きく貢献しています。
参考
S. Canosa et al. The effect of extended cryo-storage following vitrification on embryo competence: a systematic review and meta-analysis. J Assist Reprod Genet. 2022
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当院の不妊外来を初めて受診される際にお電話での予約が必要な理由
当院は不妊治療に関わる先進医療を行なっております。
当院の不妊治療に関わる先進医療の種類と効果
大垣市在住のご夫婦を対象として、自費診療でAMH( 抗ミュラー管ホルモン )検査、精液検査を実施した場合に大垣市から助成金を受け取ることができる制度が開始されました。
当院で行うことができます。お電話にてご予約をお願い致します。
大垣市在住のご夫婦を対象に妊活検診費( AMH検査・精液検査 )が助成されます
当院はPGT-A実施施設として日本産科婦人科学会に承認されています。
PGT-Aを行うことによって、複数回の妊娠不成立や流産を繰り返す方に妊娠率の向上と流産率の低下が期待できます。
↓詳しくはこちらをご覧いただければ幸いです。
PGT-A( 染色体異数性検査 )の要件が変わりました
※PGT-A対象者の方で当院に胚盤胞を凍結保存している場合、採卵を行わずに保存してある胚盤胞を用いてPGT-Aをすることができます。
当院でPRP療法を行うことができます。
PRP療法とは再生医療の一つです。
様々な医療分野でPRP治療は行われており、不妊治療分野ではPRP療法を行うと子宮内膜が厚くなるという報告が専門の学会から報告されています。
子宮内膜が厚くなると、移植した胚の妊娠率、出産率が向上します。
先進医療、PGT-A、PRP療法をご希望の方、ご興味がある方は当院の不妊外来診察を受診ください。
文責:培養部門
〔生殖医療専門医〕古井憲司