ワインのティスティングをやっていると
コメント例としては普段はあまり口にも目にしない
解りにくいコメントも出てきます。
特に「味わい」の中の「渋み」を表現する時に用いるのが
「収斂性のある・・・」
といった言葉があると思われます。
そもそも、この「収斂性(しゅうれんせい)」とは一体何なんでしょう?
●「収斂」という言葉の意味
ネット上の辞書(コトバンク、他)を参照させて頂くと、
1、縮むこと、引き締まること、縮めること、収縮。
2、まとまる、まとめること。
3、租税を取り立てる。
4、生物学で異生物同士が近似形質へ進化する現象
といった感じでした。
渋みのあるワイン、あるいは渋柿や野草を口に含んだ際に
「酸っぱくないけど口の中がキューっと締め付けられる様な感覚」
とでも言いましょうか(最近は渋柿を口にする何てこと無いでしょうが・汗)
正直なところ、自分もうまく相手に伝えられているか不安に思うことが多いです。
●ワインの中の「収斂」
ワインのタンニンによって口の中が引き締まる感覚
と言えば理解しやすいでしょうか。
自分の場合は
「乾いた木片(割り箸)なんかを齧った時に
口の水分を取られ、引き締まる感覚」
と説明し、実際に木片を齧って感覚を疑似体験してもらう方法を採っています。
あるいは濃く出しすぎた紅茶や、
出がらしのティーパックを直接口の中に放り込む、なんて方法も有ります(笑)
ちなみに、渋みは舌で感じるよりも歯茎で感じ取れると思います。
舌では旨味など、ほかの味わいを見抜くために敏感すぎる機関です。
渋みを分析したいときは歯茎を意識すると良いでしょう。
ある程度、ティスティングの場数を踏み
自分の中の「渋みの基準」が出来ると
表現も上手く出来るようになると思います。
●収斂味が強い=タンニンが多い、ではない。
じゃあ、この締め付けられる渋みが多いからタンニンが多いワインなんだ!と思ったら実際はそうでもありません。渋みが多いワインなんです、というティスティングコメントは間違っても書きません(いや、場合によるかも)。
ティスティングの初歩で陥りやすい部分でもありますが、
タンニンは量よりも質を分析するようにしましょう。
というのも、ワインの作り方を考えると、品種によるポリフェノール量の違いはもちろんの事、たとえばブドウの茎、梗の部分まで一緒に使用するワインもあれば実の部分だけで作るワインもあり、ステンレスタンクやコンクリートで作るワインもあれば、しっかりと焦がした木樽を使うワインだってある。タンニンは木樽からも抽出されますよね。
タンニンが少ない出来のワインは若くても刺々しい渋みは感じない事だって、当たり前のようにあります。密度の高くてやわらかな渋みもあれば、タンニンそのものの渋みが熟成によってビロードの様に感じる事だってあり、様々です。
●実際に「収斂性のあるワイン」という表現を使う時
自分の経験では、ワインのタンニンも瓶熟成を経る事で渋味はソフトでまろやかになるので、どちらかというと荒々しいザラリとした感覚寄りの表現の1つとして「収斂味のある」というコメントを使うようにしています。
だって「ザラザラしたワイン」と聞いて、飲みたいと思いませんよね(笑)
そんな時に「収斂味のあるワインです」と使用しています。
どちらかというと若いワインには多く感じ取れると思いますが、前項の通り
よく分析してから使うコメントの1つです。
人間の味覚というのは、人それぞれであり、アテになる物ではありません。
ワインに限らず味わいを他人に言葉で伝える事はとても難しい事であります。
「ぷりっぷりの(としか表現できない)エビ」
「甘い、シャキシャキの(としか表現できない)野菜」
と、テレビなんかで食レポを聞いていると、ああ美味しいんだなぁーとしか
感じ取れない表現を多く感じませんか?
ワインを人に勧める時には食レポ表現から一歩進んで
「飲んで貰いたい」思いを伝える様に意識しています。
ソムリエ・ワインエキスパート試験などでは、ある程度の基準となる表現を
要求されていますが、その枠内にとらわれない、収斂しない表現を
どんどん利用して、ワインの輪を広げていければと感じております。