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 衣料品業界に関するビジネス書は、今まで読んだ記憶がない。ユニクロに関しては、フリースやヒートテック製品のヒットを知っているだけで、それ以外には殆ど何も知らなかった。2009年10月初版。

 

【インターネット・IT関連の影響】
 私はソフトバンクの社外取締役も務めています。
 その関係から「インターネットやブロードバンドの時代は今ようやく始まった。」との認識を持っています。この流れは、ハイテク業界ではなく我々のような既存の業界や企業にとって、より大きな変革をもたらすだろうと確信しています。(p.27)
 この本が書かれていた2009年ごろは、インターネットショッピングが本格化した頃だったのだろう。国内ネット通販のみならず、グローバルに展開する企業にとっては、社内情報システムの改変も必須である。
 新しい情報システムをつくるということは、会社の仕組みを一から新しくつくるのと同じことだ。全社をグローバル化に対応させ、全員経営できる企業に変身するためには、なにもかもつくり替える必要がある。人事制度も、営業のやり方もそれらに合わせてすべて見直すことになる。
 どの仕事の現場もすべて大学院のような教える場・学ぶ場になる。(p.196)
 グローバル化と情報化を一挙に推進しようとする企業は、過去のやり方など殆ど踏襲できないだろう。運営方法に関する継続的発展は実質的に無理である。若い世代にとっては、社内のすべての新たなシステムから参加することになるのだから、遣り甲斐はあるだろう。しかし、若い世代には経験値がないからその自覚がないと後々やばくなる。どんなことであれ、謙虚に学ぶ姿勢が必要。

 

 

【謙虚に学ぶ姿勢】
 ぼくの周りにはいろんな先生がいて、その都度教え導いてくれ、自分の考え方を絞り出すときや、決断するときに手助けしてくれた。経営幹部や社員も先生であるし、社外役員やコンサルタントや知人もみんな先生だ。本から学ぶことも多く、ぼくはほとんど何も知らないんだなと、いつも謙虚に学ぶ姿勢を通してきた。つねに人の話をよく聞くことが重要だと考えている。
 ぼくが尊敬する松下幸之助さんは、「衆知を集める」という言葉を大事にされていた。 (p.201)
 学ぶ意志のない人がトップにいると、多様な解法を思いつかないから、企業の成長はそこで止まってしまう。
 本なんか読んでいる時間がない人は、その道の専門家から直接教えてもらえばいい。
 耳学問は、大いに人を助ける。
    《参照》   『榊原式スピード思考力』 榊原英資 (幻冬舎) 《前編》
              【わからないことは聞いてみる】
    《参照》   『読書術』  加藤周一 岩波書店
              【耳学問の効用】
    《参照》   『耳学問のすすめ』  鎌田勝  日本実業出版社

 

 

【やってみて失敗だったら、すぐに変更すればいい】
 世間とか世の中は自分よりももっとずっと大きな存在なので、自分の都合などは聴いてくれない。社会的に必然性がなければ失敗する。社会がその事業を要求するから成功するわけで、本当には何も思い悩む必要などないのだ。
 やってみて失敗だったと気づいたら、それを素直に失敗と認め、すぐに変更して行けばいい。今まで上場以来、ぼくはそれを躊躇することなくやってこられた。それが良かったのだと思う。(p.30-31)
 “成功か失敗かは社会が判定するのだから、思い悩む必要はない。失敗だったら変更すればいい。” この考え方は最も現実的かもしれない。準備に万全を尽くしたつもりでも上手く行かないことなどいくらでもある。事前に時間と労力を費やした結果に落ち込むより、すぐにやってみて駄目ならすぐに変更して対応する方が、最適解に早く辿り着けるだろう。
 企業経営者は、「成功するまで失敗は続くもの」というスタンスを常識として心得ているはず。
    《参照》   『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』 岩崎夏海 《後編》
              【優れているほど新しいことを試みる】

 

 

【尊敬して止まないお二方】
 ぼくが尊敬して止まない人物が二人いる。
 一人は先ほども述べたが、主観的な目で独自の理論をつくり出し経営を実践されてきた松下幸之助さん、もう一人は、客観的な目で企業や組織を見続け、そこから経営とは何かを発見したピーター・F・ドラッカーさんだ。お二人とも、経営に対する考え方はとても似ているように感じられる。おこがましいが、お二人ともに著作を通じて大きな影響を与えていただいた、いわば僕の大恩人である。(p.203-204)
 松下幸之助さんの読書記録が2つあるからリンクしておこう。
    《参照》   『人生で大切なこと』

            『人を活かす12の鉄則』

 

【正常な危機感】
 ぼくは常日頃から会社というのは、何の努力もせず、何の施策も打たず、危機感を持たず放っておいたらつぶれる、と考えている。常に危機感を持って会社経営することが正常なのである。「正常な危機感」とでも言おうか。
 会社経営をしたことのない人は、危機感がなく順風満帆なことが正常だと勘違いしている。(p.35)
 「時流は常に変化するもの(無常)」であるという不変法則の認識があれば「正常な危機感」はもてるもの。
 時流は常に変化しているのに何も努力せず、何の施策も打たないのであるなら、当然下降ラインに入ってしまっている。こんなことすら分かっていないようなら経営者になるべきではない。
 危機というと、どうしても不安と同一視してしまう人は、こんな具合に考えるとよいだろう。
 危機、つまりリスクを裏返すとプロフィット、要するに利益に通じる。会社経営では、危機は利益と同義語なのだ。(p.35)

 

 

【仕事は誰のため】
 経営者だったら当然だが、社員誰もが「組織が先にあってこその仕事ではなく、それぞれの仕事が順調に進むように有機的に仕事が繋がった状態が組織だ」と考えなくてはいけない。すべての仕事はお客様のために存在する。お客様の役に立っていない仕事は不要と考えるべきだ。(p.75)
 これをダイレクトに公務員に当てはめるなら、公務員の7割は不要である。
 著者が一度社長を退いて会長になった後、再度社長に就任したのも、組織病に罹患しつつある実態にいたたまれなくなったからかもしれない。
 国際競争の激しい企業環境下にあっては、「組織論が先に出て(お客のためという視点が失われて)、守りに入ったら、即、倒産」だろう。

 

 

【世界のアパレル上位3社】
 世界のアパレル小売業の売上高上位3社を上げると、GAP(アメリカ)、ZARAを傘下に持つインディテックス(スペイン)、それにH&M(スウェーデン)の3社となり、いずれも1兆3000億から7000億円の売り上げをあげている。(p.185)
 へぇ~。
 原宿辺りで目にしていたようなブランド名だけれど、ほとんど知らなかった。

 

 

【中国市場での成功と失敗】
 日本のユニクロを中国で広めるのではなく、中国で新しいユニクロを作ろうとした。具体的には、中国での所得層を気にするあまり、商品価格を日本のものよりダウンさせたのだ。日本向けの商品より若干、品質が劣る素材でもやむを得ないと考えた。
 しかし、我々の強みというのは日本でいま評価されているユニクロ(当時はまだまだ発展途上だったにしても・・・)であり、日本のユニクロそのものを、価格やしくみ、文化を含めて全部を中国に持ってゆくべきだった。(p.37-38)
 品質を落とし低価格路線を取った北京の2店舗は1年もたたないうちに閉店したのに対し、商品もタグも全部日本と同じにして、値札だけ張り替えた香港の店舗は大成功だったという。
 この成功と失敗例に関しては、著者が書いていること以外に、北京と香港という都市の違いが大きな要因になっているはずである。北京は中華意識が強い処なのだから、それだけですでにハンディキャップである。香港人は中国大陸の商品を信頼しないという風土がある。中国大陸の野菜を“毒菜”といい、高くても日本の野菜を買うようなところなのである。

 

 

【リー・クアンユーと鄧小平】
 こんな話を聞いた。鄧小平が中国で開放政策をする前に、シンガポールを訪れた。リー・クアンユーと対談中にちょっとした口論になり、最後は口喧嘩になって別れた。だが、その次の日に、鄧小平が国家運営の方法をぜひ教えてください、ということで出直してきたのだという。結果、中国の開放政策というのはシンガポールを模範にしていて、現在でも中国で政治の中枢部に座る人は、模範であるシンガポールに研修に来るという。(p.153)
   《参照》   『韓国企業はなぜ中国から夜逃げするのか』 大原浩 (講談社) 《前編》
             【客家による投資】 【客家の世界】
   《参照》   『地球維新 ガイアの夜明け前』 白峰 (明窓出版) 《後編》
             【仮面の告白】
   《参照》   『宇宙戦争 ソリトンの鍵』 光悠白峰 (明窓出版) 《前編》
             【台湾と日本】

 

 

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