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 松下幸之助さんの声が収録されているCDブック。収録されている10話のいずれも、特にポイントを強調するということもなく淡々と話している。
 文章も収録されているから、ビジネスを通じて日本語(但し関西弁)を学びたい外国人の方には優れた教材かもしれない。CDブックの割には定価も1000円と安価である。

 

 

【人生は “経営” である】
 松下幸之助氏は、人間の行う活動をすべて経営ととらえていました。たとえば、個人の人生、家庭生活もひとつの経営であり、他に依存することなく、自主独立の意識を持ってこれに取り組むことが大切だと訴えています。(p.7)
 10話入っている中の、第1話の主旨がこれである。
 自主独立という精神性の薄い多くの日本人にとって、この第1話はちょっと強烈な内容である。
 独立自主の精神を確立して、自分個人の経営は自分が経営者としてやっていくんだということを確立する。その確立した独立性をもった人々が相寄って、さらに協力しあって、より高いものを生みだして行こうということでなければならない。ところが、現在の社会は、そういう点もないとは言えませんが、多く他に依存して、自分もよくなろうというような傾向が強いと思うんですね。(p.5-6)
 依存を排した自主独立は、共創を可能にする。
   《参照》   『変な人の書いたツイてる話Ⅱ』  斎藤一人  総合法令
            【キョウソウ】

 会社に依存しているだけだったり、指示待ちの受け身に慣れてしまっている自分自身を克服する方法として、松下さんは 「経営が好きであること」 と言っている。
 帰属する部署の社員としての立場だけで考えていると、視野狭窄が常となり喜びは少なく不平不満に流れやすくなる。しかし、経営者の立場で考えていたら、問題を克服するべく常に鳥瞰する視点でものごとに臨める。
 一目おかれるような人々は、自分自身が現在ある地点より、常に1ランク以上うえの視点、ないし経営者の視点で、より広くものを考えているものである。
   《参照》   『安藤百福かく語りき』 安藤百福  中央公論新社
               【地位と仕事】

 

 

【松下幸之助氏の昇進判断ポイント】
 つぎのエピソードは、松下幸之助氏がある課長を工場長に任命したときの話です。 ・・・(中略)・・・ きみはどこの学校を出たか、どうしてその学校を出ることができたと思うか、と尋ねたのです。 ・・・(中略)・・・ 
「きみ、その学校は誰が建てたんや。まさか、きみの親父さんが建てたんと違うやろ。 ・・・(中略)・・・ 。国が建てたのと違うか。国が国民の税金で建てたのやろ。その税金はといえば、きみと同じ年で、小学校を出てすぐに働いている人たちも納めている。ということは、きみが学校を出られたのは、きみと同年輩の人たちが働いて学校を建ててくれたから、ということになるな・・・違うか」
「そのとおりです」
「そうすると、きみは小学校を出て働いている人たちよりも、数倍大きい恩恵を社会から受けていることになるが、きみ、それは分かるな」
「はい」
「とすれば、きみはそういう人たちの数倍のお返しを国なり社会にしなくてはいけない。ぼくはそこのところが非常に大切だと思うんやが、どうやろ」
「確かにおっしゃるとおりです」
「きみ、ほんとにそのことが分かるな」
 松下氏は念を押すように言うと、こう続けました。
「それが分かったらきみ、今晩すぐ名古屋へ行ってくれ。きみに名古屋の工場長をしてもらおうと思うんや。それが分かってさえいれば、きみは工場長がすぐにできる」 (p.50-51)
 欧米流の経営学で言われるような、能力とかその周辺で語られる知見らしき話は、この会話の中に全然出てこない。
 全てのものに対する 「感謝の念の大切さ」 と同時に、「社会や国への恩義(報国)」 を語っているだけである。
 近年の日本人に、日本という国に報いるべく “国魂” を抱いて職業に邁進している人はどれほどいるのだろう。
   《参照》   『人間の本質』 本山博・稲盛和夫 (PHP)
             【国の魂に一致する】

 

 

【五分の勝ちをもって最良となす】
 それがもう80%も90%も成功しようと思うと、それは問題になるわけですね。決してそういうことは思わないんです。五分五分であればひじょうに結構であるけれども、まあ少し多ければ、55%、60%であれば、これは結構とせんならんと、それ以上のことを望むということは、それは無理だと。こういう考えを、ぼくは常に持っているんです。(p.60)
 「勝者が全てを取る(Winner takes all)」 を当然のごとくに考えている欧米流経済学の発想の根底にあるのは、“分かち合い” ではなく “略奪” である。
 明智ある日本人は、「五分の勝ちをもって最良となす」 のである。
   《参照》   『米長邦雄 ともに勝つ』 加古明光 毎日新聞社
               【ともに勝つ】
   《参照》   『中国人の金儲け日本人の金儲けここが大違い!』 宋文洲 (アスコム) 《前編》
               【三方よし】

 

 

 

<了>