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 宋さんは来日して25年。自分で興した会社を上場させた実績のある方。コンサルタント業もしているらしい。ビジネス書のコーナーでは良く見かける。著者名は宋文洲さんとなっているけれど、田原総一朗さんとの対談である。2010年3月初版。

 

 

【販売管理費】
宋 : 日本の企業は、なぜ利益が薄いのか。これを私たちはデータで十何年も見続け分析してきたわけです。日本企業の販売管理費は、世界の企業と比べて平均1割くらい高いですよ。(p.33)
 過剰に作って、押し売りや値引き販売をするから利益が上がらない。売れるだけ作って販売すればいいのに、「もっと頑張れ! 命懸けでやれ!」 といった根性論や精神論で営業マンに拍車をかけて売らせるような営業の仕方が、日本企業の販売管理費を押し上げる原因になっていると言っている。
 インターネットで受注した分だけを生産するDELLがまさに販売管理費極少型の典型なのだろう。トヨタのジャスト・イン・タイム方式もまさにそれだった。しかし、トヨタも販売管理費が膨らむ日本市場では利益が出ていなかった。黒字は専らアメリカ市場で計上されていたのである。さらに悪いことに、GMを抜いて世界一の企業になろうとしていた時期、ジャスト・イン・タイム方式は実質的に反故にされていたらしい。その結果が、ブレーキ系統の多量リコールという大きな損失として返って来てしまった。

 

 

【中国は何でよくなるの?】
田原 : 日本では、中国は都市と農村の格差が激しすぎる、これは絶対にもたない、中国は必ず滅びると主張する人が多い。もう20年、30年と同じことを言っている人もいるけど、中国はよくなっていく。なんで?
宋 : いや、私にも分からない。これ、本当ですよ。私も誰かに教えてもらいたい。(p.43)
 『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた』 からである。 そのシナリオが変更され経済的に瓦解させられるのは、中国が軍事的覇権主義の暴挙に出た時なのだろう。
   《参照》   『アジア黙示録』 五島勉 (光文社)
 

 

【チャイナタウンは難民キャンプ】
宋 : これは帝国主義時代の中国難民の受け入れ先なんです。中国人は、チャイナタウンを、その国にできた難民キャンプだと思っていますよ。金持ちの中国人はチャイナタウンにはいないでしょう。横浜の中華街や神戸の南京町はまだいいほうですけど、中国人は見にもいかないし憧れもない。住もうとも思わない。アメリカなんかのチャイナタウンは、ようするに英語がしゃべれず、ひょっとしたらパスポートもない、日本で言う不法滞在者たちが、ここなら働けると思って集まる。基本的人権もないし、みんなアメリカの最低賃金の半分しか稼ぎがない難民キャンプなんだ。(p.65)
 なるほど。

 

 

【小さい規模でうまくいっている会社の典型】
 あえて大会社にしないで長年安定経営を維持している企業は少なからずある。缶詰の国分とか、ふりかけの永谷園とか、下記のキューピーなどが紹介されている。いずれも食品系の会社。時代の変化に左右されやすい製造業では、小規模安定長期存続企業はないという。
宋 : 小さい会社でうまくいっている典型は、マヨネーズのキューピーという会社。08年の大不況でも利益を出した。 ・・・(中略)・・・ 。創業者は 「会社を大きくするな」 と言ったんです。会社を大きくすると必ず痛い目にあうから、適正規模を守れと言った。これをキューピーはいまでも実践している。(p.88-89)
 “日本の味” としてキューピーのマヨネーズが海外のインターネット販売市場で業績を伸ばしているらしい。 「マヨネーズが “日本の味” ?!」 と思ってしまうけれど、日本で餌付けされたマヨラーが、海外にも伝染させたのだろうか。
 ところで、この記述を読んで、以前、キューピーさんについて、ちょっとおふざけで書いたブログを思い出してしまった。大きくなれないキューピーなのではなく、大きくしないという社是のキューピーだったとは露知らずである。キューピーさん、下記のブログの記述、笑って許して下さいね。
   《参照》   『味の素 食文化のクリエーター』 堀章男 (TBSブリタニカ)
            【マヨラーを作ったのは味の素?】

 

 

【経営者の判別ポイント】
田原 : いろんな経営者と会ってアドバイスする宋さんは、経営者のどんなところを見るの? 目のつけどころ、注目するポイントは?
宋 : 僕がいちばん見ているのは、その人間がどれくらい裸の人間として相手と会話をしているかですね。立場や肩書じゃなくて人間としての実力。 ・・・(中略)・・・ 。経営者として実力ある人間は、自信があるから人間として話す。無能な経営者に限って組織でものを言う。(p103)
 よくわかる。
 会社の構えとすれば、社是やスローガンがあちこちに張られている会社は、特に横文字が増えるにつれておかしな会社になるという。
宋 : 日本語があるのにわざわざ英語を使うのは、単刀直入に問題の本質に触れたくないからで、その姿勢がトップから組織全体に浸透していく。それから秘書が色っぽい会社も、だいたいダメ。(p.106)
 へぇ~、秘書が色っぽいと・・・・・
 「だいたいダメ」 と書かれているだけで、 「全部ダメ」 とは書かれていない。

 

 

【日本の継続性】
宋 : 日本は継続性を大事にするんです。
田原 : 継続性ね。僕は最近、韓国に行った。反日かと思ったら全然違う。ウリ党やハンナラ党のども議員にあっても、日本を手本にしたいんだと言う。韓国は大統領が交代するたびに国の方向がドーンと変わる。せっかく高度成長してもすぐダメになる。北朝鮮との関係もそう。しかし、日本は継続性があると言うんだ。首相が代わっても方向は同じで、高度成長が40年も続いた。こういう日本を手本にしたいとね。
宋 : そこは中国も同じです。僕らはやっぱり日本の継続性がうらやましいもの。(p.114-115)
 欧米のメディアは、村山政権が誕生し野党が政権をとってもなんら変わらない日本の政治にビックリしていたらしいけれど、そもそもからして、日本は 「和をもって貴しとなす」 国である。与党はつねに野党に対して根回しして法案を成立させていた。
   《参照》   『韓国人の私が韓国をキライになった48の理由』 李鍾学 (ザ・マサダ)
             【20万人の入れ替え】
   《参照》   
日本が経済成長したその理由は?
             【政治】

 

 

【中国人の人生観】
 中国人はね、人生そのものを賭博だと思っています。よく言うのは 「結婚は賭けだ」 とね。この男と結婚するのは、この男の株を買ったのと一緒だっていうんですよ。賭けにハズレる人が多いので、離婚率は3割とか4割。日本人も離婚する人は多いけど、賭けとは言わないですね。中国人は就職も賭けと見ますよ。(p.132)
 以前、中国のことわざ辞典を古書店で見たことがあったけれど、8割方お金に関するものばかりだったので唖然と言うか憮然としたことがある。精神性を語る前に現実なのである。中国政府が強権であることは確かだけれど、人民は政治なんかどうでもよくって、お金儲けの事にしか興味がない。
   《参照》   『日本人には言えない中国人の価値観』 李年古 (学生社)
            【賭博社会】
   《参照》   『「反日」に狂う中国 「友好」とおもねる日本』 金文学 祥伝社 《後編》
            【災民文化】

 

 

【三方よし】
田原 : 僕は滋賀県彦根の生まれです。近江商人に 「三方よし」 という言葉があって、僕は幼稚園に行く前から祖母に 「三方よし」 「三方よし」 と聞かされていた。(p.144)
 お客さんにとって、世の中にとって、そして自分にとっても 「よし」 とする商売の考え方。人もよし、我もよしの 「二方よし」 は聞いたことがあったけれど、世の中まで視野に入っていたら確かに完璧だろう。
 人生を賭博と考える中国人からは、こんな発想は決して生じない。 詐欺にあっても、「賭けに外れた」 程度の思いで終わるのである。あるいは 「騙された方の知恵が足りない」 という認識。つまり、どこまでも 「一方よし」 である。つまり自己中。