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 中国の内情を伝えているビジネス書は数多あって、この著作に記述されていることも、既刊書の中に見られることが殆どであるけれど、ビジネスを通じてアジア周辺国家の多くの人々との人脈があるらしい著者の記述には、やや皮膚感覚的な良さがある。2008年9月初版。

 

 

【労働契約法の施行】
 2008年1月に労働者の権利強化を図った労働契約法を施工したことが、賃金の上昇を加速させています。これによって、従業員を事実上終身雇用しなければならなくなりました。 ・・・(中略)・・・ 。韓国系をはじめとする、中国進出企業の運営はますます難しいものになると言えるでしょう。(p.21)
 そうでなくとも、近年の人件費上昇で中国進出のメリットは薄れつつあったのに、終身雇用の定めとなると何のメリットもない。
 数多くの韓国企業の 「夜逃げ」 騒動により、当然、現地の韓国企業に対する中国政府の監視や監督が厳しくなるでしょう。(p.21)
 人治国家中国には、定められた倒産法がないため、撤退しようとしても様々な縛りが多く、現地派遣社員が拘束されるなど危険な状況になるため、本当に 「夜逃げ」 が一番安上がりで確実な撤退方法になってしまうのである。

 

 

【韓国人のスピード感覚】
 韓国人の短期志向は、日本人よりも先に中国から 「夜逃げ」 することとも、おおいにつながりがあります。
 中国でつくれば安く上がるとなれば素早く進出し、コストが上昇すると素早く撤退する。製造業でもIT産業と同じ感覚でやっているのです。つまり、韓国の人々は、ドックイヤーと呼ばれる超スピード感覚を製造業に持ちこんでいるということです。(p.40)
 韓国人にドックイヤーを当て嵌めてしまう著者の記述に笑ってしまうけれど、まさにそうなのだろう。韓国人はじっくり腰を落ち着けて作るなどということはしない。そこら辺の文化的行動様式は日本とは全く違っていて、やはり漢民族のDNAが濃いのである。
 韓国人が進出している中東・南米などの地域では、その傲慢な民族性が嫌われていて、トラブルを起こしているそうだけれど、そんな韓国人であってしても中国人相手では太刀打ちでいないということは、壮絶な意味をもっている。
 中国から 「夜逃げ」 する韓国企業は、タイタニック号が沈没する前に、いち早くどこかに消えてしまったネズミたちと同じであるような気がしてなりません。(p.204)

 

 

【客家による投資】
 (南巡講話による)改革・開放の初期段階において、リスクを恐れず投資をしたのがシンガポールそして台湾ですが、シンガポールを、閑散とした漁村から世界でも有数な豊かな国へ導いた当時の首相リー・クアンユーや元台湾総統の李登輝が客家であるのは大変興味深いことです。(p.53)
 中国におけるその具体例が、蘇州工業団地である。
 これは中国政府の初めての政府間地域プロジェクトとして、シンガポール政府と共同で、1994年から、江蘇省蘇州市に工業団地の開発を行った事業です。
 このプロジェクトは、鄧小平とリー・クアンユーのトップ会談で決定し、鳴り物入りでスタートしました。(p.174)
 で、結末は・・というと、2001年1月に、シンガポールは事実上撤退しているのである。
 この1件により、リー・クアンユーの面子はつぶれてしまいましたし、大きな金銭的犠牲も払ったのですが、逆にこれを、「中国大陸でのビジネスの教訓とする」 と発表。(p.175)
 東洋のユダヤ人と言われる流浪の民・客家は、中国大陸がたとえ故郷の地であるにせよ、そこに根付く意志を示しているわけではない。中国=客家ではないのである。
 客家出身のリー・クアンユーは、歴史上の多くの客家の英雄に見られるように潔癖で、私腹をこやすようなスキャンダルを起こしたことがありません。 ・・・(中略)・・・ 。
 シンガポールと中国の最大の違いは、国をリードする指導者たる政治家・役人の心構え、すなわち国に奉仕する精神(クリーン度)だと思います。(p.153)
 リー・クアンユーさんも李登輝さんも立派だった。中国のトップはどうか。李鵬前首相は三渓ダムの、江沢民前書記長は情報通信の利権が確定したところで引退したのである。このような状況なんだから、その下にある中国のお役人がクリーンであるわけがない。
 横領して国外逃亡するのは、民間人だけではありません。中国政府の発表でも、横領して国外逃亡している役員の数は4200名です。また、横領総額は500億米ドル(約5兆円)とされています。(p.122)
 立派すぎ! 最近の日本人の官僚の中にも中国人的な輩が増えている。
 とはいえ、中国には完敗である。

 

 

【客家の世界】
 台湾総統選挙の候補者が、2人とも、それも選挙の前に、客家の実力者リー・クアンユーを訪問したことは、台湾の政治に客家の実力者たちが大変な影響を与えているということを如実に示しています。(p.154)
 こういう情報は、日本では報道されないから、「へぇ~」 である。

 

 

【客家の女性】
 客家の女性は、漢民族のなかで唯一、纏足の習慣をもたなかったことで有名です。男性が出稼ぎや戦いに行っているあいだ、纏足をしていては畑仕事などできません。客家には、女性も男性と同様の労働力として活躍するという伝統が受け継がれているのです。(p.157)