《前編》 より

 

【農業分野への進出】
 社内には異論や反対があったのも事実だし、マスコミ報道も賛否両論だった。ユニクロ方式がまったく別の業種業態である農業の世界に通用するのかどうか、やってみなければわからないし、社会的にはたいへん意義のある仕事だ。そういう僕の論理で押し進めた。
 しかし、結果は大失敗だった。(p.43)
 永田農法を実践している農家の協力で実践してみたけれど、繊維製品のように生産計画が立てられないことなどが、失敗の原因だったと書かれている。20数億円の経費を費やした失敗例。
 アパレル業界なのだから、大麻を栽培してヘンプ素材の繊維品を作ればよかっただろうにと思うけれど、その頃はまだ、日本では大麻栽培は解禁されていなかったのだろう。

 

 

【障害者雇用】
 かつては、法定の障害者雇用率に満たない部分は、罰金を支払っていたという。
 あるとき大阪のユニクロ店で障がい者を雇ったら、店舗内部の従業員のコミュニケーションが非常にうまく回り出した。・・・中略・・・、一緒に働く人への気遣いなどはじめて肌で知ったというわけだ。その結果、その店舗は他の店舗よりむしろ人員効率が良くなったのだ。・・・中略・・・。心身ともに健康という健常者といえども、何かしら弱いところ、劣っているところはあるはずだ。逆に障がい者とはいっても、なにかしらの配慮をすることで仕事は問題なくこなせる。皆でチームとして仕事をすることによって一体感が高まり、高効率の店舗が生れるのだ。(p.99-100)
 障害者が加わることで、心に潤滑油が分泌されるようになった。今日の日本社会は孤立化を深めているから、いたわりや思いやりが定常的に欠落している。
 その後、ユニクロの障がい者の雇用率は高くなり、2007年6月には内閣府より「再チャレンジ支援功労者表彰」を受賞したという。

 

 

【商品リサイクル】
 2008年の実績は、・・・中略・・・難民キャンプの救援衣料として寄贈(リユース)したのが93%、繊維化へのリサイクルが2%、燃料化へのリサイクルが5%となっている。この全商品リサイクル活動は、2008年10月に第5回朝日企業市民賞を受賞した。非常に光栄なことである。(p.102)
 商品棚を占有し回転しない商品は、倉庫に保管しておいても倉庫維持経費がかかる。経費をかけて死蔵するくらいなら、善意としての用途はいくらでもある。業種に関わらず、企業経営者は、この点をもっと考えてみるべきだろう。

 

 

【価格帯による別ブランド化】
 機能性素材などで付加価値をつけたベーシックなカジュアルウェア中心のユニクロに対し、もっと低価格のカジュアルを販売する株式会社ジーユー(現・GOVリテイリング)を2006年3月に設立した。ユニクロが低価格に固執することを止め「高品質」を最重視することにしたので、その空いたエリアに本格的に低価格を売り物にする企業があってもいい。幸い、どこにも強い競合相手はいない。
ジーユーの至上命題は「驚きの低価格」。 (p.158)
 アルマーニにも、高価格帯の「ジョルジオ・アルマーニ」と、低価格帯の「エンポリオ・アルマーニ」がある。
 セイコーにも、低価格帯のアルバがあるばい。(急に熊本弁)
 ユニクロのジーンズは日本製のデニムを中国で縫製して作っているが、ジーユーは中国製の安価なデニムを使ってカンボジアの工場で縫製すれば990円は十分に実現可能だ。(p.160)
 学校の先生たちは、子供たちに興味のありそうな自分たちの着ている衣類が、世界中のどことどこを巡って作られているのか話してやるだけでも、国際人としての興味の端緒を持たせることが可能である。
 ついでに、デニムという素材名に関して。
    《参照》   『イロハソニー』 麻倉怜士・監修 (日経BP)
              【デニム】

 

 

【日本人女性独特の就業観】
 わが社でもそうだが、一般的な小売業では店長同士でよく結婚する。店長同士で結婚すると、たいていは女性が退職する。それも不思議と、女性店長のほうが優秀なケースが多いのだ。ということは、その結婚は会社にとっては損失を招く原因となってしまう。非常に残念だし、女性の能力がもったいない。(p.106)
 優れた女性の退職は、会社にとっては損失であっても、社会にとっては損失ではない。
 「女性の能力は、仕事に向けるものではなく、家庭に向ける方がいい」と思っている日本人女性が多く存在するうちは、日本もそうやすやすとは沈没しないだろう。
 日本におけるアエラ族の量産化は不適切なのである。
    《参照》   『ギブ&ギブンの発想』 佐々木かをり (ジャストシステム) 《後編》
              【4月26日】

 平均的な日本人女性の精神性は、諸外国の女性のそれと同一ではない。
 女性のみが持つ優れた資質は、これから大いに花開くべきなのだけれど、それらのすべてがビジネスの場面で全開するものばかりというのではない。ビジネスの視点で女性を有効活用すべきという方針があるからといって、全ての女性がそれに従う必要など、決してないのである。

 

 

【ユニクロと東レ】
 実は最初に東レさんに取引をお願いしに行ったのは1998年のことで、こちらは若輩企業で異端児、あちらは繊維産業の王者。どう考えても相手にされそうにない。ただ、当時の前田勝之助会長に「当社とチームを組んで素材開発をお願いします」と直訴しに行ったら、我々を伸びる可能性のある企業だと評価してくれて、GO(グローバルオペレーション)推進室でフリースの原材料を開発してくれることになった。
 前田会長は当時の経済雑誌に「繊維産業はグローバルビジネスとして、まだまだ発展する余地がある」ということを書かれていた。僭越ながら、ぼくも同じ思いだった。現在、東レさんのなかにはユニクロ向け単独の開発チームを作っていただいている。(p.115)
 繊維産業は、発展途上国にもっとも早く技術移転が完了してしまう業種なのだけれど、独自の技術的な蓄積があれば、成熟した先進国内でも末永く生き残ることができるのだろう。東レの技術は、若いユニクロの発想とエネルギーを受けて、活路を見いだしたということだろう。
 フリースもヒートテックも、登山者などが防寒着として着用していたものを、カジュアルウエアに転用しようとしたのがコロンブスの卵だったのだけれど、東レにはそんな発想はなかった。

 

 

【合成繊維と天然素材】
 合繊はよくなくて、天然素材が良い、などという思い込みが強くて、フリースを見ずに「そんな商品は売れない」「欲しくない」と拒否する。日本の工業製品の技術力の高さは世界一である。繊維技術もそうであるにもかかわらず、自分たちで壁を作り、先入観を持ったままなのだ。だから、なかなか活発な商品化が進まず、商品化されても少量生産なのでコストが高いままだったりする。
 こうした壁を取り払えば、どんなにか世界が広がるのにと残念に思う。(p.121)
 どんなに日本の技術力が高くても、それによって石油由来の合成繊維の波動が、植物由来の天然素材の波動より人間に適応する様にはならないだろう。
 電気アンカより湯タンポの方が、電気炬燵より豆炭や炭の炬燵の方が、石油ストーブよりマキストーブの方が、圧倒的に体が芯から温まるのは体験したことがある人なら誰でも分かることである。
 フリースは確かに暖かいけれど、長時間着用していると頭に血が上ってボ~となってしまう。ヘンプ(麻)の服を着ていたらそんなことは絶対にない。
 チャンちゃんが唯一所有し常時着用しているヘンプの長尺ベストは、手に持つとたいそう重いけれど、着るとなぜか重さを感じないのである。さとううさぶろうさんが作った「うさとの服」の展示会場で、最初に手にして試着した時、その異次元感覚がはっきり分かったから購入したのである。ヘンプの服であれば天然素材のメリットはあるけれど、プラスαは作った人の波動に依るのだろう。「うさとの服」は凄い。
    《参照》   『宇宙のヘソ富士山と共にアセンションせよ』 滝沢泰平 (ヒカルランド) 《後編》
              【「うさと」の服 <6月21日の記事>】

 ちなみに、チャンちゃんはユニクロ=合繊のイメージなので、行ったこともなければ買ったこともないのだけれど、この本を読んだから、一度くらいはビジネスの視点で見学に行ってみようか。

 

 

<了>