《前編》 より

 

 

【企業が栄えても・・・】
 企業が利益を最大化するためには、国家が「経常収支を黒字にする」「政府を財政赤字にする」「投資を減らす」「家計の給与を下げる」を実現すればいいということになる。(p.97)
「企業が儲かっているなら、国や国民が豊かになっている」と思いがちであるけれど、利益最大化を目指す企業は「給与を削る」のが最も手っ取り早い方法なのである。
 サムスンは創業の頃は「報国」をうたっていた企業であるけれど、IMF以降、資本の50%程度を保有するのは外国人である。グローバル化する過程で、国に報いる企業ではなく外国人資本家に報いる企業になり果ててしまっている。だから、資本家の意向に応じて、「投資を減らし」「家計の給与を下げる」かたちで企業収益を確保する企業になってしまっている。いくらサムスンが栄えても韓国国民は豊かになれない。
   《参照》   戦後の、日本から韓国への援助のかずかず
             ■ コラム① ■

 

 

【韓国企業の外資支配状況】
 サムスン電子の株式は、なんとその49%超が外国人によって保有されている。また、韓国最大の製鉄会社であるポスコもほぼ半分が外資系で、現代自動車も40%近い株式を外国人が保有している。韓国最大の通信事業者であるSKテレコムも外国人持ち株比率がほぼ半分だ。
 さらに、大手金融グループのKBや新韓金融に至っては、外国人の持ち株比率が6割超にものぼる。韓国では、アジア通貨危機およびその後のIMF管理によって、銀行が外国人の資本的な支配を受けているわけだ。なかなか怖い話である。(p.132)
 韓国の企業買収に関わったのは、言うまでもなくカーライルグループである。韓国の金融破綻、IMF管理、金大中大統領の登場など、一連の出来事は、彼らの描いたシナリオ通りだった。つまり現在の韓国も、である。
   《参照》   『世界を変えるNESARAの謎』 ケイ・ミズモリ (明窓出版)
             【カーライル社】
 企業が国家に納める税額を定める法人税率も、外国人資本家の意向に則してIMF以前より下げられており、法人税引き後に確定した企業利益から株主に配られる配当はとんでもなく巨額になっているのが、韓国の経済統計に露骨に表れている。<《前編》写真の中に取り込まれているグラフ>にあるように、外国人への支払いが集中する決算期の3月4月は、韓国の所得収支は必ずマイナスである。
 海外持ち出しとなるこのマイナス分を受け取っているのは外国人資本家ばかりではない。サムスンの世界進出をバックアップしているマッキンゼーは、コンサルタントの契約時に、ベラボーな率の成功報酬を締結しているはずである。
 ところで、
 韓国経済は長らくウォン高に苦しんでいたけれど、08年の世界的な金融危機以降、現在までウォン安で主要企業は輸出絶好調である。しかし、これも韓国企業を所有する外国人資本家による計画的な誘導だろう。TPPではなく独自にアメリカとFTAを締結している韓国は、アメリカの支配層にとって世界から利益を吸い上げるのに最適なそして最も忠実な出先機関なのである。韓国国民が豊かになる可能性は100%ない。

 

 

【韓国企業が豊かにしているもの】
 サムスン電子の李健熙会長が受け取るサムスングループ会社からの配当金は、なんと874億ウォン(約66億8000万円)にも及ぶという。アメリカのCEO連中も顔負けである。
 さらに、現代自動車の鄭夢九会長が受け取る自社株からの配当金も総額375億ウォン(約28億円)に達するとのことだ。
 ・・・(中略)・・・ 企業のオーナーが、配当金として何十億も受け取る。一方、韓国の最低賃金はわずかに時給300円で、多くの韓国国民が貧困に喘いでいる。
 今の韓国は、完全にアメリカ型資本主義の優等生になってしまった。(p.143)
 朝鮮戦争後、日本企業の協力を得つつ、「報国」の理念を掲げ、食糧生産を豊かにするための肥料販売から始めて行った三星(現サムスン)であるけれど、もう報国なんて全然念頭にはないだろう。
 サムスンがどんなに栄えてもごく限られた人数の韓国国民しか豊かになれないけれど、サムスンに部品を輸出している日本企業は確実に儲かっている。韓国の輸出総額と日本の対韓貿易黒字は見事に連動しているのである。
 つまり、韓国の主要企業が確実に豊かにしているのは、「欧米人の資本家と、部品を供給している日本企業だけ」ということになる。

 

 

【対米政策:TPPかFTAか】
 日本の乗用車の輸出がGDPに占める規模は1.23%、家電用電気機器については0.036%にすぎない。 ・・・(中略)・・・ GDPの2%にも満たない乗用車や家電の輸出をサポートするために、日本の農産物輸入に対する関税を引き下げ、法律サービスなどを自由化し、日本の訴訟大国化を認めろといわれても、無茶な話としかいいようがないのである。
 どうしてもアメリカ市場における関税率を引き下げたいのであれば、TPPではなく日米FTAを選択すべきだ。FTAであれば、産業分野を区切った交渉や、時期の決定が交渉の過程で可能になる。
それに対し、TPPはほとんど無条件で2015年までという、かなり過激な貿易・サービスの自由化なのだ。(p.208)
 太平洋を跨いで仕掛けてくるTPPというアメリカ化戦略に乗れば、一層スピードを上げてアメリカのような社会になってしまう。
 玄葉光一郎という民主党のオッサンがTPP推進役になっていたけれど、『ジャパン・ハンドラーズ』 という飼い主に対して忠実に役割をこなしているポチ君である。
   《参照》   『新たなる金融危機に向かう世界』 副島隆彦 (徳間書店) 《後編》
             【日本の将来を潰した者達】

 金融資本主義帝国から世界に向けて放たれる悪辣な罠のような仕組みは、以前から日本経済に深く食い込んでしまっているけれど、いよいよ日本がドンズマリになったらなったで、「陰極まって、陽に転ずる」チャンスがいよいよ巡ってくるだろうと、ノーテンキに考えておこう。

 

<了>