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 かつて読んだ著者の本は参考になる内容が多かったけれど、この本に関しては、「ちょっとそれは・・・」 と思ってしまう点がいくつかあった。2011年9月初版。

 

 

【日本の犯罪は減少している?】
 現在の日本は、犯罪件数が減り続け、少年による犯罪も減少している。(p.66)
 近年のテレビ報道を見ていると、「えぇ~~」って思うだろうけれど、
 犯罪白書平成22年版に掲載された、主要国との犯罪発生率の比較を見てみよう。少なくとも、現実の日本において治安が悪化しているという事実はない。(p.67-68)
 上掲の写真に取り込んでおいたけれど、日本も世界も犯罪は減少傾向にある。なのに、違ったイメージを持ってしまうのは、ニュースにおいて昔より現在の方が犯罪事件を報道する回数が多くなっているからだろう。
 近年、警備保障会社のコマーシャルが増えているけれど、広告収入に絡んで民放各社がスポンサーを大切にしたいのだろう。警察にしても、国民に治安悪化をイメージさせて警備保障会社が栄えた方が、天下り先が増えて好ましいのである。
 ところで、この本で言っている犯罪がどの範囲をいっているのか示されていない。
 少なくとも農作物盗難件数だけを見るなら爆増しているはずである。

 

 

【日本は公務員が少ない?】
 日本の公務員数の対労働人口比は、OECD諸国の中でダントツに小さい。OECD平均と比較しても3分の1程度である。この日本のどこが「公務員が多すぎる!」のだろうか。(p.70)
 これも、上掲写真に取り込んでおいたけれど、日本は5%になっている。民間:公務員=19:1だと言っている。
 下記リンクでは民間:公務員=3:1である。
   《参照》   『日本壊死』 船井幸雄・副島隆彦 (ビジネス社)
              【4人に1人が公務員】

 こうまで違うのだから、統計を頭から信じるなんてヤボなことである。
 OECDの統計は純公務員数だけを根拠に作られたのだろう。しかし日本社会には、公務員と実態は何ら変わらない特殊法人とか社団法人というものがテンコモリ存在している。これがミソである。
 山梨県甲斐市の場合、「県内の各市町村比較で公務員の比率は一番少ない」となっているけれど、そんなのは、法人に大盤振る舞いで丸投げ業務委託している人員まで入れたら、嘘八百なことなど明白である。
 情報公開を利用して調べたところ、甲斐市の「双葉ふれあい文化館」の運営は、「財団法人やまなし文化学習協会」に年額4000万円で業務委託されていて、契約書には必要人員すら明記されていない。施設稼働率はせいぜい2割(実質週末の日曜のみ)、殆ど活用されていない施設なので、出勤している人数は1人~3人である。名刺に「双葉ふれあい文化館館長」と書かれている清水という人物はほとんど出勤していない。そんな施設に光熱費込みで年間4000万円(20万以下の修繕費を含む)という契約だけれど、光熱費など年間せいぜい100万だろう。公務員の人件費700万円として5人分の以上の人件費が浪費されていながら、甲斐市の公務員数にこの人数は計上されていないのである。
 ついでに書いておけば、この業務委託契約は5年でありながら、甲斐市資料には、この施設が「財政支出削減効果あり」と表示されているのである。平気で出鱈目な資料を作って市民を騙す。
 まあ、どこも行政の実体なんてこんなもんだろう。市民が本気で監視しなければ、行政なんていくらでもいい加減なことをやり続けるのである。甲斐市の場合は、歳入の200%近い財政赤字を抱えながら財政健全化を指向する意志など鼻からない出鱈目行政の実態が丸見えである。ほとんどの資金は公務員のために使われているのである。公と公の癒着実態を糺す気のない無能行政はたくさんである。行革反対を明言していた自民党の老害市長では、腐敗行政が永遠に続くだけである。
 本題に戻って、「日本の公務員は、世界に比べて少ない」という話は、全くのデタラメである。
 上記でリンクした副島さんの数値を適応すれば、日本の公務員の労働人口比は、OECDの中で最悪のノルウェー、スウェーデンに肉薄する25%、第3位になってしまう。

 

 

【欧米の「サービス産業」の生産性が高い理由】
 企業が10兆円借りようとも、100兆円借りようとも、あるいは1000兆円借りようとも、バランスシート(貸借対照表)に計上されるだけで、生産性が計算される基となる損益計算書上では、利払い分にしか影響しないからだ。レバレッジ倍率が高い金融機関は、生産性を計算するにあたって、圧倒的に有利になる。
 欧米の「サービス産業」の生産性が高い(あるいは高かった)のは、まさにこれが理由だ。(p.104)
 日本より欧米の「サービス産業」の生産性が高いというニュースを見た時、かなり奇異に感じていたのだけれど、これを読んでその理由が分かった。
 レバレッジとは梃子の作用のこと。企業価値(レバレッジ倍率)が高いと評価されれば、高額な資金を集めることができる。生産性の元となる数値は、汗を流して稼いだか、レバレッジで集めたかの“差”を問わない。

 

 

【多文化共生主義の結末】
 欧州先進国は「多文化主義」を標榜した。多文化主義とは、「ある国において、異なる文化を持つ集団が、それぞれ“対等な立場で”扱われるべきという考え方、もしくは“政策”と定義できる。
 日本で例えるなら、国内に存在する中国人や韓国人のコミュニティを日本国民と「対等な立場」で扱うべき、となる。(p.118)
 2010年以降、欧州首脳が移民政策や多文化共生主義について「失敗だった」と認めるケースが増えている。(p.119)
    《参照》   『日本をここまで壊したのは誰か』 西尾幹二 (草思社) 《中編》
              【オランダに落とされた人口爆弾】
 ほかの欧米諸国同様に、スウェーデン語が話せないイスラム系移民の貧困率、失業率は極めて高い(失業率70%!のイスラム系コミュニティが存在する)。結果、犯罪に走る移民が少なくなく、スウェーデンの犯罪率は日本のおよそ8倍に達している。(p.174)

 

 

【女性参政権】
 1925年の普通選挙法では、女性には選挙権が与えられなかった。成人女性にまで選挙権が広げられたのは、戦後のことである。
 とはいえ、この一事をもって、「戦前の日本には民主主義がなかった!」と主張するのは、早計である。何しろ、1945年以前は、フランスやイタリアなどの欧州諸国においても、女性の参政権は確立していなかったからだ。(p.154)
 女性の参政権が確立された「年度」と「国」
 1945年 フランス、イタリア、日本。
 1948年 ベルギー
 1952年 ギリシャ
 1993年 スイス  など。
 いまだに、「日本は男尊女卑の国である」と思い込んでいる人のために書き出しておいた。
 そう思っている方は、下記のリンクもどうぞ。
    《参照》   『新説2012年 地球人類進化論』 中丸薫・白峰 (明窓出版) 《前編》
              【中東の女性たち】
    《参照》   日本文化に関する疑問と回答
              【日本人女性の生き方に関する疑問】

 

 

【中国人民の医療費】
 例えば上海に住む人の可処分所得は月1600元(約2万円)程度だが、病院の平均医療費は1回の診療で、なんと500元(約6250円)にも及ぶ。一度、病院に行くと、月収の3分の1近くが吹き飛ぶ計算になる。
 中国人民は「負担を国民で分かち合う」保険制度が存在しないなか、目が飛び出るように高額な医療費を支払わされるのだ。(p.166)
 アメリカも中国も同じようなものだろうけど、これを読んで、「保険制度がある日本は、いい国ですね」と思うのは早計である。下記のリンク書籍は、頭から全部読んでください。
    《参照》   『これが[人殺し医療サギ]の実態だ!』 船瀬俊介×ベンジャミン・フルフォード 《1/3》
              【「保険対象は薬物療法のみ」というカラクリ】


 

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