《前編》 より

 

 

【歴史は終わらない】
 冷戦が終わった頃、フランシス・フクヤマ氏は、「民主化を促してゆけば、全体主義や共産主義といった体制は、人類の進歩の必然性によって克服され 『歴史の終わり』 に導かれる」 と語っていた。

EU結成当初はそんな幻想もあり得たけれど、現実には全然そんな状況にはなっていない。
「外国人地方参政権 世界全図」 という章の中に、ドイツとオランダの惨状が記述されている。

 

 

【オランダに落とされた人口爆弾】
 オランダは海洋国家を自負し、思想的寛容を国是としてきた。政教分離で、宗教的な戒律もなく、ゲイも受け入れるほど自由だった。その自由な国に、EU域外から宗教的不寛容な人々が多量に流入した。イスラム教徒である。彼らに地方参政権を認めたことが仇をなし、それが突破口となって、オランダは引き返すことのできない不幸な道を歩み始めた。
  ・・・(中略)・・・ 。ドイツ、フランス、イギリスの移民人口比は7~9%だが、オランダは20%に近い。
 人口爆弾という言葉が使われるが、アムステルダムなどの都市部は移民に埋め尽くされた。 ・・・(中略)・・・。
 移民居住区に足を踏み入れると、彼らはオランダ人に敵意を示す。 ・・・(中略)・・・ 。
 もとより、オランダ国民が一丸となって戦う意思があれば問題は解決するだろうが、政治家とメディアは国民のために動かない。何があっても沈黙する。外国人差別を助長するような言論はあってはいけないと逆に封じられ、政府はインターネットを検閲し、法務大臣がイスラム法の導入まで示唆するほどの倒錯に陥った。かくて社会の一体化は壊され、絶望したオランダ人は国外に逃げ出している。(p.120-121)
 「移民を受け入れ、外国人差別をしてはいけない」 という意見は、一見すると善意に満ちて道徳的で美しい。しかし、この意見に従った結末が、オランダの現状である。
    《参照》   『オランダ人のまっかなホント』 ロドニー・ボルト (マクミラン・ランゲージハウス)
                   【オランダ人気質】

 ドイツもフランスも同様に、この問題に病んでいる。

 

 

【ドイツの捩れ】
 いまドイツで1番雇用の多いのが地方公務員である。3番目が国家公務員である。4番目が自動車産業である。であれば、2番目は何かというと、にわかには信じられないが、これが教会関係なのである。(p.128-129)
 ほんと、ビックリ。
   《参照》   『ドイツ人のまっかなホント』 S・ツァィデニック/B・バーコウ (マクミラン・ランゲージハウス)
              【気前のよさ】

 ドイツキリスト教教会の財政は教会税で賄われているけれど、それだけでは足りないので国の保護を受けている。つまり、教会は驚くほどの金食い虫なのである。
 この関係者に給与を支払うには、国庫や教会税だけではもはや足りなくなっている。で、教会は各教派を挙げて移民受け入れを推進することで増収を図ることに賛成している。
 これは、よく考えれば何とも嘆かわしい次第ではないか。異教徒を増やすことでキリスト教の神を守る。カネのために魂を売る話ではないのか、と事情を知って私はただ呆れ果てている。(p.129)
 ドイツ教会って、国家福祉部局みたい側面があるのだろうから、日本でいえば厚生省の天下り用に作られた福祉関連の特別行政法人みたいなものなんだろう。
 日本の天下りは教会税などという収入源はないから100%寄生虫である。どうりで経費がそれほどかからないフィリピン人の介護士制度を発案して実施している。ドイツと同じような亡国志向のアイデアである。
 ドイツでも、移民や外国人に対する忌避の感情を示したら、それだけでたちまち党から追放されてしまう状況なのだという。EUの先進諸国は、いずれも同じような危機に直面している。
 外国人を労働力として迎えるという麻薬に手を出した国の道の先にあるのは、民族の死である。(p.130)

 

 

【ドイツの崩壊状況】
 ドイツで今何が起こっているかと言ったら、ドイツは自分の歴史を捨てたから、文化がことごとく没落しました。ドイツ哲学はなくなりました。ドイツ音楽も水準がものずごく低い。演奏でも何でも。ドイツ文学も消えました。ドイツの医学もなくなりました。昔日の花はまったくないのです。ドイツの教育、これももう、私が 『日本の教育 ドイツの教育』 を書いた1982年ころまではまだよかったんですが、そのあとどんどんバランスが崩れ、理想も失われ、今はますます酷くなっている。(p.224-225)
 これは、移民受け入れによって生じた状況ではなく、ナチスドイツが加害者となった歴史について、周辺諸国に納得してもらうために、歴史を捨てたことによっている。
 日本はドイツほど押し並べて低下している訳ではないけれど、国力の根本である教育の崩壊状況は、歯止めがかかっているのやら放置されているのやら・・・。