日本文化講座 ③ 【 宗教文化 】
日本人に 「あなたはどの宗教に属していますか」と訊ねると、たいていは 「仏教」 ないし 「神道」 そして希に 「キリスト教」 という答えが返ってくるでしょう。この他に 「儒教」 と答える人がいるかもしれませんが、「儒教」 は宗教というよりは道徳であると考えるのが普通です。
大きく分けてこれらの4つが日本の宗教文化を形成していますが、相互に重なり合う部分があり、明確な区分は難しいところがあります。しかし凡そのことを、私が学んだ範囲で記述してみましょう。
【参考までに】 日本の政財界には、日本文化の基層に重なり合うこれらの宗教文化について、造詣の深い人々が少なからずいます。日本の政財界人の書いた本を読むことで、日本文化の深い意味を知ることが出来るかもしれません。一般の日本人よりは彼等のほうが遥かに深い教養を持っているのは確実です。
○ 儒 教 ○
中国山東省曲阜に生まれた孔子の教えを元にしています。下克上が頻繁に起こるなど、余りにも世の秩序が荒廃した春秋戦国時代に、「仁・孝・忠」等の語を元に語られた思想体系です。儒教は、宋代には朱子学として、明代には陽明学として日本に伝わり、前者は江戸幕府の規範として、後者は明治維新の志士達の行動規範として、日本文化に少なからぬ影響を与えました。
中国発、朝鮮半島経由とはいえ、儒教に基く行動規範を“中国・韓国”と“日本”とで比較した場合、決定的に大きな違いがあります。「孔子思想の正当な継承国は、間違い無く日本である」と言い切ることができます。
○ 仏 教 ○
インドのシャカ族の王子として生まれた青年が悟りを得て、仏陀の教えとして結集された複数の経典のうち、インドから北方に伝わった大乗経典が、中国統一を達成した随の時代や、その後を継いだ唐の時代初期の頃(600年前後)に、日本にもたらされました。
この頃の日本には、聖徳太子と言う聡明な政治家がいました。彼は率先して大陸の文化を取り入れるべく、遣隋使や遣唐使を派遣して、いくつもの仏教経典を入手し、速やかにそれらの注釈書を作成し、日本に仏教を根付かせました。 聖徳太子は希代の霊能者でした。彼は日本の遠い未来を見通して、神道を秘め置くために、仏教を覆いとして日本に根付かせていたようです。また彼は、渡来人達の政治参画意欲を緩和するために、“和をもって尊しとなす” という手法を用いて、日本の発展と安定に尽力しました。
○キリスト教○
歴史上で記録のある日本伝来は、カソリック教徒・フランシスコ・ザビエルが日本に布教に来た16世紀です。しかし日本文化に深い関わりのあるキリスト教は、カソリックではなく、古代の天皇家に伝えられていた古代ユダヤ教のようです。これについては、下記の 【神道とキリスト教の相関】 と <日本文化講座 「日本と古代キリスト教の関係」> を参照してください。
○ 神 道 ○
神道は、上記の三つの宗教(思想)が日本に伝来する以前からあった宗教です。神道は天皇家と深い関わりをもっており、三重県の伊勢神宮が神道の中心に位置しています。また、日本各地にたくさんの神社がありながら、それらの由来を正しく知っている日本人は殆どいません。
このような摩訶不思議な状況でありながら、神道こそが日本文化の基盤をなしているのです。
【 神道とキリスト教の相関 】
JR原宿駅に隣接してある明治神宮に行ったことはありますか。ここは明治時代(1868~1912)を統治した明治天皇を祭る神社です。この明治天皇は日本神道の深いルーツを知悉した類希なる霊能者であったようです。
明治天皇は 「太古の時代に日本を出て行った祖先達が幾世紀もかけて大陸を移動し、エジプト・中東などの地に文明を起し、やがて紀元前後頃、相次いで日本に帰ってきた」 と言っていたそうです。この発言に従うと、天皇家は韓国から来たのではなく、中国や韓国を通って来たことになるようです。また明治天皇の発言と同様な内容の 「日ユ同祖論(日本人とユダヤ人の祖先は同じである)」 が戦前に学術界でセンセーショナルに語られました。この歴史観は、今日でも古代史家にとって尽きない興味の対象になっています。
【 神道と仏教の見分け方 】
神社とお寺の区別はつきますか。日本では戦後に、“神仏習合” と言う、神社とお寺を統合する政策が採られたことがあり、この時に、杜(=森)を大切にしてきた神社の境内の樹木は、所によって伐採されてしまい、神社の杜はかなり廃れてしまったようです。そんな訳で今日では杜のない神社もいくつか見うけられますが、お寺と神社の、おおまかな区別方法を記述しておきます。
建物 入口 鳴物 中心 周辺環境
仏教 お寺 門 鐘 仏像 必ずしも杜はない
神道 神社 鳥居 鈴 剣・鏡・石など 杜に囲まれている
【キリスト教と仏教と神道の世界観】
キリスト教 ・・・・・・ 終末思想 ・・・・・・・・・ 始めがあり、終わり(世界の終末)がある。
仏教 ・・・・・・・・・ 輪廻思想 ・・・・・・・・・ 始めも終わりもなく、栄枯盛衰を繰返す。
神道 ・・・・・・・・・ 天壌無窮思想 ・・・・ 神を祭る限りにおいて、天壌無窮(世界は永続する)である。
【 新渡戸稲造 と 「武士道 」 】
新渡戸は国際連名事務局次長などを歴任しながら、国際紛争の解決に尽力した名士であり、五千円札に印刷されている人です。彼はキリスト教徒になりながらも、日本文化を語り得る中心思想は何であろうかと考え抜いた末に、それは「武士道」であると考え、このことを英語で書物に著して、日本文化の国際理解に大きく貢献しました。彼が著した「武士道」には、日本の宗教文化が集約されています。
《参照》 日本文化講座⑧ 【 武士道 】
<了>
④ 日本と古代キリスト教の関係 ⑤ 言霊・天皇
⑥ 茶道 ⑦ 易経 ⑧ 武士道
⑨ 日本神道と剣 <前・後>