日本文化講座① 【七福神 】
■七福神とは?
七福神とは、幸福をもたらす七柱の神々(神様には 「柱」 という単位を用います)であり、一般的には宝船に乗った七柱の個性的な風袋の神々というイメージで考えられています。
■七福神の性別構成は?
性別構成は、6柱の男神様と、1柱の女神様から成っています。
■七福神は何処から来た?
七福神を出身国別にみますとインド3、中国3、日本1となります。 この出身国別の構成は、今日の日本文化をよく象徴しています。つまり日本人は、国籍に関係なく、これらの神々を "福の神" として信仰してきました。「何処から来たものであろうと、どうでも良いじゃないですか」 「全員 "福の神" として仲良く一つの舟で行きましょう」 という具合です。
日本人はこういう考え方を、抵抗なく受容れてしまいます。昔から日本の神道には、海の彼方からやってくるものは神様として受容れる、という伝統があったのです。それが宗教であれ何であれ 「良いものは良いじゃないか」 という考え方ですね。これがアラブや中東諸国ならば、こうはいきません。あちらこちらでケンカが始まってしまいます。
それでは、それぞれの神々を紹介してゆきましょう。
【 大黒天 ( 男神:インド出身 )】
大いに福をもたらす神様。
顔が真っ黒なのは 「一生懸命、汗を流して働きなさい」 ということ。
【 毘沙門天 ( 男神:インド出身 ) 】
貧乏を克服する神様。
元は悪神だったが、改心して人々の幸せのために働くようになった。
北の方角を守る神様と言われている。
【 弁財天 ( 女神:インド出身 ) 】
弁才天とも書く。弁才とは弁舌の才能のこと。弁才によって財を得る出世の神様。
ゆえに一般的には芸能の神様と言われている。
時に楽器を持っていたり、とっても色っぽかったりする場合もあります。
【 福録寿 ( 男神:中国出身 ) 】
おでこの長い神様で、外法様とも呼ばれている。
福(幸福) と 録(お金) と 寿(長寿) を与えてくれる神様。
【 寿老人 ( 男神:中国出身 ) 】
これまた、おでこの長い神様。おでこには智慧が詰まっている。
智慧があるからこそ物事を進めて行く上において頭を下げることができる。
【 布袋様 ( 男神:中国出身 ) 】
お腹の大きな神様で、背中に大きな袋を背負い、手には軍配を持っている。
袋には「いろんな人々の言い分」が入っており、これを大きなお腹に納めたうえで、軍配で裁きを行います。
【 恵比寿、戎、蛭子、夷 ( 男神:日本出身 ) 】
下記に示したように 「エビス」 には、幾つもの漢字があります。
表す漢字によって意味と働きは異なってきます。
「恵比寿」
鯛を釣り上げている神様。鯛釣りには非常に忍耐と根気が要ります。即ち恵比寿は商売の神様であり、これに最も必要なな「忍耐」を教えています。(恵比寿神社の総本社は、関西の兵庫県西宮市にあります)
「戎」
戎という漢字を分解すると、「自分を戒める戈と剣」 という、“ 持戒 ” の意味になります。(漢字を分解すれば「十戒」の寓意である)
「蛭子」
障害児を意味します。この漢字は、日本神話の 『古事記』 が出典になっています。『古事記』 には、イザナギ、イザナミの第一子として生まれた子であるが、障害児であったために葦舟に乗せて海に捨てられてしまったと書かれています。(これに関しては、旧約聖書の中に類似した記述があります)
「夷」
七福神の中で唯一純国産の神である 「夷」 という字には、なんと「外国」 という意味があります。
■■■ 結語 ■■■
海外の優れたものをどんどん取り込んでしまう受容力の大きさは、
日本の最大の文化的特徴であり、
その特徴は、七福神に顕著に表れています。
□□□ 例外 □□□
日本に決して伝わらなかったもの 【孟子:易姓革命思想】
「易姓革命思想」とは、“上に立つ主君に道に外れたふるまいがあつた場合は、臣下といえどもこれを伐つことが許される” という思想で、中国の古典である 『孟子』 に典型的にみられる考え方です。これについて、「雨月物語」 の中で、晩年・伊勢を本拠地とした歌僧・西行をして、作者は以下のように語らせています。
唐土(中国)の書物はすべて日本に渡ってきていますが、『孟子』 だけはまだ来ておりません。 萬世一系の天皇を奉る我が国に、このような理論がはびこれば、いずれ帝位を奪おうとする悪人が出ないとも限りません。天皇の血統を守るため八百万の神々が神風を吹かせ 『孟子』を積んだ船をことごとくうち沈めてきたからに他なりません。 「雨月物語(白峯の段より)」上田秋成(1734~1809)著
<了>
④ 日本と古代キリスト教の関係 ⑤ 言霊・天皇
⑥ 茶道 ⑦ 易経 ⑧ 武士道
⑨ 日本神道と剣 <前・後>