皆さま

 

生きていると良いと感じることと、

悪いと感じることがいっぺんに

やってくることがあります。

 

そんなとき、悪いと感じることへ

気持ちが流されていかないように

することが大切です。

 

詳しくは本文をお読みください。

 

本日もよろしくお願いします。

 

【自己紹介】

幸せな人生に転換できた僕の物語

 

-----------------------------------------------------------------------------

 

「畳職人、和(なごみ)の生き物語」

~⑨気持ちを整え、自分らしく生きる~

 

前回のお話しはこちらです。

~①少年時代、不運な出来事が和を襲う~

~②愛されなかったと信じる子ども時代~

~③子ども時代に感じたワクワク感~

~④仕事を選ぶときのコツ~

~⑤粘り強く行動してみることも大切~

~⑥逆境と感じることもいつか良き経験となる~

~⑦大切な人を失う圧倒的な恐怖感~

~⑧自分の気持ちを浄化させる~

 

母が亡くなって、畳職人の卵である

和(なごみ)は、ぽっかりと心に穴が

あいたように、毎日を過ごしていました。

 

それでも和は、畳屋の親方から

「しばらく休んでいいんだぞ」と言われたものの、

「暇だと思い出してしまうので」

と言って、畳屋に通い続けたのです。

 

それは、母の死という最大の別れ、

人生最大の悲しみを味わい、

こんなにも生きていくことには、辛いこと

苦しむことがあるのかと、和は感じて

いました。

 

でも、どこかで、そんな小さなころから

抱えてきた「お母さんに甘えたい」という

その欲求を、叶えることも叶ったのです。

 

この二つは一見矛盾しているようですが、

どこかで和は、大きなものを失いながら、

大きなものを取り戻したともいえるのです。

 

なので、和に今必要なことは、じっくりと

大きな悲しみを癒すことでした。

 

そう、それはある程度は時が、少しずつ

癒しへと向かわせてくれることでもあります。

 

和は、来る日も来る日もそんな大きな悲しみを

感じながら、畳と向き合う日々を過ごしました。

 

畳屋の親方もそんな和の姿を、ただ黙って

見守ってくれたのです。

 

親方も悲しみに暮れる和を見てはいましたが、

和の目の奥の輝きが増していることに、

密かに気が付いていました。

 

そう、和は、この経験で何か大きなものを

手にしていたのです。

 

それから3か月くらいが経ったでしょうか、

和の大きな悲しみは半分くらいになって

いました。

 

それと同時に、和の編む畳の質が

変わってきたのです。

 

以前は、どうしても左目が見えないことで

焦点が合わず、しっかりと編むことが

できませんでしたが、一気にそれが

修正されていきました。

 

親方は、その畳をじっくりと見て、

合格点を与えたのです。

 

ようやく、同時期に入った者たちと

肩を並べることができました。

 

和は母との別れという経験を通じて、

悲しみだけではなく、幼少期からの

心の奥底の想いを成就させることが

できたのです。

 

このことが、不思議に思うかもしれませんが、

和の持っている繊細さ、緻密さ、豊かな表現力、

そんな和の気質を開花させたのです。

 

畳職人の卵を卒業した和の

快進撃は悲しみが癒えるのと

比例して、大きくなっていきました。

 

そう、和は基本をしっかりと抑えて

畳を編むことができるようになりました。

 

それから、和は左目が見えないことを

ある種利用をして、あえて斜めに

畳を編んで作っていったのです。

 

そのことを良しとしない職人仲間も

いましたが、「新しいものを作る」

という旋風も畳業界は必要と

していました。

 

そのことが、和の新たな独創性を

後押しする形にもなっていったのです。

 

和の畳は「商品」の枠には留まらず

「作品」ともいえる価値を生み出しました。

 

自然と和の畳を「作品」として購入する

お客さんも増えていったのです。

 

ようやく、やっとこさ和の飛躍の

時代がやってきました。

 

そのことを誰よりも歓んでいたのは、

空の上から和を見守っている母なのでした。

 

「あなたを生むことができて、お母さんは幸せよ」

 

和は、今日も新たな畳に熱をいれ、

ふと空を見上げ、意図せず懐かしい

気持ちを感じ取っていました。

 

【続く】

------------------------------------------------------------------- 

執筆依頼なども承っております。

お問い合わせ・ご質問はこちらからどうぞ

------------------------------------------------------------------- 

この物語を読んで何か一つでも

感じていただけたら嬉しく思います。

世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう

想いを乗せて書いています。

 

皆さまよろしくお願いいたします。