皆さま
小さい頃に感じたことのある
楽しみな気持ちやワクワク感は、
大人になってからも宝物です。
今でも何かを見失いそうになったら、
そんなときのことを思い出して、
疑似でもワクワクしてみると、
不思議と方向修正されていきます。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
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「畳職人、和(なごみ)の生き物語」
~③子ども時代に感じたワクワク感~
前回のお話しはこちらです。
小学生時代の和(なごみ)には、
本当に楽しみにしていることが
ありました。
それは、年に数回しか機会が
なかったのですが、従兄弟である
洋(よう)と会ってただただ遊ぶこと
です。
和にとっては、学校でも辛い目に
合うことが多く、なかなか心を
許せる友人もできませんでした。
ただ、従兄弟である洋とは、
それとは違ったのです。
たまたま洋とは同じ年齢で、
とてもとても気が合いました。
だから、夏休みやお正月など、
大きな休みがくると洋と会えるので、
和は心の底からワクワクして
いたのです。
そんなときは、辛い目に合う
学校にも笑顔で登校していました。
淡々とした母とも、このときばかりは
うれしくて、少し声が上ずったりも
するのです。
「洋と会えるんだ」
ただ、これだけが和にとっては
大きな楽しみなのです。
そう、小学生時代に感じたこの
奥底から湧きあがるワクワク感、
これこそが、これから和が生きて
いく上でも大切な道しるべと
なっていくのです。
和は、洋と会いました。
従兄弟という関係性もあって、
会う場所は専ら祖父母の家です。
和が洋と遊んでいるとき、この
ときばかりは左目が見えないことも、
学校で辛い目に合っていること、
母にもっと甘えていたいこと、
そんなことを忘れることもできました。
夢中になって遊ぶのです。
秘密基地を作ってみたり、野球をしたり、
相撲をしてみたり、季節によっては
凧上げもしました。
和は、洋には体力では勝てませんでした。
洋は、和には知識では勝てませんでした。
そんなところも2人で埋め合って
いたのです。
そして、この関係性はどうにも
長くは続かなかったのです。
母から従兄弟の洋一家が、
引っ越すと聞きました。
「中東に引っ越すらしいわよ」
そのことは、和にとっては
どこかもよくわかりませんでした。
母のトーンからどうやら遠い場所だと
いうことはなんとなく理解できたのです。
和はとても、ショックを受けました。
本当に大切な仲間だったのです。
年に数回会うことが、和にとっては
大きな心の支えになっていました。
それが、これからは失われると
思うと和はクラクラとしてきます。
小学校卒業と同時に、洋は
日本から家族と飛び立って
ゆきました。
「どうしても見送りたい」
和が初めて、母に自己主張した
ときでもあったのです。
それに驚いた母は、仕事を休んで
和も学校を休んで、洋一家の
見送りに空港へ出かけていきました。
「必ずまた会おう」
どちらからともなく、そんな言葉が
取り交わされたのです。
和は、デッキから洋たちが乗った
飛行機を涙を流しながら見送りました。
母は、久々に和が泣いている姿を
見て、少し驚いています。
「絶対会いに行くからな!」
【続く】
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執筆依頼なども承っております。
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。