中央線で読む新書 -69ページ目

中東がわかる8つのキーワード

本書の最初のキーワードは「水・環境」、石油と聖地を巡って争ってきた
この地で次なる火種は不足する一途の水であることを知る。

著者はお馴染みの宮田律。
2004年6月に新潮新書から出した「中東 迷走の百年史 」から
僅かに1年1ヵ月後に出た本書。

その間に劇的な変化があったわけでなく、同じ読むなら
「中東 迷走の百年史」の方が薦められる。

イスラム関連で過去に読んだもので面白かったものに、他には
桜井啓子「日本のムスリム社会 」ちくま新書
21世紀研究会「イスラームの世界地図 」文春新書

【他によいものがある】 2005年

宮田 律
中東がわかる8つのキーワード

インターネットの中の神々

これぞ新書の鑑。

各宗派の解説、それらがどう旧メディア(TV・ラジオ)と関わってきた
のか、それを踏まえた上での本題であるインターネットの関わり合いに
至る構成。とても親切な作りである。

おかげでキリスト教各派からモルモン教・エホバの証人、クリスチャン・
サイエンス、はたまたチャールズ・マンソン、統一協会、禅にいたる
までの米国宗教事情がよくわかる。

本書に紹介されているサンフランシスコ禅センターのwebサイト
http://www.sfzc.com/

【通勤用にGOOD】 1999年

生駒 孝彰
インターネットの中の神々―21世紀の宗教空間

男はなぜ悪女にひかれるのか

古今東西の悪女(実在の人物・小説・映画・漫画etc)から
悪女とは? をさぐる。

この著者の「『人妻』の研究」(ちくま新書) がすこぶる面白かった
ので、こちらも読んでみるが、こちらはちっとも面白くなく。

映画の悪女ならば山田宏一の「美女と犯罪」(ハヤカワ文庫)
が ヒルデガルト・クネフなどが紹介されて 圧倒的によい。

【車窓からの眺めの方がまし】 2003年

堀江 珠喜
男はなぜ悪女にひかれるのか―悪女学入門

事件論

例のロス疑惑-妻殺し疑惑-の主人公カズヨシ・M氏」と書きながらも
その7行後に「(以上は安部隆典『三浦和義との闘い』による)」とある。
イニシャルにした意味がない。

ここがこの著書で一番面白かったところである。

戦前、松山城など日本全国を「放火巡礼行」でまわった放火魔・
古川義雄を取り上げている。彼にコックの経験があったという当時の新聞
記事から「火を扱うことにたけていたことが推測される」と珍説を披露。

ここがこの著書で二番目に面白かったところである。

【車窓からの眺めの方がまし】 2001年

芹沢 俊介
事件論―現代の死と虚実を読み解く

「邪馬台国」と日本人

書名とは裏腹に近代史の本である。

明治、大規模な予算で政府は「大日本編年史」の編纂に取りかかる。
それは「客観的な歴史」を目指したもの。たとえば「太平記」に登場する
南朝の忠臣児島高徳が他の文献に登場しないことから児島が実在しな
いものとし、「太平記」の史書としての価値を否定した。

ところが1890年代になると、日本文化の特殊性・固有性を強調する
必要があった。そのために、古代において中国の影響を受けていたと
する「客観的な歴史」ではないものを掲げる必要があった。
政府が欧米列強と対等条約を締結するためであり、主権者・天皇の
超越的絶対性を必要としたためである。

そうしてで「客観的な歴史」でなく「物語的歴史」が必要となった。

近代日本において、公式の歴史が常に物語的歴史であって「客観的な
歴史」でなかったことは周知の事実である。近代日本が天皇親政という
国体の上に成り立っており、万世一系神話を不可欠の要素にしていた
以上、それはやむを得ないことであった。 (P37)

この歴史=物語論が「国史眼」であり、皇国史観、自由主義史観へと
続いていく。

ちなみに戦前、大川周明が天皇は豪族であるとして皇国史観を批判した
「日本二千六百年史」がベストセラーになっているように、天皇について
戦前はそれなりに闊達に(自由かどうかはわからないが)論議されている。
天皇について論じることが半ばタブーの今日、戦前の歴史論争を引っ張り

出すことは有意義かも知れない。

#邪馬台国論争はこの政府の歴史編纂の過程でシンボリックに登場する。

【書物としてGOOD】 2001年

小路田 泰直
「邪馬台国」と日本人

政治家の日本語

かつて武村正義という政治家がいた。細川内閣の官房長官であり
新党さきがけの党首であった。彼は小沢一郎と小沢の新自由主義に
反目するかたちでリベラルを標榜していた代議士である。

彼が当時出した著書は「小さくともキラリと光る国・日本」
「キラリと光る」…この言語センスの悪さがそのまんま彼が率いた
新党さきがけの政治センスの悪さを現しているように思う。

さて本書は言葉によるパラダイムチェンジの政治史が本書の本旨。
時制にとらわれることなく、主に大平正芳内閣以降の政治を
上手いこと書き上げている。

93年5月 小沢一郎が「日本改造計画」 を出版する。これにて
「普通の国」という言葉が登場する。集団的自衛権・地方分権・
規制緩和・中央機構の再編などを行い、「普通の国」にするというもの。

その小沢とケンカ別れしたはずの橋本龍太郎(大きな政府志向)は
小沢と連立を組み省庁再編に取りかかる。同じく小沢を政敵とした
野中広務(集団的自衛権の拡大に本来は反対)は小沢の協力で
周辺事態法に取りかかかる。小沢包囲網として出発したYKKの
K・小泉純一郎は地方分権のとっかかりになる税源移譲を現在
行っている。 
という具合に小沢の政敵によって「普通の国」を日本は目指している
のである。

55年体制は自由民主党と社会党による社会民主主義体制であったのが
自民党分裂によって外部に小沢の新自由主義政党が出来たために、
自民党がようやっと党名にある「自由」を意識しだしたことであろうかと思う。

リベラル陣営が「護憲」「小さくともキラリと光る国」以外の言葉でもって
「普通の国」に対抗できずにしぼんでいった、それが93年に始まる政界
再編劇の言葉の政治史であろうか。

【通勤用にはGOOD】 2004年

都築 勉
政治家の日本語―ずらす・ぼかす・かわす

エシュロンと情報戦争

安全保障安全保障と今日の日本ではしきりに言われるが、
軍事のみならず経済安全保障にも気を配った方がよさそうである。
そう認識させられる新書。 著者は元「情報通信関係の将校」。

エシュロンとは米国NSAが中心になって運営する「アングロ
サクソン諸国による世界的通信傍受協力体制」である。

本書には様々な米国の軍事行為・経済戦争が紹介されていて、
面白い。その都度、その背景にエシュロンの影を匂わせる。
「経済交渉で米国と対立すると何故か通貨危機が起きる。
その影にはエシュロンが」……こんな調子で。

そのエシュロンに関して正面切って調査発表したものに
EUの調査報告書がある。著者は「極めて高い権威を有する」と
評価しながら、中身にろくに触れていない。
そのため「エシュロンの影」が説得力を失い、陰謀論にしか聞こえない。

宗教的にリベラルなローマ法王(イスラムへの謝罪や進化論の容認)と
米国の関係性、老スパイ・黒羽一郎 など、面白い逸話は多いことは
多い。

【話のネタ本にはGOOD】  2002年

鍛冶 俊樹
エシュロンと情報戦争

スポーツを「読む」

山際淳司 沢木耕太郎から山口瞳 虫明亜呂無も押さえつつ
ターザン山本にいたる39人に及ぶスポーツライターの紹介。
重松清の芸、といったところ。

やみくもに賞賛しているだけなので途中で飽きてくるが、井田真木子
の項は面白い。

彼女が大宅賞を取った「プロレス少女伝説」 、これは総合格闘技も
ない時代に素手で殴っていた神取忍らが取り上げられている。
選考委員の立花隆がプロレス自体「低劣なゲーム」で「どうでもいいこと」
について書いたに過ぎないと酷評していることでも知られる。

しかし重松は井田が書いたのは「どうでもいいこと」なのか、「もっと
言うなら、本書が書いたものはプロレスだったのだろうか」と問う。

プロレスの決まり事が暴露された今日、重松の問いも井田が取材した
神取忍も顧みる価値がある。

【つまみ読みにはGOOD】 2004年

重松 清
スポーツを「読む」―記憶に残るノンフィクション文章読本

地下経済

裏社会と表の関わりに関する裏話集。
君たち「市民」は知らないだろうが世の中はこうなんだよ に終始し
地下経済でどれくらいの金が動いているかなどは触れられていない。
よって地下経済の概要は掴めない。
そのため 題名ほどのことはない内容。

【車窓からの眺めの方がまし】 2002年 プレイブックス

宮崎 学
地下経済―この国を動かしている本当のカネの流れ

戦後教育で失われたもの

小学校・養護学校・都立高校の教員を経て経て現在は都庁勤務の
著者による。

説明が逐一弱くて、日教組嫌いの教員が飲み屋に集まって
言っていることをまとめたものに過ぎないように思える。

晩婚化、ホリエモン騒動にまで口を出すが、それらと戦後教育とが
どう関係があるのかの説明が実にわかりにくい。
著者の力不足であろう。

3ページにわたる参考文献がありながら、どこにもそれらの引用が
ない。読者を子供扱いしているのであろうか。

【車窓からの眺めの方がマシ】 2005年

森口 朗
戦後教育で失われたもの