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cb650r-eのブログ

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俺の居場所

 

やがて、K-1の“溜まり場”が近づいてくる。

俺は少しだけ緊張しながら、そこへバイクを進めた。

近づくにつれ、見慣れたマシンが目に入る。

――やっぱり、いた。

YAMAHA R1のシータを筆頭に、いつもの面々が揃っている。

俺がバイクを停めようとすると、マモラさんこと片山さんが、駐車場係のように手を振った。
「こっちだ」と言わんばかりに、R1の隣へ誘導する。

俺も遠慮なく、シータのYAMAHA R1の横にCB650Rを並べた。

 



 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

 


 

菜の花畑

 

K-1に入ると、やはり以前とは違う。

頭のどこかで、イノシシをはじめとする野生動物との遭遇がちらつく。
無意識にアクセルを戻しがちになる。

それでも走り続けるうち、視界がふっと開けた。

目の前に広がったのは、一面の菜の花畑だった。

「ああ……ここ、菜の花畑だったよな」

 


長年見てきたはずなのに、今、改めて気づかされた気がした。
下界より少し涼しいK-1にも、確かに春が来ていた。

今日は日曜日。
すれ違うバイクも多い。

ツーリンググループの何台かが、今どきでは少し懐かしいピースサインを向けてくれる。
俺も少し照れながら、メジャーリーグの大谷選手風にデコルテポーズを返した。

こんなのんびりしたツーリングも、悪くない。
そう思えた。


 

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装備は万全!

 

休憩を挟みながら一時間ほど走ると、俺たちのワインディングロード――通称「K-1」の入口に到着した。

俺はバイクを停め、サイドバッグからニーパッドと、新しく購入したエルボーパッドを取り出して装着する。



前回の事故では、ライダー仲間のシータ(あだ名)に勧められていたニーパッドのおかげで、あばらは折れたものの、膝はまったくの無傷だった。
だが肘は違った。
骨が露出するほどの大ケガを負い、今も右腕には鈍い痛みが残っている。

俺は家族との約束どおり、膝と肘をしっかり守り、CB650RをK-1へと進ませた。



 

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老木と若木

 

今日は絶好のツーリング日和だ。
ただ、風が少し強い。

今咲いている桜の多くは「ソメイヨシノ」という品種だという。
だが、その大半が寿命を迎えつつあるらしい。

そもそも桜の木はもろく、全国で倒木のニュースも耳にする。

K-1へ向かう途中、いつもバイクを停める場所で、俺は一本の小さな桜の木に気づいた。
まだ植えられたばかりの、細い幹の若木だ。

 

…… 誰かが植えたのだろうか。

しばらくその木を眺める。

この桜も、十年後、二十年後には大きく育ち、
春になれば、美しい花を咲かせて人々を楽しませるのだろうか。

風に揺れる細い枝を見ながら、
俺はふと、自分のことを重ねていた。



 

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間に合ったよ、おかげさまで。

 

2026年4月6日、日曜日。天気は快晴。
桜は少しだけ散り始めている。


俺はCB650Rのセルスイッチをいつもの力で、いつもの右親指で押した。
軽やかにセルが回り、エンジンが力強く始動した。
直列4気筒のミドルバイク。お気に入りの E-clutchだ。
「そうそう、俺はこれに乗りたかったんだよな。」俺は新鮮な気持ちでバイクに跨った。

E-clutchのスタートは滑らかだ。俺はギアを上げながら、K-1へと続く道にバイクを進めた。
不思議なことに、バランス、乗り味、安心感は、事故前と全く変わらない。
頑丈な倒立サスペンションのおかげで、フロント周りはガッチリと安定している。
コーナリングも、全く素直なままだ。

いつもの、青い海が見えてきた。この道には、昔から桜の木がたくさん植えられている。
「どうにか、桜の花に間に合ったな。」
俺は、バイクを停め、桜の木を見上げた。
「今、俺はまちがいなく生きている。」そう一人でつぶやいた。
 



 

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レンゲの花の理由

 

振り返ると、これから干すのだろう洗濯物を抱えた妻の華が立っていた。

「レンゲの花、咲いてるな」
俺が声をかける。

「そうね」
華は穏やかに答えた。

「でも、きれいに咲いている田んぼと、そうでないところがあるな」

「そうなのよ。レンゲって、自然に生えてるわけじゃないらしいわよ」

「え、知らなかった。てっきり自然のものだと思ってた」

「田んぼに種をまくのよ。春に花が咲いたあと、そのまますき込むと、天然の肥料になるんだって」

「この歳になるまで知らなかったな……」
俺は妙に感心した。

しばらく、静かな時間が流れた。

やがて華が口を開いた。

「考えてたんでしょ。もう一度バイクに乗るかどうか」

「……図星だな」

「あなた、言ってたじゃない。『自分の特技はバイクで速く走れること』って」

「もう“速く”は走れないけどな……」

「それに、『バイクを取ったら何も残らない』とも言ってたわよね」

「それは……まあ、半分は本音だな」

華は少しだけ笑った。

「桜でも見てきたら? ただし、完璧な安全運転でね」

 



「イノシシが飛び出してきても、今度は必ず避けきるよ」

「そう願ってるわ」

 

 

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レンゲ畑

 

4月初旬の日曜日。
天気も良く、暖かい。

ふと家の前の田んぼを見ると、一面にレンゲ草が咲いている。

 



うちの実家はかなりの田舎で、通っていた小学校までは片道二キロほどあった。
小学校低学年の足では、片道四十分ほどかかる。

通学路の半分は田んぼ道で、新学期の頃になると、いつもレンゲ草が咲いていた。
思えば、もう五十年ほど前のことになる。

六年間、雨の日も風の日も、夏も冬も、自分の足で歩いて通った。
大きな病気もせずにここまで来られたのは、あの通学で鍛えられたからかもしれない。

人生初の大ケガと入院。
「俺も例外なく、還暦前の大病か……」
そうつぶやいたとき、背後に人の気配を感じた。

 

 

 

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新しい職場

 

病院の玄関を出ると、俺はこの春から勤める新しい職場へ電話をかけた。

 


「大阪経済同友会でございます」
「4月からそちらでお世話になります、山本と申します。廣瀬事務局長はいらっしゃいますか?」
「山本さん、お体は大丈夫ですか?」
「はい。今、ドクターからゴーサインが出ました」
「それは何よりです。少々お待ちください。局長におつなぎします」

 

やがて受話器の向こうから、明るい声が聞こえてきた。
「廣瀬です。お久しぶりですなあ、山本さん。ほんまにご本人ですか。幽霊やないでしょうね」
「またまた、きつい冗談をおっしゃいますね。4月から出勤できそうです」
「それはよかったですわ。こっちは猫の手も借りたいくらい忙しいんで、ほんま助かります。けど、無理したらあきませんよ。ほんまに」
「私は大阪弁が話せませんので、しばらくは妙な標準語でお願いします」
「了解です。ほな、お待ちしてます」
そうして、廣瀬事務局長との事務連絡は無事に終わった。

 

 

 

 

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宇都宮先生

 

「宇都宮先生。このたびは大変お世話になりました」
「直太郎君、先日の3月19日に、和歌山のご実家にある頴二君の墓参りをしてきたよ。きれいな花が供えてあった」
「父が亡くなって、もう四十年になりますね」
「そうだな……四十年か。君が高校を卒業した春だったな」
 

そして宇都宮先生は、堤先生のほうを向いた。
「堤先生、直太郎君は完治ということでいいのだな」
「はい。念のため、職場復帰日の前日に最終確認をする予定です」
「よし、それでいいだろう」
 

それから宇都宮先生は、まっすぐ俺を見て言った。
「直太郎君。君との約束は果たしたぞ」
「親子二代にわたってお世話になりました。本当にありがとうございました」

 

 

 

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ファイナルジャッジ

 

「どうでしょうか?」
俺は自分の脳のCT画像を見ようと、少し前のめりになった。
「いいですねぇ」
堤先生が、ぽつりとつぶやいた。
脳内にたまっていた液体は排出され、脳への圧迫や変形も改善されている。

 


しばらく前回のCT画像と見比べたあと、堤先生は言った。
「完治……と言っていいでしょう」


「ありがとうございます、先生」
俺の口から出たのは、純粋な感謝の言葉だった。」


「職場復帰は、どうされますか?」
「区切りよく、4月1日ではどうでしょうか」
「いいと思います。では、その内容で診断書を書いておきますので、帰りに受付で受け取ってください」
「本当に、ありがとうございました」
そう礼を言って立ち上がろうとした、その時だった。
思いがけない人物が診察室に入ってきた。

 

 

 

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