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cb650r-eのブログ

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二つ目の奇跡。

 

シータはリュックサックから何かを取り出しながら、ニヤリと笑って言った。
「ところで山ちゃん、両膝の具合はどうだい?」

「え? いや……両膝は、かすり傷ひとつしていない」
自分でも不思議だった。なぜだろう。

「山ちゃん、俺の言葉、覚えているか?」
「何のことだ?」

「事故で膝をやると厄介だ。まともに歩けなくなる。俺はそう言ったんだよ。覚えてるか?」

「あ……覚えてる。それでワークマンに行って、膝パッドを買ったんだ」

シータは俺の目の前に、膝パッドを放り投げて言った。
「お前の膝、このパッドのおかげで奇跡の“かすり傷なし”だぜ」

俺は記憶をたどったが、事故の日、なぜ膝パッドをしていたのか思い出せない。

俺は、本当に膝パッドをしていたのか……。

そう。これが二つ目の奇跡。

もし膝を丸出しにしていたら、もうまともには歩けなかっただろう。

なるほど。
ツーリングにもかかわらず、無意識に膝パッドを巻いていた...。
そういうことなのかもしれない。


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一つ目の奇跡。

 

俺は、傷ついたCB650Rを目に前にして感傷にひたっていた。
バイクの音が遠くから聞こえる。ヤマハのR1...シータだ。
シータはヘルメットを取りながら、ニヤリと笑って言った。

「おやおや、全身骨折のリターンライダーだが、何とか生きてるじゃないか」

相変わらず茶化し方だけは一流である。

なあ、11月3日は、妻が姑の介護を理由にタンデムを断ってくれたのが、今となっては本当に良かった。
これが一つ目の奇跡だ。

だが結局のところ、結果がすべてで、未来のことは誰にも分からない。

 

 

ひでーな。排気系。

 

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全損...。ではないことは知っていた。
 

事故で入院したとき、シータが
「お前のCB650Rは全損だ」

と言ったのは――

俺にバイクをあきらめさせるためのウソだった、ということは、だいぶ前に分かっていた。

実際には、ホンダドリームの市古店長に、最小限の修理だけをお願いしていたのだ。

というわけで、1月18日の日曜日、CB650Rを店に取りに行った。

クランクケースの傷は、正直、痛々しい。

スライダーと、幅稼ぎに入れたワッシャーの効果があったのか、なかったのかは判然としない。
だが、付けていなかったら、もっと酷いことになっていたはずだ。

……付けないよりは、きっとマシだった。

 

 


幸い、E-Clutchは正常に動くようだ。
 

 

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次女との約束

2026年1月9日。俺は入院していた和歌山メディカルセンターを退院した。

長女の彩(あや)が車で迎えに来てくれた。

今日の退院は、次女の史(ふみ)との約束だった。

 


「成人式までには退院してね」
その一言を励みに、2か月間リハビリを頑張ってきた。

病院の1階で、入院費や治療費など諸々を清算し、病院を後にした。

家に帰ると、エアコンの室外機の上に、事故の時に被っていたヘルメットが意味深に置かれていた。

 



「随分な、お出迎えだな」

その日の夜は、家族4人で乾杯した。
次女と酒を酌み交わすのは、これが初めてである。

「生きていれば何でもできる」
俺はもう一度、その言葉を胸に刻んだ。

 

 

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The End

11月3日、祭日の月曜日、お昼過ぎ、天気は秋晴れだ。今日はシータとk-1を軽めに流していた。

 

そして暫くして、俺は近くから聞こえてくる救急車のサイレンの音で目が覚めた。

 

ここはどこだ?

 

どうやら、病院のベッドの上のようである。

 

「お、目が覚めたか?」

そばにはシータが居る。

 

ここはどこだ。

「病院だよ」

 

記憶をだどると、俺はシータとk-1をCB650Rで走っていたはずだが...。

 

「山ちゃん、猪と相撲とって、上手投げされて負けたんだよ。」

「何の話だ?」

 

「200キロ級の野生の巨大イノシシが、山ちゃんのバイクに体当りしてきて、バイクごと吹っ飛ばされたってこと。」

「なるほど、あの巨大なイノシシは夢じゃなかったのか...。」

 

「で、俺のCBはどうなった?」

 

「 ....。 」

暫くの沈黙があり、シータは努めて明るく言った。

「全損。フロントのブレーキディスク盤までグニャっとなってたよ。イノシシもさぞかし痛かったろうて」

 

「納車が昨年のクリスマス。アラ還ライダーのカムバックストーリーは1年も持たずか...。」と俺はグチた。

 

「1年。すごいじゃないか。テレビ番組ならワンクールで打ち切りもあるし。四季を楽しめただろう」とシータが慰める。

 

「いや、俺にとっては、お前らや、40年近く前のバイク仲間と、また走れたことが最高だったよ。」

 

「そうか、それは良かった。ちなみに、今のお前は全身7カ所骨折だよ。」

「どうりて、全身が痛むはずだ。」と俺が言うと、シータは椅子から立ち上がり言った。

 

「もうすぐ、奥さんとお嬢さんがここに来る。よく、話し合えよ。」

「分かった。シータ、色々とありがとな。」

 

「でも俺たち、待ってるぜ。k-1で。」

「娘のクルマで、杖ついて会いに行くよ。」

「そりゃ、いいな。そのあと奥さんと一緒にランチでも行けば。お前、今日は奥さんと初ツーリングの予定だって言ってたぞ。」

 

「あ、そうだ。今思い出した...。」

 

アラ還ライダー山ちゃんのカムバックストーリーはここで一時停止。

 

結果はどうであれ、40年近く前にタイムスリップした俺。

代償は大きかったが、後悔はない。

HONDAとe-clutchに感謝。俺にとってCB650Rは正に“タイムマシン”だった。

 

 

The End

 

皆さま、今日もご安全に!

 

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新たな風



2027年10月18日、月曜日。
「大阪経済同友会」事務局への初出勤の日である。

「ほんとに、こんな立派な建物の中に事務所があるのかね……」


俺は思わずつぶやき、重厚な扉が迎える古い洋館の中へゆっくり足を踏み入れた。



これから始まる新天地の毎日。
だが、地域戦略部で過ごした日々の思い出と、仲間たちの顔は、いつまでも胸の奥で光り続けるだろう。

またいつか、機会があれば――。
経済同友会の面白エピソードや笑い話を、書き連ねてみたい。

しばしのお別れ――。
皆様もどうかお体を大切に。

 

 

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新たな船出



天野次長の周りから関係者が去ったのを見計らい、俺は声をかけた。
「ロードマップどおり、しっかり完成させましたね」

次長は少し息をつき、笑みを浮かべた。

 


「資材の高騰や人手不足には、さすがに参ったけど――伊達木社長のチームが何度もピンチを救ってくれたわ」

「いいパートナーに恵まれましたね」
「ほんと、ホント」

空気が少し静かになる。
「ところで、私、異動になります。出向です」

「お互い還暦ですものね。それで、どちらに?」


「大阪経済同友会だそうです」

「なんだか楽しそうじゃないですか」
「そうですねぇ。あと、私の後任は天野さんだそうです」

「えぇ、まさか……でも、さっき千﨑部長が昇格の話をしていたけど」
「まあ、明日になれば、すべてわかる話ではあるんですけど」

俺は肩をすくめながら答えた。
「新天地でも、ほどほどに頑張ってくださいね、山本さん」

そう言い終わると、他の関係者が天野次長のもとへ集まり、笑い声が戻ってきた。
俺は静かにその場を離れた。

今日という日が、明日への希望をそっと運んでくる。
――新しい航路が、大阪で始まるのだ。

 

 

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地域戦略部には戦略が…

 


「まあ、明日発令されるから話してもいいだろう」
千﨑部長は静かに続けた。

「山本副部長は――大阪経済同友会の事務局に出向だ。事務所は元住銀行旧本店の二階にある」

「そうですか……」
言葉に詰まる俺を見て、部長は少し微笑んだ。

「いろいろとお世話になりました。勉強させていただきました」
「こちらこそだ」

短い言葉の奥に、この二年半の苦楽が滲んでいた。

「後任の副部長には、天野次長が部内昇格する。
成瀬代理は次長に――いい流れだ」

「俺がですか?」
成瀬が目を丸くした。

「ついでに、大阪で留守を守ってくれている大杉主任も部長代理に昇格だ。
新人も二人、異動してくる」

「いい人事ですね。納得です」
俺は笑顔で答えた。



――今の地域戦略部には戦略がある。
俺にはそう思えた。

 

 

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海の幸と俺たちの夜


一方、俺は――。
いつも陰で支えてくれる成瀬代理と、天野次長の弟がプロデュースした「対馬あなご専門店」のカウンターにいた。

 


あなご料理を肴に、長崎の離島・壱岐の焼酎をロックで味わっている。

「いやぁ、大阪でもあなごの握りは食べますけど、刺身とか煮あなごなんて初めてですよ」
成瀬代理が感心したように言った。

「ほんとだな。今日だけ特別っていう“対馬の黄金あなご”――俺も初めてだ」

脂ののった白身が舌の上でとろける。
長崎の海の底には、まだまだ宝が眠っている――そんな気がした。

「アジにサバに、地元民が見落としてる食材、まだまだありそうですね」
「そのとおりだ」

俺はグラスをくるりと回し、氷が溶けていく音を聞いた。

そのとき、千﨑部長がやってきた。
「おう、二人とも。おつかれさんだったな」
「いえいえ、我々はサポートしただけです」

「まずは――乾杯だ」
「部長、ワインですか?」
「白ワインは和食にも合うぞ」
「まぁ、そうですよね」

三人のグラスが軽く触れ合い、カランと澄んだ音を立てた。
この二年半の苦労話に花が咲く。
笑い声とともに、あの忙しかった日々が遠く霞んでいく。

やがて――千﨑部長が、ふと真顔になって言った。

「ところで――山本副部長、いくつになった?」
「今年の七月で、還暦を迎えたところです」
「そうだよな」

一拍の間。
俺は、胸の奥がざわめくのを感じた。

「……異動ですか?」
思わず口をついて出た言葉に、千﨑部長はゆっくり頷いた。

「察しがいいな」

焼酎のグラスの中で氷が小さく音を立てる。

 

 

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約束の二年



「本当に――約束の二年でオープンさせたわね」
グラスを片手に、伊達木社長が微笑みながら天野次長に声をかけた。

 



「はい。伊達木社長、そして湯村社長をはじめ、皆さんのご協力のおかげです」
天野次長は深々と頭を下げ、その表情には達成感と安堵が交錯していた。

 



そこへ千﨑部長が加わる。

 


「千﨑さん、いい部下をお持ちでうらやましいわ。……お宅にはもったいないから、うちに来てもらうことでよろしいわね?」
伊達木社長の“作り真顔”に、周囲はどっと笑いに包まれた。

「絶対だめですよ、伊達木社長」
千﨑部長が即座に笑いながら返す。

「でもね、天野次長は昇格させるべきよ。もっと権限を与えて、思いきり活躍してもらわないと」
「分かってますよ、伊達木社長」

千﨑部長はそう言うと、伊達木社長が差し入れた高級ワインをぐいと飲み干した。
グラスの縁に映る赤いランタンの輝きが、オープン前夜の祝賀ムードを一層引き立てた。

 

 

 

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