40年間、そのまま…。
K-1の休憩所が、ふっとざわめいた。
θ(シータ)がぽつりとつぶやく。
「……あれ、珍しい。マモラさんだ」
まさか、と思った。目の前に止まったのは――TZR250。
そのオーナーは、マモラこと、やはり片山さんだった。

K-1の重鎮。あのTZR250初期型を、四十年ものあいだ乗り続けていたとは…。
「うそでしょう、片山さん。まだTZRなんですか?」
「まあね。後ろ走るとオイルが飛び散るから、気をつけてよ」
そう言って、にかっと笑う。還暦を越えた、いいおじさんの顔だ。
「タイヤ……細いっすね。特にリア。こんなんでしたっけ」
「チャンバー以外は、ほぼオリジナルだよ。コンディションも上々」
そう言いながら、今度は俺のCB650Rをじろじろ見てくる。
「山ちゃん、最近復活したんだって? 噂で聞いたよ。E-clutchかぁ、どうだい?」
「なかなかいいですよ。でも、片山さんには……ちょっとお勧めしませんけど」
「なるほどな。――でも昔は、よく走ったなぁ。飽きもせずに」
「そうですね。あの頃の俺は、RZ250Rから乗り継いで、SUZUKI WOLF250でした」
「そうそう、なつかしいなぁ」
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